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【Netflix動画 ネタバレ感想】 トロールハンターズ:アルカディア物語

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年末年始の休みですが、特に出かける用事などがなかった為、多くの時間をNetflixに費やしてしまいました。
それなりの作品を見たのですが、今回はその中から、『アルカディア物語』の感想を書いていきます。
ネタバレも含みますので、興味のある方で情報を入れたくない方は、読む前に鑑賞することをオススメします。


アルカディア物語

この物語は、アメリカのアルカディアという街で繰り広げられる、少し不思議な物語。
私が最初に観たのは、『ミッシング・スリー』という作品で、これを観た後に知ったことなのですが、この作品は三部作で、『ミッシング・スリー』は、その第2作目に当たる作品に当たります。
では1作目は何かというと、『トロールハンターズ』という作品で、この物語も、アルカディアという地域内での話が中心の物語。

トロールハンターズは、シーズン3で完結している話なのですが、第二作目の『ミッシング・スリー』は、トロールハンターズの最終章ぐらいから話が始まり、物語内の時間軸としては、トロールハンターズの最終回とミッシングスリーの最終回が同じエピソードで終わるという感じ。
ネタバレになりますが、トロールハンターズはシーズン3の最期で主人公カップルがアルカディアを離れる(一時的?)事になる為、ミッシングスリーのシーズン1は、アルカディア物語内での主役の交代を丁寧に描いた作品とも言えます。

つまり、この物語の主人公は特定の人物というのではなく、アルカディアという土地と、そこに住む人達という事。
アルカディアという、おそらくは、それほど大きくない地方都市が、何故か世界を巻き込んでの戦争の中心地になるが、その地方都市を陰ながら守る集団を描くのが、アルカディア物語。
その集団は、回を増す毎にドンドンと増えていき、最終的には街に住んでいる人達みんなが、何らかの形で協力し、団結するのではないかと思わせてくれるストーリー展開になっている。

さて、少し話は変わって、アメリカの地方都市やコミュニティーの話。
私は海外旅行には行った事がない為、アメリカの地域やコミュニティーがどの様になっているのかは、映画やドラマやゲームを通してしか知らないのですが、アメリカの地方都市の場合は、それそのものが一個の国や家族の様な感じになっているという印象を受けます。
例えば、ランボーの1作目は、ベトナム戦争帰りの主人公が、戦友の母親を訪ねるところから始まりますが、そこを担当する保安官に、『見たことがない人物がうろついている。』とマークされ、街から追い出されそうになるという始まり方をします。

この保安官は、嫌な人間に描かれていますし、何なら、ランボーが起こした騒動の諸悪の根源の様な感じになっていますが、保安官の行動を改めてみてみると、彼は町の住人の全ての顔を覚えているということになります。
町の人間の事を全て把握しているからこそ、ランボーが理由なく街をうろついているのを不気味に思い、追い出そうとしたのでしょう。
彼の行動の基本的な部分は、『街を守りたい』という動機からなっていたのでしょう。

アルカディアに住む人達も、ランボーに出てくる保安官ほど高圧的でも好戦的でも無いですが、コミュニティーの範囲が広く、地域に住む人たちのことを結構知っている上に、自分たちが所属しているところへの愛が強い。
例えば、アルカディアには主人公たちが通う高校の他にライバル項があるらしいが、彼は敷居をまたいだだけで敵意を向けられたりする。(イケメンだったから、主に男から…)
他にもテレビやラジオでは、アルカディアで起こったちょっとしたニュースや、地域内にある高校の行事や休み前の最終投稿日を伝えたりと、その地域に関する情報がとにかく凄い。

これが日本だと、どの地域でテレビを付けたとしても、東京のニュースしか流れてこない。
日本が駄目というのではなく、これが、国土面積の差というものなのかもしれません。 アメリカの場合、西海岸のサンフランシスコで起こったちょっとしたニュースを、東海岸のニューヨークで流そうとしても、そもそも需要がないでしょうしね。
新幹線に乗れば、日本のどこからでも数時間で東京に行ける日本とは違うのでしょう。

アメリカは、一つの都市や町の間が結構離れている上に、車社会。車に乗っている時にテレビは見ないので、情報源としてはラジオが欠かせない。
ラジオは大層な設備が必要ないから、ちょっとした投資で作ることが出来るので、チャンネル数が増えまくり、結果、カバーする範囲を限定して濃い情報を伝える事で、差別化を図ったのかもしれません。
この様なラジオの情報を日々聞いていると、自分の街に詳しくなるのも当然で、その結果として、地域に対して所属意識が強くなっていくのかもしれません。

そうした所属意識が根底にあるから、アメリカの作品には、その地域を守るヒーロー物ってのが結構あるのかもしれません。

トロールハンターズ

この物語はジムという少年が、学校に向かう為に近道をしようと橋の下をくぐった際に、偶然、魔法のアミュレットを手に入れるところから始まります。
アミュレットは選ばれたものにしか手にする事が出来ず、手に入れたものはトロール・ハンターとなり、トロールの攻撃から身を守る為の鎧と、彼らを砕く為の武器を授かります。

ちなみにですが、この作品では『トロール=悪役』ではありません。 トロールには善良なトロールと悪いトロールがいるのですが、何年か前の戦いによって、悪いトロールの大半を、ダークランドに閉じ込められることに成功しました。
その為、大半のトロールは善良なトロールで、アルカディアの地下に街を作って平和に暮らしていたのですが、僅かに残っている悪いトロールが、ダークランドと人間が住むこの世界をつなげる事で、向こうに閉じ込められている同胞を召喚しようとしています。
トロール・ハンターは、その悪いトロールを倒し、この世に災いをもたらさない為に、ダークランドとの接続を阻止して平和をを維持するのが仕事です。

トロール・ハンターは第々、トロールが就任していたのですが、イレギュラーな形で人間の子供のジムが選ばれた事で、いろいろとトラブルが起こったりする。
その困難を乗り越えていく過程で、仲間との友情が深まったり、新たな人間が仲間になったり、敵だったものが仲間になったりするのを楽しむ、王道的な物語です。

まぁ、使い古されたストーリーといえばそれまでなのですが、そんな構成でも最後まで楽しんで見れたのは、登場するキャラクターが魅力的だったからでしょう。

例えば、この物語には、最初は主人公のジムに対して親切に接してくれる人物が、後に敵対勢力だという事が判明します。
この時に敵の方が、うろたえたりするんですよね。 2人が戦うことになった際も、攻撃を躊躇したり。 攻撃したくないけど、立場的に倒さなければならない状態を腹立たしく思い、その環状を言葉にぶつけたりなど。
大抵の場合は、このような表現があると、その後、困難を乗り越えた後に仲間になるものですが、実際には仲間にならず、一時的には、そのシーズンのラスボス的な位置になったり。

このストーリーには、絶対悪のような存在が出てくる為、勧善懲悪の物語なのですが、その人物に使えている人間が揺れ動いたりする。
その描写が、かなりハラハラさせられますし、結果として楽しめたりします。

観ている側を、ここまでハラハラさせて、その上で納得させてしまう作りになっているのは、物語の中に説得力があるからかもしれません。
先程、たとえ出だした人物は、物語の中ではチェンジリングと呼ばれる種族のようなもので、種族としては、ダークランドから来たトロールなのですが、ダークランドからアルカディアに来ると同時に、生まれたばかりの人間の赤ん坊を誘拐してダークランドに送ってしまうことで、人間への変身能力を手に入れ、赤ん坊に成り代わることが出来ます。
そうして人間と入れ替わったチェンジリングは、人間社会の教育を受けて成長し、人の社会に溶け込んで情報収集を行い、ダークランドとこの世界を結ぶゲートを開ける為の情報収集をするという重用任務を与えられるのですが…

基本的には人間を餌としてしか見ていない、ダークランドのトロールにとっては、人間に入れ替わり、人間のふりをして生きるという性質上、差別の対象になっていたりする。
チェンジリングは、必死になって任務を遂行しようとするが、結果として、自分たちは道具としてしか認識されていない。
その一方で、多くの時間を過ごすことになった、人間社会に愛着も持つようになる。 この様な感情の中で、チェンジリングの心は激しく揺さぶられるのですが、その表現に説得力があるんですよね。

この様な感じで、人物の心境をリアルに描写している為なのか、新たな登場人物が現れた際に、その人物を信用してよいのか悪いのかというのがわからなくなる。
登場した人物は、登場した当初は、特定の人物に忠誠を誓っていたとしても、自分の扱われ方によって忠誠が下がったりもする。 逆に、最初は仲が良かったのに、何らかの拍子で信用できなくなったりもする。
私達が住む世界では当たり前の、初対面の人物に会った際に抱く『この人物は信用できるのか?』という感情ですが、こと、アニメ作品になると、『仲間として登場したから、無条件で信用できる』って感じになりがちですが、この作品では、信用を勝ち取るまでを丁寧に描いているところが面白い。

その他には、アメリカの映画やドラマでは有りがちですが、『世界の危機』という絶対に防がなければならない状態と、明日までに『明日までに学校の課題を終わらせる』という、割とどうでも良い任務が、同じ様なウェイトで描かれたりするのも面白い。
世界の危機を救う為に、命がけの任務をこなしている最中に、学校の課題の為に寄り道し、その為に任務が失敗しそうになるなんていう、ありがちなパターンを結構な頻度でやってくれる。
それが、お約束だと分かっていても面白いから困りもの。 何なら、学校の課題を片付けることが世界を救うことに繋がったりするという、ベタベタ展開に突入するが、それも、分かっていても面白い。

シーズン3まであって、最後まで見終わるには結構な時間がかかりますが、かなり楽しめたので、Netflix会員の方は、観てみてはどうでしょうか。
おすすめです。