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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

経済指標は好景気 でも、それを実感できないのは何故だろう?

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私は、家族で小さな工場を営んでいるのですが、ここ3年ぐらいの売上の落ち込みが、かなり酷い状態です。
でも世間では、安倍首相のアベノミクスのお蔭で、バブル期を超える景気回復で、企業の業績の伸びも凄まじい!!なんて言われていたりします。
『そんなに、世間では景気が良いの? うちの工場が廃業寸前なのは、単に、自分の経営能力がないだけ?』なんて思っていましたが…

先日、目にしたTBSによる世論調査によると、好景気の実感が有る人は11%に過ぎず、実感が無い方が84%になっているようです。
news.tbs.co.jp
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まぁ、そうですよね。
私が商品を納めている得意先の売上も下がっているから、ウチの工場の売上も下がってるわけですしね。
でも、指数だけ読み取ると、今の日本の景気は良いようです。何でこんな事になっているのか。この事について、今回は考えていきます。

給料の中央値は下がっている

テレビなどでは『アベノミクスのお蔭で好景気になり、仕事はあるけれども人が足りない、人手不足状態になって嬉しい悲鳴!』的な意見を聞くこともあります。
企業業績も右肩上がりで、バブル期を超える収益をはじき出しているなんて話も聞きます。

この資料によると
toukeidata.com
確かに、給料の平均値だけを見ると、2016年はバブル絶頂期の1990年と並ぶ程に回復しており、バブルの再来といっても良いのかもしれません。
しかし、中央値の方はどうなのかというと、回復しきれていないんです。

ここで、平均値と中央値の違いを説明します。 平均値というのは、データを全て足し合わせて、その数で割ったものが平均値です。
例えば、100人の平均年収を計算する場合は、100人の収入の合計値を100で割ったものが平均年収となります。
では、中央値とは何なのかというと、100人の人間を、年収の少ない者から多い者へと順番に並べていき、丁度、真ん中の人の年収を中央値とします。

この両者の場合、どちらが優れているのかというと、平均年収のような値の場合は、中央値の方が優れているんです。
『何故? 平均年収の方が数字として信頼できそうじゃない?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、平均値というのは、案外、信用出来ないんです。

これは例えば、99人の人間の年収が50万円で、残りの1人の年収が5000兆円のケースで考えてみると、分かりやすいかもしれません。
この場合、一人あたりの平均年収は約50兆円になるわけですが、99人の実際の年収は50万円です。
平均値というのは、たった一人の超大金持ちや、極貧の人が計算に加わるだけで、数値に大きな影響を与えてしまうんです。

つまり、中央値の上昇率が低い一方で、平均値の伸びが良いという事は、多くの人の給料が下がったままで、一分の人間の給料が上がっているという事になります。

どこにシワ寄せがいっているのか

これは、単純に労働者にシワ寄せがいっているんだと思いますよ。
読売新聞の記事によりますと、企業の内部留保は6年連続で上昇中で、17年度末の内部留保(金融・保険業を除く)は、446兆4844億円!前年度末より40兆円以上も増えたそうです。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20180903-OYT1T50082.html?from=twwww.yomiuri.co.jp

40兆も増えたんだから、従業員にも相当、還元されているんだろうと思うかもしれませんが、先程の給料の中央値を観ても分かりますが、多くの従業員が手にしている給料は上がってないんですよ…
平均値が上昇しているわけですから、内部留保を溜め込めるような会社の幹部の給料は、上がっているのかもしれません。
しかし、こういう会社から受注をされて、現場で働いている人の給料は、上昇していない。 下手をすれば下がってたりするんです。

つまり、労働者から搾取して、企業がお金を溜め込んでいるという形。
収益の再分配が上手く行われていない事で、好景気を実感している人の数が極端に低い状態なんでしょう。
別のニュースでも、内部留保が積み上がる一方で、労働分配率は下がっていると記事にされていました。
https://www.excite.co.jp/News/world_g/20180904/Reuters_newsml_KCN1LK04M.htmlwww.excite.co.jp

労働分配率とは

労働分配率とは、wikiによると、『企業において生産された付加価値全体のうちの、どれだけが労働者に還元されているかを示す割合。これは「人件費/付加価値」で算出された%で表す。』とのこと。
付加価値とは、企業が新たに生んだ価値の事です。簡単に説明すると、例えば、部品A+部品Bで商品Cを作って売った場合、売って得たお金が売上で、売上から、部品の購入費用などを引いたものが、新たに創造された価値という事。
この、新しく生み出された価値が利益となるわけですが、その利益を生み出すためには、従業員の労働が必須です。 その従業員に対して、どれだけ利益を分配しているのかというのが、労働分配率という事ですね。

内部留保が上昇する一方で、労働分配率が下がっているという事は、言い換えれば、利益が増えたにも関わらず、その上昇分は労働者に還元されていないという事。
企業で働く社員が、同じ労働時間しか働いていないのに、何故か理由はわからないが、企業の業績が上がったというなら、原因不明の利益上昇分を溜め込んでおくというのも、少しは理解できるのですが…

しかし、実際には違いますよね。
ネット通販の広がりで大忙しの運送業ですが、昔は、仕事はキツイが、頑張って5年勤めれば、何らかの事業が起業できる程のまとまった金が稼げる事で有名でしたが、今は、ドライバーに支払われる荷物1つあたりの報酬が段階的に引き下げられて、ドライバーは身を粉にして働いているのに、生活するのがやっとという給料しか貰えない状態になっているようです。
その一方で、大手運送会社の本社で働く人達は、現場に出ることもなく、ホワイトな環境で働いて、平均給料が800万オーバー。 役員に至っては4000万オーバーの年収をもらってたりする。

これは、過去に私が書いた記事でバズったものがありますので、よければそちらに目を通してください。
kimniy8.hatenablog.com

運送業だけでなく、建設業でも現場監督が過労死するなんて話も聞きますよね。

まとめ

これまでに出てきた情報を書き出してみると
・給料の中央値の上昇率はイマイチ。
内部留保が上昇する一方で、労働分配率が下がっている。
・給料自体はバブル期頃の水準まで回復している。

これをまとめると、現場に近いところで働いている人達の職場環境は悪化。 つまり、労働時間が伸びる一方で、手取り給料が増えていない、もしくは減っている人が多い。
しかし、大手会社の業績は悪いわけではないので、本社努めや管理職の人たちの給料は伸びている。 が、これらの人は人口自体がかなり少ない。
ネットで上級市民と言われている人達に、企業業績の上昇分を分配し、余った分は、内部留保として積み上げる。

言い方を買えると、上級市民が一般大衆から搾取している構造になってしまっているので、この様な状況で『景気が回復している!』と実感する市民はいないという事でしょう。
それに加えて、消費税増税などで可処分所得が下がっていたり、売られている食品が小さくなっていたりと、普通に生活するだけで厳しい状態になっている。
また、年金支払額の増加、年金支払開始日の先送りの可能性や、給付額そのものの減額などの将来不安が上乗せされれば、楽観的になれる方が、どうかしてるじゃ… と、思ってしまいますよね。

この様な現状だと、『好景気の実感がない』とする人が大多数の世論調査結果になってしまうのも、仕方がないような気もします。