【アニメ・映画紹介】 イヴの時間
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今回紹介する作品は、『イヴの時間』です。
作品を観ようと思ったキッカケ
私は、この作品自体は知らなかったのですが、この作品とは別に、少し前に個別でディープラーニングについて調べていた事がありました。pythonというプログラム言語を勉強する過程で興味を持ったのですが、関連書籍を購入していると、Kindleのおすすめの欄に『人工知能は人間を超えるか』という本が、頻繁に出てくるようになったんです。
この本の表紙を頻繁に目にするようになり、表紙の絵が、なんとなく印象に残っていたところに、Twitterのタイムラインに、この様な つぶやき が流れてきました。
『イヴの時間』がAmazonプライムビデオのホラー映画のカテゴリーにある!納得っちゃ納得だな…。 pic.twitter.com/KnsojsR5iM
— ぶたお@もてラジ (@kentlow) 2018年8月14日
なんとなく印象に残っていた絵とほぼ同じ雰囲気のTOP絵に興味を持ち、先ほど紹介した本と関連があるのかなと思い、ツイート投稿者に聞いてみたところ、内容的に関連がありそうだったので、早速、観てみました。
プライム会員は無料で見れますしね。
簡単なあらすじ
物語の簡単なあらすじとしては、今よりも少し技術が進んだ未来の日本が舞台。今よりも科学技術が進み、人間の身の回りの世話をするアンドロイドが実用化された社会の、日常を描いた作品です。
アンドロイドは、見た目がほぼ人間と同じで、頭の上にリングと呼ばれる目印がなければ、人間とは見分けがつかないほどに精巧に作られている為、アンドロイドを人間扱いする人達も増えている。
この様な人達を『ドリ系』と呼び、倫理委員会という一部の人達が問題視し、それに対して警告するというテレビCMを放送していたり…
そんな感じの世界観で、主人公の少年が所有するアンドロイドが、命令以外の場所に立ち寄っていることが分かるところから、物語は始まります。
主人公はGPSで正確な場所を割り出すと、そこには裏路地でドアだけが有る変な場所。 勇気を振り絞って中に入ってみると、そこはオシャレな喫茶店。
でも、ただの喫茶店ではなく、入り口には立て看板が立ててあり、そこには店のルールとして、『人間とロボットを区別しない』と書かれている。
この作品は、この喫茶店を中心とした、人間とアンドロイドの関係を描いていく物語です。
観てみた感想
ホラーカテゴリーという枠組みで紹介されていたので、結構、シリアスな展開を予想していたのですが…実際に見た感想としては、『簡単なあらすじ』でも書いた通り、日常系のほのぼのとした感じの雰囲気の作品でした。
まぁ、ところどころ、ホラーっぽい演出も有るにはあるのですが、その演出も、ほんの数秒間行われた後には、コミカルシーンが挟まって…といった感じで進んでいくので、ホラーが苦手という人でも大丈夫に出来ています。
というか、Amazonがホラーカテゴリーに入れてるだけで、もともとはホラー作品として作られていないと思われるので、その点は安心して観ることが出来ると思います。
アンドロイド系といえば、結構、ディストピア系が多く、殺伐としているものが目につくと思います。
例えば、ブレードランナーであったり、攻殻機動隊であったり、最近発売された、『Detroit Become human』であったり、フォールアウトであったり。
kimniy8.hatenablog.com
この手の作品は、『アンドロイドに感情が芽生えたとしたら?』といった感じの切り口で、アンドロイドを引き合いに出して、『人間とは何なんだろう…』と考えさせることがメインである場合が多い。
また、アンドロイドと人間との対立、そこから発展しての争いや戦争も描かれる場合が多く、殺伐とした雰囲気のものが多いイメージなのですが…
この作品は、終始、日常系を貫いている感じで、結構、不思議な印象を持った作品です。
また、先程あげた多くの作品のように、『人間とは何なんだろう?』という疑問は湧き出てこず、逆に『アンドロイドとは何なんだろう?』という思わせてくれた点も印象的でした。
その他に印象的だったのが、他のアンドロイド作品に比べて、アンドロイド=機械というイメージ付が強烈な印象でした。
主人公は、アンドロイドにコーヒーを入れてもらったことに対して、『ありがとう』といった感じでお礼をいうというシーンがあるのですが、そのやり取りを隣で聞いている姉は『なにそれ? 相手は機械だよ? キモい!』って感じで、もの凄い嫌悪感をいだきます。
また、主人公が下校時に雨が降ってきた際に、アンドロイドが傘を持ってきてくれるのですが、その際に、1本の傘を、人間とアンドロイドとで指しているという事だけで、主人公が弓を刺されて笑われたり…
ここまで徹底して、機械と人間とを区別し、機会に対して人間のように接している人間=異常者とイメージ付ける作品も、結構珍しいなと思ってしまいました。
例えば、雨の中を相合い傘で帰るというのは、アンドロイドを濡らさないという点で、そこまで変なシーンでも無いはずです。
仮に、完全防水であったとしても、アンドロイドは服を来ているわけですから、傘をささないとびしょ濡れになる。 その状態で家に入られるよりは、傘を指してもらったほうが効率的だと思うのですが…
その行為すらも異常としている点で、徹底しているなという印象でした。
ネタバレ感想
先程は、出来るだけ、ネタバレをしない形で感想を書きましたが、ここからは、ネタバレも含んだ形での感想を書いていきます。ネタバレを嫌う方は、此処から先は読まずに、作品を見てから読んでみてくださいね。
この物語ですが、ネタバレ無しの感想では、ホラー要素はないと書きましたが、確かに演出上のホラーは少ないですが、よくよく考えると怖い要素も含まれた作品だったりします。
というのも、この作品に登場するアンドロイドは、人間の前では、『自分は機械ですよ。』とアピールする為なのか、必要なこと以外は一切話しませんし、話し方も、いかにも機械的な話し方をします。
しかし、それは人間の前でだけです。
メインの舞台となる『イヴの時間』という喫茶店に入ると、アンドロイド特有のリングも消え、途端に仕草が人間らしくなり、興味のあることを積極的に聞いてきたり、悩みを相談するといった事を行います。
表情も感情豊かになり…というか、実際に感情を持っているかのように振る舞うようになります。
このあたりが、非常に怖いといえば怖いですよね。
というのも、人間がアンドロイドと徹底的に線引をし、道具のように扱っているのは、『アンドロイドは機械で、人間の命令がなければ何も出来ない不完全なもの』と見下しているからです。
人間であり、アンドロイドの上に立つ自分という存在に優越感を抱いているから、徹底した道具扱いも出来るし、差別も出来る。
しかしアンドロイドたちは、『イヴの時間』の様な特定の空間では、自分で判断もするし、感情も持っているように振る舞える。
どのように振る舞えば、主人の機嫌を良く出来るのかといった事を真剣に悩み、相談するという知性や共感性も持ち合わせている。
アンドロイドと相合い傘をしているだけで、指を指して笑ってしまう人類よりも、明らかに上位の存在なわけですが、そんなアンドロイドが、アホな人類の前では、知性のないロボットのように振る舞ってくれているんですよ。
そんな事は一切、分からずに人類は、低レベルの自分達の位置までレベルを下げてくれているアンドロイドに対して、高圧的な態度を取り続ける。。
なんか、色んな意味でホラーですよね。
人類に生まれた自分たちは、それだけで、賢くて優秀だと思い込んで、自由に振る舞うわけですが、その自由なふるまいも、人類よりも遥かに優秀で共感性が高く、懐も深いアンドロイドが合わせてくれているから成り立つだけ。
アンドロイドに愛想を尽かされた時点で、おそらく人間は、彼らに対して怒りを持って壊すことぐらいしか出来ないのでしょう。
そして、この作品から離れて現実に目を向けてみると、同じ様な光景が広がっていることに気が付きます。
たまたま時代が良くて、大企業に苦もなく入れて、終身雇用、年功序列で偉くなった気になった、勘違いした人達が威張り散らしている一方で、知識と技術を持った若者が、建前上、理解を示すふりをして合わせてくれているのが現状。
そしてそんな大人達が築き上げてきた、『大人たちが暮らしやすい社会』から、若者たちが一定の距離を置き始めているのが現代だったりします。
アンドロイドに完全に依存した人類に、アンドロイドが愛想を尽かしてしまった場合、この作品で描かれる社会はどうなってしまうのでしょうか。
漠然と、『自分たちが偉い』と思い込み、そこに何の疑問も持たないことが、いかに愚かなことなのか、その事に気がつくと、結構、怖い思いを箚せられてしまうのが、この作品だったりします。
そこそこ楽しめた作品ですが… ただ、一つ思うところがあるとすれば、物語の根底を流れるストーリーが完結してないっぽく、色んな謎が残ったままだったりするんですよね。
続編を作る気満々って感じで終わってるのに、その後、続編が発表されてないって感じの終わり方が、なんとなく消化不良を起こしそうではありましたが… まぁ、無料で観れた作品にそこまでいうのは酷ですよね。
プライム会員であれば、まだ無料で見れると思いますので、興味のある方は、是非、観てみては如何でしょうか。