だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

男女格差と日本社会

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いつものようにTwitterを開いてみると、トレンドのところに『日本の男女格差』なんてものが浮上していた。
何かニュースでもあったのかと思って調べてみると、世界経済フォーラム(WEF)が出した報告書で、日本の順位が世界144カ国中111位になったと発表したからだそうです。
G7では最下位で、世界全体で見ても下の方という事で、ニナが思うところをツイートした結果が、トレンド入りしたというところでしょうか。

この順位の基準ですが、報道によると「経済活動への参加と機会」「治的エンパワーメント」「教育」「健康と生存率」の4分野を軸に14項目で男女の格差を指数化して計算しているようです。
Wikipediaから抜粋

【経済活動の参加と機会】
・労働力の男女比
・類似の労働における賃金の男女格差
・推定勤労所得の男女比
・管理的職業従事者の男女比
・専門・技術職の男女比

【教育】
識字率の男女比
初等教育就学率の男女比
中等教育就学率の男女比
・高等教育就学率の男女比

【政治的エンパワーメント】
・国会議員の男女比
・閣僚の男女比
国家元首の在任年数の男女比(直近50年)

【健康と生存】
・出生時の男女比
・平均寿命の男女比
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%94%B7%E5%A5%B3%E6%A0%BC%E5%B7%AE%E6%8C%87%E6%95%B0

この報道を受けて、Twitter利用者の中には、レディースデイや女性専用車両などを挙げて、『女性の方が偉い、女尊男卑になってるのに、まだ権利を?』なんて書き込みもあったりしますが…
この4分野14項目を観ると、そういう話ではないことがよくわかりますね。
そして日本が何故、ランキングでしたの方かということも分かってきます。
細かい採点がどのようになっていたかは分かりませんが、『健康と生存』『教育』の分野では、日本では男女の差は殆ど見られないと思います。
問題は、『経済活動の参加と機会』と『政治的エンパワーメント』が他国と比べて著しく低いことでしょう。

日本は、何でこんな事になっているのか。

これは、少し考えれば分かることですよね。
少し前のことですが、電通の女子社員が残業100時間を苦に自殺したというニュースが有りました。
この話を受けて、どこかの大学の教授がこんなことを言いました。

「残業100時間超で自殺は情けない」

多くの人が問題視した発現ですが、少なくない方が、この教授の発言を擁護し始めました。
『この教授の言うとおり! 俺なんて残業150時間超えているのが慢性化してるけど、何とかやってるし。』
『確かに100時間で死ぬのは根性がない。繁忙期は200時間ぐらい残業して普通。』

本人たちは、自分の経験談を元に不幸自慢をしているわけですが、常識的に考えて、これらの発言は異常です。
典型的な奴隷の鎖自慢といえるでしょう。
奴隷の鎖自慢を簡単に説明すると、奴隷という過酷な環境下に長い間置かれると、それが日常化してしまい、その奴隷的立場の中でも優劣を決めようと競い合ってしまう。
しかし奴隷なので、財産が有るわけでもなく比べるべき対象もまりません。そんな状態で人は、自分の鎖や足枷の重さを自慢するようになる。

『俺の鎖は、お前らと比べてこんなにも重いのに、普通に生活できてるんだぜ!』

しかし、奴隷の立場にとらわれていない第三者の目から見れば、滑稽でしかありませんよね。
今、日本で起こっているのは、これと同じ状態というわけです。

こんな労働環境の場合、どんなことが予測されるでしょうか。
慢性的に人が足りずに長時間労働を強いられる職場では、当然、子供を生むなんて選択肢を選ぶのは難しいでしょう。
仮に決断したとしても、『貴方の空けた穴は、どうやって埋めるの?』なんてプレッシャーをかけられて終わりです。
また女性の場合、身体的な問題から、月に一度は体調不良になったりします。
その一方で男性の場合は、安定的に時間を供給できるわけですから、経営者や人事担当者からしてみると、男性を採用する率は高くなるでしょう。
また、女性が採用されたとしても、身体的な問題から、男性よりも働く時間が少なくなってしまったり、出産によって予期せぬ長期休暇を取らなければならないケースも出てきます。
こうなると、長期的なプロジェクトの責任者を任せるなんてこともし辛くなってしまう。
結果として、男性の方が実績を積める機会が多くなってしまう為、女性の進出が遅れてしまう。

この一連の動きの中での問題点は、女性に仕事を休まなくてはならない身体的特徴があるということではありません。
解決しなければならない問題は、休めない・長時間拘束という異常な労働環境です。

仮に、『一日の労働時間が5時間で残業すると罰金。自分の休みは月に8日間好きなときに取れる。子供が生まれた場合は、男性側も育休を取らなければならない。大きなプロジェクトの場合は責任を分担し、誰が休んでも、外れても問題ないような体制を取る』という会社があったとしましょう。
この様な会社の労働環境では、個人としての能力差はあったとしても、男女の差というものはほぼ無くなるでしょう。

しかし実際の社会では、これと逆の事が行われています。
資本家は、作業軽減の為の投資や改善を行わず、全ての問題を社員の仕事を増やす事でなんとかしようとする。
そこで浮いた投資すべき金は、内部留保役員報酬に回されるという搾取の構造。
政治の方では、特別の技能や資格者だけに認められていた派遣業を単純労働にまで広げ、社員から派遣労働者へと、労働者をより不安定な立場に追いやり、派遣法を実行した担当大臣の竹中平蔵は、政治家を辞めてから派遣管理会社パソナの会長になって、派遣労働者から搾取しまくるというありさま。
今では、夫婦共働きでも生活が苦しいワープア層が溢れかえっている社会になっています。
そんな派遣のワープア層を見て、正社員は優位に立っているように錯覚してはいるが、実際には正社員も残業100時間を行わないと仕事がこなせない状況に追いやられている。
しかしその異常性に気が付かず、残業時間を自慢し合うという奴隷の鎖自慢で慰め合う。

日本の労働環境はドンドンと悪くなっているわけですが、そんな状態で今の政権がどんなことをしようとしているのかというと…
『一億総活躍社会! 年金などの社会保障は当てにせず、老人になっても身を粉にして働きましょう!
女性も専業主婦なんて甘いことを言ってないで、フルタイムで働きなさい!その為の助け舟として、配偶者控除を廃止してあげるからね!
医療費や介護費用も、国で負担するのは額が大きすぎるから、これからは自力でなんとかしてね!』

これを聞いて、意識高い系の人達が『そうだそうだ!』と応援しているのが今の日本というわけです。
この問題は、単純に男女の格差という問題ではなく、社会保障や労働環境、そしてもっと根本的な、人として幸せに生きるとはどういうことなのかを考え直さないと駄目だと思うんですが…
マスコミの報道や世の中の意見を聞く限り、順位的に最下位になったとしても、目は覚めないんでしょうね。