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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第9回 マーケティング1.0&2.0

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

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目次

市場細分化を行う理由

ここ3回程の放送で、ターゲットを絞りこむために必要な市場細分化の説明をしていきました。
何故、ターゲットを絞らなければならないのかというと、万人に受けるような商品は無いからです。
人々のライフスタイルや価値観はそれぞれ違うため、例えば、食卓で使う食器一つとっても、消費者ごとに欲しいと思う食器は違うはずです。

にも関わらず、日本に住む全ての人が購入できるような商品を作ろうと思うと、結果として、全てが中途半端な製品ができあがってしまうため、誰からも必要とされない商品が生まれます。
例えば価格一つとったとしても、富裕層にも興味を持ってもらえるような強気な価格設定にすると、貧困層が買えなくなるので、貧困層も購入できて富裕層も興味を引く値段にしよう…
といった感じで値決めをすると、中途半端な値段になってしまいます。

値段が中途半端だと、商品開発に掛けられるコストや商品原価も中途半端になる為、クオリティーも中途半端になってしまいます。
デザインも、あまりに尖ったデザインにすると好き嫌いが分かれる、しかし、あまりにシンプルにし過ぎると、他の商品に埋もれてしまう…なんて事を考えながら作ると、結局、どこに向けた商品かわからないものが出来上がってしまいます。
この様な感じで、万人受けを狙うと方向が定まらないため、誰の心にも刺さらずに、結果として誰からも求められない商品が生まれてしまいます。

しかしそれでは商売が成り立たないため、企業は事業を成り立たせるためにも、売れる商品を作ろうとします。

『その人』が求めている商品を作る

では、どの様な商品が売れるのかというと、人々が求めている商品です。
人々は、生活を送る中で何らかの不満を抱えているわけですが、その不満を解消するような商品を作ることができれば、その商品は人々から求められることになります。
『マネジメント』という本で有名なドラッガーという人物は、『真のマーケティングとは、セリングを不要にすることだ。』と言いましたが、人々が何を求めているのかが分かれば、営業活動は必要がなくなります。

ちなみに、『真のマーケティングとは、セリングを不要にすることだ。』という言葉の意味を簡単に説明すると、セリングとは、セルが売るという意味で、それにingがついて現在進行系になっているので、販売活動や営業活動のことです。
つまり、マーケティングを極める事ができれば、販売を行うための営業活動は必要なくなるということです。
営業活動をしないのに事業が成り立つ状態とはどの様な状態かといえば、宣伝も飛び込み営業も何もしていないのに、お客さんの方から店や工場に来て『この商品を売って欲しい!』と押し寄せている状態のことです。

真のマーケティングが、客の方から商品を売ってくれと押し寄せてくる状態を作ることだということは、真のマーケティングとは、顧客が心の底から欲しいと思っているモノを商品化する技術ということになります。
ではそのために何が必要なのかというと、顧客や市場の分析なんです。 その分析をするためにも、市場を細分化して、客のニーズを探り、絞り込んだ特定の市場に向けて商品開発をしてプロモーション活動を行います。

改めて振り返ってみると、企業は、1つの製品を作って販売するだけでも物凄く複雑なことをしているわけですが、では、市場でものを売るという行為は、最初からこの様な複雑なものだったのでしょうか。
結論から言うと、そうではありません。 最初は単純な段階から始まって、市場が成熟していくにつれて、マーケティングは複雑性を増していきます。
これを、フィリプ・コトラーという人物が、マーケティング1.0~4.0の4段位に分けました。 前置きが長くなりましたが、今回は、これをテーマにして話していきます。

マーケティング1.0

まず最初にマーケティング1.0からみていきます。
この状態は、市場にモノが何もない状態で、なおかつ生産者が少ない状態です。
この様な状態では、生産者は単に物を作るだけで販売活動を行わなくても物は売れていきます。

この様な状態があるのかというと、あるんです。どの様な状態かというと、例えば、戦争直後を思い浮かべててもらえればわかりやすいと思います。
日本が敗戦し、日本の各地が焼け野原になっている状態では、人々は普通の生活をするための最低限のものを欲しますが…
一面が焼け野原になっているわけですから、モノを作るための工場も設備もありませんので、モノが大量に供給されるということはありません。

しかし、人が死滅しているわけではないため、戦争前に何かの職人をやっていて、技術もノウハウもあるという人が、有り合わせの物を使って日用品を作れば、その商品は飛ぶように売れるでしょう。
この様な市場を『製品中心の市場』というのですが、この環境では作れば作っただけ売れるため、企業や職人に求められるのは、できるだけ低コストで大量生産する事となります。
つまり、ターゲットを絞らず、万人に向けた製品を作ることが至上命題とされていたわけです。

これは、戦後の焼け野原以外でも、新製品が発売された際にも同じ様な事が起こります。例えば、ブラウン管テレビがはじめて登場した時は、皆が欲しいと思っているわけですから客はメーカーに殺到します。
この時も、企業に求められるのは、商品を既製品にして、大量生産を行うことによってコストを下げて販売価格を引き下げることです。
消費者がテレビを欲しているというのは確定しているわけですから、後は、幅広い所得水準の人に買ってもらえるようにして市場を拡大する事が、企業の使命となりますし、結果としてそれが売上を上げることにも繋がります。

このテレビが進化して、液晶やプラズマや有機ELに変化しても、メーカに最初に求められることは同じで、『1インチ数千円で買えるようにすること』が市場から求められます。
この様に、販売されている商品量が圧倒的に少なく、供給体制も整っていない状況で、まず市場から求められている商品を、多くの人に届けるための体制を作っていくのがマーケティング1.0となります。

マーケティング2.0

次に、マーケティング2.0ですが、これは『消費者志向』のマーケティングです。
このマーケティング2.0の環境では、モノや供給能力が不足しているということはありません。
ある程度、大衆にモノが行き渡っている状態です。

先程のテレビの例で言えば、既に全世帯にテレビが行き渡っている状態と考えてもらえれば分かりやすいと思います。
既に商品が行き渡っているわけですから、この市場では新規の需要というのはあまり見込めません。 その為、買い替え需要を狙って商品を作ることになります。

1.0と2.0の違い

この買い替え需要の市場ですが、当然ながら、マーケティング1.0の時と同じように、ただ作れば良いという話ではありません。

何故かというと、どうしてもテレビが観たいのに、急にテレビが故障して使えないという状況以外は、買う側に余裕があるからです。
客側は、じっくりと商品を見て回る余裕がありますし、今で言えば、ネット検索などで商品情報を集めて比較することも出来ます。
マーケティング1.0の頃と比べると客側は商品に対する知識がありますし、その商品に対する顧客ごとの価値観も違ってきます。

その、顧客ごとの価値観を踏まえた上で製品を作らなければ、自社の製品は選ばれません。
顧客ごとの価値観というのは、画面が大きい方が良いとか、画質が良いほうが良い。黒の表現が出来ていなければならないといった性能面や価格面、メーカーへの信頼度と、そのバランスです。
性能的に優れていても、高過ぎれば売れないかもしれませんし、仮に安くても、性能やメーカーに対する信頼度が低ければ買われないでしょう。

顧客の好みというのは、それぞれが置かれている生活環境や経済的環境、好みといった価値観によってそれぞれ変わるため、それに合わせた商品を作る必要が出てきます。
つまり、マーケティング1.0が製品に焦点を当てて、製品の品質を一定にして大量生産によってコスト削減を目指せば良かったのに対し、マーケティング2.0では、製品戦略が必要になるということです。
製品戦略を簡単に説明すると、製品を開発する際に、その製品にどの様なコンセプトをもたせるのか、価格帯はどのようにするのかを決めて、開発することです。

マーケティングの必要性

では、どの様に価格帯や性能を決めれば良いのか、それには、前回までに紹介してきた市場細分化とターゲットの絞り込みが必要になります。
ターゲットを絞り込み、特定の層に向けて他社製品と差別化された商品を打ち出すことで、数ある製品の中から自社製品が選ばれることを目指します。

まとめると、製品自体の供給が少ない状態で需要だけがある状態がマーケティング1.0の段階で、この段階で企業に求められるのは、製品の供給能力です。
そのために、機械を導入したり職人の育成をしたり、製造工程を見直したりして効率性を上げて、大量生産を行うことが必要になってきます。

それがマーケティング2.0になると、単に製品を大量に作ったところで、消費者に自社製品が選ばれなければ、その製品は在庫として貯まっていくだけで、売上にはつながらない様になります。
何故なら、この環境では商品や製品に関する情報は消費者に行き届いているため、消費者は購入を急ぐこともなく、市場に出回っている商品の中で、自分の予算や価値観に合うものを探すからです。
数多くある商品の中から自社製品が選ばれて、それが販売につながる様にするためには、ターゲット層を定めて、その層に向けた商品を出すことで差別化することが重要となってきます。

次は、マーケティング3.0ですが、これは次の回に話していこうと思います。
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それでは、また次回。