だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

今 話題?になってるVALUについて感じる違和感

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ここ最近、VALUという名前を目にしだしました。
気になって調べてみたところ、自分という個人を株式会社に見立て、株を発行して売り出す事が出来るサービスのようです。

売買そのものは現金ではなく、ビットコインという仮想通貨を使うわけですが、ビットコイン自体が実際の現金で取引されている通貨なので、現金といっても過言ではない。
つまり簡単に説明すれば、自身を市場に売りに出して、他人に購入してもらうという仕組みが、『VALU』というわけです。

まぁ、何というか…
凄いサービスが出てきたものですよね。
何が凄いって、個人が発行する株(VA)のようなVALUには、何の裏付けもないという事。
この、何の裏付けもない株のようなものを、何の裏付けもないビットコインで売買するわけですから、旧式の価値観しか持ち合わせていない私の様な人間には、とてもじゃないが、ついていけない。
というか、違和感しか無い感じです。

という事で今回は、『VALU』のどの辺りがついていけないか、違和感があるのかを、書いていこうと思います。

先程は、VALUは個人を株式会社のようなものに見立て、株式(MY VALU)発行をするという説明をしました。
しかし実際に観てみると、株式会社の株式発行とは似ても似つかない構造だったりします。

どのあたりが違うのかというと、株式会社が発行する株は、会社の価値を等分割した値段がついています。
つまり、会社に1億円の価値がついていて、100万株の株式を発行している場合は、1億を100万で割った100円というのが、1株の値段ということになります。
では、会社の価値はどの様にして計算されるのかというと、一番指標になりやすいのが、PBRという指標。
これは、会社が持っている資産を全て売却し、会社が持つ現金資産などと合算した数字である『会社の資産』と、株価との比率で観ます。

仮に例で出した会社の資産が1億円の場合、会社としての価値である時価総額(発行株式数と株価をかけ合わせたもの)と会社の資産が釣り合う為、PBRは1倍となります。
会社の資産が2億円の場合は、PBRは0.5となり割安とされ、資産が5000万しか無いのに1億の時価総額の場合は、PBRは2倍となります。

では、PBRが1倍を超えるものは全て、割高となるのかといえば、そうではありません。
会社というのは業務を行うことで利益を出す為、会社の経営がうまく言っていれば、毎年のように資産が増えていきます。
それらを想定して計算された結果が、現在の株価というわけです。

また、会社=株式であるため、会社が株を発行して他人に販売するということは、会社を切り売りする事と同じです。
毎年のように株式総会を開かなければなりませんし、経営に関して株主が口を出してきますし、保有割合によっては、株主の意見を聞かなくてはならない義務も生じます。
この様に、株式の発行は会社の切り売りである為、株券には会社という存在そのものが裏付けになっています。

一方、『VALU』ですが、先程も書きましたが、何の裏付けもありません。
株と同じというのであれば、個人を売り出すということは個人を切り売りするということで、過半数の株を抑えられてしまえば、本来であれば、株主の奴隷となります。
しかし、『VALU』では、そのような事は一切ないようです。
当然といえば当然ですよね。そんな制度にしてしまえば、それは立派な人身売買に当たるわけですから、規制の対象になるでしょう。

では、裏付けが何もないとはどういう事なのでしょうか。
これは簡単にいえば、購入したところで特に意味はないという事で、さらにいえば、発行元である個人が、自分のMY VALUを売るだけ売って、在る日突然、『VALUやめま~す』という事も可能ということ。
そもそも、何の裏付けも無いものを購入しているわけだから、購入者はこれに対して、『買い戻しをしろ!損失補てんしろ!』と強制することも出来ない。

じゃぁ、購入者は何のために買うのか。
これは、端的に言ってしまえば、『転売して利益を得る為』でしょう。
VALUは転売できる為、価格が上がりそうな人間のVALUを購入し、高値になったところで他人に売りつければ、利益を得ることが出来る。
株で言うところの、譲渡益を得るための売買と同じで、これが、『株式投資と似たような』というところでしょう。(裏付けがない時点で、根本的には全く違うわけですが。)

しかし、これはこれで問題が有る。
というのも、本物の株式投資と違い、そもそも何の裏付けもない物の値段が変動し、それが転売できるとなると、当然のように投機対象になり、仕手戦や情報戦が行われることになる。
実際の株式市場の場合は、こういうことが出来ないようにインサイダー取引に目を光らせているし、買占めによる価格吊り上げを抑止するために、3%以上の株を買う際には公言しなければならないなんてルールも有る。
会社が不正会計を行ったら取引所が監理ポストに入れたりする。
不正会計などをやれば、上場廃止なんてことにもなり、投資家保護を全力で行うわけですが、VALUにはこれが全く無い。
当然のことですが、株価に大きな影響を与える新規で株式発行をする増資の際には、投資家に話を通す必要が有ります。

その一方で、VALUはこの辺りのルール整備がされていない以上、規制するための判断材料も無いため、買占めによる価格吊り上げやインサイダーもやりたい放題。
また、新株発行に当たるMY VALUも、1回ごとに500円の手数料を払えば行えるようで、発行上限も特に見つけられなかった。
これでは、時価総額が高くて1VAの価格が高い人間は、増資しまくって売りまくれば、かなりの利益を得られるが、投資家側はVAの希薄化によって損失を被る。
結局、立場の強い人間だけが利益を得られる、投資において一番ダメな構造になってしまっている。

こう書くと信者の方は、『VALUは、投資目的での利用を推奨していない!』と反論するだろうが、では何故、価格が変動するような構造にし、転売できるようにしているんだろうか?
そもそも、他人のアイデアや考えを純粋な意味で応援するだけなのであれば、価格が変動する必要はないし、転売できなくても良い。
『こんなアイデアを実現したいから、お金が必要なんだ!』と投資を募るマイクロファイナンスなんて、そこら中に有る。

また、ブログやPodcast等の何らかのウェブコンテンツを作っている方を応援する場合、『いつも楽しませていただいています!』と一言伝えるだけで、応援は出来る。
お金を支払いたいのであれば、『感謝の気持ちとして、Amazonギフト券か現金振込をしたい。』と伝えれば、受け取ってくれる人も多いだろう。
絵や物を作っている方を応援する場合、実際に商品を購入するという形での応援も出来る。
なぜ応援するために、わざわざビットコインで投資をする必要が有るのだろうか?
VALUが利益目的の投資ではなく、『応援だ!』と主張する方には、是非、このあたりの疑問に答えてもらいたい。

その他の反論として考えられるのが、『VALUには優待制度があり、購入した人間もメリットが得られる!』というもの。
しかしそれは、本当にメリットなんだろうか。
例えば、『仕事として経営コンサルタントをしているので、VALU購入者には、経営の相談にのることが出来ますよ!』という優待があったとしよう。
普通に考えればわかることですが、この優待はそもそもVALUを通す必要がない。
仕事としてコンサルタントをしているのであれば、正規で依頼すれば良いだけです。
投資家がメリットを得られるとすれば、優待のほうが正規で依頼するよりも価格が安いときだけですが、『安いから』という理由で優待狙いで買うのであれば、それは応援していることになるんだろうか?
その人を、本当の意味で応援したいのであれば、料金が高い方を選んであげれば良いのではないでしょうか。

価格が変動し、尚且つ、それを転売できるシステムである以上、投資目的での参加は想定内と考えるべきだろう。そう書かないのは、法律に引っかかる可能性があるとか別の理由で、実際に投資目的での参入がないと流動性が確保できない。
流動性が確保できないということは、手持ちのVAを売りたい時に売れないとう事。売って資金回収が出来ない投資は、ただの寄付でしか無い。

寄付なら寄付で、そう説明すればよいのだが、運営側はそうは書かずに、VAを資産だと言い張っています。
個人が個人に寄付をするなんて説明しても、『寄付なら、わざわざVALUを通してやらなくても良くない?』と突っ込まれるでしょうし、市場流入する人も少ない状態となる。
そうなると、手数料収入で稼ぐVALUにとっては痛手という事になる。
だから、『もしかしたら、儲けが出るかもしれない』という可能性で、情弱を釣るしか無い。買ったが最後、売れない可能性がある事は隠して。

また、運営側のこの動きは、既にVAを発行していて時価総額が高い人間とも、利益が合致する。
VAが投資で、儲けを出す為の絶対条件は、自分が購入した後に売りつける相手を見つけることです。
その条件を満たしているのは、時価総額が高くて出来高が高い人間ということになり、市場参加者が集まれば集まるほど、時価総額出来高上位に取引が集中することになり、バブル相場になりやすい。
そうなった時に一番利益が出るのは、500円で新株発行が出来る上位者なので、この人達は自身の利益のためにも、死に物狂いで市場に呼び込みをかけるでしょう。

こうした視点から見ると、VALUに対しては違和感しか感じないんですよね。