だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

システムの悪化によって衰退する日本

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ここ最近、特に去年(2017年)は、世間一般でいうところの一流企業の不正問題が頻繁に取り上げられましたね。
特に資源が有るわけでもなく、今までにないような全く新しいアイデアも出せていない日本にとって、『真面目に仕事をして、高品質なものを提供する』という唯一の取り柄までなくなって、今後の日本はどうなっていくんでしょうかね。

という事で今回は、何故、こんなことになってしまったのかというのかについて、考えていきます。
私が考える理由はものすごく簡単で、単純にシステムが悪いからという結論になります。

少し前に紹介した本に、『国家はなぜ衰退するのか』という本が有ります。
kimniy8.hatenablog.com

この本で書かれていたことは、文明の発達や国家の衰退・破綻というのは、そこに関わる人達が有能だったり無能だったりする事で起こるのではなく、単純に、システムの問題だということが書かれています。
例えば、アフリカは文明レベルの高い国から観ると、相対的に劣って見えます。
では、アフリカの文明が遅れている理由は、単純に彼らが無能で劣っているからなのでしょうか。

この本では、この素朴な疑問に対して、偏見などを持たずに真正面から向き合って考えています。
その結果として分かってきたことは、文明が発達する速度が早いか遅いかは、種族の有能無能ではなく、単純にシステムの問題だということが分かります。

例えば、アフリカの一部の地域では、農作物を育てる際に、道具を殆ど使わずに作業を行う為、非常に生産効率が悪い。
鋤といった単純な道具を使う丈でも生産効率は上昇するのに、何故、彼らは農具を使わずに、頑なに生産効率の低い方法を取り続けるのでしょうか。
ここで、『農機具の存在を知らない馬鹿だから、存在も知らないし使い方もわからないから、使わないだけだろう』と決めつけてしまう人が多いかもしれませんが、実際に調べてみると、事実はそうではありません。

答えは、国のシステムが悪いから。

彼らが暮らす国では、農民は作った農作物から、自分達が生きていく上で最低限の食料だけのこそ、その他全ては国に取られてしまうというシステムが採用されていました。
この方式では、農民は設備投資をして農作物を効率よく育てる動機付けが全くありません。
何故なら、どんなに工夫し、資産を投げ打って設備投資をしたところで、生産増加分は全て国に徴収されてしまうからです。

自分の取り分が全く増えないのに、僅かな食料を削って、それを金に変えて投資に回そうなんて人は、一周回って馬鹿ということです。
それなら、適当に仕事をして、自分の食べる最低限の量を確保して楽をしようとするのが人間でしょう。
普通の人間は、インセンティブが無いのに頑張らない。
この国は国民が頑張らないシステムを採用しているから、投資も進まないし生産性も向上しないし、常に食料がないため、労力を他の研究開発にまで回せないので、文明の発達スピードも遅れているという事。

世界を見渡せば、アフリカ出身で高い社会的地位を得ている人も見られることからも分かる通り、環境やシステムさえ変われば、才能を発揮する人は結構います。
逆にいうと、才能があったとしてもシステムが悪ければ、その才能は発揮できないということです。

ではこの理屈を、今の日本に当てはめてみましょう。
今の日本は労働力不足が叫ばれ、ニュースでも連日『働き手がいない! 人手不足倒産!』なんて事が叫ばれ続けています。
しかし一方で、私達の生活を振り返ってみて、どうでしょう。

会社で社員を確保し続けるために、職場環境が改善が改善された!なんて喜んでいる人を、少なくとも私の周りでは見たことがありません。
私の周りの人たちは、口々に『不景気だ…』と嘆き、労働時間が増える一方で手取り給料が減ったおかげで、消費を抑えているという話をします。

その一方で、株式市場はどうでしょう。
企業はバブル景気という狂った経済状態の売上を抜くような最高益を出し、外国から招待した経営者は、数十億単位で給料を取っていく。

この事から分かることって、正社員をパートや契約社員などの短期労働者に入れ替え、現場で働く人たちの待遇を冷遇し、浮いた金を企業が利益として掻っ攫い、上がった利益を根拠にして、経営陣が収入を増やしているという構図ですよね。
これって、先程書いた、アフリカの農家と同じ状況とはいえないでしょうか。

どれだけ身を粉にして働いたところで、その利益は企業の利益と経営陣の報酬として徴収されてしまう。
こんなシステムであれば、真面目に働くだけ損ですよね。
普通に考える能力があれば、適当にやって適当に帰るのが、人としての普通の行動でしょうし、
仮にお金がほしいのであれば、日中は適当にサボって、就業時間が終わってから、残業をして残業代稼ぎを行うというのが人情というもの。

しかし、適当にやって帰るとか、残業代を稼ぐなんて事が出来るのも、サラリーマンの中でも上流に近い選ばれた人達だけ。
それすら出来ない川下の人達、つまり、一日で終わらない量の仕事を無理やり押し付けられて、残業代も出ないなんて環境で働いている人達は、押し付けられる難題をクリアーする為に、不正で何とかするなんて事もせざるを得ない状況に追い込まれる。

いくら頑張って会社の業績を上げたところで、その利益が還元されずに、更に労働環境が悪化するような環境では、仕事に対する責任も持とうとしないし、そもそも真面目にやるなんてことが馬鹿らしくなる。
一生懸命働いて額面で12~3万円、手取りで10万割るなんて環境なら、その組織に尽くしたとしても未来に期待なんて出来ない。
それなら、バイトなどで食いつないだり、生活保護を受けるほうが、まだ人間として最低限の暮らしが出来る。

最近の就活生が、就職する際に知っておきたい事の1位が労働時間で、その後、休日や残業の有無、社会保障などが続き、給料に興味がある学生が10%以下なんて数字がありますが、これは単純に、若者がお金に対して執着してないから、給料に興味が無いわけではないですよね。
会社が普通の給料を出すことに対して期待してないから、それなら、休日や社会保障がしっかりしているか、つまり、自分の時間が確保できるかどうかが最優先となるんでしょう。

今の若者や現場で働いている人達は、会社側が自分達に対して何もしてくれないことを知っていて、会社に対して何の期待もしていない。
サラリーマンは、自らを社畜と呼び、経営者は奴隷として扱う。
こんな労使関係で、優れた製品やサービスが作れるわけがないんですよね。

その一方で、中国企業が日本に会社を作って、初任給で40万を出して日本人を募集する。
日本は、単独で見ても落ち目ですが、相対的に観ると更に、置いていかれることになるんでしょうね。