だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

今一度 ブラック企業の定義について考える

広告

ここ最近、当初生み出された時とは違った意味合いで言葉が広がるという現象が起こっていますね。
最近で有名なものでは壁ドン

元々この言葉は、賃料が安いマンション等の壁が薄いことが多く、少し騒ぐと、隣の人間が『うるさいぞ!』という意味を込めて、壁をドン!と叩いてくる現象を表す言葉でした。
それがいつしか、男性が女性を壁の方に追い詰め、逃げ場がなくなったった女性の後ろの壁に手をついてキスを迫るという、少女漫画の演出の様な状態を表す言葉に。

その他の言葉としては、中二病など。
これも、伊集院光さんが一人喋りで放送する深夜の馬鹿力というラジオ番組の1コーナで作られた言葉で、意味合いとしては、大人を意識しだした子供が、つい取ってしまう行動を中二病とよんでいました。
例えば、今までコーヒー牛乳しか飲んでいなかったのに、コーヒーをブラックで飲んでみるなど。
それが今では、自分が特別な存在という設定で妄想する様な人を形容する言葉に。

他にも探せばあるのですが、この様に、当初作られた時の意味と若干違った形で広まってしまった言葉に、ブラック企業というものが有ります。
最初に上げた2つについては、言葉の意味が変わったとしても、特に悪影響はないと思われます。
しかしこのブラック企業の意味の変化は、若干悪影響が出ていると思われるので、今回はこの事について考えていきます。


今現在、使用されているブラック企業という言葉の意味としては、主に2つの意味で使用されています。
それは

  1. 非合法な団体や組織
  2. 拘束時間が長く、過酷な労働環境にも関わらず、低賃金

しかし、私が一番最初に聴いたブラック企業の定義は、少し違います。
では、どの様な定義がされていたかといいますと

  • 働く事で何のスキルも身につかない仕事

です。

違いが分かりやすいように、1つ例を出しましょう。
実際に存在するかどうかは横に置いておいて、魚の刺し身の上に【たんぽぽ】を置く仕事があったとします。
業務内容は、ベルトコンベアで流れて来る刺し身の上に、飾り付けのたんぽぽを乗せるだけです。
この業務の条件が

  • 残業は一切無い
  • 一日8時間で完全週休2日制
  • 申請をすれば、有給は100%消化できる
  • 給料は月に25万円

だった場合
この条件の場合、今現在の定義に当てはめると、この職場はブラック企業ではありません。
しかし後者の条件では、ブラック企業となってしまいます。

少し違った例を出してみましょう。

  • 大手居酒屋チェーンで店長として働くAさん
  • 個人経営の居酒屋の調理場で働くBさん

2人の人間を比べた場合

両者の労働時間・給料通勤時間等、労働を取り巻く環境が全て同じと仮定した場合
Aさんの職場はブラック企業で、Bさんの職場はブラック企業ではありません。

それは何故なのか。
大手居酒屋チェーンの店長の仕事は、分業化された仕事の1つである中間管理職です。
基本的に会社の指針にしたがって動くだけです。
何の技術も見については居ません。
その為、Aさんが会社をやめることになった場合、次の働き先では、今までの経験を活かしづらいでしょう。

その一方でBさんの場合は、個人経営の居酒屋の調理場が仕事場です。
調理場で働くことで、自分自身に料理を作る技術が身につきます。
また、自分と一緒に働いている人間は、経営者です。
その為、経営者が何を考えて行動しているのかということが、特に会話をしなくても、仕事をしているだけで身につきます。

最終的に仕事を辞める事になってしまったとしても、他の店で料理人として働くことも出来ますし、自分で店を出す事が出来るでしょう。


ブラック企業の今と昔の定義で、最も大きく違う点は、給料は関係ないという事です。
仕事をしながらスキル・知識・経験を身につけることが出来るという事は、言い方を変えると、お金を貰いながら学校に行っているのと同じです。
技術や知識を教えてもらう為には、本来であればお金を支払わなくてはいけません。
本来支払わなくては成らない学費を、逆に貰いながら勉強できるわけですから、ブラック企業には当てはまらない。

その一方で、働くことで何の知識も技術も身につけられない仕事というのは、自分の持っている時間の切り売りと同じです。
時間を切り売りして生活している人がステップアップしようと思うと、仕事以外の自由な時間を勉強や修練に当てなければなりません。
結果として、効率が非常に悪いのです。


では今現在、本当の意味でのブラック企業は何なのか。
これは、大企業のホワイトカラーの一部です。
この様な職場で働いている人は、特に知識や技術が身につくわけでもないのに、近い将来、IT技術によって自らの立場を取って代わられる事が容易に想像できます。
仮にコンピュータに仕事を奪われた場合、この人達の存在意義自体が揺らいでしまいます。

その一方で、アナログ系の技術を伴う仕事の場合は、多少給料が低かったとしても、ブラック企業には成らない場合が多いです。

にも関わらず、賃金が低くて拘束時間が長い=ブラック企業と単純に定義付けしてしまうことで、大企業に人材が集中し、職人の数が減ってしまっています。
仮に一部の業界で職人がゼロになって技術が失われた場合、その技術を再び復活させるのには、かなりの労力が必要になります。
また、一部の製造業が潰れて国内から消えた場合、その製品を使用する際には、海外から輸入する必要があります。
この場合は、確実に足元を見られますので、外交的にも不利になるでしょう。

ブラック企業という言葉が広まったことで得をしたのは、優秀とされる若者が職を求めて挙って押し寄せた大企業だけのような気がするのは、気のせいでしょうか。