明石市長の件を機に パワハラについて考えてみた
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先日、明石市長のパワハラ発言が問題になりました。
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私としては、市長の主張の全てに同意できるものではありませんが、カッとなってしまったことに関しては、自分の立場も踏まえると共感できる部分があったので、これを気に今回は、パワハラについて考えていこうと思います。
誤解のないように最初に書いておきますが、私は市長の発言を正当化するつもりもありませんし、問題は有ると思っています。
この市長は、職員に対して犯罪行為を進めるような言動をしている為、それはどんな事情があったとしても許される発言ではなかったと思っていますので、ご了承ください。
私が視聴に対して同情をしている部分は、『中間管理職』という、置かれている境遇です。
市長が中間管理職?と思われる方も多いと思いますが、私としては、実質的には市の責任者であっても、選挙で選ばれる市長は絶えず市民の方を向いて仕事をしなければならない為、立場的には、『市民』という数多くの上司を抱えている中間管理職と同じようなものだと認識しています。
結論から書いてしまうと、この、中間管理職という立場が、パワハラを生み出しているように思えます。
パワハラをしている人間は、一方的な加害者というわけではなく、ある意味では、被害者なのではないか。
つまり、パワハラをする個人だけに原因が有るわけではな無く、社会システムに不具合の為に、パワハラた生み出されているのではないかという主張です。
社会システムの不具合
人が作り出す社会というのは、多くの場合がピラミッド高層になっていき、少ない上層部が多くの人間を支配できる作りになっています。人はピラミッドの様に階層分けされ、裾野の広い下層部分は、グループや班といった具合に分けられて、班長などが決められる。
上から降りてきた指示は、それぞれのグループの体表を通して末端まで伝えられ、組織全体が動くような仕組みになっています。
中間管理職とは、自分自身が携わっている現場と、トップをつなぐ役割の人と認識してください。
組織が大きくなればなる程、この中間管理職の数は多くなり、トップからの指令は伝言ゲームの様に数多くの人間を通して伝えられることになります。
この中間管理職ですが、何が辛いのかというと、上から現場の責任は押し付けられるが、自分には裁量が与えられていない事だったりします。
つまり、自分が管理するグループに、誰の目から見ても明らかにやる気がなく、仕事をサボることしか考えていないような人間が配属されたとしても、その人間を自分の権限では解雇することが出来ないんです。
組織が大きくなればなるほど、その権限を持つような上司に相談しようにも、何人もの上司に話を通さなければならなかったり、仮に、権限を持つ人間に辿り着けたとしても、『そのような人材を使える人間にするのが、君の仕事じゃないか。』と言われて終了ということも有る。
上から成果を出すように圧力がかけられている状態で、全くやる気がない人間が目につくと、思わずカッとなってしまうのは、人間としては仕方のない事のようにも思えてしまいます。
全くやる気がない人間
パワハラの議論がされるときというのは、大抵の場合が、一生懸命やってる人間に対して上司が、職場で上の立場だということを利用して虐めるといったケースが紹介されます。上司や経営者がサイコパスで、部下を虐めたり、長い拘束時間を課す事で優越感に浸ったり、ストレス発散の為に怒鳴り散らしたりするケースのことですが、これらのケースでパワハラ加害者やその行為の正当化をするつもりはありませんし、同情する余地もないと思っています。
しかし、この様な分かりやすいパワハラは、全体のどれ位の割合を占めているのでしょうか。 そうでないケースは無いのでしょうか。
これは私事になるのですが、私も中間管理職の様な立ち位置だったりします。
私の職場は人数そのものが少ないので、私が指示を出す人間は1人だけなのですが、この人物。 仕事に対してのやる気がまったくない。
仕事の時間中、ずっと考えていることは『いかにしてサボるか。』ということで、労働時間中、サボればサボるだけ、自分が得をすると思いこんでいる。
頭の中は常に、怒られないギリギリラインでサボるには、どの様に振る舞えばよいのかといった事を考えている為か、指示したことも上の空だし、仕事のやり方を教えても全く覚えませんし、仮に覚えても3日後には綺麗サッパリ忘れます。
こういったことを書くと、『何故、他人の考えていることが分かるの?超能力者なの?』『その人はその人なりに一生懸命やってるはずだよ。』といった反論をしたい気持ちになる方もいらっしゃると思います。
しかし、私はこの人物、仮にAさんとしましょう。Aさんと昨日今日、仕事を共にしているわけではないのです。 もう20年近く一緒にいて、そばで仕事のやり方を見ているので、行動で分かるのです。
これだけでは抽象的なので、具体的な例を書いてみましょう。
その人物は、20年仕事をしていますが、20年間仕事のやり方を教えたけれども、1つの仕事しか覚えることが出来ませんでした。
まぁ、これはこれで良いでしょう 1つの仕事でも真面目にしてくれるのであれば、こちらとしては助かります。
その仕事とは、昔は内職に出していた簡単な製造の仕事で、一人で完結させることが出来る仕事です。
この仕事を、私も同じ作業部屋で一緒に行った場合は、Aさんは1時間で100個の商品を完成させます。
しかし、私が離れた場所にある倉庫整理などの仕事をする為に、作業部屋を3時間ほど離れ、Aさんが部屋で一人で仕事を行う状態になると、3時間かかって100個しか完成することが出来ません。
部屋に誰もおらず、注意されないという状況下では、作業効率が3分の1になるんです。
私としては、私が同じ空間に居ても居なくても、同じ効率で作業をして欲しいと思っていたところ、ある日、就業時間の3時間前に、私だけが作業部屋以外での仕事が指示されました。
作業部屋にはAさん一人なので、またサボられるわけですが、作業部屋には300個の商品が完成できる材料があった為、私はAさんに同じスピードで作業をしてほしいという思いを込めて、『その材料を全て完成させられたら、今日は帰って良いです。』といって、作業部屋をさりました。
私が一緒に作業している時のAさんの作業スピードは、1時間で100個の完成なので、就業時間終了まで残すところ3時間でのこの指示は、実質、就業時間が来たら帰って良いという指示と同じです。
その言葉を伝え、私は倉庫の方で別の作業をしていたところ、1時間もしない内にAさんが倉庫の方にやってきて、『作業終わったので帰りますね。』といって去っていきました。
半信半疑で作業場に戻ってみると、そこには300個の完成された製品が置かれていました。 たった1時間の出来事です。
つまりAさんは、本気を出せば1時間で300個完成させる能力が有りながら、就業時間まで帰れないと分かっている時には、1時間で100個のペースに落とし、誰にも注意されない1人の環境だと、更に作業スピードを3分の1に落としていたわけです。
当然ですが、翌日、『もっと、速いペースで仕事できるよね?』と訪ねるも、Aさんは『すみません』としか言いません。ペースは当然、1時間で100個ペースです。 私が居ない時には3分の1にペースが落ちます。
厳密にいうと、『もっと早く出来るよね?』と私が行った瞬間、15秒程だけ作業スピードが3倍ぐらいになり、その後15秒かけてゆっくりになり、私が急かしてから30秒も経つと、ペースは元に戻ります。
他の例も出すと…
Aさんは、基本的に上の空なので、仕事上の注意や作業のやり方を教えても覚えません。 仮に覚えても、3日も経つと同じ失敗を繰り返します。
この様な状態でも、注意しないと失敗を繰り返され、商品が駄目になってしまう為、間違ったことをされると注意せざるを得ません。
その時のやり取りが、この様な感じです。
私『この作業で、◯◯をやったら駄目だって言いましたよね。』
A『すみません。』
私『これ、3日前にも言ったけれども、覚えてますか?』
A『すみません。』
私『すみませんだけでは、こちらは貴方が分かったのか分かってないのかが判らないので、他の言葉で答えてもらって良いですか?』
A『すみません。』
私『だから、すみませんじゃ分からないんですけれども…』
A『すみません。』
私『この作業の時、何をしたら駄目なんでしたっけ?』
A『すみません。』
私『今までの話、聞いてましたか?』
A『すみません。』
私『聞いていたか、聞いていなかったのかの、どちらかで答えてもらって良いですか?』
A『すみません。』
私『もしかして、からかってます?』
A『すみません。』
・・・
就業時間が迫っていた為、私はAさんに帰るようにいうと、Aさんは急に笑顔になり、鼻歌を歌いながら帰り支度をして帰っていきました。
そして翌日、全く同じ失敗をしました。 私が、『昨日、帰る前にした注意を覚えてますか?』といった質問に対しても、当然、『すみません。』しか言いません。
このAさんは、Aさんなりにサボること無く、一生懸命頑張っているのでしょうか? やる気があるのでしょうか?
私も人間なので、この様な態度を何年にも渡って取られ続けると、気分は良くありません。 しかし、この態度を受けて怒ってしまうとパワハラ認定されてしまいます。
権限のない中間管理職
このようなことが長年続くと、私も精神を病んできますので、解雇できる権限がある人間に『あの人は、辞めてもらった方が良いのではないか。』と進言したことがあります。しかし、権限の持つ人間は、『そういう人間に、やる気を出させるのがお前の仕事だろ。』と言った感じの事を言ってきます。
私の職場の場合は、私自身にノルマを課したり、過剰な成果を求めたりはしない為、私はAさんが存在しないものとして、出来るだけ関わらずに仕事をすることで、精神を安定させる事が出来ましたが…
これが、もっと大きな組織で、中間管理職に成果を求めるような職場だったらどうでしょう。
例えば、10人のグループをまとめる立場に居て、その内の9人は積極的に仕事をこなして真面目にしているけれども、1人がAさんのような人だった場合。しかも、作業が先程のような1人で完結する仕事ではなく、複数人の連携が必要な仕事だった場合。
グループ内の9人の人達からは、『Aさんがサボってるので、作業が遅れてます。なんとかしてください!』と、まとめ役である人物は迫られるでしょう。
成果を求める組織の場合、上司からは『なんで成果が出てないの? ちゃんと10人で連携してる?』と圧力をかけられるでしょう。
この様な状態で、『Aさんが仕事をしなくて… 解雇して、代わりの人を用意してもらって良いですか?』と進言しても、『Aさんの やる気を出させるのも君の仕事だろ!』と言われたとしたら?
これを読んでいる貴方は、普通の精神状態でいられるでしょうか。
ここでカッとなってAさんを怒ってしまうと、貴方はパワハラ野郎になってしまいます。
現状のこの様なシステムを変えず、ただ闇雲に『パワハラは駄目だ!』というのは、中間管理職に全責任を押し付けて、追い込むことにしかならないと思うんです。
では、システムを変える場合、どの様に変えれば良いのでしょうか。
1つは、現場に権限を与えることでしょう。 この場合で言えば、10人のグループをまとめているリーダーに、人を解雇したり他の部署の人間と配置転換出来るような権限を与えるだけで、だいぶ変わるように思えます。
リーダーに権限を集中させるのが駄目であれば、グループ10人の多数決。もしくは、何割以上の賛成が得られればグループから解雇できるといった感じで、現場にある程度の権限を移譲することで、中間管理職のストレスも軽減できるでしょう。
他の方法としては、タスク一つ一つに値段をつけてしまうという案もあります。
先程の私の職場の例でいえば、月給や日給という時間給ではなく、単純作業で製品を作るという仕事を、製品1個あたりの完成につき5円の報酬が得られますとしてしまうことです。
この場合は、仮にAさんの様に誰も見ていないところでサボった場合は、Aさんの給料が減るだけです。
Aさんが1時間で100個製造をした場合は時給が500円になるわけですが、Aさんがやる気を出して1時間で300個製造すると、時給は1500円に上昇します。 逆にサボれば、3時間で500円しか貰えません。
このシステムを導入すると、作業員がサボろうがサボるまいが、製品における人件費が変動しない為、『サボるな!』と注意する必要もありません。 製造が間に合わなくなれば、追加で人を補充すれば良いだけです。
こういったシステムの変更無しに、現状でただ『部下にに圧力をかけるな!』というのは、中間管理職の人全員に、『感情を捨てろ!』だとか『悟りを開け!』と言っているようなもので、かなり無茶だと思ってしまいます。