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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

食品ロスの解決策を考えてみた

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ここ最近(2016年1月)、CoCo壱番屋が廃棄した食品が産廃業者の手によって流用されてしまったというニュースが、連日、放送されていますね。
そして、この問題と同じように話題にされるのが、食品ロスの問題です。

今回の事件に限っていえば、異物混入の恐れのある食品を転売していたわけで、はっきりと業者が悪いと分かります。
しかし全体を少し変えて、『賞味期限が間近に迫っているけど、期限切れではない商品を転売した場合』の事を考えると、若干事情が変わってきます。
この辺りのことを踏まえて、食品ロスの問題も同時に取り扱っているのでしょう。

しかし冷静に考えると、市場経済を受け入れてしまった時点で、食品ロスは出るものなんですよね。
市場経済を受け入れている限り、この問題は解決しないともいえます。

例えば、食品ロスを解消する為には何が考えられるでしょうか。
一番の解決方法は、消費者が商品を選ぶ際に、古いものを選んで購入することです。
こうすることで売れ残りは激減し、食品ロスの問題は簡単に解決します。

しかし市場経済下では、消費者は定められたお金を出せば、どの商品を選ぶのも自由です。
古いものと新しい物が同じ値段で販売されているのであれば、好き好んで古いものを選ぶ人間は少数派でしょう。

次に考えられるのが、古いものと新しいものに価格差を設けることです。
新しい物は高く、古いものを安くした場合、市場原理的には古いものから売れていきそうです。
しかし実際には、この手法も上手く行きません。

例えば皆さんが夕方のスーパーに行った時に、弁当売場の前で買わず、たむろしている人を見かけたことはないでしょうか。
あの人達は何故、買わずに周辺をウロウロしているのかというと、夕方になって惣菜や弁当が割引されるのを待っているんです。
4時に半額シールが貼られることがわかっていれば、3時半に買うよりも4時に買うほうが価格的に良いですよね。
30分程度の差であれば、鮮度的にもほぼ変化はないですし、むしろ定価で買うほうが情弱といえなくも有りません。

仮に、製造日から時間が経った物を、全て時間比例で段階的に値下げした場合、全ての商品で『値段が下がるまで待つ』という現象が起こります。
新しく作ったものは古い状態になるまで放置され、価格が下がった所で買われるという現象が起こる為、結果として製造者や販売者の利益が下がるだけ。
全ての人が安くなるまで待つ事はないでしょうが、全体の何割かが値下げまで買わないというだけでも、製造者や販売者にとっては大打撃です。
こんなシステムは、到底、市場経済では採用することが出来ないんです。

市場経済の下では価格維持の為、売れ残ったら捨てるということが徹底されています。
よくワイドショーなどで、賞味期限切れが迫った商品を問屋から買い付け、安値で販売されているスーパーなどが映しだされますが、あのような事は一部の店舗で行うから上手く機能するだけであって、全ての店舗が導入すれば成り立ちません。

次に考えられるのが、店舗側が売れる分だけを仕入れれば良いという提案。
確かに、店側が仕入れたものが売れ残ること無く、全て売り切ることが出来れば、食品ロスはかなり減らせそうですね。
これを実現する為には、店側がその日の販売数を事前に把握している必要がありますが、それはかなり難しい。

もっと簡単な方法として、販売予想数よりも少ない数を入荷し、売り切れたら店を閉めるという方法もあります。
この方法は、昔から営業している一部の個人商店の八百屋や魚屋などが採用していますよね。
しかしこれも、一部の店舗が行っているだけだと問題は有りませんが、全ての店舗で行うとなると、問題が発生します。

というのも、店が開店中に訪れることが出来る客層が限定されてしまうからです。

これは消費者側からみれば、共働きなどで家族全員が働いている場合は、食品を購入することが出来ない可能性を考えなければなりません。
販売者側から見た場合は、『もう少し商品を仕入れていれば販売数を伸ばすことが出来た可能性』いわゆる、機会損失の問題が出てきます。

どちらにしても、市場経済の下では合理的ではないので、採用されていません。

つまり、実際に消費が行われている現場レベルでは、どうしようもないのが食品ロスの問題です。
このレベルでの解決をしようと思えば、販売者は機会損失を、消費者は欲しいものが買えないリスクを受け入れなければなりません。

では、どうすれば改善できるのか。
これは、食品業界の構造そのものを変える必要があるのでしょう。

最近はテレビのニュースでも頻繁に取り上げられている為、耳にした方も多いと思いますが、食品には3分の1ルールというものが存在するようです。
食料品は、基本的には受注生産ではなく見込み生産で作られます。

見込み生産とは、『たぶんこれぐらいは売れるだろう』と予想を立てて商品を製造するわけです。
作ったものは直ぐに出荷されずに工場内で待機し、、見込み通り売れなければ廃棄することになります。
その廃棄の目安が、消費期限の3分の1が過ぎた日というわけです。
6ヶ月の期限が定められている場合は、2ヶ月過ぎても工場内に残っている場合は廃棄。
出荷されたとしても、期限が残り3分の1になれば、返品か廃棄になるようです。

簡単にいえば、『どれぐらい売れるかわからないから、多めに作っておいて残ったら捨てる』という戦略をとっているわけです。
先程から書いていますが、この戦略は市場経済の下では仕方のない事です。
この戦略を根本的に変えてしまうと、結構不便な世の中になってしまいます。

ではどうするのかというと、『たぶん、これぐらいは売れるだろう』という予測の精度を上げるしか有りません。
具体的には、全商品にICタグを貼り付け、全ての販売店の商品棚とレジのスキャナーにICタグの読取機をつけるんです。
これにより、製造工場では自社の製品が何時に何個売れたのかという事が、リアルタイムで分かります。

そもそも予測が外れるのは、前年同月比等の大雑把なデータを元に当てずっぽうで製造するからというところが大きい。
情報量をもっと増やし、一昨日や昨日、そして今日の5分前にどれぐらい売れているのかということが分かれば、明日の生産数をどれ位にすれば良いのかがより具体的に分かります。

こんな事を書くと、『そんな未来が来ると良いね』とSF的な解釈しかされない方も居らっしゃるかもしれません。
しかし今回書いたことは、技術的には今の技術で可能なこと。
現実に、靴下メーカーの【タビオ】は、リアルタイムで販売情報を可視化し、1枚単位で靴下を作って補充するというシステムを構築しています。
https://www.tecnos.co.jp/results/tabio.html

ICタグも、一部のスーパーでは実験的に導入されています。
また、アパレル業家の一部では、在庫管理としてICタグを使っていて、一定の成果を出しています。
具体的には、棚卸し作業がボタン一つで済む事で、効率化が可能になっています。

消費期限がある全ての業者が、リアルタイムでの販売・在庫管理を導入すれば、今の利便性を損なうこと無く、何割かの食品ロスを無くせるのではないでしょうか。
ただ、この技術って既に何年も前に確立しているのに、一向に普及する気配がないんですよね。。
業界的には、この様なシステム改革をするよりも食品を捨てた方が、より、コストが削減できるということなんでしょうかね。