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だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【映画紹介】 マネーショート 前編

今回紹介する映画は、『マネー・ショート 華麗なる大逆転
公開された時に興味津々で観に行きたかったのですが、何となく機会を逃してしまっていたところ、Netflixで公開されたので、ここぞとばかりに観てみたので、感想と共に紹介をしてみようと思います。





題名にマネーとついているところから想像できる通り、経済系の話題をテーマにした映画です。
原題は『The Big Short』で、Shortは空売りという意味があります。つまり『The Big Short』は巨額の空売りという意味で、何を空売りするのかというと、サブプライムローンです。
邦題は『マネー・ショート 華麗なる大逆転』で、こちらのショートは、電気回路などがショートするという意味合のショートを使い、金融市場がショートするという表現で付けられているのでしょうか。ショートの意味が変わっているようにも感じますが、相場を張った事がない人に『ショート』なんて言葉を説明するほうが面倒くさそうですし、イメージとしてはマネーショートの方が日本人には伝わりやすそうで、良いタイトルになっていますね。

今回のこの映画の紹介なのですが、今更ですがネタバレ有りで書いていきます。
原題が巨額の空売りの『The Big Short』で、邦題が『マネー・ショート 華麗なる大逆転』。普通に考えると、巨額な空売りをして劣勢に立たされた人が華麗に大逆転する映画なんだなと想像できると思いますが、ネタバレを一切受け付けない人は、読まないように注意してくださいね。

簡単なストーリーとしては、日本にも余波がきて大きな損害を受けたリーマンショックを映画を通して解説するという、実話ベースの映画。
数年前に実際に起こったリーマンショックをテーマにし、その元凶となったサブプライムローン空売りした人達の視点から語られる物語で、一見すると難しそうなテーマを扱ったとっつきにくい映画のようにも思えますが、実際には然程知識がなくても見れる構造になっています。
というのも、この映画はそもそも金融危機が何故起こったのかを一般レベルの人にも分かりやすく説明するために作られているような映画で、リーマンショックやそれにまつわる専門用語の解説に多くの時間が割かれています。

映画の冒頭部分で、この様な名言が語られます
『やっかいなのは、何も知らないことではない。
実際は知らないのに、知っていると思い込んでいることだ。』
数年前、テレビのニュースで『リーマンショック』という言葉が頻繁に放送されましたが、おそらく殆どの人が何が起こっているのかを知ることなく、『何となく酷い金融危機が起こったんだろう』と分かった気になっていた。
いつしか、『サブプライムローン』や『リーマンショック』という言葉が独り歩きし、深く意味を知らないのに『リーマンショックの影響で…』なんてわかった気になって喋ってた人も多いと思います。
そんな人達に対する警鐘という意味合いも込めて作られている映画だと思いますので、むしろ知らない人にこそ観て欲しい映画ですね。

物語は、一人のメタル音楽好きの投資家が、不動産市場の異常性に気がつくところから始まります。
バブルが起こり、それが崩壊して金融危機が起こる際には、様々なサインが合図を送る。不動産市場と不動産関連詐欺の相関関係も、そんな合図の一つ。
これを切っ掛けに、アメリカで起こっている不動産神話に基づいた経済システムの崩壊を読んだマイケル・バリーは、マイケル・バリーは、不動産市場の空売りを思いつく。
しかし、不動産ローンの空売りなんて事は行うことが出来ない。そこで思いついた手が、CDS

CDSクレジット・デフォルト・スワップ)は、一種の保険商品。
例えば1億円の不動産があり、そのまま売れば1億円で売れるが、仮に火事になって建物が燃えてしまえば、価値は不動産価値だけになってしまう。
場合によっては、燃えた不動産の撤去費用などもかかる為、大きな損害を被ってしまう。
しかし、火災保険に入っていればどうでしょう。家事になっても燃えた資産は保険料という形で戻ってくるので、損失は限定的になる。

CDSは、これをCDOという資産に適応しようという話。
ここでまた、新たな言葉が出てきましたね。CDOとは日本語で『債務担保証券』の略。

わかりやすくする為、私が100万円をAさん・Bさん・・・って感じで、100人に対して変動金利年4%で貸したとします。
100万円を100人に貸すので、合計額は1億円になり、変動金利ではありますが、契約時は年4%の利息が手に入ります。
私は借金の回収と金利受取でもでも一定額の利益を得られますが、更に設ける方法が有ります。それは、この100人に対して1億円の貸出を担保にして、新たに年利3%程度のの証券を作ることです。
適当に格好の良い名前をつけて綺麗にラッピングし直し、『最新の金融工学を利用して生み出した、資産運用方!』って感じで宣伝して、格付け会社にAAAの格付けをつけてもらい、1%程度の販売手数料で売り出します。
格付け会社がAAAの格付けを付けるのを断ったら? その時は、『こちらの格付け会社でAAAを付けてくれないなら、ライバル会社に持ち込んで付けてもらうよ。そうなった場合は、オタクとの取引は今後一切しないけど。』って圧力をかければ大丈夫。
投資家は格付け会社が付ける評価を盲信している為、AAAで3%も貰えるのであれば簡単に飛びつきます。
これが、簡単に言えばCDO。

このCDOの価格に対して保険をかけるのがCDS
これを詳しく知る為には、オプション市場を理解したほうが良いかもしれません、オプションは権利の売買を行う金融派生商品です。
具体的には、【売る権利】と【買う権利】のそれぞれを、特定の値段で売買します。

例えば、資産価格が変動する1万円の証券が有ったとします。
この証券を1万円で【買う権利】と【売る権利】を販売するのが、スワップ市場です。
仮に資産価格1万円の状態で同じ価格の1万円で【買う権利】と【売る権利】が100円で販売されていて購入した場合、資産価格が5000円に減少したとしても、スワップの1万円で【売る権利】を行使すれば1万円で売ることが出来ます。市場で5000円で取引されている証券を100円のスワップ料金で売る事が出来るわけですから、4900円の利益になります。
逆に1万円で【売る権利】を売ってしまった側は、1万円で売らなければならない義務が発生します。では1万円で【買う権利】の方はどうなってしまうのか、市場で5000円で販売されているものを1万円で買わなければならないのかというと、そうではない。【買う権利】を購入した側は、権利を放棄することで、損失をスワップ料金の100円に抑えることが出来ます。
つまり【権利】の売買は、買った側は権利を得ることが出来ますが、権利を売った側は、相手が権利行使をした場合には取引に応じなければならない義務が発生するというわけです。
この仕組みを上手く使うと、スワップの元となる証券を時価である1万円で購入し、購入金額と同じ市場価格で売却できる『売る権利』を購入すると、オプション料金という保険料はかかりますが、元本は保証されることになります。

この仕組を応用したのが、CDSクレジット・デフォルト・スワップ)です。
クレジットは『信用』で、デフォルトが『破綻』。
CDSとは、CDOの信用が破綻して価格が下落した時に、CDSの売り手が元本の値段で買い取ってくれる。つまりは信用破綻が起こった時に利益が得ることが出来る商品の事です。
元になっているCDOと同時に購入すれば、価格下落リスクに対応できる保険商品になりますが、CDOを買わずにCDS呑みを購入する事で、実質的にCDOの空売りを行うことが出来ます。


最初の例でまとめてみましょう。私は100人に対して100万円づつ、合計で1億円を4%で貸し付けていますが、その貸出を担保にして新たに作ったAAA格付けのCDOは、別の投資家が買ってくれます。
これによって私の手元にはCDOの売上金である1億円が戻ってきて、且つ、販売手数料の100万円を手に入れている状態になります。
この1億円を元に更に私が貸出をする。そして、その貸出を元にCDOを更に作り…って感じで繰り返せば、理論上、私からお金を借りたいという人全てに貸出を行うことが出来、それをCDOとして販売する度に、販売手数料が手に入ることになります。
ちなみにCDOは証券なので、株式のように市場というものが有って売買されており、需要と供給のバランスをとるために値段が変動しています。
つまり、CDOに需要があって値段がついて安定・上昇している限り、私もそれに合わせてCDOを発行して、無限ループを繰り返せるという仕組みです。

ただこの仕組は、私が100万円の貸出をした100人が、全てお金を返してくれるという前提のシステムです。
仮に、利息支払いが滞ったり返済が行われないことになると、CDOの信用も傷つくことになり、最悪の場合は信用が破綻して証券に値がつかない状態になります。
この保険となるのが、CDSという保険商品です。
CDSはオプションの仕組みを利用し、保険料を支払うことでCDOの元本を保証するという商品ですが、CDOを持っていない状態でCDSだけ保有すると、CDOを空売りしているのと同じ状態になります。
この状態で、CDOの信用不安が起こると、CDSだけを持っている人が大儲けできるということ。

この例の、『私』を『銀行』に。『100人に100万円づつ貸した1億円』を『不動産ローン』に置き換えると、サブプライム問題が何となく見えてくると思います。

【続く】

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