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【漫画紹介】 ウメハラ FIGHTING GAMERS!

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今回紹介する漫画は、『ウメハラ FIGHTING GAMERS!』です。

作品の簡単なあらすじ

この物語は、去年(2017年)ぐらいから急に言われだしたeスポーツの、原点を探る物語といっても良いかもしれません。

物語の主人公は、日本で最初のプロゲーマとなり、その活動に伴ってギネス記録を3つも持つ、ウメハラという格闘ゲームの選手。
その中学生時代を描いたのが、本作となります。

物語の出だしは、『ヌキさん』という相性で親しまれている、大貫晋也さんが、格闘ゲームのヴァンパイアシリーズで地元で敵なし状態で、天狗になっていたろころに、ウメハラという少年と出会うところから始まります。
今まで、特に苦労することもなく誰にも負けない状態を保っていた大貫さんは、ゲーム一筋というわけではなく、カラオケに行ったりと他の遊びもする、いわゆるウェーイ系。
そんな状態だったので、一人で黙々とゲームをしているウメハラさんを、若干、見下す感じの印象を抱いていたのですが、実際にプレイしてみると、実力差が段違い。

そこから先は、ウメハラさんに追いつく為に、友達の誘いを断ったりし、皆でお金を出し合って基盤を買ってまで猛特訓し、何とかウメハラに追いつく為に頑張る!ッといった感じで、生活を一気に変える。
今まで一緒に遊んでいた人達からは、『最近、付き合い悪くなったな。』とか、『ゲームばっかりやってるな』なんて言われだし、疎遠になるも、ウメハラを打ち負かしたい一心で、初めて努力をするといった感じで始まります。

まぁ、この部分はホンの序章で、大会の決勝戦ウメハラ vs ヌキ が実現した後に、本編の『ストリートファイター編』に入っていきます。
ストリートファイター編でのウメハラのライバルは、奈良県の『ナラケン』こと『クラハシ』さん。
社会人になってもストリートファイターが辞められず、ガイルを極めた男。

前半部分が、ウメハラに追いつく為に大貫さんが頑張るという展開だったのに対し、クラハシという絶対的な存在に、ウメハラがどうやって追いつくのかというのがメインの物語です。

感想

この作品は、最近、話題になってきたeスポーツを知る上では、読んでおいたほうが良い作品だとは思いますが…
あらすじ紹介でも書いた『ストリートファイター』という作品に思い入れが無いと、本当の意味では楽しめない… というか、意味のわからない作品だと思います。
というのも、メインの話である『ストⅡ』の説明以前に、格闘ゲームの説明すらなく、このジャンルのゲームを知っている前提で書かれているからです。
ただ、逆にいえば、ストリートファイターに思い入れがある人間が読めば、相当、楽しめる作品だと思います。

私自身の過去の話をすると、ストリートファイターⅡという作品がゲームセンターに出現したのは、中学生の頃だったと記憶してます。
中学生になると、月々、少額ではありましたがお小遣いが貰えるようになるわけで、私は、そのお金を使って、ゲームセンターに入り浸る生活を続けていました。
まぁ、入り浸ると入っても、当時のストⅡ人気は凄いもので、ゲームをプレイするのに順番待ちするのなんて当たり前、ゲームセンターにいる時間の殆どは、筐体の後ろに並んで、他人のゲームを見ているという状態だったので、滞在時間に比べてお金は減らなかった訳ですけれども。

北の方に、100円入れるとメダルが3枚出てきて、そのメダルでプレイできる格安ゲーセンがあると聞けば、少し遠くても自転車で向かい、東に50円で2プレイのゲーセンがあると聞けば、また、自転車で向かう…
少ない小遣いで、出来る限り長時間遊ぶための手間は惜しまない。 そんな生活を続けていました。
そんな少年時代を送っていたわけですから、ここで描かれている様なゲームセンターの雰囲気もよく理解でき、私自身は、かなり楽しむことが出来ました。

ですが、先程もいった通り、ゲームセンターという文化に慣れ親しんでいない人にとっては、かなりファンタジーな世界観かもしれません。
ゲームセンターでしか合わず、軽い挨拶はする間柄だけど、名前も知らない間柄とか…
対戦ゲームなのに、リアルな人間同士が殺気を出し合って、険悪な雰囲気になったりとか…
ただ、実際に行っていた人間からみると、かなりリアルな描写がされていて、私などは、この作品を読むだけでタイムスリップ出来る様な感じにさせてくれる作品でしたね。

そして、次にオモシロイと思ったのが、題材にされているのがストリートファイターを始めとしたカプコン作品で構成されているというところですね。
作品内でも描かれていますが、ストⅡ発表時こそ、カプコンの格闘アクションは圧倒的な人気を誇っていましたが、その後、SNKが餓狼伝説を出した辺りから、徐々に人気がSNKに移りだし、ストリートファイターシリーズは、徐々に人気が薄れていったんですよね。
私のようなミーハーは、当然のように、SNKのKOFやリアルバウト餓狼伝説サムライスピリッツなどに流れていました。

また当時は、格闘ゲームブームだった為、数ヶ月おきには新ゲームが発表されるという状態。
私などは、次々に発表される新ゲームに目がくらみ、新しいのが出ればプレイし、一つのゲームをやり込むということはしていなかったのですが…

このゲームでは、ミーハー層が新ゲームに流れる中、ストリートファイターに拘って腕を磨き続ける人達が描写されていて、結構、刺激を受けましたね。
因みに、当時、流行していたSNKのゲームなどを知りたい方は、こちらの作品を読むと良いですよ。

少しネタバレ感想

この作品ですが、最初は、ウメハラ vs ヌキ という感じで始まるのですが、それは本当の序盤だけで、それ以降は、クラハシさんとの勝負が中心になってくるのですが…
このクラハシさんのキャラクターが凄い! もう完全に、ウメハラさんをくってる感じで、クラハシさんが主人公なんじゃないかと思わせる程に、強烈なキャラクターに仕上がっています。

そのクラハシさんですが、ゲームに掛ける情熱が凄い。
ゲームセンターで練習する為の金を稼ぐために、肉体労働で必死になって仕事をし、食事は、150円の菓子パンと100円のアンパンの二択で散々迷った挙げ句、アンパンを選択。
その理由は、差額の50円でストⅡがⅠプレイできるからというだけの理由。 しかも、アンパン1個の購入で、店にある無料で持ち帰っても良いとされているパンの耳をすべて持ち帰り!

そこまでして食費を削るのは、お金を全てストⅡに捧げる為。
家には家具もほぼなく、ベットなどの必要最低限の物が置いてあるだけで、生活に必要ないものは、アケコンと呼ばれるコントローラーだけ。


しかも、アケコンは有るけれども、テレビもゲーム機も無い。 では、アケコンで何をやってるのかというと、目をつぶってイメージトレーニングをしているという…
ここまでストイックな姿を見せられると、ただただ関心させられてしまいますね。

また、自分のゲームに対する姿勢というのを、相手にも求めるというのが、また凄い。
対戦ゲームなのに、弱い人間が入ってくると怒ったりと、場の空気を読まずにただただ、ゲームに専念する。
一歩間違うと、ただの変人で、身近にそんな人がいれば、関わり合いたくないと思ってしまう人物ですが、何故か、主人公のウメハラよりもクラハシさんを応援したくなってしまいたくなる程、強烈なキャラクターとして描かれています。

そして、この作品の凄いところは、ここまでストイックなクラハシさんを描いていながら、ゲーセンに通っていない人達、例えば、学校の先生や親などに、『ゲームなんてやってて、何の意味があるの?』という、ゲームを見下してないと言えないような如何にもな質問を言わせているところです。
野球やテニスなどの運動部に入って、真剣に練習に打ち込んでいれば、周りからは褒められる。 勉強を真面目にすれば、更に褒められる。
しかし、ゲームを真剣にやれば、『そんなのを真剣にやって、何の意味があるの?』皆から嫌味を言われる…

じゃぁ、野球を真剣にやることに何の意味があるんだろうか? 野球をやってる人間の99.99%はプロ野球選手になるわけでもなく辞めていくわけですが、何の為にやってるんでしょうか?
勉強をやって成績を上げれば、確かに、有名な企業に入れるかもしれませんが、その有名な企業は、人々の生活に本当に役に立つ仕事をしているのでしょうか?
単純に、名前が売れていて、社会システムに組み込まれているが故に金回りもよく、給料も出るが、その会社が無くなったとしても誰も困らない会社って結構あると思いますが、そういう会社にステータスの為に入って、誰からも感謝されずに生きていく事に、意味はあるのでしょうか?

ゲームに打ち込んでいる少年は、少なくとも、その瞬間は自分の好きな事をしていますし、生きている意義もその中に見出してしますが、それを捨てて手に入れるものに、本当に勝ちがあるのでしょうか。
そういった事を、作品を通して問いかけてくるような構造になっていて、単純なゲーム漫画以上に、楽しんで読むことが出来ました。

人生は、常に選択を迫られるものですが、私達は、本当に進みたい道を進んでいるのか。 そんな事を考えさせられる作品。
興味があれば、目を通してみては如何でしょうか。