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【Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿】第135回【アルキビアデス】政治家に必要な知識 前編

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回のリンク

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前回の振り返り


今回も、対話篇『アルキビアデス』について話していきます。簡単に前回の流れを振り返ると…
アルキビアデスは、金・人脈・家柄・美貌と、皆が羨むあらゆるものを持った状態で生まれてきましたが、持って生まれた強欲な性格のせいで、それだけでは満足できず、国を治める統治者になろうと政治家を目指すことにしました。
ただ政治家を目指すとはいっても、当時のギリシャはスパルタやアテナイといったそれぞれの都市国家が独立して国家運営を行っていて、統治システムもそれぞれの都市国家ごとに違っていました。

このそれぞれの都市国家はポリスと呼ばれていました。これは、大都市を表すメトロポリスの語源にもなっているようです。このポリスの統治システムは繰り返しになりますが、それぞれのポリスごとに決められています。
これは、同じギリシャ内であったとしても、ポリスによっては王様が独裁的に統治していることもあれば、現在の民主主義に近い統治システムもあったということです。
ギリシャ内がこのようなシステムであったため、いくら能力があったとしても、生まれる国によってはシステム的に政治家に成りたくても成れない場合もありました。

この為アルキビアデスは、市民でも能力があれば政治的な影響力を持てる、民主主義誕生の地であるアテナイにやってきて、市民権を得ようとします。
アルキビアデスとしては、単なるいちポリスの代表ではなく、もっと広大な土地を支配したいという野望を持ってはいたようですが…
当時のギリシャはポリス間での戦争も結構あったようなので、どこかの国で統治者に成りさえすれば、そこから他のポリスを制圧してギリシャのトップになることも可能ではありました。

ギリシャ全土を統治して、その後遠征をして他国を次々に制圧したマケドニアアレクサンドロス大王などが、その具体例と言えるでしょう。
アルキビアデスに彼ほどの力量があるかどうかは置いておいて、彼もアレクサンドロス大王と同じような野心を抱いていた人物だということです。
この様にアルキビアデスは大きな野心を抱く青年として育つわけですが、そういう状態になってはじめて、ソクラテスは神からアルキビアデスと話をすることを許されます。

ソクラテスとアルキビアデス


ソクラテスとアルキビアデスは、随分と前から知り合いではありましたが、ソクラテスは神からアルキビアデスとの会話を止められていたようです。
しかしアルキビアデスが大きな野望を持って実行しようというタイミングで、神…というかソクラテスにだけ聞こえる声がアルキビアデスと話すことを許したため、ソクラテスはアルキビアデスの人生の手助けをするために対話を持ちかけます。
この手助けですが、あくまでもアルキビアデスの人生の手助けであって、彼が世界を征服するための手助けを行うわけではありません。

これは、国の代表になって他のポリスを制圧し、戦線をペルシャやヨーロッパなど他に伸ばして大帝国を築き上げる能力がアルキビアデスに無いのであれば、アルキビアデスのために反対するということです。

街頭演説


さて、アルキビアデスは市民権を取ろうとアテナイにやってきたわけですから、地盤やアテナイでの知名度があるわけではありません。
そのために、彼は街頭演説などで市民に対して自分が如何に優れているのかについて語り、市民を説得しなければなりません。
では何を持って市民を説得するのかといえば、自分には他の者にはないような優れたものがあると言って説得するしかありません。

優れたものというのは、この場合は技術か知識と言いかえることが出来るでしょう。 顔が良いだけで良い統治者になれるわけではありませんし、持って生まれた優れた肉体があれば良い政治が行えるわけでもないでしょう。
上手く政治運営を行うのであれば、知識や技術が必要となるので、アルキビアデスはその点を市民に対してアピールする必要があります。

アルキビアデスが持つ知識


この知識と技術、ひとまとめにして以降は知識としますが、これを身につけるための段階としては、まず、その知識を身に着けていない状態があり、その状態で知識を持つ人に教えてもらうことで、知識を知っている状態に移行します。
もう一つ知識を手に入れる方法としては、自分で考え出すという方法です。 人はゼロから知識を生み出すことは難しいですが、既に学んで保有している知識AとBを組み合わせて、知識Cを作り出すことは出来ます。
いま人類が持っている知識も、人類誕生と同時に、この世の全ての知識を収めた書物が生まれ、人類はそれを読むことで知識を得たというわけではないため、今ある知識はすべて、誰かが考え出した知識であるはずです。

つまり『自分が身に着けた知識』というのは、まず知識を持っていない状態というのが存在し、その状態から『誰かから学ぶ』か『自分で考え出す』事によって、『知識を身に着けた状態』へと移行します。
では、アルキビアデスが教師から学んで見に付けた知識には、どのようなものがあるのでしょうか。 それは、『読み書き』と『楽器演奏』と『レスリング』です。
ソクラテスはアルキビアデスが子供の頃から知っていて、彼を気にかけていたためにある程度の行動は把握していましたが、アルキビアデスはこれ以外には習ってはいません。

街頭演説の内容をどうすべきか


ではアルキビアデスは、『読み書き』や『楽器の演奏』や『レスリング』の知識があると言って、自分の凄さを市民に訴えればよいのでしょうか。
アルキビアデスは当然、そんなもので自分の優位性を示そうなんて思っていないと主張します。これは当然で、現代の私達が選挙に行く際に、街頭演説で『私は笛を吹くのが上手いんです!だから1票入れてください!』と言われても、投票しませんよね。
これは『読み書き』であっても『レスリング』であっても同じでしょう。

現代の日本のように平和な状態であれば、色物議員でも当選する機会があるでしょうが、当時のギリシャのように内戦が頻繁にあった状況では特に、そんなことでは票を獲得出来ないでしょう。

もしアルキビアデスが、『読み書き』と『楽器を演奏する技術』と『レスリング』の知識を活かして仕事をしようと思うのであれば、彼が選ぶ職業は政治家ではなく、これらを教える教師になるべきです。
学校に教師として勤めるのであれば、人一倍『読み書き』が出来るのであれば国語の教師になれるでしょう。 楽器演奏を教える技術が人より秀でているのであれば、音楽教師になっても良いかもしれません。
アルキビアデスが一番得意なことがレスリングであれば、体育教師になってレスリングを教えるのもよいでしょう。

どの道を選ぶにせよ、アルキビアデスが学んできたことを市民に対してアピールするだけでは、学校の教師には成れても政治家の道を進んでいくのは難しそうです。

参考文献