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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

無料アプリの対価は情報?

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先日のことですが、WBSを観ていると、FinTech(フィンテック)なる言葉が紹介されていました。
Finance(ファイナンス)×Technology(テクノロジー)の造語で、クラウド型の会計ソフトや家計簿アプリ等、金融に関連した新技術の事を指すようです。

会計ソフトは、売り上げ的には節税対策とは無縁の中小零細の強い味方ですし、家計簿アプリも、無料や低料金で使えるのであれば、非常に助かる。
この家計簿アプリも、銀行口座等と連動させることによって、自分で打ち込むこと無く計算をしてくれる様で、非常に便利らしいんですよね。
また、ダウンロードしてスタンドアローンで動くのではなく、クラウド型なので、煩わしいアップデートも不要。
そのデータを元に、資産配分の相談まで出来るようで、意識高い系の人にとっては、飛びつかざるをえない様なサービスに思えます。

また、最新の会計ソフトや家計簿は、人工知能によって、複式簿記の記入をよりスムーズに行える技術もあるようです。
複式簿記について解らない方の為に、簡単に説明を書くと、勘定科目というものを設定し、その数だけ帳面をつけるんです。
例えば、現金・銀行預金・食費・水道光熱費・保険といったジャンル分けをした場合、このジャンルごとに帳面を付けます。
現金の帳面には、現金についての出入りだけを記入し、使用先に相手の勘定科目を振り分けます。
例えば、電気代として5000円支払った場合、現金の支出として5000円計上し、水道光熱費として5000円計上する。

普通の家計簿の場合は、月初めと月末の現金の差しかわかりませんが、複式簿記の場合は、水道光熱費としていくら使用したのかというのが、ひと目で分かるわけです。
この勘定科目の振り分けというのが、会計をする者にとっては結構面倒くさい作業なのですが、これを人工知能で自動的に行なってくれる技術が既にあるそうなんです。
複式簿記の導入によって、どの部分を節約すべきかというのが一目で分かるため、賢いやりくりが出来るようになります。


しかしここで心配なのが、データのぶっこ抜き。
考えてみてください。
一生懸命開発したアプリを、無料・または低料金で使わせて、企業に一体何の特があるのでしょうか。
現代社会で、会社という営利企業が、何の報酬も期待せずに何かを提供するなんてことは有りません。
サービスを提供するには、何らかの見返りを求めていると考えるのが妥当でしょう。
その見返りが、先程書いた ぶっこ抜きです。

これらのサービス。
基本的には個人の判断によって決定するわけですが、家計簿アプリで、銀行の資産残高や出入金履歴、引き落とし情報まで全てリンクされるわけです。
家計簿は、自身の資産内容を正しく把握するためのものなので、複数の銀行に資産がある場合、当然、全ての銀行のデータ入力する。
当然ですが、現金の収支も入力するわけで、家庭内の全ての金の動きが露わになります。
そのシステムがクラウド型という事は、そのアプリを使うことで、アプリ提供会社に資産内容が筒抜けになるわけです。

この、個人の金融資産状態の把握というのは、資産運用関連の営業にとっては、喉から手が出るほど欲しい情報です。
何故なら、総資産が100万円の人に電話をしても無駄ですが、1億あれば、上手く騙せば投資をさせることが可能です。
何かの名簿を購入し、相手がいくらの資産を持っているかがわからない状態で営業をかけるのと、1億円を持っている人間に絞って営業をかけるのとでは、効率が全く違ってきます。

また、資産をどれだけ持っているかという単純な情報だけでなく、複式簿記でどのジャンルに支出をしているかというのが一目で分かるため、ある程度の人間性も分かるようになります。
この過程は、収入の割に服飾代に使うお金が多いといった単純なことから、どのレベルの保険に入っているのか等、探れることは様々です。

ここまで掘り下げた個人の金融資産情報というのは、かなりの価値が有ります。
そして、数がまとまると、価値自体も相当高まることが予測されます。
これは憶測でしか有りませんが、このFinTech(フィンテック)事業に参入する企業の真の目的は、この情報の販売なのではないでしょうか。


そんな情報を販売するのって、違法じゃないの?と思われるかもしれませんが、私達の情報は既に売買されています。
有名な例で言えば、CCCという会社。
この会社は、ポイントカードの発行をしています。
『ポイントカードの発行ぐらい、どの小売店でも行っているだろう!』と思われる方も多いと思います。
確かに、買い物に行けばそこら中で、『ポイントカードはお持ちですか?』と聴かれます。
しかし多くの小売店が発行しているポイントカードは、主に顧客の囲い込みが目的です。

ですが、CCCが発行するポイントカードは、顧客の囲い込みが目的では有りません。
というか、性質上、顧客の囲い込みが不可能なタイプのポイントカードなんですね。
このポイントカードは、提携している店舗で有れば何処でも使えるというのが強み。
当然、ライバル会社が提携する可能性も有るわけで、囲い込みには向いてないんです。

では、何の為に発行しているのかというと、顧客の買物情報の取得と販売が目的です。
このカードでポイントを受け取ると、売上データが本社に送られることになります。
そのデータを解析することにより、様々なことが分かるようになります。
例えば、深夜に買物をする人は、どんな商品を購入するのか。
その商品を購入した人は、どんなタイプの本を購入するのか。
ガソリン代は月にいくらぐらい使うのか。
様々な情報を関連付けることにより、顧客の行動パターンを読むことが出来、先手を打って店舗に反映することが可能になります。
その情報を提携店に販売することで、利益を得ているわけです。

そのCCCが発行しているカードの名前は、Tポイントが貯まる『Tカード』

ここで、『別にTカードを使っていても、不自由なことはないよ。』と主張される方もいるでしょう。
それは、Tカードの情報を利用している企業の大半が、小売店だからです。
アマゾンで買い物をして、『この商品を購入した人は、これも買ってます』って宣伝が出たとしても、買いたくなければ無視をすれば終わりです。
Tカードも同じで、少額の商品に対しての宣伝をされたとしても、対して困ることは有りません。

しかしこれが、金融商品だったとしたらどうでしょう。
分不相応の保険に入れば、数百万単位でお金をドブに捨てることになります。
よく分からない不動産投資に飛びつけば、人生を棒に振る可能性も大いにあるでしょう。
リスクが全く違うんですね。

この様な危険を、『ただで家計簿アプリが使えるから』という理由だけで招いてしまうのは、結構怖いことではないでしょうか。