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【ネタバレ感想・考察】『トロイ伝説(Netflixオリジナル)』 クズ同士の争いで善人が死んでいく物語?

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ここ最近、古代ギリシャについて個人的に調べることが多く、当時の雰囲気を知りたいと思い、Netflixで検索した所、Netflix制作の『トロイ伝説』というドラマが有ったので、観てみました。
今回は、その『トロイ伝説』のネタバレ感想を書いていきます
まだ観てない方で、除法を入れずに観てみたい方は、先に見てから読むことをお勧めします

簡単なあらすじ

トロイ伝説は、トロイとギリシャのポリスの一つであるスパルタとの戦争。トロイア戦争を描いた作品です。
パソコンを使う人などは、コンピューターウイルスでトロイの木馬というのを聴いたことがあると思いますが、その名前の語源になったのが、このトロイア戦争だったりします。
ただ、舞台となったトロイ自体が、架空都市なんて言われていたりしますし、それに伴うトロイア戦争自体も、実際にあった話なのか架空の戦争なのか分からないそうです。

ただ、観た感想から言わせてもらうと、この戦争そのものに神々が絡んでいたり、ギリシャ神話の英雄が出てきたりと、仮に本当だとしても、かなり盛られた話だとは思いましたね。

簡単なあらすじですが、トロイという王国に男の子・アレクサンドロスが生まれるのですが、未来を見通せる力を持つ姉や神官によって、アレクサンドロスが国を滅亡させてしまうことが分かり、生まれてすぐに処刑を言い渡されて捨てられます。
しかし、指示を受けた羊飼いは、赤子を殺すことは出来ないと、王の命令に背いて、男の子にパリスという新たな名を付けて、自分の子として育てます。
パリスはすくすくと育ち、親の目を盗んでは羊飼いの仕事をサボり、女を抱くような青年へと成長していきます。

そんなある日の事、パリスは1頭のヤギを追って森に入った所、ゼウスに頼み事をされます。
頼み事とは、『一番美しいもの』へ宛てた黄金の林檎を、ゼウスの妻ヘラと軍神アテナと、美の女神アフロディーテの誰に託すのか、その選択をパリスに任せる(パリスの審判)というもの。
ヘラは、自分を選んでくれたら支配者にしてやると言い、アテナは、最強の男にしてやると主張。 そしてアフロディーテは、一番いい女をやるといってくる。
権力か、最強の力か、魅力的な異性か… 結構な難問だと思うのですが、パリスは即答で『アフロディーテに!』と答え、選ばれなかった2人の女神は悲しみと怒りが合わさったような表情で雄叫びをあげる。

それから少し経ち、偶然にもトロイの皇子たちと出会ったパリスは、王族たちに勝負をふっかけ、トロイで行われる祭り内で勝負をする事になる。
勝負では負けたのだが、王がパリスの体についているアザを見つけ、自分が捨てた子だと確信し、一度は捨てたけれども、もう一度、家族として受け入れると主張して、パリスはアレクサンドロスとして生きる事になる。

生まれは王族でも、元々が羊飼いとして育っているので、王族として何をして良いのかも分からず、毎日遊び歩いているアレクサンドロスに対して、父である王は、スパルタの王に挨拶に行けと外交の仕事を与える。
付けてもらった貴族の手助けもあり、外交は順調に進んでいたが、アレクサンドロスがスパルタの王女ヘレンに一目惚れし、ここで、アフロディーテとの約束が果たされて、両者は両思いになる。
アレクサンドロスは、スパルタ王が用事で城を開けている間にヘレンを寝とり、ヘレンもすっかりその気になり、アレクサンドロスの荷物に紛れてトロイへと行き、スパルタ王は大激怒。

アキレスやオデッセウスといった英雄の元や、自分自身の兄・アガメムノンの元を訪れて戦力とし、軍隊を組織してトロイへ向かう。
一方、トロイでは、王妃を拐った事を問題にするも、アレクサンドロスを一度捨てた事を負い目に感じてか、強く出ることが出来ず、2人の中を認める事にしてしまう。

スパルタ軍の方は、いきなり攻めるよりも、まずは話し合いという事で、和睦の条件をトロイに対して突きつける。 条件は、王女の返還の他に、金銭や交易ルートなど。
だが、それをのむとトロイが崩壊してしまう程の条件に、トロイの王は激怒。 最初から、トロイ滅亡が目的か!と言わんばかりの勢いで、スパルタとの戦争を決意する…

ネタバレ感想

この話ですが、ひとことで言うと、クズ共が起こした戦争で、良い人たちがどんどん亡くなっていく作品です。
この作品には、基本的に『良い人』というのが出てこない。強いていうなら、スパルタ側のアキレスと、アキレスと対戦したアレクサンドロスの兄が信念を貫いた人という意味では、好感が持てるぐらい…
後は、皆が自分勝手に振る舞った結果、全くの無関係であるトロイの一般市民達を道連れにして死んでいくという話だったりします。

では、各登場人物がどんな人間なのかを私の視点で観ていくと、まず、攻め込まれる側のトロイの王ですが、神託が有ったという理由だけで、生まれたての我が子を殺そうとします。
しかも、自分の手では無く、他人に命令して… 百歩譲って、その子が王国にとって本当に災いが有るのであれば、殺せと命じた羊飼いに『事実を隠して育ててくれ』と頼めば良いのですが、殺せと支持をします。
結果として、羊飼いは赤子を殺せなかったのですが、殺しを支持した王は、何を血迷ったか、殺せと命じた子が成長した姿を目にして、もう一度、自分の子として受け入れます。
じゃぁ、最初の神託を信じたのは、何だったのかって感じですよね。 一国の王なのに、その場の感情で動き過ぎです。

次に、スパルタの王女。 アレクサンドロスが一目惚れして、自分の立場もわきまえずに感情に走ったのは、良しとしましょう。
何故なら、アレクサンドロスは王の子として生まれてはいますが、人生の大半を羊飼いとして過ごしているので、外交とか高度なことは理解できていなくても仕方のないことだからです。
しかし、王女は別です。 ヘレンは、話から察するに、貴族の家の子として生まれて、王に嫁ぐ為の教育を受けた上で嫁に来ています。
自分の立場もわきまえているはずですし、自分が他国の王子に寝取られたとスパルタ王が気がつけば、大事になる事は分かりきっているはずなのに、感情に流されて、自分の判断でトロイに密入国します。

そして更に問題なのが、その密入国をトロイの王族たちが認める点です。
完全に自分たちが悪いのだから、まずは王女を返して、事情を説明すべき所なのに、相手が来るまで何もアクションを起こさない。 王族以前に、まず人としてどうなのかといった感じですよね。
まぁ、当時は船移動ですし、こちらから連絡を取るよりも、相手が先に来てしまったというのは、分からないではないですが、向こうの突きつけた条件が法外過ぎるから戦争だ!ってのは、どうなんだって感じですよね。
そもそも、密入国をしてきたのは王女の方で、拐ったわけではないわけだから、話し合えば和睦出来た可能性も有るのに戦争に突入し、しかも、その戦争で前線に送られるのは市民という… 自分が蒔いた種なんだから、自分が一騎打ちで勝負しろよという感じですよね。

次に、王妃を拐われた被害者側のスパルタですが、コイツラもこいつらで、クズが多い。
まず、スパルタ王の兄・アガメムノンですが、トロイに向けて船を出そうとするも、天候が安定せずに出航できない状態になる。
少し待てば良いものを、一刻も早くトロイを恫喝しに行きたいと思ったのか、部下に解決策を探らせると、部下が『アガメムノンの子を海神の生贄に捧げる』という解決策を持ってくる。
その話を聴いて少しは動揺するが、一刻も早く出向したいアガメムノンは、家族に『アキレスと娘の婚礼を挙げる』と嘘をついて娘と妻を呼び押せて、祭壇で娘の首を切って殺します。

海が永遠に荒れてる事なんて無いのだから、少し待てば良いものを、早く出向したい一心で殺すって、意味不明です。
そのアガメムノンは、その後のトロイとの戦争で、部下が見つけて自分の奴隷にすることにした女性の捕虜を観て、『娘に似ているから』という理由で、その戦利品を取り上げる。
ちなみに、その自分の子に似た娘は、神官の子で神に仕える身、その娘を女として抱く。海を鎮めるために自分の子供を殺して神に捧げた人間が、神に仕える身の女を抱くって、何を考えてるんでしょうね。  それ以前に、アガメムノン。自分の娘をどんな目で見てたんでしょうね。

その後、また天候が荒れるなどが有ったので、神官の子を親のもとに返すように部下から言われ、渋々返すが、抱く女がいなくなったので、アキレスの女奴隷を奪い取る。
アキレスからしてみれば、自分にとってはどうでも良い戦争に担ぎ出されて、その上、戦利品まで王に奪われたので、忠誠心が激下がり。
『もう、私は戦わない。』『そもそも、この戦いに意味は有るのか。意味のない戦いに身を捧げることなんて出来ない』としてキャンプに引きこもるが、アガメムノンは、そのアキレスを戦場に引きずり出すために、アキレスの部下を殺して、『敵が卑怯な真似をして、お前の部下を殺したぞ!』と吹聴して、アキレスを騙して戦場に戻らせる…

では、全ての元凶のヘレンはどうなのかというと、こいつはこいつで、頭がお花畑。 トロイの城内にスパルタのスパイが入り込んでいるのに、報告もせずに見て見ぬふり。
スパルタ軍が多勢で城を包囲し、籠城戦にした上で、スパイの手引きで密かに城内に侵入したアキレスが、ヘレンに『このままだと餓死するから、早めにスパルタに帰国して、戦争を終わらせたほうが良い。』と忠告すると…
『今、地下トンネルを掘って同盟国との通路を作ってて、もうすぐ完成するから、食料も沢山入ってくるから大丈夫。』と、機密中の機密をあっさりアキレスに告げ、そのせいでアキレスの手によって同盟国が焼けうちにされるという…
ちなみに、その際に持ち帰った捕虜が、神官の娘であったりアキレス所有の女奴隷だったりするわけですが、彼女らは、ヘレンのせいで国を滅ぼされて酷い目に有ったといっても良いでしょう。

と、この中で唯一、感情移入できる常識人は、アキレスしかいないわけですが、そのアキレスも、トロイ勢力によって部下を皆殺しにされ、最終決戦で主人公にアキレス腱を射抜かれて死ぬことになるので、本当に救われない。

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最後は、スパルタ勢が何故かスパルタに帰り、海が荒れないように、持っている食料を全て木馬の中に詰め込んで、海神への捧げ物としておいていったものを、トロイ側が略奪し、その食料で宴をあげるも、実はその中にスパルタ王や側近を含めた数人が隠れており、宴で浮かれているトロイ勢を横目に正面の門を開けて、一斉攻撃。
この時、スパルタ王は女子供を含めて全て殺し、ヘレンに対して、『全部お前のせいだ!』と言い放つ。 私はスパルタ王そのものは嫌いですが、この発言には思わず『正にその通り!』と同意しまったり。

後、忘れてはいけないのが、オデッセウスというギリシャ神話で英雄扱いされている人物。
この人物も、アキレスと同じく、王族同士の喧嘩で戦争に行きたくないと思っている人物なのですが…

アキレスとは全く違った性格で、本当に英雄なのかどうかも疑わしい人物。
この人物は、武闘派というよりも知略家で、主に戦略を考えるポジションの人なのですが、オデッセウス本人は平和主義で、できるだけ犠牲は少ないほうが良いと思っているタイプなのですが、基本的には王の言いなり。
アキレスが、王の自分勝手な行動に呆れて、自分の兵を一切出さないという形で抵抗したのに対し、オデッセウスは反論も特にせず、言われたことを嫌々ながら完璧に遂行していくタイプです。

この仕事っぷりは徹底していて、トロイ陥落後、トロイの王族の生まれたばかりの赤ん坊が生き残るのですが、オデッセウスはそれを目撃した上で、見逃します。
ここまでは良いのですが、その後、アガメムノンが赤子の泣き声を聴いてしまい、結局、見つかる。
そして見つかった直後に、アガメムノンはオデッセウスに対して、『城壁の上から突き落として殺せ』と命じるのですが… アキレスなら、この命令に背いていたかもしれませんが、イエスマンのオデッセウスは嫌な顔をするぐらいが関の山で、母親の目の前で、言われた通りに子供を殺します。

アガメムノンの事ですし、ここで断れば、家にいる自分の家族がどんなめに合わされるかもわからないでしょうから、仕方がないといえば仕方がないのでしょうけれども…
クズキャラが大集合のこの作品において、個人的に一番印象が悪かったのが、オデッセウスでしたね。

少し考察

この物語が、実際の史実を元にしているのか、完全な創作なのかは分かりませんが、仮に創作だとして、この物語では何を伝えたかったのでしょうか。
主人公は最初に、神々によって『権力』『武力』『愛』のどれかを得る権利を提示され、『愛』を求めたわけですが、その『愛』によって、破滅に追い込まれます。
では、主人公が『権力』や『武力』など、他のモノを選んでいたとしたら、主人公は幸福になれたのかというと、トロイの滅亡は免れた可能性は有るでしょうけれども、幸福に離れなかったでしょう。

それは何故かというと、『権力』や『武力』を選んだ人間が物語内に登場し、その人物が幸福になっていないからです。
『権力』の象徴としてのはスパルタ王。 そして、最強の『武力』としてのアキレスですが、アキレスは、王が振るう権力にはびくともせず、自分の意志を貫き通す事が可能でしたが、愛の化身である、主人公のアレクサンドロスに倒されます。
そのアレクサンドロスを倒す事でスパルタ王は戦争を制しますが、自身の家庭は崩壊し、決して幸福な状態とは言えない状態になっているからです。

では、その3つではなく、『知恵』があったらどうなのか。上手く立ち回ることが出来たのかというと、そうでもなく、『知恵』の化身として登場したオデッセウスは、アガメムノンに顎で使われて自身の手を血に染めます。
自身の意思を貫き通すには、『武力』か『勇気』といったものが伴わないと、知恵のある行動を貫き通すことは出来ないのでしょうし、また、それだけでも、上手くは行かないのでしょう。

結局の所どれを選んだとしても、不幸になる。 では、上手くいく為には、つまり、『幸福』になる為には何が必要だったのでしょうか。
古代ギリシャでは、『徳』というものが研究対象になり、『徳』の本質が研究対象になっていて、討論が行われていました。
『徳』の正体について、『正義』であったり『美』『勇気』様々な物が関連しているのではないかということになりましたが、それらだけではなく、『節制』や『分別』といったものも、欠かせないのではないかという事になりました。

つまり、『権力』『武力』『愛』のどれか、または全てを手に入れても、そこに『節制』であったり『分別』がなければ、結局の所、手にした欲望によって身を滅ぼすということなのでしょう。
こうして読み解くと、上手く出来た話だなとは思うのですが… 『分別』や『節制』がない人間が滅ぶのは良いとして、それ以外の、ただ生活しているだけの善良な市民までもが皆殺しにされるというのが、結構、キツイものがありましたね。

Netflixに会費さえ払っていれば、無料で観ることができる作品なので、興味があれば、見てみてはいかがでしょうか。