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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第22回【経営】戦略は必要なのか

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

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目次

学問と現実にはギャップが有る

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前回は、経営学の理論と現実の社会との間にはギャップが有り、学問で構築された理論は、そのままでは現実社会に当てはめることは出来ないといったことを話していきました。
今まで、様々なフレームワークや分析法を取り上げてきましたが、それらは全て理論上の話しなので、現実の現場にピッタリと当てはまるわけではありません。
当然、それらを使って作られた戦略は、理論的に正しのだから、現実世界でも確実に通用するし、成功をもたらしてくれるものではありません。

では、経営学なんて机上の理論は、勉強する価値がないのかというと、そうではありません。
古代の哲学者ソクラテスは、人間は、感情に任せて行動するのではなく、自分の外側に確固たる基準を持つべきだと主張しました。
これを事業経営に例えるなら、感情で意思決定せずに、理論によって構築された基準に則って、今後取る行動を決めるべきだと言うことです。

例えば、事業というのは、上手くいくか行かないかは予測ができないものなので、ギャンブルと同じようなものと捉えて考えると…
競馬にしてもパチンコにしても株式投資にしても、どの馬券や株券を買えば当たるかや、どの台を選べば大当たりするかというのは、予測したところで確実に当てることは出来ません。
予測法や見極め方というのは有るでしょうし、その分野の研究というのも有るんでしょうけれども、それを極めたとしても、確実に儲けることは不可能です。

マネーマネジメント

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では、戦略もなく、自分の思うがままにギャンブルに金を突っ込み続けることが正解なのかというと、それも違います。戦略もなくギャンブルをやったところで、身ぐるみ剥がされて終わりです。
当たらないからといっても、戦略は必要になります。では、どの様な戦略が必要なのか。ギャンブルに置いて必要な戦略は、マネーマネジメントです。
つまり、BETの仕方。賭け方です。

例えば、ルーレットで有名な戦略として、『マーチンゲール法』というのがあります。これは、カジノ側がイカサマを行わない限り、そして自分の資金が底をつかないという前提条件のもとで、確実に儲けることが出来る賭け方です。
やり方ですが、その前にまずルーレットのルールを説明すると、ルーレットは、数字が書かれた円盤にディーラーが玉を転がして、その玉がルーレットのどの数字に止まるのかを予測するゲームです。
特定の数字にピンポイントでかけることも出来ますが、ルーレットでは範囲に賭けることも出来たりします。

マーチンゲール法

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例えば、数字が1~36まである場合は、それを3分割し、1~12・13~24・25~36といった範囲にも賭けることが出来ますし、1~18。19~36といった範囲にも賭けることが出来ます。
その他にも、数字には赤か黒かの2種類の色がついているのですが、玉が赤か黒のどちらに入るのかを予測して賭けることも出来ます。
当然ですが、範囲が広くなれば広くなるほど当たる確率は上がるわけですから、当たった際の倍率は下がっていきます。

赤か黒のどちらに入るのかを予測する場合は、当たる確率が約2分の1のため、予想があたった際には2倍になって返ってきます。つまり、約2分の1の確率で倍になる賭けだということです。
当たる確率が約2分の1と書いたのは、ルーレットの数字は先程は1~36までと言いましたが、実際には0と00があって、その数字の色は緑になっていて、赤と黒のどちらにかけていたとしても負けてしまうからです。
つまり、実際の確率は2分の1よりも小さく、その僅かな確率の差が、カジノの収益となります。 つまり、カジノのゲームは確率的にカジノに有利にできているということです。

話を戻すと、マーチンゲール法では、約2分の1の確率で2倍になる、赤か黒のどちらに玉が入るのかだけを予想し、赤か黒のどちらかにBETします。
1回当たりの掛け金は、何回まで連続で外れてしまうのかに依存してしまいます。つまり、完全に確立依存というわけです。

何回までの『ハズレ』を想定するか

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約50%の確率だから3回しか連続では外れないと予想する場合と、10回連続で外れてしまうかもしれない可能性を考えて賭ける場合とで、全資産の何%を賭けるのかで賭け金は変わります。

さて、まず1回目、賭け金を赤か黒のどちらかにBETします。当たれば勝ちですが、負ければ当然ですが、賭け金は没収されます。
負けた場合は、賭け金を倍にして、もう一度BETします。当たれば、1回戦で負けた賭け金と今回のBET分を上回る額が返ってきます。負ければ当然ですが、賭け金は没収されます。
2回連続で負けてしまった場合、1回戦での負けと2回戦の負けを合わせると、結構な額の負けとなっているわけですが…

3回戦の賭け金を更に倍額にすることで、1回戦と2回戦の負けを全て取り返した上で、更に儲けを出すことが出来ます。
既にお気づきの方も多いと思いますが、このマーチンゲール法というのは、負けた際には、直前に賭けた額の倍額を次回に賭けることで、これまでの負けを全て取り戻した上で、利益を上げようという戦略です。
では実際に、この戦略で本当に儲けが出るのかを観ていきましょう。

実際に計算してみる

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まず、1回目でチップを1枚掛けて負けたとしましょう。 この時点で負けはチップ1枚です。 2回戦ですが、次はチップを2枚賭けます。
これで、1回戦で負けたチップと2回戦の賭け金で、合わせてチップが3枚となりますが、賭けたチップが2枚で当たった場合の倍率が2倍なので、当たればチップは4枚になって返ってくることとなり、儲けが出ます。
もし、2回戦も負けた場合も考えてみましょう。 1回戦で1枚負けて2回戦で2枚負けて、3回戦目の賭け金がチップ4枚ですから、コストは7枚です。

ですが、3回戦の賭け金はチップ4枚なので、2倍の倍率だと8枚返ってくるため、負けをすべて取り戻して上で、チップ1枚の儲けが出ます。
この様に、仮に負けが続いたとしても、賭け金を倍にして賭け続ければ、1回の勝ちで負け分を全て取り戻した上で、儲けが出るというのが、マーチンゲール法です。
このマーチンゲール法で誤解して欲しくないのは、この方法は、賭け金を倍にして賭け続けて諦めなければ、最期には全て取り戻せるという話ではないということです。

賭け金を倍ずつ増やしていくということは、負けが続けば続くほど、賭け金は指数関数的に増えて行くこととなります。
指数関数的に増える賭け金をコントロールしながら勝ちを拾う為には、一番最初の1戦目の賭け金の設定が重要になってきます。
つまり、最初に賭け金の設定の仕方を説明した際にも話しましたが、何回連続で負けるのかを予め想定した上で、逆算して賭け金を設定しなければならないということです。

もし仮に、10回戦連続で負けてしまうことを想定すれば、10戦目の賭け金はチップ1024枚となります。
これまでの傾向から、この勝負に勝ったとしても、総トータルでの利益はチップ1枚だけです。
つまり、10回戦までの総コストとしては2047枚を費やしているということです。もしこれに負けた場合は、11戦目の賭け金は2048枚となり、トータルのコストは4095枚となります。

マネーマネジメントとは

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マーチンゲール法の場合、当たるまで賭け続けなければならないという縛りがありますから、一度も当たりを引く前に資金が尽きてしまえば、全ての資産を失ってしまうことになります。
すべての資産を失うのを回避しようとする場合、当然、何回まで賭け続ければあたりが出るのかを、正確に予測する必要があります。 その予測に保険をかけるためにも、更に数回分負けるということも織り込む必要があるかもしれません。
つまり、マーチンゲール法の最も重要な部分というのは、『負けたら2倍賭け続ける』という分かりやすい法則の方ではなく、何回連続で負けるのかを適切に予測し、最初の賭け金を逆算して決めるという部分です。

これを、企業の戦略に当てはめるのなら、赤か黒のどちらにかけて、その際のコストはどれぐらいで、リターンはどれぐらいかを考えるのかは、これまでに紹介してきた分析やフレームワークの部分です。
実際の社会では、ルーレットのルールのように当たる確率と配当の倍率が明確に決まっていません。 つまり、その事業を始めたとして、成功する確率も得られるリターンも明確にはわからないということです。
それを少しでも明確にするために、内部環境や外部環境の分析を行うことで、リスクを減らしていきます。

そして、その事業が仮に失敗したとしても会社が破産しないように、事業に対する初期投資額を決めていく必要があります。
つまり、自社の内部やそれを取り囲む環境の分析を行って、おおよそのリスクやリターンを計測した上で、初期投資額を決める。その事業がうまく行かない場合は、撤退ラインを決めるというのが、事業戦略となるわけです。
撤退ラインを決めるためには、当然、成功する場合はどの様な筋道を辿るのかをシミュレーションし、それと現実がどれほどかけ離れているのかを比べて決める必要があります。

モデルを使って戦略を考える

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その元になる筋道を考えるためには、どの様なケースにでも当てはまりやすい、抽象的なモデルケースや、それを利用して作られたフレームワークを使って考えていくしかありません。
つまり、これまで紹介してきたフレームワークや分析方法を使って出来た事業計画に一定確率の失敗があったとしても、それを利用した方が、結果としてはリスクが下げられるということです。
まとめると、理論を使って建てた戦略が確実に成功するわけではないですが、そもそも戦略というのは失敗することも考慮して建てるものなので、経営理論を使った方が、結果としてリスクは下げられることになります。

ということで今回は、勉強や戦略の必要性について話しましたが、次回は、話を少し戻して、参入障壁とネットワーク外部性について、現実寄りで話していきたいと思います。