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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第61回【財務・経済】費用

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目次

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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損金処理


今回は、費用や経費について考えていきたいと思います。
経費という言葉を聞くと、サラリーマンしかしていない人にとってはもしかすると『領収書を提出したらお金が戻ってくるシステム』といった捉え方をしている人もいらっしゃるかもしれません。
以前、フリーランスの方のインタビューで、取引先と飲食した際に自分が食べた分の領収書を店に求めたら、『経費で落ちるなら奢ってよ!お金戻ってくるでしょ』と言われたなんて話も聞いたことがあるのですが…

経費や費用というのは、どこかに領収書を提出したらお金がもどってくるというシステムではありません。 利益から差し引くことが出来る出費のことです。
このコンテンツではこれまでに何度も、利益とは売上から経費を差し引いたものだと言ってきました。
ちなみに費用と経費の違いですが、費用が会社の出費すべてのことを指し、経費はその中でも損金処理出来る様なものを指す、つまりは費用の1部が経費になるということです。

ここで新たに出てきた損金ですが、これは税務会計上の言葉です。
この税務会計上の言葉を使って先ほどの利益を算出する式を言い換えると、 所得=益金ー損金 となります。
そして重要なことですが、この所得には、税金がかかります。

節税するためには


この税金の存在が、会社が使った費用の領収書を集めている大きな理由となります。
先ほどの税務会計上で言い換えた所得に関する式を、もう一度、財務会計上の式に言い換えると、 利益=収益ー費用となります。
そして、利益には税金がかかります。 つまり、会社が支払う税金をできるだけ少なくしようと思う場合、収益を減らすか費用を増やすか、その両方をする必要があります。

しかし、事業をしていて売上を減らすという戦略は基本的にはありえないので、節税のための一番の方法は費用を増やすこととなります。
この費用ですが、出費であれば何でもかんでも費用として利益から差し引くことが出来るのかといえば、そんな事はありません。
例えば車を購入する場合であれば、配達用の業務用のトラックを購入する場合と、自分の趣味で購入するスポーツカー。 どちらも車に関する出費ですが、利益から差し引くことが出来る出費は配達用の業務用トラックとなります。

損金処理できるもの


この回では以降、利益から差し引くことが出来る出費のことを損金という言葉でいうことにしますと…
自分の趣味で購入するスポーツカーに関しては、業務で使用していないのであれば、いくら領収書があったとしても損金とは認められないので、この出費で持って利益を減らすことは出来ません。
これがもし仮に、重要顧客の送迎用にたまに業務でも使っているというのであれば、業務での使用割合に応じて損金に出来る場合が出てくるといった感じです。

この他には、取引先との飲食の場合なども、損金扱いできるものと出来ないものがあります。
この様な出費に関しては、接待交際費という勘定科目で費用計上するのですが、損金計上できる場合と出来ない場合があります。
これは、先ほどのようなケースによって、つまり純粋な遊びか仕事上の接待かによっても損金に出来る場合と出来ない場合があるというのもそうなのですが、会社の規模が関係してきたりもします。

具体的には大企業の場合は、接待交際費は基本的には損金として利益から差し引くことが出来ない損金不算入で、1人5000円以下の領収書に関しては損金算入が出来ます。
一方で中小零細企業ですが、年額800万円までか、年間の接待交際費の50%のどちらか多い方を損金扱いできます。
ここで、中小企業なら800万円までは飲み食い出来るんだから、普段の食事を全て経費で落とせるのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな訳はありません。

損金処理出来る飲食費用


先程も言いましたが、基本的に損金に含めることが出来るのは会社の事業に寄与する出費に関してだけです。
その為、事業となんの関係もない飲食に使ったとしても、それは経費計上できません。 当然、損金扱いできないため、利益の圧縮も出来ませんから節税対策にもなりません。
簡単な例を出すと、例えば大企業の幹部を接待したことで接待費用が800万円かかったとします。ですがその御蔭で、その幹部から仕事がもらえて売上が1億円増えて利益も2000万円増えたとします。

この場合は、800万円使って2000万円の利益を引っ張ってこれているわけですから、接待費用の出費が事業の成長に大きく寄与していると考えられます。その為、損金として認められる場合が大きいでしょう。
しかし一方で、800万円使ったのに売上が100万円しか伸びなかった場合は、この800万は無駄金となります。 何故なら、800万円も使って売上が100万しか増えていないわけですから、会社としてはこの接待は赤字になるからです。
この様な接待交際費は第三者から見れば、取引先との接待ではなく自分が遊びにいっているだけだとみなされるでしょうから、損金算入は出来ないと考えられます。

このあたりの判断は、正直言って難しいです。 というのも、後者のケースでも、何年にも渡って関係性を築いていくことで大きな取引に繋がる場合もあるからです。
その為、この辺りの判断は、基本的には専門家に相談するのが一番です。 専門家とは税理士のことです。
事業が小さすぎて税理士を雇っていないという方に関しては、自分で判断して損金計上し、税務署から捜査が入った際に税務署側と認識をすり合わせて、差額があれば支払うとかでも良いと思います。

とにかくここで言いたいことは、領収書があれば何でも損金扱いできて税金を圧縮できるわけではないということです。
基本的な考え方としては、会社の利益につながるのであれば経費扱いできるけれども、会社の利益に繋がらないのであれば経費には出来ず、会社の利益を圧縮することは出来ないということです。

用途が曖昧な場合


ここまでの説明ではわかりやすく、『経費扱いできる』『出来ない』といった二択で説明してきましたが、現実の世界ではこの様にキッパリと使用用途が別れているわけではないと思われます。

例えば個人事業主がパソコンを買う場合、業務でパソコンを使う場合ももちろんありますが、個人が自分の楽しみとしてネット閲覧のために使うという場合もあると思います。
これは先ほど例に出した車などでも同じです。 飲食店を経営している人が車を使って仕入れに行くというのは良くあると思いますが、その車は仕事に関してだけ使っているわけではないでしょう。
休みの日に業務とは関係のない方法、例えば遊びに行くために使用するなんてこともあると思います。

家賃などもそうで、個人事業主でオフィスを借りるまででもないような場合は、自宅の1室を仕事部屋にしているケースがあると思います。
飲食店などでも同じで、1階部分を店舗にして2階部分に住んでいるという場合もあるでしょう。この様なケースでは、先ほどのように『業務用』『自宅用』でハッキリと分けることが出来ません。
こういった場合はどうするのかというと、使用割合で按分します。

按分とは簡単にいえば、会社の業務に関連する使用で5割。個人の仕様で5割の場合は、使った費用の半分を経費として組み入れるという考え方です。
大雑把に例えると、200万円の車を買って業務と個人使用の半々で使用した場合は、100万円を経費として組み入れるということです。
このようにして経費を積み上げていって利益を減らしていくことで、税金を安くしていくというのが経営者の仕事の中でも重要な部分です。

経費の使い道を決めるのは経営者の仕事


『経費の計算は経理の仕事では?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、経理の仕事は基本的に、会社の経営状態を示す帳面を作ることが仕事です。
それらの帳面を見て、会社の資産の使い方、つまりは経費の使い方を決めるのは経営者の仕事です。

これはどういうことなのかといいますと、例えば好景気や新商品投入によって売上が上がって利益が大幅に増えた場合、それをそのまま申告してしまうと大幅に支払い税額が増えてしまいます。
『自分が生活できているのは国のおかげなので、税金をたくさん払いたい』と思う方は、もちろんそのまま税金を支払ってもらってよいのですが、『払う税金を少しでも安くしたい』と思うのであれば、会社の未来のために投資するというのも一つの手です。
『未来のための投資』としてお金を使えば、それは経費に組み込むことが出来ます。 経費が増えれば、先ほどの説明のように利益を圧縮することが出来るため、支払う税金を安くすることが出来ます。

実際の例で言えば、ネットショッピング大手のAmazonは、アメリカでネットの本屋として誕生し、そこから扱う品ぞろえを増やして世界展開し、最近ではクラウドサービスなどを展開して世界でもトップレベルの会社に成長してきています。
それなら、余程利益が出ているのかと思いきや、利益が出て始めたのはここ最近で、それまでは利益がほぼ出ていない状態が続いています。
これは何故なのかというと、利益を全て投資に回しているからです。

新事業立ち上げや人材育成、設備投資といった感じで会社を成長させるために利益の大半を投資に回しているため、利益が出ていないわけです。
利益が出ていないということは、当然、税金もほとんど発生しません。 『利益を出さなくて問題にならないのか』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは問題にはなりません。
経理作業では貸借対照表損益計算書を作ると言いましたが、この様な状況では確かに、損益計算書上では利益は出ていないことになりますが、貸借対照表的には会社の規模が大きくなっているため、会社は成長していることになります。

会社を成長させなければならない最大の理由は、自社に投資してくれている株主に対してリターンを支払う為ですが、会社の持つ資産が大きくなって事業規模も拡大しているため、会社の価値そのものは成長していることになります。
会社が成長していれば株主の資産である株の価格の本質的な価値も上昇している為、利益を出していなくても株主から文句を言われることはありません。

割引価格で投資する


また節税のために投資をするという行動は、投資が実質割引価格で出来るということを意味します。
簡単な例を出すと、仮に利益が1000万円出たとしましょう。 税率が20%だった場合、税金で200万円持っていかれるわけですから手元に残るのは800万円となります。
しかし、出た利益1000万円分を設備投資や人材育成といった会社のための投資として全額使った場合は、税金はゼロとなります。

勘の良い方なら気がついたと思いますが、お金を使わずに手元に残しておけば800万円しか残らないのに、経費として使えば1000万円分お金を使える事となります。
つまり会社としては、手元にお金を残しておくよりも投資としてお金を使ってしまった方が、税金分だけ得だということになります。
その為、優秀な経営者は例外なく、利益は未来の為に投資します。

よく経済の専門家が『内部留保を貯めるな』という話をしていますが、これは現金で貯めておくのではなく投資しろという話をしていたりします。
この投資ですが、注意して置かなければならない重要な点があります。 それが減価償却です。 これについては次回に考えていきます。