だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第8回 セグメンテーション 3

広告

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
▼▼Apple Podcast▼▼

podcasts.apple.com
▼▼Spotify▼▼
open.spotify.com

noteにて、番組のサポートを受け付けています。応援してくださる方は、よろしくお願いします。
note.com

▼▼youtubeチャンネル登録はこちら▼▼
https://www.youtube.com/channel/UCqx0z_3n3tBH450v8CtNoUg

前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

f:id:kimniy8:20210204220540j:plain

目次

前回のふりかえり

前回、前々回と、市場細分化の話をしてきました。
何故、市場細分化をしなければならないのかというと、ターゲットが絞り込めないからです。
何故、ターゲットを絞り込まなければならないのかというと、全ての人を対象にした商品というのは、特徴がなさすぎて、誰の心にも刺さらないからです。

人間個人に当てはめて考えると、誰にも嫌われたくないと自分を押し殺して当たり障りのない態度を取り続けるよりも、誰かに嫌われる覚悟で自分をさらけ出した方が、人から好かれるということです。
当然ですが、自分をさらけ出しても全員から好かれるわけではありません。その様な態度を嫌う人達も出てきます。
俗にアンチと呼ばれる人たちですが、しかし、この人達の存在を恐れて自分の特徴を抑え込んでしまうと、誰からも嫌われない代わりに、誰からも覚えてもらえません。

つまりマーケティングとは、自分の個性をさらけ出した際に、それを受け入れてくれる層を探す行為と考えれば分かりやすいかもしれません。
興味を持ってもらえない層や、受け入れてもらえない層は最初から相手にせず、興味を持ってもらえる層だけを相手にすることです。
誰からも覚えてもらえない場合と、特定の層だけでも好いてもらえる場合を比べた場合、どちらの方が自分を必要としてくれる人が多いか、これは、考えるまでもありませんよね。

では、どの様にして、ターゲット層を絞り込むのか。何の戦略性もなく、無闇矢鱈と市場を細分化していってもターゲット層は見つからないため、まず4つの前提条件を置きます。

市場を選ぶ際の4つの前提条件

その4つの前提条件とは、1つ目が市場規模は利益を上げるのに十分な規模があるのかです。
参入しようとしている市場で、少なくとも初期投資分のコストを回収できなければ、その市場に参入する意味はなくなります。

2つ目が、ターゲットを設定した際に、そのターゲットに商品や情報を届けることが出来るのかです。
これは、自社の経営資源に、販売チャネルや広告を打つなどのプロモーション手段があるのかどうかということです。
これに関しては、現在ではSNSやネット広告を上手く使えば、誰でも予算内でプロモーション活動が出来ますし、販売に関しても、eコマース全盛の現状では、チャネルで困ることは少ないかもしれません。

ですが、自社に卸売や小売店の繋がりといった販売チャネルが構築できているのであれば、それを使える市場を選んだほうが、競争には有利になりますし、リスクも低くなるでしょう。

3つ目が、客観的なデータで表すことが出来るのかです。市場を細分化する際に、市場規模や購買力を『なんとなく』といった『感覚』で把握している場合、自身が持つバイアスに流されて、冷静な判断ができなくなります。
バイアスというのは、大雑把に説明すると思い込みとか、『色眼鏡で観る』といった感じで表現されるものです。
バイアスは無意識に働きかけて判断を鈍らせるため、これから逃れるためには、数値といった感情の入らない客観的なデータが重要になってきます。このデータは、公的機関が発表している二次データや、自社で集めた情報などを元にします。

4つ目が、選定したセグメントを比較して、順位をつけることが出来るのかです。
市場を細分化して、いくつかのセグメントに市場を分割できたとしても、そのセグメントに順位付けが出来ない場合、参入すべきターゲットが決められなくなります。
基本的には、先程あげた3つの前提を守っていれば、細分化されたセグメントは順位付けが出来るようになっているとは思いますが、常に注意しておく必要が有ります。

市場を細分化するための3つの切り口

この前提条件に従って、市場の細分化を行っていきます。ではどの様に市場細分化を行うのか、これは、3つの方法で分けていきます。
1つ目がジオグラフィックと呼ばれる地理的属性。 2つ目がデモグラフィックと呼ばれる人口統計学的な属性。 そして3つ目が、サイコグラフィックと呼ばれる心理学的属性です。
この3つは、それぞれがバラバラに存在しているわけではなく、密接にリンクしていて、厳密には分けるのは難しかったりしますが、それを無理やり分けている感じです。

このことに関しては、説明するよりも各項目の説明を聞くほうが早いと思いますので、先に進めます。

ジオグラフィック

まず最初に、ジオグラフィックの地理的属性からみていきます。
これは市場を、地理的な観点から見て切り分けていきます。 例えば、自分が販売する商品がどの地域で消費されるのかを考えていきます。
この地理的属性というのは、単純に地域・場所だけを指すわけではなく、その地域に依存している習慣や気候、人口密度や都市の発展具合なども考慮して切り分けていきます。

つまり、地域や土地に関連するデータ全てが、この切り口になります。
地域を特定すると、その地域には特定の人種の方しか住んでいない、もしくは、人種にばらつきがあるといったこともあるので、デモグラフィックとも関連してきます。
このジオグラフィックは、大きな目線でいえば、どこの国で売るのかといった感じで細分化出来ますし、寒い地域といった抽象的な切り分けも出来ます。

このコンテンツは中小零細企業で働く方向けに発信しているので、その方たちの目線でいえば、自分の店の半径1キロ圏内を相手にするのか、それとも全国を相手にするのかといった視点でも細分化出来ます。
この様に、店を中心にどの範囲で商売をするのかというのを、別の言葉で商圏と言ったりもします。

デモグラフィック

次に、デモグラフィックの人口統計学的な属性をみていきます。
これは、言葉だけを聞くと難しそうに思えますが、先程のジオグラフィックが焦点を場所・地域に当てているのに対し、デモグラフィックは人間に焦点を当てているだけの違いしかありません。
例えば、年齢や性別、家族構成や年収、職業など、人が持つ属性について分類していきます。

商品やサービスを開発する場合で考えると、例えば洋服なんかの場合、男性か女性のどちらを相手にするのかで、作る服は大きく変わってきます。
仮に女性にターゲットを絞った場合でも、10代相手に売るのか60代相手に売るのかで、デザインも売り場も広告媒体も変わってくるでしょう。
対象年齢を20代に絞ったとしても、顧客層の職業や収入によって、求められるクオリティーが変わりますから、製品開発やプロモーション戦略に影響を与えます。

サイコグラフィック

最後に、サイコグラフィックと呼ばれる心理学的属性についてみていきます。
これも、先程のデモグラフィックと同じ様に、人間に焦点を当てた考え方なのですが、デモグラフィックがどちらかというと人間のハード部分に焦点を当てているのに対し、サイコグラフィックは人間のソフト部分に焦点を当てている感じです。
具体的には、ライフスタイルや価値観、好みや性格といった人間の精神や魂といった部分に属する分野について細分化を行っていきます。

先程と同じ様に洋服で考えると、気性が荒い人と大人しい人とでは好むデザインが異なるでしょうし、派手な性格の人と落ち着いた人でも好みは分かれるでしょう。
夜遊びが好きな人と、インドアで家で本ばかり読んでいる人を比べても、洋服の好みは変わるでしょうし、洋服にお金をかけたくない人と見栄を張りたい人といった価値観の違いでも、好みは別れます。

4つの『R』

マーケティングでは、この3つの基準によって市場を細分化することで、それぞれのセグメントに分割していきます。

これらの切り口を使って、漠然とした大きな市場の中から候補となるセグメントを複数取り出せたら、次はその中から、ターゲットを絞り込んでいきます。
この絞り込みの際に、前回や今回の前半で言った、4つのRという前提が重要になってきます。
4つの前提とは、市場規模・到達可能性・測定可能性・優先順位のことでしたね。

仮に市場規模が大きくても、その大きな市場の顧客に自社製品や商品情報を届けることが出来なければ意味はないですし、逆に、顧客に訴求する営業力があっても市場が小さすぎれば採算は合いません。
それらを客観的な数値で表すことが出来なければ、ターゲットの絞り込みを勘ですることになりますが、これでは仮に成功しても再現性がありませんし、失敗しても反省が出来ません。
これらを踏まえて、有望な市場に参入していくことで、先行きが不透明な状況で闇雲に挑戦し続けることと比べると、リスクを避けることが出来ます。

前回に例として挙げた、カルビージャガビーの場合は、今回紹介した基準3つ全て使ってペルソナを設定して、ターゲットを絞り込んでいます。
ジャガビーで設定されていたペルソナとは、『27歳独身女性、文京区在住、ヨガと水泳にハマっている。』でしたが、『27歳独身女性』という部分はデモグラフィックで、『文京区在住』はジオグラフィック。
『ヨガと水泳にハマっている』という部分はサイコグラフィックで、3つの基準でターゲット層が具体的に決められています。

27歳の女性は全体の何%か、未婚率はどれぐらいかというのは、政府発表の統計を調べればわかりますから、その率を文京区に住む人口に掛ければ、大体の数字は予測できますので、このペルソナは測定可能なセグメントとなります。
この様なペルソナを複数個用意すると、順位付けも出来るでしょうから、直近3回で説明した内容に合致しています。
実際に市場規模を計算してみると、カルビーのような大企業が相手にするには小さすぎる市場じゃないかと思われる方も多いと思いますが、おそらくカルビーは、このターゲットに合致する人だけを相手にするつもりはなく、準拠集団も狙いに行ってます。

この準拠集団というのを今回話すと長くなるのですが、簡単に言うと、その集団に憧れている人も含めた集団のことです。
ジャガビーのペルソナの例で言えば、『27歳独身女性、文京区在住、ヨガと水泳にハマっている。』様な人物像に憧れていて、自分もそんな生活を贈りたいと思っている人も含めているということです。
これを含めると、結構な数にターゲットが膨れ上がることになります。

この様な感じで、マーケティングというのは複数の要素が絡み合った複雑なものですが、では何故、この様な面倒くさいことをやらなければならないのか。
次回は、そのことについて話していきます。