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【Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿 】第35回【ヒッピー】ティモシー・リアリー(11) ~ムーブメントの終わり (前編)

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回分はこちら
kimniy8.hatenablog.com

イッピーの誕生

前回の放送では、ムーブメントに新たに誕生した新しい層であるイッピー達の出現で、ムーブメントが変化しつつ、盛り上がっっていったという話を中心に行っていきました。
イッピーとは、ムーブメントが盛り上がった事で新たに流入した層で、ムーブメントをファッションやお祭りの様に捉えているともいえる層の事です。
盛り上がっているムーブメントの炎をより大きくする為に、悪ふざけや派手な行動を積極的に行って、メディアなどに積極的に露出することで、自分たちの存在を世の中に知らしめる。
そして、潜在化していた問題を浮き彫りにする事で、それを元にして反体制運動を行っていく。

過熱する反体制運動

この層の出現によって、運動はより大きくなり、現状の社会に対して不満を持っている人達や団体が、このムーブメントに乗る形で存在感を大きくしていきます。
例えば、黒人差別や男女差別、この当時も現在でも、様々な問題が有るわけですが、そのそれぞれの問題を、デモなどを通して社会に対して目立つ形で提示していくという運動が盛んになっていきます。
そして、これらの組織は、この当時のアメリカで最も大きな社会問題とされていた、ベトナム戦争に対する反対運動で集結する事で、元々は小さな炎でしか無かったものが、寄り集まることで勢いを増していく事になります。

反体制運動に対抗する体制と支持者

ですが、この運動に対して面白く思わないのが、批判されている体制側です。
この状態を放置しておけば、この勢いはより拡大し、取り返しのつかない状態へと発展していく可能性が合った為、政府は、急いで対策を取り始めます。
まず、反体制運動に対して強気の姿勢を見せている人物、ニクソン大統領を候補に立てて、大統領選を行いました。

この当時は、反体制運動が盛り上がっていたとはいっても、全体的な人数的には少数派でした。
その為、反体制運動やデモなどの運動にウンザリしていたサイレントマジョリティーは、ニクソン大統領に投票し、ニクソン政権が生まれました。

当選したニクソン大統領は、麻薬取締りを徹底的に行って、反体制運動に少しでも加担しているものを徹底的に逮捕する事で、反体制運動をしている人間=ならず者というイメージを世間に対して植え付け始めます。
そして多くの国民は、この政府の戦略に見事に乗る形で、反体制運動に対するイメージを悪化させていくことになります。
政府のこういったプロパガンダ的な政策が国民に受け入れられやすかったのは、実際に、運動参加者の質が下がっていた事も、大きな要因としてあったんだと思います。

というのも、この運動の火付け役となったイッピー達は、悪ふざけや派手な行動を積極的に行って、メディアに取り上げてもらう事で、自分たちの存在を世の中に知らしめるという戦略を取っていました。
この活動によって集まってくる人達というのは、信念だとか主張といったものを持つわけではなく、単純に、面白そうだとか格好いいといったファッション感覚で集まってくる人間が大多数なので、質そのものが低下してしまいます。
中には、社会問題や主張そっちのけで、悪ふざけや目立つことに重点を置き、仲間同士で競い合うように、悪ふざけやをエスカレートさせる人間も少なくなかったんでしょう。

そんなイッピーの行き着く先は、ハメを外しすぎて刑務所に行くか、有名人になってハリウッドに行くかと言われていたそうです。今でいうと、youtuberと同じ様なポジションと考えてもよいのかも知れません。
そんな人達なわけですから、それなりに多くの人達から既に反感をかっていた状態だったんです。その状態で、政府が活動家と犯罪者を結びつけた為、すんなり信じる人や信じたい人が多かったんでしょうね。

観光地化するヘイト・アシュベリー地区

またこの頃には、イッピー達の取った戦略のデメリット部分の存在感も増していきます。一つは、ヒッピーの聖地と言われている、ヘイト・アシュベリー地区の観光地化です。
イッピー達がメディアに向かって馬鹿騒ぎする事で、主張などはそっちのけで、ヒッピーという名称だけが有名になった結果、馬鹿騒ぎするヒッピー見たさに、彼らの聖地とされているヘイト・アシュベリー地区にも、観光客が集まりだします。
ヒッピー観光ツアーが組まれ、反政府運動に参加していない、『普通の人間』自称する人達が大型バスで訪れて、馬鹿騒ぎするヒッピーの総本山を観光する。 一般人にとってはサファリパークにでも行く感覚で、ヒッピーは見世物にされだします。

人が集まりだすと、その観光客目当てに商売する人間が生まれだし、この地区は、徐々に資本主義に呑み込まれていく事になります。
この地区に集まったヒッピー達の、元々の考えとしては、意識改革によって世の中の捉え方を変えていくというもので、ここに金は介在せず、行動や思想がメインとなっていたわけですが、この観光化によって、物事の基準がお金になり始めます。

この環境の変化の他にも、ヒッピーとして流入してくる層にも変化が出始めます。
イッピー達は、派手な行動や悪ふざけを行う事でメディアの注目を集めて、人を集めるという戦略を取ってきたわけですが、そんな戦略でマトモな人間が集まるわけはありません。
マスコミがピックアップするのは、悪ふざけやお祭り騒ぎだけですからね。
その結果、自分では何も行動を起こさず、考えることもなく、努力もしたくない。全ての原因を自分以外の外側に求めて、働かずに遊んで暮らしたいと思っている様な人間が、大量に集まってきたんです。

そういう人達には、志や目標などもない為、この地区の雰囲気も徐々に代わりだし、評判も落ちていく事となります。
そして、ヘイト・アシュベリー地区の環境が変わり、自分たちを見る周りの目が変わりだすと、LSDを常用しているこの地区の住人達にも変化が現れてきます。その変化とは、バッドトリップの急増です。

LSDでどの様なトリップをするのかというのは、ドラッグを服用する人間の精神状態に大きく関わってきます。
このコンテンツでメインで紹介しているティモシー・リアリーは、グッドトリップを誘発しやすいように、チベット死者の書を翻訳し、それを使用して儀式を行うセッションを開発しました。
ドラッグ服用者の精神をどれだけ安定させられるのか、そして、トリップに対してどのように向き合うのかというのは、トリップで神秘体験を得るのに重要な要素だったわけですけれども…その環境そのものが根本的に変化してしまいました。

政府は自分たちを敵対視していますし、周りの人間は、自分たちを犯罪者を見るような目で見ます。この様な環境で幻覚剤を使用すると、かなりの高確率でバッドトリップをしてしまうようです。
LSDのトリップは基本的に長く、数時間はトリップしっぱなしの状態になってしまうようです。 
幻覚剤によるバッドトリップによって、何時間も恐怖や不安といった感情に支配された人間は、大抵、周囲の人間にとって良くない行動を取ってしまいます。
こういう人達が急増する事で、街の治安は悪化し、評判は地に落ち、状況は、更に悪い方向へと変わっていきます。

反体制運動の参加者の質の低下

町には、バッドトリップから抜け出す為か、他の薬にも手を出した麻薬中毒患者で溢れる一方で、そのジャンキーを客とする、マフィアが大量に流入してくるようになります。
観光地化で、自分たちが動物園の動物のように扱われ、マフィアの流入によって、表も裏も資本主義に支配されてしまう。
こんな状況に耐えられなかったのか、元からいたヒッピーの人達は、ヘイト・アシュベリー地区から逃げ出し、町には、言い方は悪いですが、クズのような人間だけが残されます。

ヒッピーの聖地、ヘイトアシュベリーが崩壊しだして状況が悪化しだすと、今まで共闘していた反体制グループにも、綻(ほころ)びが出始めます。
まぁ元々が、取り扱う社会問題も考え方も違うもの同士だったものが、反体制運動を社会現象下する為に集まっただけに過ぎませんでしたからね。
勢いを増すイッピーや、それを生んだ母体となっているヒッピーに相乗りすれば、自分たちも勢いづくだろうと思って、勢いにタダ乗りしていただけだったので、その評判が悪くなると、一緒に活動する意味もなくなったんでしょう。

(つづく)
Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿 】第35回【ヒッピー】ティモシー・リアリー(11) ~ムーブメントの終わり (前編)