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【Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿】 第38回 神話の時代 (1) 前編

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

注意点

前回までで、長く続いてきたヒッピー回が終了しましたので、今回から、新しいテーマに移っていこうと思います。
今回から取り扱うテーマは、もう一度基本に戻って、『ギリシャ哲学』を最初から勉強していこうと思います。

最初に言っておきますと、このコンテンツ全体について言えることなのですが、このコンテンツは、私自身が勉強して理解した範囲の事を話しているに過ぎません。
現在進行系で勉強しながらのコンテンツ制作なので、読んでいない本も知らない情報も多く、中には、私自身が誤解して理解していることも多数あると思います。
もし気になった点や、興味のある部分が見つかった際は、自分自身で情報を集めて勉強することをおすすめします。

話を戻しますと、このコンテンツでは、第2回からギリシャ哲学のソクラテスプラトンアリストテレスをテーマに取り上げましたが、その時は、もの凄く簡単にしか触れていませんでした。
その理由としましては、このコンテンツの立ち上げ当初は、文字で書いていたブログの延長としてやって行くつもりだったというのが大きいです。
文字で書くだけだと伝わらないようなニュアンスを、音声で読み上げることで伝えようとして始めたので、テーマも哲学や思想に関わるものだけではなく、日々思った事を話すようなコンテンツを想定して立ち上げたのですが…

アリストテレスをテーマに取り上げたくらいからですかね。
アリストテレスの主張を簡単に伝えることは難しいなと思い始めて、もっと詳しく丁寧に説明しようと思い、哲学や思想に限定したコンテンツに方向転換したんです。
その為、それ以前のソクラテスプラトンについては、本当に簡単に触れただけ…
というより、私自身が勉強不足で知らない事が多過ぎた為に、簡単にしか紹介できませんでした。

今回からの回は、その部分について、私自身も改めて勉強しながら、作り直していく回となります。
という事で今回は、哲学の祖とも呼ばれているソクラテス以前の話からしていこうと思います。

このコンテンツの第2回では、元々は世界のあり方は、神様が登場する神話などで説明していたという話をしました。
元々は小さな人々の集団が、それぞれの文化の中で神話を作り出していく。そして、時間の経過と共に共同体の人数が大きくなっていって、人が住む土地の広さが拡大していく。
そこら中に点在していた小さな集団が、同じように住む地域を拡大していくことで、違った神話を持つもの同士がふれあって、そこで違った価値観に出会う事で、相対主義が生まれたという話をしたんですが…

まず、その話は一旦、忘れてください。
完全に間違った話といったわけでは無いと思いますが、全体の話を大雑把に理解する為の話になるので、一旦忘れて、まっさらな気持ちで聴いてください。

神という概念は最初から有ったのだろうか

前に説明した際には、物事を神話によって説明していたと言いましたが、果たして本当にそうなのかという事について考えていきます。
人間が意識を持って、自分自身の頭で考えるという行動を取れるようになって、一番最初に考え出すことって、神様の存在なんでしょうか?

私達のように、現代に生まれてきた人間は、小さな頃から『神様』という存在について、親から教えられます。
これは、神様や仏様、お天道さま、なんでも良いのですが、躾の一環として、悪いことをした際などに、同じことを繰り返さないようにと、人間以外の上位の存在から『罰が当てられる』と刷り込まれます。
こうして育った人間が、何らかの超常的な現象を目にしたときや、奇跡のような事が重なった際に、『神』といった概念が頭を過る事は不思議でもなんでもないのですが…

なんの刷り込みもなく、前提とした知識もなく、ただ、大自然の前に放り出された、意識を持った人間が、目の前に起こっていることを理解する為に、神といった存在を持ち出すのでしょうか?
おそらく、持ち出さないでしょう。 仮に、いきなり神という存在を定義して、その神を中心とした神話を作り出せる人間がいたとしたら、その人間は、かなりの天才でしょう。

大部分の普通の人間は、太陽が登ってくるのを目にして『神が最初に『光りあれ!』と言ったから太陽が出来て、その後6日間で世界を作り上げた!』なんて思いません。
普通に、眩しい存在が定期的に光を照らすとしか思いません。
山火事などが起こって火を目撃したとしても、『火の神が!』なんて思わずに、単純に熱いと思うでしょうし、『夜でも明るいな』とか『熱いな』としか思わないでしょう。

『神』という存在は、その存在そのものが一種の発明で、その発明品である『神』という概念が無かった原始の世界では、あるがままをそのまま受け入れるという事しか行われていなかったと考えるのが自然でしょう。
つまり、あるがままをそのまま観察して、経験として蓄積していく、今で言う科学的な態度が最初に生まれたと考える方が自然という事です。

自然の観察とパターン認識

太陽と呼ばれる、光り輝く丸い物体が一定期間ごとに登る事で、昼という状態が生まれる。
それが沈んで暗くなると、その変わりに、月や星々と言った別の物体が夜空に浮かび上がる。
適当に散りばめられていると思いこんでいた星々は、よくよく観察すると、その配置は毎回同じもので、時間と共に場所を移動していく。

人が持つパターン認識によって、大自然の中に法則性を見つけ出していくという事が最初に行われ、その知識は時間の経過とともに蓄えられていったんでしょう。
知識というのは、ある一定以上の蓄積によって、演繹的に発展していきます。
演繹的とは、推測の様なものと捉えても良いと思います。
例えば数学の場合、足し算・引き算・掛け算・割り算を覚えると、頭の良い人であれば、そこから考えを応用して発展させて、方程式という概念を生み出せます。

このようにして、最初は周りの環境を観察して、パターン認識によって法則性を見出して、その情報を蓄積して応用して発展させていったんでしょう。
ちなみに、この科学という言葉ですが、昔は哲学と呼ばれていました。 哲学は『考える事』全般を指す言葉だったので、全ての学問は哲学と呼ばれていたようです。

データの蓄積と その応用

この様な行動が行われることで、古代エジプトでは、天体の動きから暦を発明して、ナイル川の反乱を予測する事に使われるようになりました。
また、ナイル川が反乱することで周囲の田畑が水浸しになり、土地の境界線も消えてしまう為に、土地の大きさを正確に測る計算方法も開発されます。
古代ギリシャ人は、古代エジプト人の平面の計測方法を学んでギリシャに持ち帰り、それを応用する事で、四角形以外の面積も測れることを発見したようです。

この計算方法の応用・発展によってギリシャの数学は飛躍的に進歩したようです。
ただ、この説明では、神話の誕生を説明できません。最初から、哲学や科学だけが存在していたということになります。
では、神という存在や神話は、どのようにして生まれたのでしょか。

生み出される神という概念

これは私自身の推測も多く含まれますが、哲学の始まりと同じように、パターン認識によって生み出されて発展した、一つの発明だったんだと思います。
先程も言いましたが、夜空に輝く星々の配置というのは決まっていて、それを覚える事で、季節や方角と言った情報を知ることが出来ます。
これをパターン認識によって法則化したものが占星術、そして天文学の起源なんでしょうけれども、無数にある星の配置をそのまま覚える事って、かなり難しいですよね。

では、人は、法則性がなく羅列するものを覚える場合は、どうするでしょう。
元素記号でも、ルートの計算でも、歴史の年号でもそうですが、何のつながりもない記号や数字を覚える場合は、単純に丸暗記するよりも、語呂合わせ等によって一つのストーリーにしてしまう方が覚えやすいです。
Hの後にHe、Hが水素で、次がヘリウムと覚えて行くよりも、『すいへーりーべーぼくのふね』と覚える方が楽ですし、順番も間違いにくいですよね。

星座の場合も同じで、単純に星の配置を丸暗記するというのは効率も悪いし、間違いも起こりやすい。
それよりも、数個の星を1グループにして、それぞれのグループに絵を当てはめていく事で星座にして、その星座を役者に見立てて物語を展開させれば、物語を覚えるだけで、星の配置を覚えられる上に、間違いが起こりにくいですよね。
こうして生み出された物語には、当然のように、パターン認識によって蓄えられた現実世界で起こる法則も、組み込まれていったんでしょう。
例えば、特定の星座が特定の位置に来る頃にナイル川が反乱するので、その星や星座の行動と、ナイル川の反乱と結びつけようといった具合にですね。
ナイル川の反乱という現実世界の出来事を物語に投影するわけですから、その星座が持つ役者としての性格も、そのように設定されて作られていきます。

こうして作られた物語は、印刷技術がまだない古代では、演劇などを通して、一般に娯楽として提供されて居たのでしょうし、親が子に語り継ぐなどして、代々と受け継がれていったんでしょう。
そして、代を重ねるごとに、科学や学問としての要素が徐々に削ぎ落とされていって、物語そのものに焦点が当たるようになり、最終的には神話として語り継がれていったんだと思います。
このようにして、一度、神話という概念が生まれると、科学と同じように、応用されて発展していきます。
(つづく)
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