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【おすすめPodcast紹介】 心理学ニュース

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私の独断と偏見のPodcast紹介コーナー。
第回。

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今回は、【心理学ニュース】

心理学ニュース

心理学ニュース

  • 心理学ニュース
  • 社会科学
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です。


今回紹介するwebラジオは、【心理学ニュース】
この番組を知ったのは、アプリのPodcastのホームページで、新着として名前が挙がっていたからです。
心理学って、人の心を覗き見出来るイメージがあって、結構、興味がある人が多いと思います
テレビなどでも心理学者などが悩み相談をしていたりと、学問のはずなのに、人のコミュニケーションに密接に関係があり、どことなく親しみやすいイメージ。
そんなイメージから興味が出て、聴き始めました。

配信されている方々は、全員、現役で研究や実験などを行っている心理学者の方たち。
更新間隔はまちまちで、1週間で配信されることも有れば2週間空くこともあります。
放送時間は20分前後で、気軽に聞ける感じが良いですね。

気になる放送内容ですが、普通の心理学系とは少し違う感じです。
何を持って普通というのかにもよりますが、タイトルに『心理学』と銘打っている物の多くが、心理学を利用して悩みを解決したり、恋愛を成就したりと人の心を覗き見ることで人間関係をなんとかしようとするものだったりします。
これはラジオやテレビに限らず書籍として発売されているものも、この様な用途を想定して販売されているものが多いと思います。

しかしこのPodcastは、そういった意味ではちょっと違います。
番組の流れとしては、事前にメンバーの一人が事前に論文を選んで下調べをしておき、その方が皆の前で読みます。
その論文を聴いて、他のメンバーの方が思ったことや疑問をぶつけて行くというスタイル。
論文をテーマにした議論が中心の、心理学の学問面を全面に押し出したような放送です。

では、勉強系の番組にありがちな構成になっているのかというと、これも少し違います。
勉強系にありがちなのが、先生役の人と生徒役の人がいて、生徒役の方が話をより理解しやすくする為に質問をするという形式。
難しい用語や解説が出てきた時に、生徒側が質問をする事で先生役が解説の機会を得て、少し堀下げて話す。
解説が難しいが重要な部分では、生徒側が自分で理解した簡単な解釈を先生側に伝えて、あっているか間違っているかを確かめることで、より理解しやすいように伝える番組。

今回の番組は、そういった番組とは違い、お題として取り上げられた論文について、研究者の人が自分で思った疑問についてガンガンぶつけていきます。
つまり、先生役に対する生徒役はおらず、立ち位置としては皆同列といった感じで議論は進行。
メインテーマとなる論文の内容が、自身の現在・過去の研究内容と類似する内容があった場合、『過去にこんな実験をした際には、この様な結果が出ているのですが、今回のケースにも当てはまるのか?』といった感じで質問がぶつけられます。
これを受けて、事前に論文を読み込んでいる幹事の研究員が、答えられる部分には答え、答えられない部分は素直に分からないと答えていく感じ。
授業というよりは、心理学者同士の座談会のような感じで進んでいきます。

これが、かなり面白い。
授業形式であったり従来の心理学を使った相談モノの番組の場合は、学問的な『正解』というものがあり、そのガイドラインに沿って話を進行していきます。
心理学を応用した人生相談も同様で、心理学的には相手がこう思っているから、それを想定して行動を取るほうが良いといった解決をする場合が大半。これも、心理学的な正解をベースにしてのアドバイスになっています。
どちらも、心理学的な正解がある事が前提なのですが、この形式の番組の場合、その正解が本当に合っているのかどうかというのが重要になってきますが、その部分について触れられることは少なかったりします。
その為、疑り深い私の様な人間は『その心理学的な前提は、全てのケースについて当てはまるのか?』といった疑問を持ってしまいがちで、良くて話半分程度にしか聞かなかったりしてしまいます。
しかし、この番組では、その疑いがある部分を現役の研究員がズバズバとツッコんでくれます。

例えば、第21回では『ドラマは思い出をよみがえらせる?』というタイトルで、「自己への役割:自伝的記憶の自発的でない想起に対する引き金といてのメディアコンテンツ」という論文を紹介されていました。
結構難しい感じのタイトルですが簡単に書くと、人は、自発的に自身の過去の思い出を思い出すことも出来ます。その一方で、何かの映像を見た際に、それがトリガーになって意識せずに自分の思い出が思い出されるということも有ります。
この『映像がトリガーになって記憶が思い出される』という現象が、どのような時に起こるのかという研究です。

メインテーマはこの論文になるのですが、映像の種類といった基本的な質問から、その映像が人に及ぼす影響などを各研究員が自身の経験から予想したり、気になる部分について質問をしたりします。
こんな議論をしている内に、話は『動画を楽しめた人ほど、過去の記憶を思い出される事が多かった』という話に変化していきます。
当然この話にも、『原因と結果が逆で、動画を見て過去の記憶が思い出されて感情移入できたから、結果として楽しめたのではないか。』といった鋭いツッコミが入ったりします。

こんな感じで、一つのテーマを取り上げて議論し、質疑応答を繰り返していくことでテーマを掘り進めて、より理解を深めるという構造になっています。
結構、新しい論文を取り扱うことが多く、この知識をそのまま生活に活かすことが出来るかといわれれば、正直、疑問は残ります。
しかし、心理学者がどんな事を研究テーマに据え、そんなアプローチをしているのか。その実験を通してどんな疑問を持ち、疑問を解決するためにどんなアプローチが必要なのかというのが、表面的ではありますが知ることが出来ます。

『心理学を応用して、相手の気持を手玉に取ってやろう!』って感じの方は、期待はずれの番組かもしれません。
しかし、心理学がどのようなものか、根本的な部分に興味をもっている方にとっては、楽しめる番組ではないでしょうか。