だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

アベノミクスと京都と外国人観光客

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少し前のことですが、テレビ東京の経済系ニュース番組のWBSで、京都の観光収入が落ち込んでいるというニュースが報じられていました。
もう少し詳しく書くと、安倍政権に変わってからアベノミクスの一環でビザが緩和され、大量に外国人観光客が訪れているにも関わらず、京都の企業の業績は落ち込み、税収減になっている状態。
その一方で、大量に押し寄せる観光客の為に様々な対策を行わなければならないので、経費はかさんでしまう。
その解決策として、新たな税金である観光税を徴収するという話でした。

税金を集める手段としては、寺社仏閣の参拝料に拝観税をプラスしてみたり、観光用のガレージやホテルで料金とは別に観光税を徴収するという話でしたが、参拝料に課税する案は、以前に一度実施しようとした際に寺社仏閣から猛反対を受け、参拝料をとっている施設は参拝中止にして周辺の土産屋を困らせるという暴挙に出たそうなので、出来るだけ受け入れられやすい案を検討しているとのことでした。

このVTRをみて、京都に住む私自身は『そうなんだ。。』といった普通の感想を持ったのですが、ビックリしたのが、コメンテーターの意見。
随分前の放送なので、正確な文言を覚えているわけではありませんが、ニュアンスとしては『観光客が大量に増加して京都に観光に行っているんだから、儲かってないなんてことはありえない。行政は所得把握をしっかりすべき。』といった感じの発言をしたんですよ。

いやぁ。。本当に驚きました。
これって簡単にいえば、京都の税収が下がっているのは、京都人が所得隠しと脱税をしてるからで、行政はしっかり調べて税金を取れば新税の問題もなくなるって事ですよね。
このコメンテーター、京都の何を知って、こんなことを発言したのでしょうか。
何か脱税を裏付けるような証拠でも握っているのでしょうかね。
それなら、是非、税務署に情報を提供することをお勧めしたい。
所得隠しや脱税をしていない身としては、そういう人はサッさと検挙してもらいたいですからね。

東京に住んでいる学者やコメンテーターって、殆ど東京から出たことがないのに、データだけ観て妄想を膨らまし、その妄想をまるで事実かのように話すから困ってしまいますよね。

という事で今回は、京都に住む私から観た京都の景気について書いていきます。

結論から書くと、景気は結構悪い状態で住民税などの税収が落ち込んでいるのは、嘘ではなく理解が出来る感じです。
私は土産物関連の製造業を行っていて、得意先にいろんなメーカーがあります。
そのメーカーに対する売上は年々落ち込んでいて、頑張っている会社でも現状維持で精一杯という状態です。

『それは、お前と関係がある会社だけの話だろう?』なんてツッコミが入るかもしれませんが、多くの土産物メーカーは自社物件で販売しているわけではなく、百貨店やモール・駅ビルといったところに納めています。
隣の店はライバル会社といえども人と人なので、仲良くなることもあるし情報交換を行い、私はそれを聞いたりする事が多いのですがどの業者も皆同じように景気が悪いようです。
実際に、京都の繁華街である四条の京極・寺町通りを歩いてみても、土産物屋には誰も入っておらず、持ち家じゃなければ店舗を維持するのも難しいレベルです。

『それは、お土産物自体がオワコンなんだろう!』なんて、手厳しいツッコミもあると思います。
それは、正直その通りなのかもしれません。
今は旅行に行ったからといって、家族親戚一同に土産物を買って配る習慣も廃れてきていますからね。

では、他の業種はどうなのか。
観光客が土産物を買わなかったとしても、飲食はするでしょう。
旅行客が大量に増えているのなら、それに応じて飲食店の売上も上がっていそうな気がします。

しかし実際はというと、飲食店の景気が良いかというと、そうでも無い。
私は週末だけですが、京都の繁華街の木屋町に10年以上通っています。
基本的に一人で呑み歩くスタイルなので、周りの風景に自然と目が行くのですが…

外国人観光客が増え始めたのと同じ時期から、今まで観たこともない張り紙を色んな所で見るようになりました。
それは、『来店した際は、1人1オーダーはお願いします!』というもの。
この張り紙が何を意味しているのかというと、店に入ってもオーダーしない人間が多いということです。

ひどい場合では、5人以上で押しかけてビールを1杯だけ注文して、残りの4人は水を注文し、長いあいだ店に居座るということも珍しくないようです。
この対策として行ったのが、先ほどの張り紙というわけです。
店は大半が賃料を支払って店舗を借りている状態なので、お金が発生しない客が席を占拠し、その御蔭で他の人間が入れないなんて事になれば、利益を圧迫されます。
また、こういう客を放置しておくと、それを観た金の無い日本の学生なんかが真似をして、余計に悪循環に突入するなんてことにもなってしまいます。
これらを防ぐためにも、張り紙は仕方のないことだったのでしょう。
ただ、張り紙を貼ったからといってバンバンお金を使ってくれるわけもなく、1杯で粘る人が多いようです。

その他にも、レストランで働く人に興味深い話を聴く事が出来ました。
その方の話によると、そのレストランは質の良い料理を出すということで、東京の方から年に数回、観光を兼ねてそのレストランで食事をするという富裕層の方が何組かおられたようです。
わざわざ京都まで食べに来るということで、結構な金額を使ってくれていたようなのですが、ここ最近の大量の外国人観光客によってホテルが全て占拠されていまい、京都に来られないということで、その方々は来なくなったそうです。
では、代わりに外国人観光客がレストランに来て同じように金を使ってくれるのかというと、そんな事は当然ない。
『1人1オーダーお願いします!』と張り紙しないと注文してくれないんですから。

まとめると、大量の外国人観光客が来てくれたおかげで、今まで国内旅行で京都に来てくれていた日本人観光客が締め出されてしまった。
外国人観光客は、目当ての物を爆買いすることは有っても、飲食などで大金を使うことはないので、観光メインの京都は打撃を受けているといったところでしょうか。
儲かっているのは宿泊施設だけなんでしょうが、高さ制限のある京都はそもそも宿泊施設が少ないので、大半の宿泊客は大阪・滋賀・奈良などに宿をとっているため、京都の収入にはならない。

結果としては、京都はアベノミクスで打撃を受けているってことになるんでしょうね。
京都に住む私の印象としては、こんな状態なんですが、東京のコメンテーターにいわせれば、京都人は脱税しているらしいですけども。
まぁ、どちらを信じるかは、アナタ次第ってことで。