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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【本の紹介】銃・病原菌・鉄 下巻

今回の投稿は、結構前に書いた『銃・病原菌・鉄』の下巻について書いていきます。
上巻の投稿をまだ読まれていない方は、こちらからお読みください。
kimniy8.hatenablog.com

      

一応、上巻についての投稿を簡単に振り返ってみましょう。
現状の地球を見渡すと、様々な地域に様々な人種の方が住んでいて、それぞれの文化を形成しています。そして、それらの文化には、『差』というものが存在します。
文化の差というのは、何を基準にして『進んでいる』とか『遅れている』というのを定義するのかという話もありますが、それは取り敢えず置いておいて、地域によって、『進んでいる』とか『遅れている』なんて事もあったりします。

では、遅れているとされている地域の人達は、何故、遅れているのでしょうか。
様々な発明を行い、先進的な技術を持ち、文化が進んでいるとされている地域の人達は何故、進んでいるのでしょうか。
白人至上主義が考えるように、白人が遺伝的に優れていて、有色人種が遺伝子的に劣っているから、差が生まれているのでしょうか。

この本を書いた筆者は、自分の研究をしている最中に、パプアニューギニアに住むヤリという人物と会い、彼から『何故、私たちは多くのものを持っていないんだろう?』という問いを投げかけれられます。
その単純でありながら難解な問に応える為、歴史を紐解いていくというのが、この『銃・病原菌・鉄』という本です。

この解説を読んで、単純に歴史書と思われる方も少なくないとは思われますが、この本は、どちらかと言うと科学の本に近いです。
歴史を振り返るとは言っても、数千年前に誕生した有名な四大文明が誕生する前からの話で、その四大文明が何故、誕生したのかというのを、地形や生物学の知識を元に読み解いていきます。

例えば、四大文明は大きな河のそばで生まれたとされていますが、何故、大きな川があれば文明は生まれるのでしょうか。
そして、何故、4つの地域だけだったのでしょうか。
答えを言ってしまうと、その4つの地域の人々が優秀だったとかそういうことではなく、単純に、地形的に恵まれていたからです。

人類で一番最初に農耕を始めたのは、メソポタミアに有る肥沃三日月地帯と呼ばれる場所でしたが、この土地は、植物が育ちやすい気候である上に、人間が食べられる種類の植物が他の地域に比べて断トツで多く生息していました。
また地形も、なだらかに標高が高くなっていくという地形。 標高というのは、100メートル上昇する度に1度気温が変わると言われていますが、なだらかに標高が高くなっていくという事は、同じタネを撒いたとしても、収穫時期がずらせるという事。
簡単に説明すると、15度で発芽する植物の種を撒いた場合、発芽するタイミングが標高が高くなるに連れて遅くなるということ。当然、収穫時期もズレる為、1つの植物の種を撒いたとしても、収穫期が長くなります。

つまり、古代メソポタミアの人達が努力して植物学を発展させて工夫したからではなく、土地として恵まれていたというだけだったという事です。
その一方で、不利な土地の方は人間が食す事が出来る種類自体が非常に少なく、その植物も、量産が難しかったりする。この有利不利は、科学や流通が全く発達していなかった古代においては決定的な差となる為、農耕が定着するかどうか、またその時期に大きな影響を与える。

これは、家畜においても同じです。馬のように背に乗って移動できる家畜や、牛の様に農耕に利用できる家畜。豚のように食べられる家畜というのは、人間の近くにいたから家畜化されたのではなく、家畜するのに都合の良い正確をしているから家畜化されています。
例えば、馬と同じような姿形をしているシマウマは、大人になるに連れて凶暴化するという性格である為、馬のように移動手段として利用することは難しかったりするようです。

家畜化されている動物は、性格がおとなしかったり、食べる作物が人間とバッティングしないなど、人間にとって都合の良い性質を備えているものが人によって選ばれて家畜化されているわけですが…
その家畜も、先程の農作物と同じように生息域が限定されている為、全世界で同じ動物がいるというわけではない。 となると、当然ですが、家畜化し易い動物が元からたくさん分布している地域の方が有利ということになります。
人間が食べることが出来る作物が沢山有る地域で、尚且つ、人間にとって家畜化しやすい動物が沢山いる地域は、それだけ人間が生息しやすい地域といえる為、文明化しやすいというわけです。

今回紹介する下巻は、この続きからとなります。
人間にとって栄養価が高く収穫しやすい食物がたくさん採れ、家畜化しやすい動物がたくさん生息する地域というのは、生活基盤が安定してきます。
また、農業や酪農の技術が徐々に進歩していけば、一人あたりの生産力も向上していきます。そうなると、大量の人間を一つの集落で養うことが可能となります。

こうなると、文明が誕生する土台が生まれます。

では何故、人口が増えると文明が誕生するのでしょうか。それは、発明の性質に有ります。
発明と聞くと、多くの人間が、頭のいい人たちが頭を捻った上で、世紀の大発明をしてきたと思っておられると思います。
しかし実際には、そんな事はなかったんです。

今現在の研究や発明をみてもわかりますが、大半の発明は偶然の産物でしかありません。
ピンポイントで何かの道具や薬を発明しようとした結果、その研究過程で予想外のものが出来てしまい、そちらの方でお金を稼げたなんてよくある話でしょう。
その他にも、何らかの用途を目的とした道具を商品として市場を通して売り出したら、客が全く違った使用方法を思いついて、それをキッカケとして商品が大ヒットするなんて話もあります。
食品を保存するための道具として売り出したジップロックが、スマホタブレット端末を風呂場に持っていく為に利用されて売れたなんて話もありますよね。

発明というものは、ある日、偶然 生まれるものなのですが、その生まれた発明の利用方法を、発明者の多くは見いだせません。
印刷という技術が生まれたのは1400年前のようですが、それよりも数百年前に、同じような技術を使ったものが生み出され、発掘されていますが、その技術は世界に広まっていません。
車輪という概念が世界に広がる前に、とある部族の玩具に、車輪の技術が使われていたのにもかかわらず、その部族の中では、それを運搬道具としては利用しませんでした。

発明というのは、その道具の利用方法まで発明者が明確に分かっているものではありません。大抵の発明品の利用価値は、発明者が分かってなかったりします。
では、誰が発明品の利用価値を見出すのかというと、全く別の観点からその道具を観ている他人だったりします。

つまり文明が発達する重要な要素として存在している発明は、その価値を見出す他人がいないと無意味なものが多いという事。
という事は、文明が発達するためには、発明品が多くの目に晒されなくてはならない事になります。 人の目は多ければ多い程よく、10人の集落よりも100人・1000人・1億人がその発明品を見たほうがその用途を見出しやすくなります。

これで、文明が何故生まれたのかというのがつながりましたね。 つまり、文明が生まれた発達するために最も必要なのは人口ということになります。
人口が多ければ多いほど、アイデアや発明は多くの人の目を通して価値を見出されます。 そして、一つの発明品が生まれれば、それをキッカケとして、また新たな商品が生み出される。
この連鎖によって、文明は生まれて発達していくということ。

農業や酪農が安定し、安定した食料生産が可能となれば、より多くの人口を養うことができるようになる。そして、人口が増えれば増えるほど、些細な発見でも大きな意味を見出され、文明レベルがドンドン発展していくという事。
そして、食料生産が安定し、人口が増え、文明レベルが上昇すると、より多くの人口を養う為に、そして食料を確保する為に、土地が必要となります。
こうして起こるのが戦争なのですが、その戦争の勝敗を決するのが、鉄や病原菌だったりします。

ここで病原菌というのが出てきたわけですが、この病原菌は、殆どの場合は、文明が進んでいる方に味方をします。
そのメカニズムを簡単に言うと、インフルエンザの流行と同じです。 インフルエンザは、鳥の間で流行した後に豚を媒介として人間に感染します。
つまり、家畜を飼う文化が有る地域では病原菌に頻繁に晒される為、病原菌に対する免疫を勝ち取りますが、文明が低い狩猟民族は、家畜を飼う習慣が無い為に、その様な免疫が一切ない。
その結果として、最悪の場合、武力による衝突がなくとも、接触するだけで絶滅する恐れすら有るという事です。

多くの場合は、武力による衝突が有るわけですが、その際に鉄の武器を有しているかどうかで有利不利が決まり、その接触によって病原菌が狩猟民族に襲いかかる。
実際に部族同士が衝突してしまうと、その差は絶対的なものに感じてしまい、文明の差に目が行きがちですが、もともとの原因を遡ると、土地の高低差であったり食べることが出来る植物が多い、家畜化しやすい動物が多いというだけの利点でしかなかった。
偶然にも、その恵まれた土地に生まれた部族は文明が発達し、不幸にも、恵まれない土地に生まれてしまった人達は、狩猟採取生活をせざるをえなかった。

・・・と、結構ネタバレを含んで、簡単な『あらすじ』を書いてみたわけですが、こうしてみると、特定の地域で文明が進む大きな要因は、人種による優劣というよりも、生まれ落ちた環境が大きなウェイトを占めている。
そして、その地域に生まれるというのは実力ではなく運。 という事は、人種の優劣というのは、そこまで関係がないということなんですよね。。

今回は、駆け足で内容を書きつつ、簡単な感想を書いてみましたが、この『あらすじ』を読んで、イマイチ納得されてない方や、書かれている内容が理解できないという方も少なくないと思います。
まぁ、私の書き方が下手だという事もありますが、そもそもが下巻だけで400P 超えという大作なので、それを一つの記事でまとめること自体に無理があったりもします。
これを読んでもし、本の内容に興味を持たれた方は、購入して読まれる事をお勧めします。 実際のデータなどを踏まえて、一つ一つの事柄について丁寧に説明されているので、より、理解しやすいことでしょう。
おすすめです。