だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

Rez infinite をプレイして感じるヒッピーっぽさ (2)

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この投稿は前回の続きとなっています。
前回の投稿をまだ読まれていない方は、先ずそちらから、お読みください。
kimniy8.hatenablog.com
Rezとヒッピーとの関係性をテーマにした投稿ですが、その為には先ず、ヒッピーの知識が不可欠ということで、今回はヒッピーの解説が中心となります。
Rezのプレイ体験とヒッピーの関係は、次の投稿で書く予定です。予め、ご了承ください。

反戦運動を機に立ち上がった市民は、あらゆるものに疑いの目を向け、常識を逸脱する為に、常識外とされていた、あらゆる文化を取り入れます。
その中でも、最も影響を与えたものは、LSDでしょう。

最初に断っておきますが、今回の投稿では、LSDに関する事が結構出てきます。
その中には、この薬物に対して肯定的とも取れる事を書く場合も有りますが、LSDは禁止薬物であるため、入手や摂取する事を勧めているわけではありません。
服用を間違えれば、精神病院行きになる可能性もありますし、そもそもが違法なので、使用することは止めましょう。

さて、このLSDという薬物ですが、1943年に幻覚剤としての効果が発見され、この薬物に対して米軍やCIAが興味をもつことで、研究が開始されます。

米軍の場合は、主に軍事利用。
特定地域を占領するためには、爆撃などが必要になるわけですが、その地域が生産拠点などの場合、爆撃で施設を破壊してしまうことは、そのまま損失につながってしまいます。
それなら、人の感覚を狂わせる薬物を噴霧して、その地域に住んでいる住人を一時的に戦闘不能状態にしてしまえば良い。
仮に、その一部の人間が精神病院行きになったとしても、爆撃して殺すよりかは遥かに人道的だし、人数的な被害も少数に抑えられる。
その上、敵が所有している施設を無傷で手に入れることが可能となれば、それをこちらが有効活用する事が可能になる為、戦略的にも優位に立てる。
こういった観点から、様々な薬物が研究対象になったのですが、LSDも対象として選ばれることになります。

CIAの場合は、当時、洗脳について非常に興味を持っていて、多くの予算を割いていました。
そんな時に発見されたLSDにCIAは飛びつき、専門機関などの協力を得て、研究・実験を行うことになります。
この作戦は人体実験のようなもので、多くの精神病患者を生み、死者まで出したということで批判を受けていたりします。
詳しい内容が知りたい方は、『MKウルトラ計画』で検索をかければ詳細が出てきます。
MKウルトラ計画 - Wikipedia

簡単に説明すると、CIAは情報収集期間であるため、様々な情報を常に欲しています。
その為に必要なのが、真実を聞き出す方法。つまりは尋問手段です。
しかし、敵国のスパイを捉えたとしても、スパイとして教育・訓練をされている人間が、そう簡単に口を割るはずもない。
そこで、精度の高い自白剤を得る為に白羽の矢が立ったのが、LSDというわけです。
尋問の際にLSDを投与して酩酊状態にしてしまえば、現実感が無いままに口を割るのではないかと実験は繰り返されるが、決め手が無いままに時は過ぎていく。
今度は逆に、自国のスパイが捕まった際にLSDを自分で服用すれば、酩酊状態になって情報を守れるのではと、逆の発想での使用法などを模索したりする。

とにかく、僅かかな量で、且つ、短期間で症状が現れ、無味無臭で水に溶け、紙などに染み込ませたものを舐めるだけでも効果が現れると利便性が高い為、使い方を色んな方面から模索するCIA。
その為に必要なのは、この幻覚剤の圧倒的なデータ。という事で、なりふり構わず実験が行われることになります。
最初こそは、LSDを投与する事を被験者に告知した上で投与していたCIAですが、徐々にタガが外れて、事前告知無しで無差別に投与を行うことになります。
例えば、朝出勤した際に、同僚が気を利かせてコーヒーを淹れて手渡してくれ、例を言ってコーヒーを一口くちに含んだが最後、トリップしてしまうという具合。
これはCIA職員内だけでなく、施設にゲストとして招き入れた人達にも行い、結果として、LSDによるバットトリップが原因で、死者まで出してしまうことになります。

その他に、この薬物に興味をいだいたのは、医療機関
幻覚剤による超現実的な体験は、精神病治療の分野で、比較的高い効果を発揮することに。

しかし、CIAのLSD実験によって死者まで出してしまった事が原因になったのか、国によるLSD研究は徐々に下火になっていくことになります。

そんな中、LSDは紆余曲折を経て、ティモシー・リアリーというハーバードの若手教授の元に渡ります。
この人物は、幻覚成分を含んだキノコの成分を摂取した際に、神秘的な体験を得たことによって魅力に取りつかれ、幻覚剤による人格変容の研究を積極的に行います。
そんな人物のもとに、幻覚剤LSDが渡ったのは、必然的なことだったのかもしれません。

このティモシー・リアリーの元でLSDは研究されることになり、効果が不安定で、時に兵器になり、時に自白剤、またある時は情報を守るための手段となり、精神病患者を救う薬にもなるこの薬物が、セッティングという一種の儀式を行うことで、効果を安定させる可能性がある事を見つけ出します。
そして、セッティングを行ってからLSDを服用する事で、比較的簡単に悟りを開く方法を見つけ出します。

悟りとは何なのかというと、仏教でいうところの真理。
人間という枠組みが音を立てて崩れだし、自分自身と宇宙との一体感をリアルな感覚、つまりは体験として感じ取る神秘体験です。
本来ならば、才能のある選ばれた人間のみが到達できる涅槃の境地に、幻覚剤を投与するだけで到達することが出来る。

皆で目指そう!ニルバーナ!

キリスト教が前提となっていた常識に疑問を持ち、そこから逸脱する事を目指していたヒッピーたちが、この神秘的な体験ができるドラッグを見逃すはずがありません。
この幻覚剤はヒッピーの間で流行し、薬剤投与による意識拡張は、ヒッピーと『禅』の思想とを強く結びつけることになります。
禅のルーツとなるのはインド。この頃から、インドはヒッピーたちの聖地になり、若者たちの間では、『自分探し』をする為にインドを旅する事がブームになります。
そして、禅の思想に没頭したビートルズは、その世界観を音楽に込め、音楽の世界に革命を起こします。

また、セッティングという儀式を経て薬物を投与するという方式は、古代のシャーマンを彷彿とさせる事で、ヒッピーたちはシャーマニズムも取り込みます。
この様な流れになってくると、当然のように、長らく弾圧されていた魔女・魔術なども見直されはじめ、その思想も取り込まれ始めます。

古代や一昔前の思想だけでなく、ヒッピー達は、コンピューターやサイバー空間といった新たな分野にも進出します。
3Dの世界は既にルールが出来上がっているため、全く新しいフロンティアを求めて旅立ったのかもしれません。
先ほど紹介したLSDの伝道師、ティモシー・リアリーも、晩年はコンピューターにどっぷり使っていたようです。
ヒッピーとコンピューターとの関係は、後に、ヒッピー出身のジョブズによってAppleが設立されることからも、その影響力がわかりますよね。

また、発達したコンピューター・テクノロジーは、映像や音楽と結びつき、新たなジャンルをも生み出します。
サイケデリック』や『アシッド』を関したアート・音楽は、幻覚剤によるトリップの感覚を表現するために生み出され、それらの音楽も様々な方面に影響を与えます。

映像・音楽、そして、皆がそれらを通して一体になるクラブの文化は、現代版の『サバト』といっても良いかもしれません。

現代では既に過去のものとなり、ヒッピーの存在すら知らない世代が成人を迎える様になってきていますが、皆がアップル製のiPhoneを持ち、ロックを聴き、クラブでトランスを聴きながら体を揺らす状態は、現代まで続いています。
そして、クラブミュージックなどに興味が無いような層は、派生したニューエイジが生み出した、ヨーガ・アロマテラピーアーユルヴェーダといったものを受け入れている状態になっています。
消えたかに見えたヒッピーたちが起こした火は、いまや皆が自然と受け入れる文化へと変化して浸透し、新たな常識となって息づいています。

この様なヒッピー文化と、Rez Infiniteが、どのような関係があるのか。
次回、私の100%の主観、独断と偏見で、書いていこうと思います。

【続く】