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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

オリンピックでeスポーツ!? 最近格ゲーを再開して感じたこと

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ここ最近になって、eスポーツという名称が前面に出てきて、話題となっていますね。
2020年の東京オリンピックには、eスポーツも組み入れられるのか!なんて議論までされ、普段からゲームをしている私は、ゲームに対する偏見が徐々になくなっている感じが心地よかったりします。

さて、そんなeスポーツですが、最近はプロライセンスなんてのも生み出され、業界全体が盛り上げようと必死になっている感をヒシヒシと感じるのですが…
その熱意とは裏腹に、実際に一般に浸透しているのかというと、そうでもなかったりします。
私の周りを見渡しても、日本でプロ化している種目である6種目のゲームをやっている人間は殆ど観ない。

まだ、モンストやパズドラといったゲームをやっている人間は偶に見かけますが、その殆どが、サンクコストを考えて惰性でやってる感じで、数年前の盛り上がりがあるのかというと、そうでも無い。
据え置き機の種目である4種目に至っては、周りでやってないどころか、存在も知らない人もかなり見かける。
少し前、知り合いの働くレストランにいった際にゲームの話になったので、ストリートファイターの話をしたら、『あれって、まだ続編出てたんですね!』なんて言われる始末ですよ。
そんな状態なので、Call of Duty WWⅡなんていっても、『FPSってなんですか?』とか言われてしまう。

業界はこんなに頑張ってるのに、何故、こんな状態なのか。
今回は、久しぶりに私自身が格闘ゲームを再びプレイし始めたという経験を踏まえた上で、考えてみようと思います。

その前に、私のゲーム事情を書いておきますと、小学校から20代半ばぐらいまでは、ゲームが趣味というような子供でした。
ですが、社会に出てからは徐々にゲームから離れていき、次にゲームを始めたのが37歳ぐらいから?つまり、2015年ぐらいからだと思います。
子供の頃は、小遣いの主な使いみちはゲーセンで、ストリートファイターシリーズやSNKの格ゲーを小遣いの範囲でプレイしていました。
ただ、格闘ゲームも中学時代がピークでその後は、ビートマニアDDRといった音ゲーに流れていき、高校卒業と共にゲームに費やす時間も徐々に減っていきました。

そんな私ですが、スマホを手にしたのを機にPodcastにハマりだし、そこでゲーム系の素人ラジオを聞くうちにゲーム熱が再燃し、再びゲームをやり始めたという次第です。

PS3とPS4を大人買いしてゲームに没頭。
そして、eスポーツのプロライセンス発行団体がプロ競技に採用したストリートファイターVが発売された際には、発売日に購入し、プレイしました。

初めてストVに触れた感想としては、グラフィックも綺麗で、音楽も演出も凄い!
これ程のゲームを、1プレイ毎に50円入れずに出来るというのに感動しました。

しかし、そんな感動も一瞬だけ。少し経って冷静になると、徐々にネガティブな感情が沸き起こってきます。
その理由はというと、小さな理由を上げていくと沢山ありますが、要約すると、難しいという事。

どんなスポーツでも初めて行うのは難しいものですが、その中でも、最近の格闘ゲームの難しさは断トツだと感じました。
その一番の理由というのが、ゲームスピードの上昇でしょう。

私が子供の頃にプレイしていたストリートファイター2や、初期のSNKの格闘ゲームは、総じてゲームスピードはゆっくりでした。
これは、そもそも格闘ゲームなんてものが殆どプレイされていなかった状態で、多くの人が初めてジャンルに触れるという状態だった為、スローテンポでもゲームとして成り立っていたというのが大きいでしょう。
しかし、一つのジャンルとして定着してから30年近く経っている現在は、そんなスローペースではゲームとして成り立たない。現状、マイナージャンルである格闘ゲームで生き残っている人を対象にしている最近のゲームは、とにかくスピードが早く、初心者からすれば何が起こっているのかどうかもわからない。

これを読まれている方の中には、『いやいや、慣れろよ!練習しろよ!勉強しろよ!w』と叩く方もいらっしゃるでしょう。
確かにその通りですし、昔と同じゲームスピードでやった場合は、20年近くゲームをやり続けている人は全ての技に見てから対応できる為に、競技としてつまらないという言い分も分かります。

ただ、この環境の場合、ストV から参入してきた人間の多くは、かなり初期で挫折してしまうのではないでしょうか。
先ず、一番最初につまづくのはコマンド。 私が初めてスト2に触れた時もそうでしたが、昇竜拳以前に波動拳が出ない… 必殺技が出ない格闘ゲームなんて、正直、何の魅力もないので、初心者は取り敢えず安定して必殺技が出るように練習しなければなりません。
最近の格闘ゲームは、初心者にも受け入れられるように、コマンド受付なども甘く作られて入るとは言いますが、全く触れたことがない人間にとっては、それでも難しく、数時間以上の練習を強いられます。

必殺技が安定して出るようになると、次は通常技からのキャンセルです。 通常技が当たった瞬間にコマンドを成立させる事で、通常技の後半部分のモーションをカットして必殺技に繋げられる基本テクニックなのですが、これまた難易度がかなり高い。
昔のようにゲームのテンポがスローであれば、ある程度コマンドを確かめながら入れても何とかなりましたが、今のようにテンポが早い状態だと、とにかく早く正確にコマンドを入れるように集中しないとコンボが成立しない。
これも、技の発生が遅く、攻撃が当たった際にヒットストップと呼ばれるダメージが入る瞬間に画面が一瞬止まる演出が大きい『大』攻撃の場合は、まだ、それなりに練習したらなんとかなるでしょうが…
これが、出始めが速い上にヒットストップが殆ど無い『小』攻撃をキャンセルして出せなんて言われたら、素人からすればその時点で無理ゲーになったりします。

更にいえば、大攻撃から入るコンボなんていうのは、当てるチャンスというものが殆どありません。今の格闘ゲームの主流は、敵の攻撃が当たりそうで当たらない中距離を維持し、『小』や『中』といったスキの少ない攻撃を牽制として出していく。そして、牽制がガードされれば反撃を受けないように距離を調整し、当たった時だけキャンセルかけてコンボを発動させるというのが基本戦術となってたりします。
牽制のヒット確認した上でコンボに繋げるなんて、一体、何百時間練習したらモノになるんだ?ってレベルの技術ですが、格闘ゲームでは、このレベルの技術を付けて初めて、スタートラインに立てます。
では、それ以前のレベルの場合はどうなるのかというと、対戦をした際にはサンドバックにされ続けます。

そして、サンドバック状態から抜け出す為にネットで初心者講座なんかをみてみると、初心者はそこでまた、壁にぶち当たります。何故なら、書いてある文章の意味がわからないから。
例えばネットの基本講座には、『この攻撃はガードさせると-5fだけれども、当てると+3f。このキャラの屈コパは3fなので、キャンセルで◯◯につながる。コマンドは、623ではなく323の簡易で出る。』なんて書かれてたりしますが… 一体、何の呪文なんですか?

ちなみ解説をすると、fというのはフレームの略で、ストVは60fps(一秒間に60フレーム)なので、3fやら5fというのは、60分の3秒や60bンン5秒の事を指しています。
コマンドの数字は、電卓などのテンキーをレバー入力に置き換えたもので、→=6で↓=2となり、3は斜め右下という事になります。コパは小パンチ攻撃です。

ここで改めて、格闘ゲームの難しさが分かってもらえると思います。
というのも、このゲーム。 攻撃が60分の3秒とか60分ん5秒の攻撃が当たるまでに必殺技のコマンドを入れないと、連続技そのものが出せないということです。
上級者になると、当たるかガードされるかがわからないような3fの攻撃に必殺技のコマンドだけを入れておき、当たったらボタンを押して牽制にキャンセルをかけて必殺技とか出すんです。

安定的に勝利を掴み取るためには、このレベルの技術を身につける必要がある為、ひたすら、コマンド入れとコンボの精度を上げていくというトレーニングを定期的にやらなければならない。
まぁ、言ってしまえば、この行動そのものが、スポーツにおける反復練習と同じとも言えるので、eスポーツなんて言われているわけですが…それにしても、難易度が高すぎませんか?

それに加え、対戦で勝つ為には、相手のことも知る必要が出てくるわけで… 自分がプレイキャラとして使うキャラクター以外に、皆がよく使うキャラクターの事も研究しなければならない。
よく使われるコンボを知り、そのコンボがガードできた際には、どの攻撃を出せば確定で入るのか、ガードして不利になる場合は、どう立ち回ればよいのか等々。
こうして考えると、普通にゲームとして楽しめるようになる為に、いったい何百時間の練習が必要になるの?って感じです。

今、若者の格闘ゲーム離れなんて言われていますが、スマホの画面をポチポチ押すだけのポチポチゲーが全盛期の今、60分の1秒のスキを狙って牽制し合って読み合い、僅かなスキに攻撃を当て、そこから最大のリターンを得るために超難度コンボを決めるなんてゲームに、今から参入しろという方が無茶な気もします。
だからといって、ストVを初心者でもお手軽にプレイできるような難易度に設定し直せなんて暴論は言いませんが、初心者でも楽しめるレベルの入門ゲームを作って全面に押し出すって事も必要だと思うんですよね。

これに対し、『格闘ゲームは観戦に重心を置いてるから大丈夫。』という意見も聞いたりします。確かに、youtubeでは自分でプレイするよりも実況見てた方が良い勢っていうのも結構いますし、その理屈も分からなくはありません。
ですが、オリンピック種目を目指すのであれば、凄いプレイが誰でも一目で判断出来るようなゲーム作りであったり、実況というものが必要になってくると思います。

この実況に対しては、現状でも解りやすく解説してくれる解説者が既に存在しているという話も聞いたりしますが、私からしてみれば、格闘ゲーム界で分かりやすいと言われている実況のレベルが、世間一般とズレているような気もします。
つまり、現状で分かりやすいと言われている実況は、格ゲープレイヤーにとって分かりやすい実況であって、一般人にとっては呪文にしか聞こえないということ。
ここで、私が前提としている一般人の定義がわからないという方の為に、例を上げて一般人がどのレベルなのかというのを説明したいと思います。

私は今年のはじめに、友達が働いている美容院に髪を切りに行ったのですが、その際、正月に放送していたeスポーツ特集の話をされました。
ちなみに言っておくと、彼女はゲームというものに余り触れておらず、据え置き機はスーファミぐらいで止まっている感じです。
私はその番組を観ていなかったのですが、彼女の話によると、eスポーツと言うものを一から説明しつつ、ウメハラ特集的なものをやっていたそうなんですが、そのウメハラさんの凄さを紹介するために、一つの動画が映し出されたそうです。それがこちら。

体力ゲージがゼロの状態で、必殺技をガードした時点で負けが確定する試合で、春麗の必殺技を全てブロッキングで防いだ上で、逆にコンボを決めて勝利するという逆転劇で伝説となっている試合ですが、この動画を見た彼女の反応は、どのようなものだったと思いますか?
『あの逆転て、凄いことなの?』という単純なものでしょうか。『ブロッキングって難しいの?』という技術的なことでしょうか?

答えは全く違ったもので、彼女の感想は、『結局、ウメハラって人は、春麗とケンのどっちを操作してたん?』といったもの。
冷静に考えれば、当然といえば当然の感想ですよね。 格闘ゲームをやってない人間にとって、必殺技ガードでライフが削れるとか、ガードとブロッキングの違い、ブロッキングそのものが難しいなんて事は知らないわけですから、先程の動画のどの部分がスーパープレイなのかというのが、そもそも理解できない。
じゃぁ、彼女だけが特別レベルが低いのかというと、そんな事も無く、むしろ普通だと思うんです。 格闘ゲームをプレイしてない人類なんて山程いますし、むしろプレイしている人類のほうが絶滅危惧種の状態です。

こんな現状で、オリンピック競技なんかになったとしても、試合内容その物を理解できない人が大半ですし、結果として、裾野も広がらないと思うんですよね。
『じゃぁ、実況者を育てれば…』という意見もあるでしょうが、先程も書きましたが、最近の格闘ゲームのスピードは早すぎるので、そもそも実況が追いつかないと思われます。
一つの攻防の解説を早口で5秒かけて行ったとしても、その5秒の間に2個ぐらい心理戦が挟まったりしてしまいます。この状態で分かりやすい解説を的確にしろと言う方が、無理難題なのかもしれません。

こうしてみていくと、格ゲーと呼ばれるものがスマブラに食われるのもよく分かる気がします。

必殺技は方向キーと必殺技ボタンだし、敵をリングアウトに持ち込むというルールを説明されただけで、簡単にゲームを楽しむことが出来るし、ゲームスピード的にも実況が楽な上に理解しやすい…
ゲームに限らず、あらゆるスポーツやコンテンツが裾野を広げる為に必死に頑張ってる現状ですが、格ゲーだけが、マニア以外お断り!という雰囲気を出し、自ら絶滅に拍車をかけているように、私には見えてしまいます。

個人的には、格闘ゲームというのは私の人生の一時期を占めていたジャンルなので、なくなって欲しくはありませんが、現状の路線を突き進む限り、近い将来、無くなってしまうかもしれませんね。