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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

日本のお笑いは つまらなくなったのか?

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ここ最近、日本のお笑いはつまらないという話をよく聴きます。
私自身は、ここ最近になってサービスが続々と開始し始めた、NetflixAmazonビデオ何かを観るようになった為、ゴールデンタイムにテレビを見ること自体が無くなったので、最近の変化というのは分からなかったりするんですけどね。

ただ、昔のお笑いって、バラエティーを観て無くても色んな所で話を聞いたし、話題に入る為には観てないと駄目という雰囲気すらあったのが、ここ最近は、そんな空気も感じない。
これは単純に、これを書いている私が年を取って、私の周りが観ている番組の質も変わってきただけなんかもしれません。

ですが、昔は、賑やかしの為に何となくTVをつけると、コント番組がやっていたなんて事も多かったイメージなのですが、ここ最近では、そんな偶然すらもない。
地上波ゴールデンにおいては、『お笑いブーム』というのが終わったからなのか、お笑いや芸人が脚光を浴びる機会も少なくなってきている印象。
これは、冒頭でも書いた、日本のお笑いがつまらなくなってきているから、番組も減って、露出も減ってきているのでしょうか。

という事で今回は、日本のお笑いは本当に、つまらなくなってきたのか。について考えていきます。

まず、これらの現象や意見について、当事者の芸人の方達はどう思っているのでしょうか。
私はTVを見る習慣がなくなったと書きましたが、地上波で2つだけ観ているバラエティー番組が有ります。
その一つが、『ゴットタン』

この番組は深夜番組ということもあってか、かなり攻めた番組構成となっているのですが、この番組の企画で、芸人が、今のお笑いについてどう思っているのかについて討論するという企画が有りました。
ゲストとして登場した芸人の方達は、コンビを組んでいるけれども、1人だけ馬鹿売れしてしまい、もう一方が置いて行かれている状態の人達。
分かりやすいように、一人だけ例を挙げると、ハライチの岩井さんとかですね。 澤部さんは、色んな時間帯で観ますが、出演されていてもピンが多いですよね。
こういう感じの方達をゲストに呼んで、討論するという企画があったのですが、その中で飛び出した言葉が、結構、印象的でした。

その言葉とは、『ゴールデンで求められている笑いは、30点の笑い。』
番組を一度観ただけなので、一言一句間違ってないかと言われれば不安が有りますが、ニュアンスとしてはこんな感じの主張をされていて、他の方々も納得されている様子でした。

『求められる笑いが30点』
これはどういうことなのかというと、実際に出演しているお笑い芸人の方も、ゴールデン番組での笑いの質が低いことを自覚しているということ。
そして何故、質が低くなるのかというと、求められる笑いの質がそもそも低いからという事なのでしょう。

誤解を恐れずに、もっと過激な言い回しをすれば、お笑い芸人が本気で作り上げた笑いは、ゴールデン番組を観ている層には理解が出来ないということ。
では何故、ゴールデン番組を観ている層には理解が出来ないのでしょうか。

冒頭でも書きましたが、今現在は、NHKよりも安い値段で、動画見放題サービスが提供されていますし、youtubeなどは無料で見ることが可能です。
この環境下では、映像番組が大好きで積極的に何らかの動画を見ようと能動的に動く人達は、そもそもテレビなんて観ません。
自分の観たい動画を検索し、ピンポイントでその動画だけを観ます。

今の動画サービスは、映画やドラマと言ったものだけではなく、バラエティー番組まで用意されている為、バラエティー番組が好きなのであれば、検索して見に行けば事足ります。
動画サービスに限らず、現在はゲームでもマンガでも、月数百円の定額制や無料で楽しむコンテンツが沢山あります。やりたいことが有るのであれば、僅かな手間で自分の好きな事に時間を使える状態に有ります。
この様な環境にある現代で、ゴールデンにテレビを見ている人というのは、そもそも情報に対して受け身の人だと考えられます。

この、自分で積極的に情報を取りに行かない、情報に対して受け身な人達は、何か好きなものを持っている人と比べて基本的な知識が低い傾向があると思われます。
そういった人達にも理解できて、そこそこ楽しい時間を過ごしてもらおうと思うと手法は限られてきます。
具体的には、短いフレーズのギャグであったり、大きな声を出す、大袈裟なリアクションを取る、顔芸といった物になります。

つまり、現在のテレビのお笑いがつまらない現象というのは、視聴者層に合わせて誰にでも分かるレベルの笑いを追求していった結果、行き着いたものということになります。
日本のお笑い芸人の質が落ちたから、今がそうなっているというわけでは無いんでしょう。
何故なら、バラエティー番組に出演している人間が、『30点の笑いを提供している』と公言してるわけですから。

こういった視点からバラエティーやコメディーといったジャンルを観てみると、面白いと言われるお笑いは、テレビの外側に有ることが分かります。
例えば、Amazonビデオが制作している『有田と週刊プロレスと』という番組が有ります。


これは、くりーむしちゅーの有田さんが、1冊の週刊プロレスをその場で渡され、それを元に30分程度アドリブで話すというだけの番組なのですが、かなり面白い。
週プロの表紙になっている写真を解説するために、プロレスの歴史などを解説したり、その中でどんな確執があるのかと言ったことをアドリブで話すわけですが、単純に話術が凄いです。
ちなみにこの放送ですが、いつでも第1回から遡って視聴できるということで、プロレスの知識がない人間が、イキナリ最新話を観たとしても、理解できないかもしれません。
ですが、視聴者がある程度の前提としての知識があるからこそ楽しめるバラエティーの方が、笑いのレベルとしては高くなりますし、満足度も高くなります。
そういった意味でも、面白いコンテンツだと思います。

その他には、サンキュータツオさんという方が個人で作られている、『熱量と文字数』というのも面白い。
これは、アニメ等のオタク文化を前提としたコンテンツなので、知識としてその分野のことをある程度知っておかないと、そもそもコンテンツ内で登場する言葉の意味がわからないという事が多々有りますが、そのハードルを超えれば、かなり楽しめる興味深いコンテンツだったりします。

このコンテンツでは、単純に、このアニメのこのキャラクターが好きといった、いわゆるオタク的な話もされるわけですが、その一方で、作品に登場する小道具にどういった意味があるのかといった演出や、考察といったものが、かなりハイレベルで行われたりします。
だからといって堅苦しくなるわけでもなく、バラエティーとして笑い飛ばせるようになっている番組となっています。

そして、スポンサー側の姿勢も変わりつつ有ります。
今話題のswitchですが、その楽しい方を伝えるために、Nintendoが独自で動画を制作していたりします。
例えばこれ。


この番組は、switchでマインクラフトというゲームを、お笑い芸人の『よゐこ』さんがプレイするというだけの番組です。
当然、switchやマインクラフトというゲームを知らない人間は、検索して辿り着くことすら出来ないですし、偶然見つけたとしても、楽しむことは出来ないでしょう。
しかし、それらの存在を知っている人にとっては、非常に楽しめる番組となっています。
Nintendoも、そういう基本的なことを知っているライトゲーマーに焦点を当てている為、辿り着けないような人は見なくて良いというスタンスなんでしょう。

この他にも、youtubeなどでは若手の芸人の方達が、かなり斬新で挑戦的なネタなどを動画として撮って、アップロードされていたりもします。
また、youtubeでもアップロードできないような、ギリギリのラインを攻めたものなのは、劇場などで披露するといった感じで、住み分けがされていたりもします。

つまり、お笑いという分野は、単純に演者がテレビ側に選ばれて出演の機会を得るというものから、観る側が、多数のハードルを超えて向かっていかなければ、本物には出会えないものになってきているのでしょう。
TVで放送されるものというのは、どんな人間が観ても理解できて、その上でクレームが来ないものという条件をクリアーしたものだけが放映される。
その為、提供しているお笑い芸人ですら、『30点の笑い』と言われるものしか採用されない。

芸人たちが、自分達の考える最高峰の笑いというものを観たければ、出来るだけ閉鎖された空間。
つまり、ネットであれば検索をかけて深いところに潜ったり、リアルであれば、平日に開かれるライブに出かけるといった行動を起こさなければ、出会えないものなんでしょうね。

結論としては、テレビのお笑いがつまらないという事なんでしょうね。