だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

漫画において出版社は必要なのだろうか

私が愛聴しているネットラジオ【BS@もてもてラジ袋】の ぶたお氏が書かれているブログで、漫画家とアシスタント関係について書かれた物が有りました。
butao.hatenadiary.com

簡単な内容としては、漫画家とアシスタントの関係には、師匠と弟子や、昔ながらの丁稚奉公的な関係によって、職場環境がブラック化しているという話。
では、漫画家だけが悪いのかというとそうでもなく、そもそも漫画家も出版社によって搾取されている為、漫画家自身の労働環境が悪く、そのアシスタントも当然のように悪くなっているという業界の闇にメスをいれるような内容となっています。

これを読んだ率直な感想としては、確かに漫画家やその周辺の環境が悪いという点には同意するし、企業による搾取も許せないとは思うんですが…
一つ疑問が。それは、何故、漫画家は出版社に頼っているのかというところだったりします。

私の認識としては、そもそも出版社というのは、紙媒体だからこそ必要な仕事だと思っています。
紙媒体がメインの場合、作品を紹介する為の導入としての雑誌というのは必要ですし、印刷会社とのやり取りなども発生してくる。
また、紙媒体の場合はページ数も決まっている為、雑誌に乗せてほしという要望が沢山あった場合、どの作品を載せるのかと言った選定をしなければならない。
IT技術が無かった頃などは、読者の考えている事を汲み上げるためには、アンケート調査等も必要だっただろうし、そういった作品作り以外の部分で手間のかかる部分を代行する業者としての出版社というのは、社会的にも必要だったと思っています。

しかし、現状はどうでしょうか。
IT技術というものが発達し、ネットは常時接続のブロードバンドが当たり前になりました。
昔のように、ネットに常げている間ずっと電話料金が加算されていくなんてこともなく、固定回線の場合は定額で何ギガでもダウンロードが出来る。
回線速度も上がり、個人で制作された4k動画がyoutubeにアップロードされ、利用者はそれを普通にストリーミングで見ることが出来る環境になってきています。

こんな環境によって、当然のように、コンテンツの発信方法も変わってきています。
昔は映画館やレンタルが主流だった映像は、NetflixAmazonビデオに代わり、ゲームも最近ではダウンロード勢がシェアを伸ばしてきています。
そもそも、スマホアプリなどはパッケージ版が存在しない状態で、単純にコンテンツを配布するだけであれば、ネットさえあれば大丈夫という状態にすらなってきています。

では、今まで紙媒体だった書籍はどうでしょう。
書籍の場合も、Kindleを始めとして電子書籍というのが勢力を伸ばしてきています。
紙媒体の本の場合は、日本の法律の関係でセールなどは一切行われませんが、電子書籍の場合は扱いが本ではなくデータとなっている為、一部の本は電子書籍で購入した方が便利で安いという状況になっています。

では、趣味や芸能ネタなどを扱う週刊誌や月刊氏はどうなのかというと、こちらは更に進んだ状況になってきていて、月額で読み放題プランが普通となってきています。
ファッション誌を1冊買うと600円とかするのに、雑誌の読み放題プランだと、月額400円で100誌ぐらいの雑誌の最新号からバックナンバーまで読めるという状況になってきていて、今や雑誌を購入しているそうは、美容院などの待ち時間が有る店舗経営をしているところか、情弱と呼ばれる層。後は、雑誌についてくるオマケ目的で買う層ぐらいしか居ないんじゃないかという状態です。

雑誌が何故、こんな状況になってきているのかというと、答えは簡単で、雑誌の主な収入源が雑誌売上や著作権管理ではないからでしょう。
ファッション誌などが顕著な例ですが、ファッション誌はページの殆どが、各種ブランドの広告ページとなっています。
メインの着こなしなども、どこの圧力も受けずに独自に格好良さを追求しているというよりも、提携しているブランドの情報を積極的に載せていたりします。

私が読んでいるファミ通なども同じで、ゲームメーカーからの協力がなければ、雑誌を発行すること自体が難しいでしょう。

この様に、メインの収入源が広告である場合、売れるかどうかわからない上に、印刷や流通代金が掛かる紙媒体はリスクが大きい。
というのも、主な収入源が広告である場合、メインの商品である広告枠の値段は、販売部数によって変わってきます。部数を伸ばす為に、良い紙を使って丁寧に雑誌を作り、販売促進の為におまけを充実させたとしても原価が高くなれば、それなりの値段を付けざるをえない。
原価が高くなれば、当然のように、消費者にとっては負担が大きくなる為、下手をすると販売部数は下がってしまう…

それならば、dマガジンの様なプラットフォームに登録すれば無料で見られるというふうにしてしまったほうが、閲覧数が稼げるので広告枠の値段も上がりやすい。
その上、印刷も在庫リスクも何も負わないので、広告枠が主な商品の出版社にとっては、紙媒体は余計なコストにしかならない。
現に、週刊アスキーという雑誌は特別編集号などを除き、紙媒体から撤退している。 週刊アスキーは、PCやネット周りを中心に扱っている雑誌なので、顧客層もネットに強い人達が多いのも大きな理由の一つなんでしょう。

現状を改めてみると、メインの収入が広告枠のコンテンツの場合は、ネット配信・無料化が急速に進んでいる事が分かります。

ただ、こうなってくると、各種雑誌で記事を書いているライターは、出版社というところに依存する必要がなくなってきます。
取材力がある人やおもしろい文章が書ける人は、独立して自分自身で記事を書けば良いし、要請があれば寄稿すれば良い。今なら、ブログでも電子出版でも、自分の記事を世に出す方法は沢山あります。
宣伝方法も、GoogleTwitterに自分で金を払って広告を打つことも可能ですし、Twitterでバズりを狙ったり炎上してみるなど、コストを掛けない方法も有ります。

こんな感じの環境なので、現状では、ライターを目指している人は出版社に就職したりせず、自分でブログ運営などをするところがスタートだったりするのはよくある話。
これは映像でも同じで、有名になるためにテレビに出る…その為に、芸能事務所に所属する…その為に、芸能事務所が運営する養成所にお金払って入るなんて事をする人よりも、いきなりyoutubeデビューする人のほうが多い。
いきなりyoutuberになって儲かるのかっって話もありますが、じゃぁ、養成所に入れば売れることが約束されているのかといえばそうでもなく…そう考えると、金の掛からない分だけyoubueの方がリスクが低かったりします。

と、長々と漫画に関係がないことを書いてきましたが、私の主張としては、漫画家もいきなり電子書籍でデビューすれば良いんじゃないかと思うわけです。
漫画雑誌は他の雑誌に比べて時代に乗り遅れている感がありますが、それは何故かと言うと、他の雑誌のようにメインの収入源が広告収入では無いからなんでしょう。
漫画をヒットさせて、漫画の単行本を売ったり著作権管理をする事がメインの仕事。悪い言い方をすれば、主な収入源は漫画家からのピンハネで成り立っている。

ではなぜ漫画家は、わざわざピンハネされるにも関わらず、出版社に原稿を持ち込むのでしょうか。
それは、仮に大手の雑誌に採用されれば、無名の新人であったとしても、いきなり数百万人に読んでもらうことが出来るからでしょう。
その中の何割かが自分の作品を気に入ってくれただけで、数万部から数十万部の単行本売上が期待できます。

つまり漫画家にとって出版社というのは、無名の自分を大々的に紹介してくれる存在という事になります。
また、単行本を出版する際には結構が額のお金が必要になるわけですが、その様なお金やそれに掛かる手間などを肩代わりしてくれる存在という事になります。

ですが、先ほどから書いている通り、この様な出版社が行っている仕事というのは、あくまでも紙媒体の話です。
そもそも、電子書籍の場合は印刷や出版という手間がほとんどかからず、その手間も、素人がGoogleで検索しながら見よう見まねで行ったとしてもなんとかなるレベルの手間です。

では、出版社が持つ数百万人の読者というのはどうでしょうか。
これも時代が代わり、漫画雑誌の販売部数は右肩下がりで落ち続けています。 少年漫画誌TOPのジャンプですら、200万部を割り込む状態。
その一方で、マンガワンというアプリはどうかというと、ダウンロード数が900万を突破したようで、読者数という観点から見ると、紙媒体の雑誌よりも影響力は大きい状態になっています。

マンガアプリも電子版の出版社じゃないかと反論される方もいらっしゃるとは思いますが、アプリは紙媒体の出版社の影響力が下がっているのを説明する為に例として出しただけで、アプリ会社に原稿を持ちこめと言っているのではありません。
例えばpixivなどのSNSを使うなど、作品を世に出す方法は現状では増えてきましたし、それが気に入らないというのであれば、クリエイターがプラットフォームを作れば良い。その上で、自分でKindleなどで単行本を出せば良い。
この様な感じで出版社不要論を展開すると、『内容の修正や提案などもしている!』なんて反論も返ってくるのでしょうが、本当にその修正が必要だと漫画家が思うのであれば、その技術を持った信頼できる人をコンサルタントとして雇えば良い。
著作権管理などの作業が増えるといのであれば、その部分を外注するか専用スタッフを雇うという決断を、経営者として漫画家がやれば良い。

当然、コミックスの値段も漫画家が決めれば良い。 まだまだ駆け出しだから、安い値段でも良いから見てもらいたいと思うのであれば、1冊100円で売っても良いし、予想販売数から、アシスタントの給料と自分が手にできるお金、経費など逆算して1冊の値段を決めても良い。
漫画家というのは出版社に持ち込んでいる現状でも個人経営者なんだから、それならそれで立場をハッキリさせたほうが良いと思うんですよね。

私は業界を外から見ているだけの人間ですが、現在の状態は、出版社の立場が上すぎる気がしてなりません。
まぁ、僕のような素人が言わなくても、今漫画を書いている人の主戦場は、コミケや とらのあな での直販に移りつつ有るんでしょうけれどもね。