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【ネタバレゲーム感想】 アサシンクリード オデッセイ ~Assassin's Creed Odyssey

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今回は、2018年の秋に発売された『アサシンクリード オデッセイ』のネタバレ感想を書いていきます。


物語の始まり

オープニングは、『テルモピュライの戦い』から始まります。
テルモピュライの戦いは、ペルシャの王・クルセクルスが、領土拡大の為に西側にあるギリシャまで攻め込んでくるという出来事です。
このペルシャの進行に対し、スパルタの王・レオニダスが迎え撃とうとするのですが、この時代の王は絶対的な権力を持っているわけではなく、ギリシャ神話を中心とした宗教の下に王政がある形なので、神託官にお伺いを立てないといけない。

レオニダスが伺いを立てに行くと、ギリシャはオリンピックの真っ最中で、祭りの最中に戦いはご法度だと言う理由で、軍隊を出すことを許可されない。
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仕方がないのでレオニダスは、自分が信頼できる部下300人だけを連れて、片方が崖、もう片方が絶壁になっている地形に陣取って、ペルシャ勢の進軍をせき止めたという戦争です。

このテルモピュライの戦いを、プレイヤーはレオニダスになって戦い抜くのが、このゲームのオープニング。

そこからシーンが変わり、レオニダスの子孫の話になります。
レオニダスの子供のニコラウスが、神託官のお告げを聞いて、2人いる自身の子供の1人を崖から突き落として殺すところから始まります。
先程も書きましたが、この時代の王は神託官よりも立場が弱い為、『自分の子供を崖から突き落とせ』という聞き入れがたい命令も聞き入れなければならない。

嫌々ながらも聞き入れるニコラウスだが、それを受け入れることが出来ないもうひとりの子供が、突き落とすのを止めようと処刑人に体当りすると、勢い余って処刑人と子供2人が崖に落ちてしまう。
助けようと思った子供は行方不明になり、自身はマルコスという人物に助けられて育てられ、その後、傭兵に成る。

時代背景

この物語は、紀元前430年頃のペロポネソス戦争中の古代ギリシアが舞台になっています。
当時のギリシャは、ギリシャという大きな枠組みの中に都市国家であるポリスが乱立し、それぞれが自治を行っていました。私は歴史に疎いので間違っているかもしれませんが、今のユーロ圏や戦国時代の日本と同じ様な状況と考えても良いと思います。
ポロポネス戦争とは、そのギリシャ内のスパルタが率いるペロポネソス同盟軍と、アテナイが率いるデロス同盟軍との戦いの事。

スパルタは王政でスパルタ王が統治し対し、同盟国にも自主独立を支持していたが、それに対してアテナイは民主政を採用し、アテナイの影響力を広げていってデロス同盟の覇権を握るという考え方で、ギリシャという地域にありながら政治のあり方そのものも違う為、双方が考え方を受け入れることが出来ずに、戦争に突入したようです。

ギリシャ全土が真っ二つに割れて、常に争いが起こっている時代。
このゲームは、この戦国時代に、傭兵として生きている主人公を操作して、それぞれの土地だ巻き起こる事件や争いに首を突っ込んでいくゲームです。

今までのアサクリとの違い

今までのアサシンクリードは、このシリーズが共通して持つ設定から、ストーリーは一本道でした。
その設定とは、現代版の主人公が、遺伝子が持つ記憶情報を元に過去にダイブし、その遺伝子を持つ人物の人生を追体験するという設定です。
その為、その遺伝子を持つ人物が経験した通りの出来事しか体験することが出来ず、物語は一本道にならざるをえませんでした。

しかし、今回のアサシンクリードには複数の選択肢が登場し、その選択によって物語の行方が変わります。
一番最初で、且つ、大きな選択といえば、主人公の選択です。 今回の主人公は男か女かを最初に選べるのですが、男を選ぶとそのキャラクターが兄となり、妹が信託によって崖から落とされるようになり、女性を選ぶと、主人公が姉になって弟が…という様に、物語が変化します。
この他にも、人物を救うのか殺すのかなど、クエストに出る選択肢によって物語が変化して行くのが特徴となっています。

その他には、クエストの内容が変わっています。 今までのアサクリは、どちらかというとお使いクエが多かったイメージがあります。
『どこどこにいって、○○を手に入れろ』とか『○○を倒せ』など。 数種類の同じ様なクエストを、いろんな地域で何回も繰り返す事が多く、最初は、精密に再現された過去の世界にテンションがあがるも、単調なクエストに飽きてしまうという印象だたのですが、今回のクエストは違い、ウィッチャー3の様になっています。

ウィッチャー3の様なクエといっても、ウィッチャー3をプレイしていない人には伝わらないと思うので、もう少し解説すると、例えば最初に『○○に会いに行け』というクエが発生し、その人物に会いに行くと、その人物によって少し物語が進みます。
複数のクエストがつながっていて、そのクエストの中で多くの情報や人物と出会うことで選択肢が増えていき、最終的には自分の判断で、複数の選択肢から正解と思うものを選ぶと、その選択に応じた結果が得られるというもの。

例えば、主人公の仲間のアスリートの親戚が、倒れて動けない状態になっている場面に遭遇した際に、『厳しく当たる』『病人の彼を気遣う』といった選択肢が与えられます。 病人を気遣うと、病気になった原因を探ろうという話になり、情報を集めるクエストに発展します。
情報を集めていくと、一流の競技者を攫っている組織があるという話と、増強剤の実験が行われているという情報が手に入ります。
すべての情報を手に入れて首謀者を突き止めて親戚の元に戻ると、依頼主の家が仕返しで燃やされている現場に遭遇。 親戚が住む村の人達の怒りはピークに達し、主人公に『俺達も一緒に仕返しに行くぞ!』と訴えますが、ここでも選択肢が現れ『1人で行く』『みんなで行く』を選べます。

ここで『みんなで行く』を選ぶと、村人との一体考えられるのですが、敵は武装した勢力なので、ただの村民に太刀打ちできるはずがない。 この選択を選ぶと、敵の拠点への侵入は楽になりますが、村民は皆殺しにされてしまう・・・
この様な感じで、複数のクエストが連なって一つのクエストになっていて、それぞれのクエストに選択肢があって分岐しているので、ただのお使いクエストよりも楽しめる仕組みになっています。

ネタバレ感想

今回の作品がマルチエンディングという情報は、プレイする前から知って履いたのですが、今までの作品の設定上、どの様にマルチエンディングにするのかは分かりませんでした。
というのも、先程も書いた通り、アサクリシリーズは過去に生きた人の人生にダイブして、シンクロしながら人生を体験するという話なので、その人の歩んできた人生は決まっているし、結末も決まっている。
そこに選択肢は無いというのが今までの設定なので、マルチエンディングにしようがなかったわけですが、今回のゲームではマルチエンディング。。 どのようにして、辻褄を合わせるのかと心配したのですが、何の事はない。先駆者の残した時間操作系の技術が活躍してただけでした。
まぁ、多少、無理矢理感は有りましたが、アサクリは都市伝説などをメインに据えた作品なので、こんな感じの説明もありかなとは思いますが。

プレイしてみた感想ですが、このシリーズ全般に言えることですが、舞台になっている歴史を知っていれば、それだけ楽しめる幅が増える作りになっています。
今回の作品は、紀元前430年頃のギリシャという事で、『無知の知』で有名な哲学の祖と言われているソクラテスなども登場します。
ソクラテスは自身を無知だと主張している為、後世に伝える為の知識などは書き記してはないのですが、その弟子のプラトンが師匠であるソクラテスを主人公にした対話篇を多数書いて、底に描かれているソクラテスをキャラクターにして登場させています。

対話篇とは、ソクラテスと『誰か』が対話をしている様子を書いたもので、ストーリーを楽しむというよりも、そこで議論されている内容を楽しむものなのですが、この中に対話相手として、『ヒポクラテス』や『アルキビアデス』『プロタゴラス』『アリストファネス』といった人物が出てきたりします。
私が対話篇を読んだ範囲では、アルキビアデスがかなりぶっ飛んだ人物なのですが、そのぶっ飛び具合がゲーム内で上手く表現されていた様に思えます。
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どんな人物化を簡単に書くと、美少年のアルキビアデスは、ソクラテスの賢人だと思い込み、彼の持つ知恵を授けてもらおうと、彼のベッドに潜り込んで誘惑をする。
しかし、その誘惑に屈しなかったソクラテスは、アルキビアデスに一切手を出す事なく、夜が明けてしまう。 これに気を悪くしたアルキビアデスは拗ねて、ソクラテスの悪口を言いまくるが、心の底では信用しているので、悪口を言い過ぎると賛美して機嫌を伺うというツンデレ少年に成る。
この他にも、酒によっては粗相をして他人に迷惑をかけまくるという性格のせいで、石像が壊されるといった事件があった際には、真っ先に疑われてしまう人物なので、アテナイの中で重要な役職についているのにスパルタに亡命し、スパルタで重用な職に就くというスパイの様な事をしていたのですが、その後、再びアテナイに戻り、持ち前の口の旨さからアテナイで再就職してしまうという人物だったりします。
こんなアルキビアデスも登場し、クエストを通して主人公を翻弄してきます。

この他には、プラトンの作品で『饗宴』という対話篇があり、酒の席で知的なゲームをするという話があるのですが、その場面もゲーム内で再現されていたりします。
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その酒宴には、ソクラテスの他にプロタゴラスなども参加していて、プラトンの対話編を読んだ事がある人間は、思わず『おぉ!』っと思わせてくれる演出になっていたり。
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その他には、現在分かっている中で初めて歴史を書き残すという行為を行い、歴史書ヒストリエ)を書いたヘロドトスが、主人公の仲間になって一緒に旅をします。
ちなみに歴史というタイトルの本ですが、ヘロドトスが生きた時代よりも前の時代を考察した歴史書ではなく、彼が生きていた時代に起こった事をそのまま書き起こしているので、後世に残すための歴史書という感じですね。
これを書くために、ギリシャ全土を訪問して情報を集めたようですが、そのヘロドトスは、じつはこのゲームの主人公の船に乗って、旅をしていたという解釈になっています。
私はヘロドトスに関しては詳しくありませんが、このあたりのことを知っている人にとっては、面白い演出なんでしょうね。

肝心のメインストーリーですが…
大きく分けると3つ有り、家族が一つに再集結するクエストと、コスモスの門徒を壊滅させるクエストと、伝説のアトランティスのクエストがあるのですが、どれもカタルシスが得られない感じのエンディングだった印象です。
家族の再集結も、再集結後に力を合わせて巨悪に立ち向かうなどの演出はなく、集まった時点で終了なので、『これで終わり?』って感じでしたし、コスモスの門徒も、『コスモスの亡霊』の正体がわかったところでは『おぉ!』と思ったのですが、その人物と接触したところで、達成感は得られない。
最後のアトランティス編では、主人公に縁のある人物が登場し、その名前を見た時はびっくりしたのですが、最後はなんともやるせない感じに。
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ただ、メインクエストをクリアーしたところで、エンディングやエンドロールがあるわけでもないので、メインクエも、その他のクエストと同じ扱いって感じなのかもしれません。
skyrimなども、そんな感じですしね。

メインクエはこんな感じですが、その他のクエストの面白さが格段に上がっている為、トータルで考えると、過去最高の出来だとは思いますけれどもね。
というか、3Dで再現された古代ギリシャの世界を探索できるだけで、お値段以上の価値はある作品なんですけれども。
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ストーリーの方は、今後、DLCで強化されていくと思いますので、興味を持った方は、買ってみてはいかがでしょうか。