だぶるばいせっぷす 新館

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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第23回【経営】ネットワーク外部性と参入障壁(1)

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
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目次

参入障壁とは

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第18回で参入障壁を説明し、第19回20回ではネットワーク外部性について説明していきました。
これらの詳しい説明は過去回を聞いてもらいたいのですが、簡単に説明をすると、参入障壁とは新規参入を防ぐための防壁で、これを高くすることで新たなライバルの登場を阻止します。
市場というのは大きさに限界があり、企業は限られた市場の中で売上を伸ばすためにシェア争いを行うわけですから、争う相手は少ない方が良いでしょう。

極端な話、ライバルが少なくなり、市場に商品を提供する企業が1社になれば、製品価格も販売方法も、その1社が握れることになります。
この様に、市場の圧倒的なシェアを握ってしまうことは、企業にとっては有利に働くため、企業はその様な状態を目指そうとします。
余談になりますが、商品は市場を通して消費者の手に届きますが、企業が有利になるということは、逆に言えば消費者にとっては立場が不利な状況となります。

この様な状況を防ぐため、多くの国には独占禁止法というものがあり、その市場において供給業者が1社になることは出来ません。
逆に言えば、法律で規制しなければならない程、市場で圧倒的なシェアを握るというのは企業にとっては有利で望ましい状態と言うことです。

ネットワーク外部性とは

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その一方でネットワーク外部性とは、自分の市場に他社を引き込めば引き込むほどに、自社にとっては有利になるという概念です。
例えば、プレイステーションというゲーム機がありますが、このゲーム機のソフトをソニーしか制作していなければ、プレイステーションはここまで売れていないと思われます。
ソニーがゲーム機を作り、ゲームソフト制作部門もソニーにあるのですから、先程の理屈で言えば、ソニープレイステーションのソフト市場を開放せずに、自社のみでソフト制作する方が市場シェアを独占できて良いはずです。

しかし消費者目線で考えた場合、ソニー製のソフトしか発売されないゲーム機に魅力はないでしょう。
スクエアエニックスであったり、カプコンであったり、アトラスなどのサードパーティが参入してくれた方がハードの魅力が上がり、結果としてゲーム市場は拡大し、1社で独占していた状態よりも売上が上昇することが想像できます。

市場ごとに戦略が変わる

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この、ネットワーク外部性と先ほど紹介した参入障壁は、考え方としては正反対のようにも思えますが、実際にはそうではありません。
実際の経済を観てみると、この正反対と思われる2つの考え方は共に存在していますし、時には、1つの市場で共存している場合もあります。
では実際に、この相反すると思われる考え方は、どのようにして存在しているかを考えてみましょう。

まず考えられるのは、製品・サービスごとに、ネットワーク外部性が働く市場と参入障壁が働く市場があるということです。
これは、今回、例を上げて説明したゲーム機市場や、前に紹介したSNSなどの市場ではネットワーク外部性が働くけれども、他社を排除することによって儲けることが出来る市場も別に存在するという考え方です。
傾向としては、何も行動を起こさなくてもニーズが発生する様な市場では、参入障壁を設けて新規参入を警戒したほうが良いですが、ニーズを掘り起こさなければならない市場では、ネットワーク外部性が働きやすいです。

参入障壁が有利な市場

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例えば、鉄道や航空会社などの場合、人が移動したいというニーズは常にあるわけですから、その市場を独占できれば、利益の最大化を狙うことが出来ます。
人の移動といったものは、他社との関わり合いが無ければ成立しないものではなく、『特定の場所に疲れずに行きたい』という人がいれば、その人行動のみで完結します。
人の移動は、ビジネス関係に限らず、個人の旅行など様々なニーズは掘り起こさずとも存在するため、その市場を独占することが出来れば、儲けやすくなります。

ネットワーク外部性が働く市場

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一方でネットワーク外部性は、ニーズがそもそもないところから、それを掘り起こして、顧客を巻き込む形で発展させていきます。
例えば、昔はネットで動画を見るなんて習慣はそもそもありませんでした。 その状態から、ネットで動画を視聴するというニーズを掘り起こす為には、ネットワーク外部性が必要になってきます。
ネットでの動画視聴をしてもらおうと思えば、コンテンツを豊富に取り揃えないといけませんが、1社で制作しても出来上がるコンテンツ量はたかが知れているため、自発的に動画を作ってアップロードしてくれる人が必要になってきます。

そのために動画プラットフォーム側は、見やすい動画の作り方や再生数を伸ばす方法などを積極的に公開し、動画の再生数が上がれば製作者に利益が出るような仕組みを作り上げます。
つまり、動画コンテンツ市場に入りやすいように参入障壁を下げて、新規参入を促すことで、ニーズを掘り起こそうとします。
このようにして、制作される動画が増えれば増えるほど、視聴者が視聴することが出来る動画の選択肢は増えますし、番組数が増えてニッチな話題を扱う番組が充実すれば、ユーザーのニーズを満たしやすくなります。

このようにして便利になったプラットフォームでは視聴者が増加するため、その大勢の視聴者に向かって動画を提供しようという人たちも増えることになり、動画市場というのは一気に拡大していきます。
この拡大幅は、どこかのラインを超えると爆発的に拡大幅が増加すると言われていて、そのポイントのことをキャズムといったりもします。

ネットワークの外には壁を置く

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この様に説明すると、では、これらの参入障壁を築くべき市場とネットワーク外部性を利用すべき市場は、きっぱりと別れているのかと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、そうではありません。
これは、市場の成長度合いや、市場をどの様な観点で観るのかといったことでも変わってきたりします。

例えば、先程のネットでの動画市場でみる場合、youtubeという1つのプラットフォームの中では、新規参入のための参入障壁を低くして、動画制作が行いやすい環境を作っていたとしましょう。
しかしこれが、一つ外側の視点でプラットフォーム間の話になると、事情が変わってきます。
youtubeは、今更、動画プラットフォームを作られるのは面白くないでしょうから、新たな驚異となる動画プラットフォームの新規参入を防ぐために、高い参入障壁を作るでしょう。その参入障壁は、例えば、特定の配信者の囲い込みであったりです。

これは、前に例として挙げたゲーム機市場でも同じです。 ソニープレイステーションは、ゲーム機を購入したユーザーの利便性を上げるために、数多くのソフト制作会社を引き込むことで、ネットワーク外部性を利用します。
しかしその一方で、任天堂マイクロソフトが提供するプラットフォームとはシェア争いを行っていますし、そこで使われる戦略には、特定のソフトをソニーのハード向けでしか発売させないといった囲い込みを行ったりします。
何故、この様な事をするのかというと、プラットフォーム戦争を制して、市場を独占したいからです。

市場がマイナーな場合

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では、こういった動画プラットフォームやゲーム機市場などでは、はじめから参入障壁を築いて独占を狙っているのかと言うと、そうでもありません。
そもそも知名度がなく、ニーズもない市場である場合、他のプラットフォームが立ち上がることを歓迎したり、手を組んだりすることも珍しくはありません。

私はこのコンテンツをyoutubeだけではなく、PodcastSpotifyなどでも提供しています。
これらは音声コンテンツなのですが、音声のみの配信は、ネットでの動画視聴に比べるとまだまだ市場での認知度が高くないため、プラットフォーム間でもシェア争いは激しくありません。
何なら、複数のプラットフォーム同士が手を結んで、共同で賞を作って市場を盛り上げようとすらしています。

これは、音声コンテンツのプラットフォーム市場が特殊なのではなくて、そもそも認知されていない習慣を広めようとしている段階では、排他的な行動は起こりにくいです。
何故、初期段階ではプラットフォーム戦争が起きず、独占を狙わないのかと言うと、独占して1社で広報・宣伝活動を行うよりも、同じ様な会社が多数増えたほうが認知度が増えやすいからだと思われます。
企業が持つ経営資源は限られているため、1社でとれる戦略は多くはありません。 しかし複数の会社が参入してくれば、全体として取れる戦略は多くなります。

そのウチのいくつかが成功して市場が拡大していけば、例え自社の市場シェアが下がったとしても売上は下がりにくいですし、市場拡大スピードによっては、むしろ売上が上がるということもあるでしょう。
市場が拡大している中でシェアをキープできていれば確実に業績は伸びますし、シェアを伸ばすことが出来れば加速度的に利益が増えていきます。
多くの会社がその市場に参入し、それぞれの戦略で市場にアプローチをすれば、失敗する例や市場に受け入れられる戦略の傾向なども分かってくるため、市場を独占するよりも利点が大きいです。

新規参入を受け入れるメリット

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また、多くの会社と一緒に市場に入ることで、リスクを下げるための新たな戦略を取ることも出来ます。
例えば、自社が市場に対してあるアプローチを行って、一定の成功を収めたとしましょう。ですが、経営による成功は1つではないため、その方法だけが絶対的な正解というわけではありません。
他の会社が、自分たちでは考えられなかったような奇抜なアイデアで、成功することもあるでしょう。

そういったことが繰り返し起こりながら市場がある一定レベルまで拡大した場合、成功している会社と失敗している会社がはっきりと別れてくると思います。
失敗している会社の中でも、成功している事業と不採算事業に分かれていたりするでしょう。
この様な状況になれば、成功している会社や成功している事業だけを買い取るという戦略も取ることが出来ます。

市場の中で生き残れた企業や事業というのは、既にある一定の成功を収めていることが確定しているわけです。
事業拡大や新たな事業を始める場合、1から戦略を練って、不透明な市場に対して投資するよりも、既に成功を収めている会社を購入するほうが、リスクは低いです。

成功は金で買える

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つまり、自分たちと同じ市場に100社が参入し、それぞれ別の戦略をとって、5年後に20社が生き残っていて一定レベルの利益を上げているのであれば、その中から自社の事業と相性のいいモノを買ってしまった方が良いということです。
自社で新たにサービスを開発して、それを軌道に乗せるために労力を使うぐらいなら、既に成功しているモデルを購入した方が、リスクは低くなります。

この様に、参入障壁とネットワーク外部性は、全く正反対の概念のようにも思えますが、実際には、市場の成長段階であったり、市場の範囲という観点を変えることで、入れ替わったり共存していたりします。
今回は比較的大きな会社の話になってしまったので、次回は、中小零細企業に当てはめて、このことについて考えていこうと思います。 それではまた次回。