だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

ギリシャ危機に学ぶ TPPについての疑問点

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安保関連の話が落ち着いた次は、TPP関連の話が騒がれ始めました。
TPPを物凄く簡単に説明すると、労働力などの人の移動や出入りの規制や、関税を無くすことで、経済活動をより活発にしようという試みです。
細かい部分の調整で、規制や関税を残す部分も決めるそうですが、おおまかに表現すると、国という枠組みを超えて、経済活動を自由にしようという発想です。

私個人の意見としては、昔は賛成の立場でした。
この議論が巻き起こった当初から、日本が二の足を踏んでいる理由の主な要因は、農業従事者の保護。
私は、大きな企業に務めているわけではなく、家族で細々と事業を行っている身なので、農業従事者だけが守られる構造というのに、納得出来なかったんですよね。
それだけでなく、【農政トライアングル】なんてワードで調べてもらえれば分かりますが、農協などの団体と特定政治家の癒着構造。
これにより、農業分野への新規参入が難しかったり、規制によって自由な商売がやり辛かったりと、自由競争を阻害するような状態にもなっている。

これらの動きを見て、『業界を守るというよりも既得権益を守りたいだけなんじゃないか』と思ってしまったんですよね。
この仕組みを根本的に変えるためには、自浄作用に頼っていてはダメで、外部からの刺激がないと変わらないのではないか。
そんな事を考えていた私は、TPPがその刺激の一つになるのではないかと考えていたのです。

(昔の投稿はこちら。かなり前なので、文章も稚拙で読みにくいです。すみません。)
だぶるばいせっぷす 食料自給率問題

しかし、ここ最近のギリシャ危機などを見ていると、その考えが若干変わってきました。
農業改革のためだのTPP参加は、結構リスクが高いのではないかと。
先程も書きましたが、TPPは、労働力の移動や関税を撤廃する自由貿易協定です。
言い換えれば、TPPに参加する国々を同じ経済圏にしようという話で、仕組みに問題があるといわれているEUと、ほぼ同じなんですよね。

そもそも各規制が存在するのは、それぞれの国の産業を、そしてそこで働く人々を守る為なんです。

日本人の多くは、仕事というのは、努力によって成果が上がると思い込んでいますが、実際にそうではありません。
仕事で一番重要なのは、運です。
具体的には、立地になるのでしょうか。
例えば作物などは、その種類によって作れる地域が限定されています。
製造業なども似たようなもので、人口分布や土地の安さ、労働力が安く確保できるか等で、工場が誘致しやすい土地が限定されています。

ここで重要なのが、それぞれの土地が有利な点を1つづつ持っているわけではないということ。
作物が何も採れず、資源も取れない、立地的に工場も誘致しにくく、労働力も確保できないような場所が存在する一方、逆に全てが恵まれている場所も存在する。
仮に全ての規制が取り払われて、完全に自由競争となった場合、立地の良い国の利益は上昇するが、恵まれていない国は産業が無くなり、借金漬けになる。
つまり、EUで起こっているような地域による経済格差が起こってしまうわけです。
TPPの場合は共通通貨にするわけではないので、ユーロ圏程スピードは早くはないでしょうが、ゆるやかに確実に起こる現象と考えていいでしょう。

具体的に書くと、立地の良い国の産業は有利なので、恵まれていない国とくらべて産業が成長しやすい。
初期の段階で成長に差がついてしまうと、その後追い抜かす事が結構難しい。
というのも、利益が生みやすい立地に存在する国は、儲かった利益で更に投資をする事が出来、生産効率を上がることが可能になります。
生産効率が上昇すると、物を安く提供することが出来る為、販売競争力が高まる。
こうなると、最初にリードした国は更に売上が伸びることになり、更なる投資によって商品開発や生産効率の上昇を行うことが出来る。

最初にリードした企業が成長し、他者よりも圧倒的に優れた企業になると、学生たちはその企業に入社する事を目指すようになり、有能な社員を独占できるようになる。
つまり、立地の良い場所で産業を起こした企業が最初にリードする事により、その業界の覇者に慣れるという事です。
そして、不利な土地にある産業は覇者によって駆逐されてしまう。
産業が駆逐されてしまうと、その産業が生み出す製品が人が生きていく上で無くてはならないものであれば有るほど、供給する国の地位が上昇することになる。
これは、経済による国の植民地化のようなもので、先の大戦で武力で行った事が経済活動で行われているのと、何ら変わらない。

では、立地の良い場所に存在する国の人々によっては、良いことなのかといえば、そうでもない。
先程も書きましたが、その業界の覇者となった企業は、同じ経済圏から大量の就職希望者を集めることになります。
当然就職競争のレベルも上がる為、かなりの努力が必要となります。
その努力の結果として入社を勝ち取った場合でも、それでゴールではありません。
毎年の様に新入社員というライバルが入社し、能力で劣れば即座に解雇を言い渡されるわけですから、努力し続けなければならない。

『こんな事が本当に起こるの?』と疑問を持つ方も居らっしゃるかもしれませんが、そんな方は、隣の韓国を見てみればよいでしょう。
行き過ぎた資本主義によって、中小零細企業がほぼ無く、経済の大半を財閥が仕切っています。
あらゆる新分野に財閥資本がまず入る為、後発組は太刀打ち出来ない状態となっています。
財閥企業に入社できれば良いですが、出来なければ惨めな人生を送ることになる。
熾烈な競争を勝ち抜いて財閥に入ったとしても、40歳で解雇される。

自由経済といえば聞こえは良いですが、行き着く先は、強者がより強く、弱者は立ち上がることすら出来ない社会だったりします。
この様な事を防ぐ為には、ある程度の規制と再分配システムが必要となります。

しかし私がニュースなどを聴く限り、そのような話は一切聞こえてこないんですよね。