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【Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿 】第26回【ヒッピー】ティモシー・リアリー(2) ~独立

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回の放送では、ヒッピー・ムーブメントの前身となる、ビート・ジェネレーションやビート運動について話、その後、ヒッピー・ムーブメントの中心的な人物である、ティモシー・リアリーについて話始めていったわけですけれども
今回は、その続きとなります。

本題に入る前に、一応、言っておこうと思いますが、前回も、そして今回からもそうなんですけれども、ヒッピーを取り扱う回では、LSDなどの幻覚剤を始めとした禁止薬物が、頻繁に登場することになります。
それも、ネガティブな取り扱い方だけではなく、人間の可能性を伸ばすといった感じの取り上げ方をしますが、あくまでも、当時、そのように捉えられて研究されていたという解説をしているだけで
現在、使用することを推奨しているわけではありません。 現在は禁止薬物になっているものが大半なので、使用は行わないようにしてください。

前回までの流れを簡単に振り返ると、近代化が進んだアメリカでは、人間が人間らしく生活するのではなく、システムを循環させる為に人を消費する事が当たり前だという価値観に徐々に成っていってたんですね。
そして人間は、そのシステムの循環の為に、効率よく利用しやすい様に、レールの上に乗せて培養される。
有名な映画でいうと、マトリックスの様な世界観なんでしょうね。

かなり昔の映画で、今更ネタバレも無いとは思うんですが、まだ観てない方でネタバレが嫌な方は、ここで一旦聞くのを止めてくださいね。 いいでしょうか。
マトリックスという映画は、哲学的な問題を多く含んで作られている作品なので、捉え方によって、どのようにも捉えられるわけですけれども、ビート世代が抱えていた漠然とした悩みも表現されているように思えます。
この映画では、人間は人間らしく、不安や絶望を感じながらも、そんな中に僅かな幸せを見つけながら暮らしていく世界観が最初に描かれているわけですが、それは全て、機械が見せていた夢でしか有りませんでしたよね。

人間は、マトリクスの中で自由に生活をしているように錯覚をしていましたが、現実の世界では、狭いカプセルに入れられてコードをつながれ、ただ、機械達の電気を補充する為に栽培されているだけの存在でした。
これ以上無いぐらいの完全管理社会の中で、主人公たちが夢から覚めて目覚める事で、現状の問題を知って立ち向かうというストーリーです。
仏教では、ブッダというのは目覚めた人という意味ですが、目覚めて本当の現実を知ってしまうことで、マトリクスで起こっていることに現実味を持てないというのは、悟りや幻覚剤による意識拡張の表現とも考えられますよね。

映画としてみると、かなり非現実的なシチュエーションですが、現実の世界でも、似たようなことが起こっています。
私たちはシステムを回す為に、ハードルを超えていくことを義務付けられています。
義務教育を受けなければなりませんし、進学しなければなりません。進学しないのであれば、就活をして仕事につかなければなりませんし、適正年齢になれば結婚をしなければならないプレッシャーに晒されます。

システムを管理する側は、効率よくシステムを回す為に、それらを『常識』として世間一般に浸透させていて、管理されている側は自分が自由で、自分の人生は自分の選択によって勝ち取ったものだと錯覚するわけですけれども
実際には、自分達が選び取ったと錯覚している現状は、実は管理されているもので、管理社会に囚われている状態という事ですね。
この状態に文学面から異論を唱えて、意識の変革をもたらそうとしたのが、ビート・ジェネレーションのビート運動なのでしょう。

こういった状態の中で登場したのが、ティモシー・リアリーです。
リアリーはハーバードに就職後に、友人に進められた幻覚キノコに魅入られて、シロシビンの研究に打ち込むことになります。
その中で巡り合った本が、『知覚の扉』というメスカリンの体験やその体験を経ての精神の変化の考察について書かれた本です。

これを書いたのは、オルダス・ハクスリーという、自身の体を人体実験として使用して、精神の変化や、それを踏まえた上での哲学的な思想を研究していた人物です。
特に、意識拡張からの神秘体験、つまり、神的なものとの遭遇などで神の実在を認識できた人間の思想などに興味を持ち、その流れで、東洋思想にも興味を持った人物だったようです。
リアリーは、この人物に興味を持ち、実際に会いに行って、その後、一緒にシロシビンの研究である、ハーバード・シロシビン計画を行っていくことになります。

計画は、1960年から2年間続いたようで、研究内容としては、幻覚剤を擁護するような内容になっていたようです。
具体的な内容としては、前にLSDの回でも話したとは思うんですが、幻覚剤によるトリップを、精神病治療に役立てるといった方向で研究していたようです。
簡単なものでいえば、アルコール依存症などの治療や、犯罪者の再犯率を改善させるような証拠を探すと言った感じでしょうか。

再犯率に関しては、実際にコンコード刑務所で32人の受刑者を使って実験が行われたようです。
実験内容は、仮釈放中に何人の受刑者が、再び犯罪を犯して刑務所に戻ってくるのかというのをモニターするわけですが、通常の場合は再犯率から考えて64%、つまり大体20人ぐらいが犯罪を再び犯して戻ってくるはずだった所
幻覚剤を投与した受刑者は、通常の場合から比べて圧倒的に低い25%、つまり8人だけが刑務所に戻ってきていて、そのうち6人が規則違反で戻ってきただけで、実際に犯罪を犯して戻ってきたのは2人だけだったという結果が出たんです。

モニターする人数が少ないという事は有るんでしょうが、それでも、劇的に犯罪率が低下している様に見えますよね。
後に同じような実験が行われたらしいのですが、その際には大きな成果は出ていないようなので、単純に幻覚剤の使用だけで効果が出るものではなく、扱い方が重要だったのかもしれないですね。
というのも、リアリーの実験方法は独特だったようで、リアリーは受刑者をモルモットの様に扱うのではなく、実験内容を詳しく受刑者に説明した上で幻覚剤を投与し、トリップ中の受刑者に状態を細かくヒアリングするという手法を取っていたそうなんですね。

このヒアリングの目的としては、過去の宗教的体験、つまり、教会に行ったり何らかの儀式を受るといった体験や、自然発生的に感じる神という存在、例えば、何らかの偶然が重なって奇跡を感じるといった体験ですね。
その他には、聖人や聖書を書いた預言者、牧師らが体験している神秘体験と同じ状態かどうかというのを、ヒアリングによって確かめていたということなんでしょうね。
この結果として、幻覚剤でトリップ中の人間の精神というのは、先ほど例で挙げた、聖人であったり預言者であったり、宗教的神秘体験をしたと言っている人達の経験と、全く同じとまでは言えないが、区別がつかないほど似ていることが分かるようになるんです。
まぁ、当然のことですが、こんな話は教会側は受け入れないんですけどね。

つまり、神なんて信じていないような自分本位のサイコパスに、幻覚剤によって神秘体験をさせることで、神を認識させたということなんでしょうね。
リアリーは、この神秘体験の発生率を上げる為に、古代のシャーマニズムの研究なども行って、その方法を取り入れたりもしていたようです。

何故、この様な実験内容になったのかというと、シロシビン計画が立ち上がった1960年頃に、リアリーは、ビート・ジェネレーションの詩人、アレン・ギンスバーグを家に招き入れて、シロシビンを体験してもらった上で対談を行っているんですね。
幻覚剤を体験したアレン・ギンズバーグの感想としては、この体験は万人がすべきだと主張したそうなんですね。きっと、アレン・ギンズバーグにとっても、最初のトリップというのは今までの常識を書き換えるほどの体験だったんでしょう。
ビート世代というのは、人々を統制する為に、知らず知らずのうちに圧力をかけてくるシステムに対して異論を唱えた人達ですが、幻覚剤によるトリップによって、皆が当然のように思い込んでいた現実という殻を打ち破る事ができるようになる。
つまり、仏教で言うところの悟りの状態を、体験を通して知ることが出来るという事なんでしょうかね。この様な、形而上学的な存在をリアルに認識するという体験を皆がすべきだと主張したんですね。

この主張に同意したリアリーは、先ずはビート運動で活躍した人達に、シロシビンを配って回ったんです。
この活動の延長線上に、先程の実験があったんでしょうね。 幻覚剤による神秘体験が、人間の今までの価値観その物を変えて、ものの見方その物を変化させてしまう。
そのインパクトは、再犯率の高い犯罪者ですら、その行動を変えてしまうほどに凄まじいものだという事を、証明したかったんでしょう。

この様な感じで、リアリーはなりふり構わずシロシビンをバラ撒きまくったわけですが、その大量のシロシビンの供給元となったのが、アルバート・ホフマンという人物ですね。
このアルバート・ホフマンという人物ですが、サンドス研究所の研究員で、シロシビンの発見だけでなく、1943年に麦角菌(バッカクキン)の研究を行った際に、その幻覚成分を抽出して、LSDを開発したことでも有名です。
リアリーは、この人物から大量にシロシビンを譲って貰って、求めてくるものには気前よくシロシビンを提供し、トリップの研究を行っていたそうです。

この様な、幻覚剤の大量のバラマキや補給が、何故、出来たのかというと、前のLSDの回でも言いましたが、政府や軍は幻覚剤の政治利用や軍事利用を考えていて、独自に研究をするだけでなく、一部の大学や研究機関に研究を委託していたりもしたんですね。
その大学の一つがハーバードだったので、多少の事には目をつぶってもらえたし、国からのアシストなども得られていたようですね。
ただ、このリアリーの行動は目立ちすぎていた為、CIAからも睨まれて監視対象になっていましたし、研究内容も思想がかっているからか、大学からも煙たがられていたそうです。

また、リアリーの幻覚剤による意識改革に対しては、仲間内からも異論が出たりもしていたようです。
異論を唱えたのは、ビート・ジェネレーションの巨匠として有名な、ウィリアム・バロウズという人物で、この人物自体はドラッグの否定派ではなく、自身も一時期ジャンキーだったようで、リアリーの主張に一定の理解は示していたようなんですが、
バロウズはあくまでも、ドラッグは意識改革の導入に過ぎず、それに頼り切ってはいけないと主張していたようです。意識拡張自体は重要だと捉えていたようなんですが、最終的には自力でその境地に到達すべきだというスタンスだったみたいですね。

何故この様な態度を取っていたかなんですが、先程も言いましたが、バロウズは元々が薬物中毒者だったんですが、1953年に考え方を改めて、15年間に渡るジャンキー生活を止めていたそうなんですね。
この期間中にリアリーと知り合ってやり取りしてるんで、正直、また薬物漬けの生活に戻るのが嫌だったんでしょうね。
例えるなら、タバコを15年間吸っていた人間が禁煙を始めた際に、周りの人間がそれに協力せずに、むしろ事ある毎にタバコを勧めてくるようなもんですからね。15年間吸っているんだから、タバコの良さとか今更説明されなくても分かっているけれども、それに頼りっきりでは駄目ってことなんでしょうね。
ただ、このバロウズですが、ビート・ジェネレーションの巨匠だったせいか、ファンが結構いて、その人達が会いに来る時に皆が麻薬を持参してくるんで、その誘惑に負けてなのか、79年にはヘロイン中毒になってたりするんですけれどもね。

話を戻すと、バロウズは53年~79年の間はドラッグを自粛していたので、ドラッグを使わないで変性意識状態に入るために、感覚遮断装置、これは今でいうと、アイソレーションタンクになるんでしょうけれども、この装置にも興味をもっていたそうです。
アイソレーションタンクは、日本でも体験できる施設なんかが有るみたいですし、興味の有る方は試してみてはいかがでしょうか。
どんなものかというのを簡単に言うと、全ての感覚を遮断するような装置です。タンクの中に水が入っていて、その水は、冷たくも熱くもない丁度良い温度で、そこには塩が適量入っているので、体が浮くようになっている。
この時点で、温度と重力が遮断されるわけですが、それに加えて、光と音が遮断されます。 中に入ると全ての刺激から開放される通常とは違った環境になり、そこで一定時間過ごす事で、変性意識状態に入りやすくなるようです。

この様な感じで、大学側の目線、国側の目線、同じ思想家からの目線で、賛否両論が巻き起こる中、リアリーはめげること無く、幻覚剤の研究に精を出すことになります。
そんな中で、マイケル・ホリングズヘッドという人物が登場します。
この人物もリアリーと同じような研究者なんですが、ホリングズヘッドが出会った幻覚剤は、シロシビンではなくLSDだったんですね。

当時、LSDの研究がまだ初期段階だったからなんでしょうか、ホリングズヘッドは適量が分からなかったのか、最初に通常の100倍の量を摂取ししまいます。そして、ぶっ飛んだホリングズヘッドは、簡単に言うと、悟りを開いてしまいます。
他人と自分とを同一視してしまい、宇宙と自分が溶け合った感覚を体験してしまい、現実という夢から覚めてた体験をリアルに認識してしまった結果、現実を現実だと思えない現実感の喪失状態になって思い悩みます。
この事を、知り合いのハクスリーに相談した所、丁度、そのことについて研究している人間が居るよと、リアリーを紹介します。これが、1962年の春だそうです。

ホリングズヘッドは、リアリーとの対面の際にはLSDを持参し、リアリーに試して欲しいと訴えたようですが、当初リアリーは、政府や軍が研究に絡むLSDに対して良い印象を持っていなかったようで、すぐには手を出さなかったようです。
ただ、事ある毎にホリングズヘッドがLSDを薦めてくるので、ついに折れて、LSD体験をした際に、これまで以上の神秘的体験をしてしまったようです。
これ以降、リアリーの興味と研究対象はLSDへと移っていくんですが、これによって、今まで以上の逆風にさらされることになります。

というのも、LSDはMKウルトラ作戦の研究対象で、CIAからは精神病を誘発させる薬物として認識されていましたし、ハーバードには既にCIAを抱えの研究員が予算を貰って研究していたからなんですね。
CIAにとっては、研究は進んで欲しいし研究の成果も欲しいけれども、あくまで自分達の目の届く範囲内で研究はやってもらいたいと思っていたんでしょう。
勝手にやられても困るという訳ですね。 それに、CIAから援助を受けてLSD研究を行っている研究員からすれば、単純にライバルが増えることになるので、面白くもなかったんでしょう。

また、リアリーは先程も行ったように、トリップを求めるものには誰にでも分け与える人物だった為、それが元で事件などが起こった際には大学の責任になるということで、大学側も乗り気ではなかったようですね。
まぁ、リアリーは、幻覚剤による洗脳や軍事利用には興味がなく、意識拡張からの神秘体験や、それによる人格の変化などに興味を持っていて、その研究を行う為に大学を利用していたフシが有るので、大学側も煙たがっていたんでしょうね。
丁度その頃、闇市でLSDを含ませた角砂糖が販売されるようになり、今までの行動から、当然のようにリアリーに疑いの目が向けられて、大学に居づらくなったのか、1963年にリアリーはハーバードを辞める事になります。

その後、リアリーは、東海岸でLSDに関して独自の研究をする事になります。ただ独自の研究となると、問題になってくるのが研究費用ですよね。
大学から独立することで、自分の好きなように研究は出来るようにはなるわけですけれども、当然のように給料は無くなりますし、LSDの仕入れ費用なども自分で支払わなければならなくなりますよね。
リアリーは、何の準備もせずに大学を辞めたわけではなく、そのあたりの準備も抜かりがなかったようです。

具体的には、IFIF、日本語で言うと「精神的自由のための国際財団」というのを、大学の研究とは別で、東洋思想の研究家のアラン・ワッツ達と共に立ち上げていていたんですね。
活動内容としては、LSD研究を行って、その成果を『サイケデリック・レビュー』という冊子にまとめるんですが、これを手に入れる事が出来るのは、IFIFの会員だけということにして、会費を取るようにしたんです。
その他には、LSDの使用で神秘体験がしやすいように、ガイドを付けてLSDのセッションを行う為の施設を作ったりとかですね。
この試みは順調に進んでいたようで、会員もみるみる増えていったそうなんですが、CIAからの横槍などが入って、行き詰まってしまいます。

ただ、この活動の中で、資産家のビリー・ヒッチコックと出会った事で、この人物がパトロンになってくれることになるんですね。
これでリアリーはめでたく、資金を気にせず研究に没頭することが出来るようになるのですが、此処から先は、また次回にということにしようと思います。