だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【映画ネタバレ感想】 アサシンクリード

広告

先日(2018/12/14)の事ですが、前から気になっていた映画『アサシンクリード』がNetflixで配信されていることを知ったので、早速観てみました。
今回は、その感想をネタバレ全開で書いていきます。 ネタバレを気にする方は、先に観てから読まれることをお薦めします。


簡単なあらすじ

主人公が少年時代に、外でアクロバティックな遊びをしたあとに家に帰ると、父親が母親を殺害した現場に遭遇してしまう。
父親はゆっくりと少年の方に近づいていくが、それと同時にその親子の家に、車に乗った何者かが大勢押しかけてくる。
それを知った父親は、少年に向かって『逃げろ!』と叫び、少年だけがその家から脱出する。

時は流れて、少年は中年に。 父親の母殺しが当時の少年に大きなショックを与えたからか、少年は道を踏み外し、堕落した人生を歩み、ポン引きを殺した罪でに警察に捕まり、死刑判決を受けてしまう。
薬剤を投与されて意識朦朧の中、主人公も死を覚悟したが、その後、別の病院のような施設で普通に目覚めることになる。
不思議に思っていると、女医が『あなたは死刑が執行されて死んだ事になったが、実際に記録が抹消された形でここに運ばれてきた。私はあなたを助ける。』といった感じのことを告げ、彼女の実験につきあわされることになる。

その彼女の実験とは、500年前のスペインに実在したアサシンの人生を追体験し、その記録を持ち帰る事。
主人公の祖先は、秘宝と言われる『エデンの果実』に最後に接触した人物で、その祖先の記憶にダイブすることで、秘宝を手に入れようとしているのが、女医が所属するアブスターゴ社の目的。
その目的を果たす為に、主人公の身柄はアブスターゴに押さえられた。 (ここから分かることは、アブスターゴは死刑囚を秘密裏に入手出来る程の力を持っているという事。)

最初は、半ば無理やり実験に協力されられる主人公だが、女医の父親でありアブスターゴの代表に、『アサシンは信用できない』といった感じのことを吹き込まれる。
施設内にいた自分の父と対面させられたり、施設に収容されている他のアサシンたちから襲われたりした事もあり、主人公は自発的にアブスターゴの実験に参加することになる。
その後、主人公は自らの意思による先祖の記憶のダイブで、『エデンの果実』の隠し場所を発見する。

しかし、実験を通して先祖の記憶を完全に体験したことにより、先祖のアサシンとしての意思などが流入現象によって主人公に流れ込み、主人公はアサシン教団の信者として覚醒。
アブスターゴがテンプル騎士団の一部ということも分かり、今度はアブスターゴから『エデンの果実』を取り戻す為に、施設内のアサシン達と共闘。
だが、一歩及ばず、女医の親子を逃してしまう。

その後、女医と父親はスペインに渡り、コロンブスの埋葬品の中から『エデンの果実』を得て、研究の成果としてテンプル騎士団の会合に持っていく。
女医と父の目的が達成されたように思えたが、ここで女医は、父親の本心を聴いてしまう。
女医は、この世からの暴力の根絶を目指し、それを実現する可能性がある『エデンの果実』を求めたが、父親の目的は違っていて、秘宝の力を利用することにより、人類から自由意志を奪うことだった。

女医は自分が利用されていた事に気が付き、放心状態になリ、会場の入口付近までフラフラと歩いていくと、そこには、自分が実験体として利用していた主人公が。
女医は、彼が秘宝を取り戻しに来た事を悟るが、直前に父親に裏切られていた為に、アサシンを見逃す。
その後、主人公は女医の父親を暗殺し、『エデンの果実』を取り戻す。

女医は、父親の死体を見て、アサシンにて期待して秘宝を取り戻す決意を固める。

作品を見て感じたこと

真っ先に感じたことは、説明不足だということ。

この作品は、同名タイトルのゲームを映画にしたものなのですが、その作品の少なくとも1作目をプレイしていないと、意味がわからないと思います。 というか、観ている前提で作っているとしか思えない作りになっています。
例えば、先程も書きましたが、この作品で主人公はアブスターゴによって身柄を押さえられてしまうわけですが、何故、主人公の身柄が必要だったのかという説明がありません。
ゲームをやっている人にとっては、『昔のアニムスは、3重螺旋構造のDNAから記憶遺伝子を読み解いて記憶を再現するから、重要人物の子孫を生きた状態で確保する必要があるんだな。』ということが分かりますが、ゲームをやってない人には意味がわからないでしょう。

こういった事は一つではなく、ゲーム未プレイの方には、アサシン教団とは何なのか。テンプル騎士団とは何なのか。エデンの果実って?という疑問が次から次へと出てきますが、それらが丁寧に解説されることはありません。
逆にいえば、これらの解説を端折っている為、ゲームをプレイ済みで、アサシンクリードの世界観をある程度把握している人間にとっては、バトルシーンやパルクールなど、アサクリらしい映像をふんだんに見ることが出来たりするんですけれどもね。

アサクリの世界観

もしかすると、この投稿を読んだ事で、この映画に興味を持つ人もいらっしゃるかもしれないので、アサクリの世界観を簡単に紹介してみようと思います。

アサクリシリーズでは、2千年以上続く『秩序』と『混沌』の戦いが描かれています。
主人公サイドであるアサシンは『混沌』を象徴するもので、敵であるテンプル騎士団やアブスターゴは、『秩序』を象徴するものとなっていて、世界に秩序をもたらそうとするテンプル騎士団にアサシンが抵抗するというのが、大本のストーリーです。

ここで、『世の中には秩序が有ったほうが良いんじゃないの?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、秩序と混沌はバランスが重要で、秩序による完全支配というのは、それはそれで問題があったりするんです。
どの様な問題があるのかというのは、完全に秩序が支配した世の中を想像してみると分かりやすいかもしれません。
一度作られた秩序が崩壊するというのは、ルールを守らない人間がいるからです。 ルールに疑問を感じ、それを破る。 この様な行為が増え続ければ、ルールは無意味なものとなリ、秩序は崩壊してしまいます。
では、秩序の崩壊を起こさない為には、どのようにすればよいのでしょうか。 みんなが疑問視しないような、全ての人に配慮したルールを設ければよいのでしょうか。 それができれば理想的なのかもしれませんが、世の中の人の価値観はバラバラなので、全ての人に配慮したルールなんてのは作れません。
ならどうすべきか。 答えは、全ての人類が、ルールに疑問を感じずに盲信するようにすれば良い。 定められてルールに従うことが最大幸福となるようにしてしまえば良い。 これは、いってみれば自由意志の根絶で、人間が自分自身の考えで行動するというのを出来なくしてしまえば良いわけです。

人間から意思を奪い、ロボットのようにしてしまうことが可能になれば、秩序は永遠のものとなります。

ここで疑問が出てくるのが、『人間から自由意志なんて奪うことが出来るのか?』といった疑問ですが、当然のことながら、普通の方法では無理です。 しかし、それを可能にするものが存在するんです。
それが、先駆者が作った『エデンの果実』です。

アサクリの世界では、人間というのは先駆者によって創造された実験動物でしかありません。 では、先駆者とは何なのかというと、人間の認識でいえば、神々という事になりますし、科学的な言い方をすれば、人類が生まれる以前に存在した知的生命体ともいえる存在です。
先駆者達は、今現在の人間の科学力を遥かに凌ぐ超文明を持っていて、現代の人間が便利に生きていく為の労働を押し付ける為にロボットやAIを生み出したように、労働職として人類を生み出しました。
その人類を自分達が都合の良いように操れるように、エデンの果実といった道具も作り出し、実験が進められたわけですが、その人類の中の一組のつがいであるアダムとイブがエデンの果実を盗んで施設から逃走してしまいます。

アダムとイブによって、人類をコントロールする道具を盗み出されてしまった事で人類は自由意志を手に入れてしまい、自分たちを奴隷扱いする創造主である先駆者に反旗を翻します。
先駆者 vs 人類の争いが起こりますが、その戦いの最中、文明を滅ぼすレベルの太陽フレアの兆候が現れます。 しかし、先駆者の注意が対人類に注がれたせいか、先駆者達は太陽に起こった異変を見逃してしまい、太陽フレアの対策を取ることが出来ず、先駆者の文明は太陽の暴走によって崩壊してしまいます。
その後、先駆者たちが残した先進的な技術は、世界各地に『謎の遺跡』『オーパーツ』として残る事になリます。

太陽フレアからしぶとく生き残った人類の一部が、この先駆者達が残した技術の存在を知り、人類を支配する為に秘宝を追い求めるようになる。これをルーツとするのが、テンプル騎士団といわれる組織で、敵対しているのがアサシン教団。
テンプル騎士団自体は、十字軍遠征に参加した騎士団の一つらしいが、その前身となる組織も存在している(オリジンで登場)。 十字軍遠征で秘宝を守るイスラム勢力(アサシン)と戦いが繰り広げられ、この戦闘がきっかけで、アサシン教団(『1』の主人公アルタイル)とテンプル騎士団は組織を世界各地に広げ、世界中で秘宝を巡る戦いが起こることになる。

この前提を踏まえた上で作品を観なければ、理解が出来ないと思います。


感想のまとめ

アサクリシリーズ全般にいえることですが、舞台となっている歴史的な背景か、アサシン教団とアブスターゴという現代版の戦いのどちらかに興味が無いと、楽しめない作品となっています。
特に今回は映画ということで、過去にダイブしている時間がかなり短い為、スペイン異端審問の詳しい説明はほぼない状態でストーリーが展開されています。ゲームを未プレイの人は、十字軍遠征やレコンギスなどのヨーロッパとイスラムの戦いの大まかな流れを知らないと楽しめないと思います。
そういった意味では、かなり観る人を選ぶ作品かもしれません。

これがゲームであれば、過去にダイブして歴史を体験する時間が40~60時間ぐらいある為、私のように歴史に疎い人間であったとしても、ゲームプレイを通じてある程度は楽しむことが出来るのですが…
今回は映画ということで、全部を合わせても2時間ない状態。その時間で、アサシン教団とアブスターゴの関係やらアニムスの説明やらスペイン異端審問の演出を行わなければならない為、かなりの情報を詰め込めるだけ詰め込んだ作りになっている為に、過去パートがかなり短い時になってしまっていて、この作品単体で過去パートを理解するのは不可能だと思います。
また、短い時間に大量の情報を詰め込んでいる為に、僅かなセリフに大量の情報をのせなければならず、よくわからない言い回しや演出になっている上に、それでも説明不足な為、ゲーム未プレイの人にはかなり観るのが厳しい作品に仕上がっているかもしれません。

では、ゲームをプレイ済みの人にとってはどうなのかというと、現代版の作りがしっかりしていて、それなりに楽しめたりします。
今作品に登場するアニムスが、かなり大掛かりな装置だったり、アブスターゴ社も、テンプル騎士団から多額の予算を受け取って何とか研究が続行できている組織だったりと、アブスターゴがまだ自立できていない、ゲーム1作目よりも昔の時代を匂わせますし、『ここから、1~3のデズモンドが出てきたりするのか・・・』と思いを馳せることも出来たり。

演出面でも、アサクリシリーズでは代名詞になってるパルクールシーンも沢山出てきますし、煙幕を使った目くらましからの暗殺シーンもあったりと、ゲームをプレイしていると『これこれ!』と思わせる演出盛りだくさんで、その確認作業だけでも楽しかったりします。
ワシの目線から見る500年前のスペインの街もいい感じですし、原作に対するリスペクトを感じさせます。 原作好きな人であれば、観ておいて損はないのではないでしょうか。

まとめると、原作を知ってる人は観たほうが良いけれども、原作未プレイの人は意味がわからない映画ともいえますね。