だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

Amazon Go と ローソン無人レジ

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ここ最近のAmazonの行動が凄いですね。動きが早いというか先手を打っているというか。
その中でも、最近発表された『Amazon GO』という試みが、個人的には、かなりびっくりしていたりします。

Amazon Go』は、簡単にいえば無人スーパー。
利用者は、入口に入る際にIDチェックを要求され、Amazon IDをチェックされます。
客が行う手間はこれだけ。後は、店内にある商品を自分が持ってきた袋に詰めて出口から出るだけという優れもの。
レジでの精算もなく、購入したものはAmazonの購入リストに記載され、登録してあるクレジットカードから自動で引き落とされます。

では、商品のチェックはどのようにして行っているのかというと、店のアチラコチラにあるカメラやGPS機能を使い、店内では人物とAmazon IDを絶えず紐付けしておいて、その人物が棚から商品を取ったことが確認できたら、AmazonIDの買い物かごに商品が入った状態になり、そのまま店を出たら生産されるという仕組み。
『商品を一度手にとって、その後棚に戻した場合はどうなるの?』と思う方もいらっしゃるとは思いますが、その際もカメラが自動的に認識して、元の棚に返した場合は買い物かごから出る仕組みになっているようです。

この仕組がどれぐらい凄いのかというと、同時期に導入が検討された日本のコンビニ『ローソン』と比べてみればわかります。

パナソニックと共同で開発したらしい『無人レジ システム』だそうですが、このシステムは、客が店内にあるバーコードリーダーがついている専用カゴを持ち、1商品毎に自分で商品バーコードを客が読み取り、それを無人レジに自分でもって行って料金を生産するというシステム。
現代のようなネットの時代では、『1クリック多い』というだけで操作が煩雑と叩かれて使われなくなり、姿を消すサービスが非常に多いのですが、このローソンの無人レジシステムの場合は、客がやらなければならない事が非常に多い。
Amazon Goの話を聴いた後だと、何世代前のシステムなんだろうと思ってしまう程に古臭いシステムに感じます。




私は昔、株式投資にハマっていた時期があり、その時にラジオ日経等の経済ニュースを頻繁に聞いていた時期があるのですが、5年以上前に報道されていたシステムでも、もっと先を進んでいたのですけどね。
ちなみにそのシステムというのは、商品の全てにICタグを入れるという仕組み。
ICタグはバーコードリーダのように1個づつ赤外線で読み取らなければならないという事がないようで、客は商品を適当にかごに入れた後、指定の場所に置くだけで全ての精算ができるという代物でした。

このICタグは商品の精算だけでなく、在庫管理にも使えます。
商品棚にICタグの読取機を付けておくことで、どの商品がどれだけ並んでいるのかということが、いつでもどこでも確認が出来る。
自分の在庫がリアルタイムで確認できるということは、どの時間帯にどの商品が売れているのか、また、どのような傾向の商品が好まれているのかが簡単に把握できる為、発注作業が楽にもなる。というか、契約によっては自動化も可能。
これらのデータは端末さえあれば手軽に入手できて扱えるため、複数店舗を持つ会社などは、リアルタイムデータを本社に集約させることも出来るし、データを上手く使うことで地域の消費傾向を予測し、その地域のニーズに合った商品を取り揃えると行った地域ごとのローカライズも可能となります。

数年前に、IT技術生産現場に取り入れた会社(多分、靴下メーカーのタビオ)が取材されていましたが、その時は、更に進んでいました。
この会社の場合は、全国の店舗の在庫とレジ売上のリアルタイムデータを工場に集約し、商品在庫が少なくなったものを自動で生産するシステムを確立していました。
見込み生産ではなく、実際に売れて在庫が少なくなった商品を補充する形で商品を製造するこの方式は、品切れによる機会損失や見込みが外れることによる過剰在庫のリスクを減らせます。

今回あげたICタグによる精算や在庫管理技術は、数年後にこんな事が出来たら良いなという未来の話ではなく、既に開発されたり導入されているシステムです。
マスコミを使って大々的に発表するのであれば、ローソンにはこれらの既存技術を超えるシステムを発表してほしかったところですが、実際に発表されたシステムは、先程も書いた通り自分でバーコードを読み取ってレジに持っていくという、地方の大型スーパーで既に導入されているような旧式のシステム。
従来の部分と違う部分があるとすれば、半自動で袋に詰めしてくれる部分だけでしょうか。

省略される作業はバーコード読み取りの手間だけで、代わりに袋詰の時間を待たなければならない。
混雑時には結局レジに並ぶことになりそうです。

更に付け加えるなら、この方式だと万引きが手軽にできそうですよね。
今まではバーコード読み取りは店員が行う為、万引きするには商品を何処かに隠すという作業が必要だったわけですが、このシステムの場合はバーコードを読み取らせない事で、堂々とカゴに入れた状態で万引きできそうです。
この万引き防止の為に監視員を雇うと、コンビニオーナー的には経費削減につながらない、というかむしろ、人件費の増大にも繋がる可能性が有りますね。
まぁ、日本のコンビニの場合は、オーナーからどれだけ搾取するかが利益を伸ばすポイントですから、自動レジの導入によって設備投資を強制し、さらにフランチャイズオーナーから搾取出来るシステムを作りたかっただけと考えれば、旧型のシステムでも何でも良かったのかもしれませんが。
その点、Amazon Goの方は、入店の時点でIDと人物を紐付けて、商品を棚から取ったかどうかで判断する為、棚から取った商品をどこに隠そうが、料金自体は徴収できるために万引きが起こりにくい。本屋などの場合は倒産理由に万引きが挙げられる程に深刻な問題なので、これを防止できるというのはかなり凄いですね。

当然のことながらレジがない為、そもそもレジの混雑なんてことにはならない。
そして全ての決済がクレジット決済なので、店に現金が貯まらないというオマケ付き。
店に常にお金が無い状態を作れるということは、現金目的の強盗などがやってこないことを意味します。
レジの混雑がない上に万引き防止が出来、強盗まで寄せ付けない上に見た目がスマートと、かなり先進的な印象を受けますね。

また、Amazon Goの入店時にアカウントを提示させられるというシステムも、地味に凄い。
接客業にとって頭を悩ます要因の一つが、自身のことを『お客様』と名乗る、自称神様の暴君です。
事ある毎にクレームを付ける客は、利益を生まない一方で人員を割かれる為、迷惑でしかない。
しかし、入り口でIDチェックがあるという事は、迷惑な客はアカウントを剥奪してしまえば、入店拒否が出来てしまう。

これにより、クレーマー対応という売上につながらない無駄な作業が、最小限まで減らせることが出来ます。
また、店側にアカウント剥奪というカードがあるとわかれば、客側は『変なクレームや嫌がらせをすると、入店できなくなる』と思い、そもそも迷惑行為を行わなくなるでしょう。

こうして見比べてみると、同時期に発表されたニュースであるにも関わらず、まぁAmazonの進んでいる事。
そもそも人が要らずに最低限の人員で営業できるとなれば、バイトのやりくりや本部への支払いで悪戦苦闘しているフランチャイズ契約のコンビニオーナーは、Amazon Goが正式に稼働しだしてフランチャイズ募集をしだすと乗り換えるかもしれませんね。
大半のフランチャイズオーナーがAmazon Goに乗り換えて、街のあちこちにAmazon店が出来る様になると、この店舗をアマゾン倉庫としても活用できるでしょうし、本業とのシナジー効果なんかも期待できそう。
こう考えると、数年先のコンビニ業界は、Amazonに喰われている可能性も有りますね。

まぁ、Amazon帝国の住人である私としては、それで便利になるのであれば歓迎すべきことなんですが、日本のオワコン化がドンドン進んでいきそうで、少し寂しさを感じたりもしますね。