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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第14回【経営】SWOT分析(2)

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

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目次

SWOT分析

前回は、SWOT分析の仕方を簡単に説明していきました。
簡単に復習すると、SWOT分析は、まず、会社の立ち位置を把握するために、4つの項目に分けて情報を整理していきます。
4項目の分け方は、自社の環境を内部環境と外部環境に分けて、それを更に、プラス要因とマイナス要因に分けていきます。

すると、内部要因のプラス要因。 内部要因のマイナス要因。 外部環境のプラス要因。 外部環境のマイナス要因の4項目に別れます。
この4項目にそれぞれ名前をつけていくと、内部要因のプラス要因が『強み』。内部要因のマイナス要因が『弱み』。
外部要因のプラス要因が『機会』。外部要因のマイナス要因が『脅威』となり、この『強み』『弱み』『機会』『脅威』を英語にして頭文字をとっていくと、SWOTとなります。

この使い方としては、ホワイトボードなどに上下を二分する形で横に線を引き、上を内部環境、下を外部環境に割り当てます。
次に、左右を二分する形で縦に線を引き、左をプラス要因、右をマイナス要因に割り当てると、左上が『強み』右上が『弱み』左下が『機会』右下が『脅威』となります。
後は、複数の人たちで、この表を埋めていきます。

企業の内外分析

自社の強みは何なのか、弱みは何なのか。 外部環境での機会は何か、脅威は何かを、複数の人と話し合いながら書き込んでいきます。
この作業は、人がいなければ1人で行っても良いのですが、何故、複数の人でやった方が良いと勧めているのかというと、その方が真実に近づくからです。
人間は、様々なバイアスに支配されていているので、今置かれている状態を錯覚した状態で受け入れています。

これは、色眼鏡をかけて世の中や自分の会社をみているような状態と同じです。
例えば、赤い色のレンズが入ったメガネをかけると、赤い色で書かれた文字や絵は見えなくなります。
実際には青い色で書かれているものは、赤いレンズを通してみれば紫に見えてしまいます。

この様な状態で、いくら真剣に自社の強みや弱みや外部環境の分析を行ったとしても、正確な分析はできません。
バイアスをなくせば良いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは無駄な努力です。 何故なら、バイアスとは、自分の常識を書き換えてしまうものだからです。
しかし、これが複数の人になったとすれば、話は変わってきます。何故なら、人それぞれが持つバイアスは違うからです。

先程の色眼鏡の例で言うなら、あなたが赤いレンズのメガネを掛けていたとして、一緒に分析する協力者が青いレンズを掛けていたとすれば、同じものを観たとしても、観察している対象は、同じようには見えないということです。
観察しているものに赤い字で何かが書かれていたとしても、赤いレンズのメガネを掛けているアナタには、その字を読むことは出来ませんが、青いレンズをメガネをかけている協力者は赤い文字が見えているため、指摘してくれます。
逆に、青い色で何かが描かれていたとした場合、青いレンズのメガネをかけている協力者には読めませんが、アナタにはそれを観ることが出来ます。

人それぞれが持つバイアスが違うということは、それぞれの人がかけている色眼鏡が違うということですから、多くの人と一緒に分析することで、観察しているものの本当の姿が見えやすくなります。
そういった観点で言えば、自社の社員の意見だけでなく、得意先の意見にも耳を傾ける方が、より正確な分析ができると思います。

SWOT分析を使った戦略

このSWOT分析ですが、4項目を埋めるだけで終了ではなく、ここまでは準備段階です。これを埋めてから、戦略を考えていくようになります。
基本的な戦略としては、自社の『強み』を『機会』にぶつける。『強み』を磨いて強化する。『脅威』からは距離を取ります。

何事にも前向きな経営者の方は、『弱み』を克服すべき!だとか、脅威に打ち勝ってこその勝利だ!なんて思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的にはそんな危険なことはしません。
何故なら、このコンテンツを通して繰り返し主張していますが、経営学は、基本的には事業を大成功に導くための学問ではなく、経営におけるリスクを減らす学問だからです。
その為、脅威に向かって立ち向かっていくなんてことはしません。

例えば、史上最大の台風という脅威が来ている時に、それに立ち向かっていくのは賢い者のすることではありませんよね。
脅威が来ると事前に分かっている場合は、そこからできるだけ距離を取るのが身を守るために必要なことであるはずですし、距離が取れないのなら、頑丈な建物に立てこもるのが正解です。
どれほど危険かを確かめるために、増水している川や用水路を見に行くというのは、自分の身を危険に晒すだけです。

驚異に対して真正面から戦わない

この脅威の説明を会社経営の具体例でいうと、自分で個人の小売店を行っている状態で、家の近所に大きなショッピングセンターが出来るとします。
そのショッピングセンターには、同業他社もテナントとして入ることが予定されている場合、このショッピングセンター建設は、自分にとっては脅威になるといえます。
この驚異に対して、真正面からぶつかっていったとしたら、どうなるでしょうか。

例えば、品揃えや商品の品質を同じようなものにして、営業時間も同じにして、真っ向勝負を仕掛けた場合、果たして相手に勝てるでしょうか。
相手は新規参入なので、これまでの常連との付き合いを強化したり、多額の宣伝広告費をかけたりすれば、もしかすれば勝てるかもしれません。
しかし、ショッピングセンターのテナントで入るということは、集客力や利便性の面で負ける可能性も大いにあるため、経営のリスクとしては非常に高くなります。

であるのなら、経営戦略としては、この驚異から逃げるというのも、選択肢の一つです。
誤解しないでほしいのは、逃げるというのは、店を畳んで廃業するということではありません。相手と同じ土俵で戦わないということです。

差別化

では、どの様に戦えばよいのかというと、ターゲット層を少しずらすのです。ターゲット層をずらすとは、その地域における自分の店の役割を、変えるということです。

例えば、自分の店が酒屋だったとします。そして、ショッピングセンターのテナントにも酒屋が入っているとしましょう。
相手のテナントの広さの方が広く、相手がその広さを生かして幅広い品揃えで展開している場合、この店に対して品揃えで対抗したところで、勝つのは難しいでしょう。
何故なら、リアル店舗の場合は場所の制約があり、おける在庫数には限りがあるからです。

この様な制約がある状態で、敷地面積が狭い店が広い店に対して品揃えで対抗しても、勝ち目は薄いでしょう。
この場合は、相手の出方を見た上で、ターゲット層をずらす方が生き残れる可能性も、相手に勝てる可能性も高くなります。
どの様にターゲット層をずらすかといえば、差別化です。

例えば、置くお酒の種類を蒸留酒に絞るとか、日本酒のみ取り扱う。 焼酎だけ取り扱うといった感じで、更に細分化させることで、差別化が可能になります。
いくら店舗面積が負けているといっても、相手が全ての酒の種類を取り揃えていて、こちらが焼酎しか置いていないのであれば、焼酎の品揃えだけで見れば相手には勝てます。
つまり、相手の店舗に置いていないような珍しい焼酎も置いて置けるということです。

差別化のデメリット

この様な戦略を取れば、ショッピングセンターに焼酎を探しにいったけれども、好みのものが置いていなかったというお客さんを取り込むことができるようになります。
しかし、デメリットとしては、普段飲むビールを定期的に買いに来ていたお客さんを取りこぼすことになります。
この様な差別化は一長一短で、『この戦略を選べば相手をだしぬけて、確実に売上が増える!』なんてものはありません。その為、当然、失敗することもあるでしょう。

ですが、相手の得意な土俵で戦ってジリ貧になることに比べれば、まだマシともいえます。
ということで、今回はSWOT分析の中の脅威を取り上げて話してみましたが、このSWOT分析は、全ての要素は繋がっていたりします。
そのためにも、脅威以外の要素についても観ていく必要があるのですが、その話はまた次回にしていきます。