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【映画ネタバレ感想】ビハインド・ザ・カーブ  驚異は身近に転がっていることを思い知らされる映画

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この作品は、Netflixで公開されているドキュメント映画です。
内容は、地球というのは球体だと教えられているが、実はそれは陰謀で、本当の地球は平面だという『地球平面説』を唱える人達に密着したドキュメンタリー映画です。


目次


簡単な構成

冒頭でも少し書きましたが、この作品は、地球平面説を唱える方たちに注目した作品です。
『地球平面説』を否定するための証拠集めをする映画というよりも、平面説を支持している人達の主張と科学者たちのインタビュー映像を交互に出していくというスタイルで、どちらかの主張を完全に否定するという作りにはなっていません。
これを観た人達が、実際にはどうなんだろうと考える切っ掛けになるような出来となっています。

科学者サイドや平面説サイドのシーンの長さをしっかりと図ったわけではありませんが、7対3ぐらいの割合で、平面説サイドの主張の方が多めに取り上げられていたような気がします。
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画像は公式サイトから引用

ドキュメンタリーにネタバレという概念があるのかどうかはわかりませんが、この映画では、最終的に答えが出ることはありません。
あくまでも、視聴者が独自に考える様な作りとなっています。
そういった意味では、この映画を見たことによって、地球平面説を信じ込んではまり込んでいく人達も少なからずいらっしゃるかもしれませんね。

他人事だと笑えない現象

この作品に登場するメインの人達は、地球平面説というトンデモ科学を信じ込んでいて、今もなお、その勢力を伸ばし続けているわけですが…
実際に作品を観てみると、その現象だけを捉えて馬鹿にすることは出来なかったりります。
というのも、この様な現象は別の分野でも数多く存在し、誰でも、彼らのような沼にはまり込んでしまう危険性があるからです。

例えば、私はPodcast配信を行っていて、詳細情報を掛ける部分にTwitter IDを記載して、告知などはTwitterで行っていたりします。
すると、フォローされる人達がPodcast関連の人達が多くなってきてしまいます。 その中でも気の合いそうな人はこちらもフォローしたりする為、Twitterで知り合う人たちの大半が、Podcastを聴いている人になってしまいます。

Twitterミニブログで、フォローしている人の『つぶやき』がTLに自動で流れてくるわけですが…
当然のことながら、私のTLにはPodcastの話題が大量に流れてくることになります。
常にPodcast関連の情報が流れてくるので、『もしかして、Podcastって凄いメディアなんじゃないか?』とすら思えてきますし、その中だけでウケそうな事も『つぶやく』といった行動をとったりもします。

しかし実際問題として、Podcastは日本ではマイナーですし、聴いてる人を探すほうが難しいメディアです。(車社会のアメリカなどは別)
その中ではやってる事が世間一般ではやってるわけではないし、その狭い世界の話が日常の世界で理解されることも少ない。
そうなると、世間一般では話題が合いづらいので、Twitterでの活動がメインとなり、そこで開催されるオフ会やらにやたらと参加するようにもなったりする。

誤解のないように書いておきますが、この行動そのものが悪いと言っているわけではありません。
ただ人の行動として、人間は『より自分を理解してくれる方』になびきますし、話題が合わない人達とは疎遠になりがちということです。
こうなると、Podcast関連の人脈だけがやたらと強化されることになり、自分の知識も狭い範囲に限定されてしまったりもする。 周りとは余計に話が合わなくなるので、Podcastという特定の範囲に依存するようになってしまう。

これが、Podcastなら問題はないのかもしれません。
しかし、相手がネトウヨと呼ばれる団体だったら? 白人至上主義だったら?
単なる思想的な集団ではなく、実際にテロを行うような団体だったとしたらどうでしょうか。

地球平面説というのも、単純にそれだけを信じているというのであれば、無害だし、勝手にやってくれていれば良いと思います。
でもそれが、テロ組織などのような危険な団体だったとしたらどうなんでしょうか。

狭くなる視野

先程も書きましたが、人間は、自分の考えを拒絶する人よりも受け入れてくれる方に流れます。
そして今のように、SNSなどで簡単に繋がれて、個人がメディアを持って主張を自由に発言できる世の中では、自分と同じ様な意見を持つ人間を見つけることは非常にたやすく出来てしまいます。
自分の生活圏の人達は、自分のことを変人と読んだり馬鹿にしたりしたとしても、遠く離れた場所には自分を理解してくれる人がいる。

こうなると、自分が信じ込んでいただけの説が更に強化され、その説に自身を持つようになってくる。そして、自分の説に反対するものは悪だし、賛成するものは力強い味方と認識するようになる。
味方ができると自信を持ち、更に発信力を強めて同士を探し、自分の説をより強固なものにしていく。 仲間を集めて、自分の説に絶対の自信を持つようになると、次は、『世間一般の奴らは、何故、嘘を信じているんだ?』と思うようになる。
その疑問はそのうち、『何らかの巨大な組織が裏で糸を引いていて、世界中を洗脳している!』という陰謀論へと変わり、自分の仲間意外の全てを否定的な目で見るようになってしまう。

こうなると手遅れで、彼らに対して親切心で物事を教えたとしても、それを嘘だと決めつけて、『君は洗脳されているんだ!』と言いがかりをつけるようになる。
この様な行動を行うと、当然のように周りの人間は離れていき、その人間はますます孤独になり苦しむことになるが、『自分が孤独で苦しんでいるのは、世界を牛耳ってる何者かが洗脳してるからだ!』と陰謀論を掲げ、架空の悪者に敵意を向けることで感情を吐き出すようになる。
考えは更に強固になっていき、仲間意外が信じられなくなり、同じ思想の団体に依存してしまう。 その団体だけが自分を受け入れてくれるので、更に受け入れてもらおうと、自分の持てる力すべてを使って、団体に貢献しようとしてしまう。

手段の目的化

地球平面説を唱えている人達が、なぜ、この様になってしまうのかというと、手段が目的化してしまっているからでしょう。
例えば、日本ではネトウヨやパヨクと呼ばれる人達がいますが、まさに彼らが、手段を目的化している人達と言えます。

日本は民主主義国家なので、基本的には国民が国をどの様に導くのが良いかを考えて、自分の意見を代弁してくれそうな代議士に意見を託して変わりに国会に出て討論してもらうシステムです。
その為、自分が選んだ政治家であったとしても、自分の意見と違うことをすれば文句を言えばいいし、思い通りにならないのであれば、次の選挙ではその議員には投票しなければよいわけです。
大多数の人が選んだ与党が相手であっても、国をもっとよく出来る案があるなら提案すべきだし、与党が推し進める製作が良いと思うのであれば賛成すべきです。

しかし、政治で極端な思想を持つ人は、『与党の悪口をいうやつは悪!』とか、『首相の言ってることだから全部信用できない。』となり、意見がおかしいから批判するのではなく、批判をする為に相手の主張を曲解したりします。
そして、この人達も平面説の人達と同様に、SNSなどで過激な意見を披露しては、同じ様な主張の人達とつながって、ドンドン頑なになっていってしまいます。

内ゲバ

このドキュメンタリーで一番面白いのが、単純に『地球平面説』vs『科学者』とはなっていないということでうs.
この映画の主人公的な位置づけの人がいるのですが、その人は元々はネットで地球平面説を知って、『そんなはずないだろw』と思ってドンドンと調べていくうちに、反論が見つからなくなって信じた人なんですが…
この人物よりも前に、別のアーティストが地球平面説を支持する内容を積極的に発信していました。

テレビなどは、最初はこのアーティストに取材などを申し込んでいたそうなんですが、芸術家はプライドが高いのか、それらの誘いに乗りません。
そこで、積極的にテレビなどに出演する今回の主人公があちこちから取材を受ける形になり、地球平面説を信じる人達から信頼を集め、リーダー的な存在になるんですが…
それより前から活動していたアーティストは、その状態に納得できません。

嫉妬なのか、別の感情なのか走りませんが、映画の主人公に対して『あいつはCIAのエージェントだ! あいつに近づくと洗脳されるぞ!』といった感じで、他にも罵詈雑言を浴びせまくります。
地球平面説の信者に対して科学者は、そこまで喧嘩腰ではないですし、向こうが質問してきたら真摯に答えるという態度を示す一方で、同じ地球兵面接を信じる人達から容赦ない攻撃にさらされて、この世を裏で操っている人物だと言われてしまう始末。
地球平面説を広めている主人公は、この世の陰謀を暴いて科学者たちが言ってることが嘘だと証明したいとがんばりますが、その主人公そのものが陰謀の中心人物で、世界を影で操っている組織の一員だといって、地球平面説の人達から責められる・・・

この状態に主人公は、『彼らは、こちらが真摯に向き合ってしっかりと説明しても、全て否定して聞く耳を持たない…』と悲しい顔をするが、それと全く同じセリフを、科学者が主人公に対して思っている点が非常に面白い。
認知がずれると、まともな人でも世界の捉え方が変わってしまうという一例なんでしょうね。

地球兵面接に限らず、似たようなことって周りにたくさん転がっているので(マルチの勧誘など)、その対策のためにも、見れる環境にある人は見たほうが良い作品だと思いました。