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【Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿】 第42回 アレクサンドリア図書館 前編

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

アレクサンダー大王の東方遠征

前回までの流れとしては、神々や、それが登場する神話、宗教などがどの様にして生まれていったのかを簡単にみていき、その後、神々を用いずに物事を説明する、イオニア自然学派の話をしていきました。
特に、イオニア自然学派の話は、ものすごく簡単な説明しかしませんでしたが、その理由としましては、そもそも記録が残っていないというのが大きいです。
全く残っていないというわけではありませんが、多くの資料が、今現在まで残っていません。

では何故、記録や本が残っていないのかという事について、今回は話していこうと思います。
私が思う一番大きな理由としては、キリスト教が原因なんじゃないかと思っています。
今現在、舞台として取り扱っているのは古代ギリシャですが、当時の古代ギリシャの力は結構凄く、次回からテーマにするソクラテスの弟子、プラトンの後輩に当たるアリストテレスが家庭教師をしていた教え子の…
アレクサンダー大王が、東方遠征をした際に、多くの国を支配下に収めるわけですが、その一つとして、エジプトも征服するんです。

アレクサンドリア図書館

アレクサンダー大王は、征服したエジプトの地に、自分の名前をつけた都市である『アレクサンドリア』を作り、アレクサンドリアには、大きな図書館が作られます。
アレクサンドリア図書館と呼ばれている図書館には、当時、収集可能であった、パピルスなどに記された哲学などの文献が、ほぼ全てといって良いほど集められていました。
その収集っぷりは徹底していて、貿易などで訪れた船は徹底的に調べられて、荷物の中に収集する価値の有る文献が見つかると、それらは一時的に取り上げられて、図書館が抱えている大量の従業員によって文献が書き写されたそうです。

ただ、この際には、適切なお金も支払われていたそうなので、ファラオの横暴によって集められたというわけではないようですけれども。
また、貿易船の検閲といった受動的な行動だけではなく、積極的に知識を集めていた為、世界中から集められた蔵書は、文学、地理学、数学、天文学、医学などジャンルを問わず集められていたようで…
この様にして集められた蔵書は、パピルスで70万巻に達する程とされていて、その大量に集められた蔵書に引き寄せられるように、多くの有名な学者なども集まってきたようです。

図書館に集う学者たち

そうして集まった学者の中には、有名な人でいうとアルキメデスという人物などもいました。この人物は、アルキメデスの原理でも有名な人物なので、名前を聴いたことが有ると言った方も多いと思います。
その他にも「アルキメデスの熱光線」という、本当に発明したのか疑ってしまうような兵器を作ったともされていたりします。
この兵器は、簡単にいうと、太陽光を複数の鏡のようなもので反射させて、光を一点に集中させる事で、木造船を燃やしてしまおうという兵器です。

使用したのは太陽光を反射させるだけのもので、レンズ状のものではなかったようなので、効果があったのかどうかは分かりませんが、当時の発想としては、かなりぶっ飛んでますよね。

その他には、エウクレイデス、この人は、ユークリッド幾何学をつくった人物で、ユークリッド幾何学は、この後19世紀に入るまで、改良が行われながら数学の前提として使われ続けることになるものです。
前提と言ったものがどういったものかというと、任意で2つの場所であるポイントを決めて、それを結ぶと直線になるとか、そうして出来た長さが有限の直線は、延長することが出来るとか…
自分で決めたポイントを中心として、半径を決めれば円が書けるとか、全ての直角は等しい。 つまり直角は90度で、図に書いた直角は全て等しく90度だということですね。

数学の前提を作ったエウクレイデス

この前提は、義務教育の範囲のなかで、算数から数学に変わる際に、学校で教えてもらったと思います。
数学で習う、図やそれに伴う計算は、全て、この前提条件を満たす中で行われるわけですが、これを、ユークリッド幾何学と呼ぶそうです。
この前提の元ではじめて、三角形の内角の合計は180度になりますし、図形の面積なども割り出せるということです。

改めて、この前提を聴いた方は、『これらの前提は当然の事で、今更何を言っているんだ?』と思われるかもしれませんが…
基本的な数学は、この前提のもとに作られている理論なので、この前提が無かったとしたら、、平行線は交わりませんし、三角形の内角の和は180になりません。

ちなみにですが、これらの前提を満たさないもののことを非ユークリッド幾何学と呼びます。
非ユークリッド幾何学の世界では、2つの点を結ぶ線は直線になりませんし、三角形の内角の合計は180度になりません。
例えば、バスケットボールなど、球形の物に3つの点を書いて、それらの点を結んで三角形を作った場合、その内角の和は180度を超えるそうです。

知の集積地 アレクサンドリア

話を戻しますと、アレクサンドリア図書館は、多くの文献を世界中から集めることで、好奇心旺盛な優秀な人材を大量に集めた場所だったんです。
優秀な学者というのは、単独でもそれなりの成果は出せるんでしょうけれども、1箇所に集まることによって、相乗効果をもたらして、より研究が加速したりもするでしょう。

今でいうなら、IT業界におけるシリコンバレーのようなものですよね。
世界中から人材と情報が集まってきて、そういう人達が狭い範囲でひしめき合っているわけですから、ドンドンと新しい物が生まれてくる。
そういう環境なので、野心的な投資家も集まって、今までにない技術や理論が生まれれば、それを取り合うように出資する。こうして、シリコンバレーは最先端の地域になり、世界的に有名になっていきましたよね。

アレクサンドリアに話を戻すと、その図書館には人材だけでなく、随時、最新の書物が届けられるわけですから、当時としては最先端の研究機関と言っても良いのかもしれません。
こうして、図書館に最新の理論や優秀な人材が集まると、最先端の研究だけでなく、その人材や情報を生かして、人材育成なども行われていたようです。
つまり、勉強をしたい多くの若者を集めて、有名な哲学者が講師となって、授業を行ったりもしていたようなんですね。

こうして、アレクサンドリア図書館では、世界中から優秀な人材と情報を集める事で、最先端の研究を進めつつ、その知識を後世に伝えて更に発展させるために、人材育成などを行っていったんです。

哲学者が学問に打ち込む一方 労働者は…

ただ、この状態は現在まで続くわけではなく、キリスト教徒によって絶たれることになります。
一応、流れを簡単に説明してみようと思いますが、最初に言っておくと、私は歴史に詳しいわけではありませんし、歴史好きというわけでもありません。
その為、認識不足の点や間違った解釈をしている場合も大いに有るので、この話を聞いて興味を持った方は、是非、自分で調べてみてください。

当時のエジプトは、ギリシャによって征服されていたので、ギリシャ人の地位が高く、それ以外の人達の地位が低い状態にあったんですね。
そして、ギリシャ人というのは、生活に必要な労働は、基本的には奴隷に行わせるという生活を行っていました。

労働から開放されたギリシャ人は、哲学者になったり、国を収めるといった仕事をしたり、演劇や、それの原作となる詩を書いたりと、比較的、余裕のある生活を送っていたわけですが…
その一方で、生活に直結した労働、つまり、日用品を作ったり、ギリシャ人の身の回りの世話をしたり、食糧生産を担っていた奴隷というのは、結構、苦しい立場に追いやられていたんです。
立場の違いがはっきりとしていたので、差別のようなものもあったでしょう。

こういった状況は、ギリシャがローマに征服されても、特に大きな変化はなかったようです。
というのも、ローマもギリシャと同じ様に奴隷制社会だったので、奴隷にとって見れば、主人の属する国が変わった程度で、扱いはそれほど変わらなかったのでしょう。

貧困層を吸収して存在感を増すキリスト教

こういう、苦しい立場の人間に救いの手を差し伸べる事で勢力を伸ばしていったのが、キリスト教です。
奴隷の立場からすれば、自分たちの主人が崇めるギリシャ神話やローマ神話に登場する神々は、ギリシャ人やローマ人の生活の保証はしてくれるかもしれないけれども、奴隷の自分たちを救ってくれるわけではありません。
では、それ以外の宗教はどうなんでしょうか。

当時のエジプトには、ギリシャ神話やローマ神話の他にはユダヤ教がありました。
キリスト教の旧約聖書にも、エジプトで奴隷として働かされてきたユダヤ人が、モーゼに率いられてエジプトを脱出するという、出エジプト記がありますよね。
こういった物語が有るということは、紀元前のエジプトには多くのユダヤ人が住んでいたという事で、その人達が信仰するユダヤ教も一定の比率で存在していたのですが、ユダヤ教の神様が救ってくれるのは、ユダヤ人だけです。
エジプト人は救ってくれないんです。

しかし、そのユダヤ教から派生したキリスト教は違います。
キリスト教の教えというのは、『信じる者は救われる』というものなので、人種の違いに意味はありません。 ユダヤ人であってもギリシャ人であっても、エジプト人であったとしても、信じてさえいれば、救いは与えら得るんです。
この様な状況下であれば、エジプトの奴隷が救いを求める宗教は、1択になりますよね。 救いを求める為に信仰するのは、キリスト教しかありません。
支配者層よりも、奴隷として使われていた人間の方が人数的には多いでしょうから、信者の数という点で、キリスト教は他の宗派と対抗できる力を付けていくことになります。

(つづく)