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【映画 ネタバレ感想】 カーズ 人は変われるという事を教わった物語

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先日のことですが、ディズニーデラックスという動画配信サービスに加入したのをきっかけに、カーズを観ました。
その作品の出来がかなり素晴らしかったので、今回はその感想をネタバレ込で書いていこうと思います。
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ディズニー公式から引用



目次



簡単なあらすじ

カーズの世界というのは、『きかんしゃトーマス』の車版の様な感じで、車自体に意識や人格のようなものがあって、生活をしているという世界観です。
車という事で、レースでトップになる事が最高の栄養で、有名なレースに出ることが史上最高の喜び。
しかし、全ての車がレースを目指しているわけでもなく、田舎町でカー用品を売りながら静かに暮らしている車など、レースと関係ない車達も沢山いる。

この世界で繰り広げられる物語。

主人公は、ルーキーとして頭角を現して人気ものになった『ライトニング・マックィーン』という車。
自分が持つ才能に自惚れて、他人を見下し、チームメンバーの指示も聞かずに突っ走る為に、レースでは結果を出して人気は得るけれども、身内からは愛想を尽かされている車です。
物語冒頭では、スタッフからピットインの支持が出ているにも関わらず、それを無視してレースを続けた結果、ブッチギリでトップの状態に躍り出るも、タイヤがもたずにパンクしてしまい、3台同着になってしまう。

優勝車が決まらないので、レース場を移してその3台だけで再びレースが行われることになるのだけれども、マックイーンの暴走にスタッフがついていけず、全員がやめる。
その状態に追い込まれても、『才能のある自分一人が頑張れば優勝できるさ』と自惚れ、特に気にする様子もなく、一番乗りで次のコースに行って練習する為に、移動用のトレーラーに無理をいう。

マックイーンの態度にも愛想を尽かさず、スタッフをやめること無く一緒にいてくれるトレーラーに対しても辛く当たり、半分居眠り運転をした結果、アクシデントでマックイーンが砂漠の真ん中に置き去りにされる。
スタッフのトレーラーを必死に探し、似たような雰囲気のトレーラーを見つけて追いかけるも、追いついてみると車違い。 再び高速道路に戻ろうとするも、焦ってスピード違反をしてしまい、警官に追われることに。
パトカーに追われながら街らしきところに到着するも、マックイーンはスピードを緩めないので街の設備を壊しまくり。

最終的に捕まり、裁判の結果、壊した道路を直せという判決が下り、最初は嫌がりながらも道路を直すことに。
最初は、街をメチャクチャにしたマックイーンと住民との間に結構な精神的な溝があるも、修復作業を続けていくうちに信頼関係が構築されて、最終的には大切な仲間だと思われるようになる。
その頃には、マックイーンの『自分1台だけで何でも出来る。』という自惚れも改善され、仲間の重要性なども理解するようになる。

道路を修理し、なんとかレース会場にたどり着いたマックイーンは、町の人達と協力してレースに出場し、トップでゴールできる位置をキープする。
しかし2位争いで、ルール軽視の勝ちにしか興味のない車がベテランの車を意図的にクラッシュさせてしまう。
普段なら、そのまま無視してゴールするマックイーンだが、その行為を見逃せず…

色んな要素を詰め込んだ計算されたストーリー

この物語の大筋は、先程書いた『簡単なあらすじ』通りなんですが、それ以外にもいろいろなテーマが含まれています。
主人公のマックイーンが迷い込んだ『ラジエーター・スプリングス』という街は、昔は旅の中継地として栄えていた街なのですが、そのすぐ近くを高速道路が開通してしまう。
近くに高速ができた事によって交通も活発になり、中継地点の『ラジエーター・スプリングス』も活気にあふれるようになるかと思いきや…
蓋を開けてみれば、一度、高速道路に乗った車は高速を降りること無く、しかも高速道路は地形を切り開いて作った谷のような場所に存在するため、『ラジエーター・スプリングス』は忘れられた街となってしまう。

高速道路が出来る前は、それなりに交通量があり活気もあった街も、マックイーンの様な迷子の車がたまにやってくるだけの街になり、住民自体の心も、街のように閉じていっている状態に。
この辺りの展開は、経済発展は人に良い効果をもたらすだけではない事が描けていて、考えさせられます。

客の来ない商店は、どうせ客が来ないんだからと適当に運営され、更に寂れっぷりを加速しているけれども、マックイーンが道路を直したことで住民たちの意識が少し変わり、道路に合わせて店のリフォームなどをしだす。
マックイーンは、町の住人にとっては犯罪者でしか無いわけですが、それでも、町の外からやってきた新しい風には変わりなく、街が忘れられると共に効率いてしまった住民たちの心も、その風に当てられて少しづつ解けていく。

マックイーンも同じ様に、今まではレースで走りを見せるだけで脚光を浴びてスターに成れたのに対し、『ラジエーター・スプリングス』の人達は情報に疎いせいか、自分のことを知らない。
自分を特別扱いせず、一般の車と同じようにしか扱わない住民たちと暮らしていくうちに、『自分は特別な存在だ』という自惚れも徐々になくなり、何者でもない町の人達と同じレベルで付き合うようになる。
マックイーンは、脚光を浴びたことで増長して嫌なヤツになっていたけれども、素の状態だと憎めない奴だし寂しがりやだというのは、『ラジエーター・スプリングス』という自分のことを全く知らない人達の中に放り込まれることによって明らかになっていく。

人の性格は環境によっても人によっても変わるって事を上手く描いているし、人の幸せがチヤホヤされる事だけでは無いことも分かりやすく伝えられている。

子供ではなく、むしろ大人が観るべき映画

カーズは3Dアニメで見た目も可愛く、子供向けのディズニー映画と思われるかもしれませんが、テーマが重く、むしろ大人に観て欲しい映画だと思いました。
この物語では、最終的には車3台によるレースが行われているのですが、1台はマックイーンで、もう1台は同年代のライバルで、最期の1台はマックイーンが尊敬するベテランのキングという車です。
マックイーンは、基本的には横柄な物言いをしていやなやつですが、キングは尊敬していて、彼の前でだけは腰が低く敬意を払っていますが、ライバルの車はそれすらしない自分大好き車です。

結果から書くと、キングはクラッシュさせられて再起不能になるわけですが、『ラジエーター・スプリングス』での交流で車同士のつながりの大切さを知ったマックイーンは、レースの勝利を放棄して、クラッシュして動けないキングの元へ走り寄ります。
そのスキにライバルは1位でゴールしてしまうのですが、マックイーンは順位のことなど全く考えず、キングを押して一緒にゴールし、自身は最下位となります。

この世界では、レースの勝利が全てであって、世界中が注目するレースなら尚の事、レース結果を気にするのですが、会場の観客やマスコミ達は、ルールの範囲内だけれども卑劣にもクラッシュを仕掛け、1位を取った車を批判し、最下位のマックイーンを褒め称えます。
マックイーンは当初、レースでトップになり、売れない頃から自分を支えてはくれたけれどもダサいスポンサーに嫌気が差していて、もっと良いスポンサーと契約したいと思い、その為にもトップの座を得たかったのですが、再開になったことによって、自分が一番憧れていたスポンサーから声がかかります。
しかしマックイーンは、このスポンサーの誘いを蹴ってしまう。  仲間の大切さを知ったマックイーンは、今まで自分を支えてくれた人達を尊重し、スポンサーを変えずにこれからも一緒に頑張っていくと言います。

資本主義的な成功やアメリカンドリーム的な考え方であれば、スポンサーを乗り換えても良さそうなのに、そうはしない。
そしてマックイーンは、自分を変えてくれた『ラジエーター・スプリングス』にベースを移し、その街の宣伝の為にも頑張るというラスト。

クラッシュからのキングを押しての同時ゴールは、涙なしでは観られませんでした。
私自身は、ピクサー作品は泣けるいい作品が多いとは分かっていたのですが、なぜか、今まではカーズを無意識に避けていたのですが、観れてよかったと思いました。
ディズニーデラックスならスピンオフ含めてすべて見れると思いますし、入会から31日は無料っぽいので、興味の有る方は観てみてください。