だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【本の紹介】 楽観主義者の未来予測

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今回紹介する本は、【楽観主義者の未来予測 上】です。




この本の内容を一言で表すなら、タイトル通り、楽観主義者の視点で語られる、未来予測の話です。

世の中に出回っている情報は、どちらかと言うと暗いものが多い。
それらのニュースに接していく内に、ドンドン悲観的な考えになり、建設的な考えを出そうという発想にならない。
敢えて楽観主義的な発送をする事で、世界が抱える問題に取り組んでいこうという本です。


本の出だしは、何故世の中には悲観的な話ばかりが飛び交っているのかということが、心理学的なアプローチで書かれています。
短くまとめると、聴き手が悲観的な話を希望しているので、提供者が暗くて否定的なニュースばかりを取り上げるというもの

よくよく考えると、私達が日々目にするニュースは、大半がネガティブなニュースです。
殺人事件・強盗・詐欺等が起こるとトップニュースになり、酷いものになると一週間程、話題を独占することも珍しく有りません。
何故この様なニュースが多くなるかというと、提供者である放送局がマイナスのバイアスとかける為に意図的に行っているというより、その方が視聴者に好まれるから。
怖い・悲しいニュースを扱うと、それだけで視聴率を稼げるから放送している。

では何故、人は悲しく怖いニュースを追い求めるのかというと、自分の身を守る為。
太古の昔から、人は知ることで事前に危機を回避してきたし、情報を多く持つ人が生き延びてきた。
そのような生活は人の心理に刻み込まれている為、ネガティブなニュースを欲する。

しかしネガティブなニュースばかりを取り入れると、その情報が基本となって自身にバイアスがかかる。
そうすると、真実も見えなくなるし、正しい思考もできなくなってしまう。
その状態で行われた未来予測は、悪すぎる未来を想像させるが、実際の世の中ではそのような未来予測は全て外れている。

序盤では、人が何故、悲観的な話が好きなのか、そして行き過ぎた悲観主義がなぜ悪いのかといった話を丁寧に解りやすく説明してくれています。


序盤で世界の抱える問題や悲観主義の話をした後、中盤では明るい未来予測の話に。
悲観的な未来の話は無く、物事を、未来を楽観主義的に捉えられるようなSFチックな話になります。
コンピューターの指数関数的な計算速度の伸び率から、ITは今後どのように進化するのか等、明るい可能性の話が立て続けに続き、『長生きして未来を観てみたい!』と思える様なマインドにしてくれます。

聞きなれない言葉である指数関数的とは、現在の技術に足していく増え方ではなく、現在の技術に積算していく計算方法。
例えば、新聞紙を50枚重ねても1センチ程度にしかなりません。
しかし、50回折り曲げたらどうなるのか。1回折ると2倍の厚さになり、2回折ると4倍になる。
50回折った頃にはその厚さ太陽から地球の距離に達してしまいます。

コンピューターの性能は18ヶ月ごとに2倍になる為、指数関数的なスピードで発達していく。
この技術で1つの問題を解決すれば、別の問題を解決する切っ掛けとなり、ドミノ倒し的に様々な問題が解決していくそうです。


そして後半は、身近で具体的な問題解決の話となります。
その中の幾つかを取り上げると、【水】【食料】【エネルギー】の問題解決。

直近の問題として、日本では少子化で人口減が問題になっていますが、世界全体で見ると人口は限界状態に来ています。
今現在でも10億人の人間が飢餓の状態にあり、食料が足りていない状態。
その方法をいかにして解決するのかというのが、未来のSFチックな技術ではなく、現在既にある技術で解決方向に向かいつつあるという事が、具体例とともに書かれています。

ここでも先ほど書いた、【指数関数的な発達】と【一つの問題が別の問題の解決につながる】という話が関係してきます。
水・食料・エネルギーに共通している部分の一つとして、無駄という問題があります。
先程も書きましたが、地球では10億人が飢餓で苦しんでいますが、地球で生産された食料の半数は捨てられています。
そしてその食料を生産する為に、地球全体の7割の飲める水が使われている。
残り3割を飲料水やトイレ等の生活用水として使用するわけですが、飲水として飲んだ水も、体を通って排泄されてしまう。

この本には、この無駄を全て取り除く事で、今現在の地球の資源を有効活用できる可能性が書かれています。
農業というのは、大地に水を撒いて植物を育成させるため、非常に水を使う。
しかし、大地で植物を育てない水耕栽培の場合はどうかというと、大地に水を撒いていた時と比べて70%減が可能となる。
では更に発展させ、空中栽培ではどうか。
水分の中に栄養素を混ぜ込んだ物をつくり、それを霧状にして空中に吊るした植物に噴きかける栽培法ですが、水耕栽培と比べると水の使用量が更に70%減となる。
この結果、従来の農法と比べると水の使用量が1割以下となる。

また、この空中栽培は、別の問題も解決する。
空中栽培では大規模な土地は必要なく、屋内で生産が可能となる。
その為、30階建てのビルを都会の真ん中に建て、そのビル自体を害虫や病原菌が入らない様な仕組みにすれば、農薬などが必要ない状態で育てられ、作物の運搬コストも削減できる。
LED照明を効率的に使えば、天候に左右されずに作物を作ることも可能となる。

ではそのエネルギーは何処で賄うのかといえば、トイレ。
人の糞尿にはエネルギーと水分が多分に含まれている為、それらからエネルギーを取り出す事で、無駄が削減できる上に下水処理などの別の無駄まで削減できる。
またこのトイレは、生ごみからも同様にエネルギーと水分が取り出せる為、ゴミ問題の解決にもなる。
これらで得たエネルギーと水を使って都会のビルで作物を生産すれば、本当の意味で地産地消が可能となり、無駄が大幅に削減できる。

余った今までの広大な農地は、森林化させることで地球環境の保全にも繋がる。
しかも一番おどろくべきことは、これらの技術はこれから開発されるものではなく、既存の技術であるということ。
後はコストの問題だが、技術は指数関数的に発達する為、本当にやる気を出せば時間の問題の様です。


本のタイトルを見ても分かる通り、意図的に楽観的に書いている部分もありますが、読むことで先の未来に希望が持てる内容となっています。
今回紹介したのは、書籍の表面的な部分だけで、実際にはもっと一つ一つの事について詳細に書いてあります。
興味を持たれた方は、読んでみては如何でしょうか。