だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿 】第22回 LSD (1) MKウルトラ

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回の放送では、ヒッピー・ムーブメントが起こるキッカケとなった、環境について簡単に説明していきました。
当然のことですけれども、前回と前々回で話した事がキッカケの全てではなく、もっと色んな要因が複雑に絡み合って起こった事だとは思いますので、興味のある方は是非、ご自身で調べてみてください。

前回と前々回の内容を簡単に振り返ると、国全体に、世界の前提や今までの常識を疑ってしまうような空気感が漂い始めた事が、全ての原因です。
では、なぜその様な空気感が漂い始めたのかというと、今までのキリスト教の教えと現実とのギャップですね。

現実の世界では、科学が発達して、ドンドンと色んなことが解明されていくわけですけれども、それはキリスト教の教義とは違ったものである事が多いわけです。
文明が発達するまでは、キリスト教の教義に反することを主張する科学者が現れた場合は、その方達を殺していけば問題はなかったわけですが、文明が発達して、肉体労働ではなく知的労働が重要視されていくと、国は教育に力を入れていくことになり、教育を受けた国民は、論理的な考え方を身につけるようになっていきます。

論理的な考え方を身につけるということは、科学者と教会の発言を比べて、どちらが正しいかを判断する能力を身につけるということで、今までは教会のゴリ押しの主張で何となく納得していた人達も、納得しなくなっていきます。
また、神を信じて清く美しく生きていったとしても、世の中って然程、報われない一方で、戒律などを無視したり、自分の都合で解釈を勝手に変えるような人達が得をする社会ってものにも、疑問が出てきます。
その結果、キリスト教が主張する世界観は本当に正しいのかといった感じの疑問が湧いてくるのは、当然といえば当然の感情なんでしょう。

そんな空気感が漂う中、進化論のような、聖書の根本を否定するような説が唱えられると、今までの前提が壊れてしまうわけで、その環境で培われてきた自分という存在も揺らいでしまうわけです。
このタイミングで、イギリスが侵略したインドから、西洋哲学とは全く考え方が違う、東洋哲学の考え方が輸入されてきます。

輸入された東洋哲学思想は、唯一神が世界を創ったという観点ではなく、自分という存在と、この世の全てである宇宙は同一の存在で、自分自身を深く知ることによって、この世の仕組みを理解することが出来るという
今までになかった発想で、この発送に触れた一部の人は、今までの世界観と、新たに知った東洋哲学の思想を融合し、別の価値観を創り出していきます。
ここで生み出された価値観は様々で、一括りに説明できるものではありませんが、簡単に言うと、世界というものが先ずあり、そこに人間が生まれたという世界観しか無かったものに、自分の精神世界の延長線上に世界があるという考え方が加わったような感じですね。

このようにして生み出された新たな価値観ですが、起源が同じものだからといって、皆が手を取り合って一緒に運動しようというふうにはなりません。
というのも、同じ様な材料を使っても料理の仕方が変われば別の料理になるのと同じ事で、同じ様な環境を材料にしたからといって、環境や材料の捉え方が変われば、主張は全く違ったものとなります。
しかし、別々の思想として生まれたものも、共有する価値観や共通の敵が現れれば、話は変わってきます。
その共通の敵となったのが、ベトナム戦争で、共有する価値観が、今回テーマにするLSDという幻覚剤です。

という事で、今回のテーマは、幻覚剤のLSDです。
一応、誤解の無いように、最初に注意としていっておきますが、このコンテンツはLSDの摂取を推奨するものではありません。
文化に多大な影響を与えた薬物というのは事実ですが、その一方で、摂取することで精神病にかかり、自殺した人達も少なくありません。
そして何より、LSDは現在は禁止薬物となっていますので、手に入れたり摂取することそのものが犯罪です。その点だけは注意して、お聞きください。

さて、このLSDという薬物ですが、1943年に幻覚剤としての効果が発見され、この薬物に対して米軍やCIAが興味をもつことで、研究が開始されます。

先ず、CIAの方ですけれども、その当時、洗脳について非常に興味を持っていて、多くの予算を割いていたんですね。
ここで何故、軍事や諜報機関が、こんなにも必死に薬物の研究を薦めていたかというと、この時代はソ連との冷戦時代だったからなんです。
この当時は、いつ、戦争が起こってもおかしくないという雰囲気でしたし、互いが核爆弾を打ち合って世界が滅亡するのは、後どれぐらいなんだろうという、終末時計なんて発想もあったぐらいですからね。
この雰囲気については、映画のウォッチメンと言うものを観ると、何となく雰囲気は理解できると思います。

横道にそれたので本題に戻ると、洗脳というのは、尋問の際に相手を懐柔させるとか、敵を寝返らせて、こちらに引き込んで情報を聞き出したりスパイ活動を行わせたりするといったことでしょうね。
この洗脳ですけれども、時には国の運命が乗っかってしまうこともある為、なりふり構わない感じで研究は勧められていたんですよ。
オカルトっぽい感じでいうなら、催眠術とか、もっとエゲツない方法でいうと、コカイン中毒にしてから禁断症状が出るまで薬物を与ええない状態にしてから、『薬物が欲しいんなら、情報を喋れ』といった感じといえば、イメージが付きやすいですかね。

そんな時に発見されたのがLSDで、CIAはこの新種の薬物に飛びついて、専門機関などの協力を得て、研究・実験を行うことになるんですね。
最初は、まずシンプルに、LSDを投与してから尋問するという実験を行うんですが、ここで、非常に良い結果が出ることになるんですよ。
どのような結果かというと、LSDを投与されたものは、自分が秘密にして置かなければならない情報をペラペラと話しだしたんですが、薬が切れて正常に戻ると、トリップしていた時の記憶を無くしているといった状態になったんです。

CIAからすれば、これ程 都合の良い薬物はないわけですが、実験を進めていくと問題が出てくるんですよ。
それは、薬物を投与された人間が、必ずしも本当のことを喋っているわけではないという事ですね。つまり、薬物投与後に口が軽くなって話し出すといった人間もそれなりには存在するんですが、その内容が信用出来ないという問題ですね。

このような事が分かってくると、次は、使用方法を変えてみようという発想になるんですね。
どういうことかというと、LSDを摂取した後の発言が信用出来ないのであれば、CIA職員が、何らかの潜入捜査中に敵国に捕まった際に、自身でLSDを飲んでしまおうという発想ですね。
この行動によって、自身の発言の信用力が低下しますし、仮に本当のことを口走ってたとしても、相手にはそれが嘘か本当かわからないので、情報を撹乱させることが出来るという考え方です。

この様な感じで、捜査手段の一つとして利用する事が検討されて、実験などが行われていくわけですけれども、
CIA自身で実験や研究ができない専門的な事に関しても情報を集めたいという思いから、CIAが予算を出して、各研究機関や大学に依頼を出したりもしたようです。

行われた実験は様々なのですが、その様々な研究機関の一つで、精神病院が治療という名目で行った洗脳に関する実験の内容が、結構酷い内容だったようです。
その内容というのは、まず、睡眠療法として患者を数ヶ月間に渡って薬漬けにして、その後、物凄い回数に渡る電気ショックを与え、その後にLSDを投与する事で、患者を真っ白の状態にしてしまうんです。
真っ白の状態というのは白紙の状態というのでしょうか、リセットボタンを押すような感じで、初期化するといえば良いんでしょうかね。




その状態にした上で、再度、薬物を投与し続けて、医師がテープレコーダーに吹き込んだメッセージを、何度も繰り返し聞かせ続けます。
その回数は、酷い場合だと25万回にも達して、大抵の人は、精神が崩壊してしまうんじゃないかというレベルの、実験というよりも拷問と言った方が良いような内容だったようです。

その他には、CIAは実験用のLSDをヨーロッパの製薬会社から購入していたそうなんですが、機密情報扱いの実験の材料を海外から仕入れるという状態が面白くなかったらしく、アメリカ国内での生産を目指していたそうなんです。
そして、CIAはアメリカ資本の製薬会社と提携して研究を進めることで、仕入れたLSDの化学式を解読して生産方法を見つけて、独自で生産するといったことにも、お金を使っていたようですね。
これによってアメリカは、膨大な料のLSDの生産能力を手にする事になったりもします。

また、これはまた後ほど話す内容でも有るんですが、LSDには、この様な強力なトリップ効果が有る為、軍が敵の地域を占領する為に、水源にLSDを投げ入れるといった作戦の話が出たりもするんです。
この様な発想なんですが、自分が出来る事というのは敵も出来る可能性があるわけで、ソ連がLSDの存在を知っているかもしれないし、軍事利用するかもしれないという発想にもなります。最初にも言いましたが、この当時は冷戦時代でしたからね。
その為、仮に、アメリカ国内の浄水施設にLSDが投与された場合のシミュレーションも行うわけですけれども、その結果、水道水に含まれる塩素がLSDを中和させる為に、効果がないことが分かるんですね。
これで一件落着かと思いきや、『塩素で中和されないLSDを敵が作るかもしれない!』という可能性は残るわけで、その疑念を晴らすためにも、それが出来るのかどうかという研究開発を行うことになるんです。
その結局、アメリカの手によって、塩素で中和されないLSDが完成してしまうことになるんですね。

この後、アメリカによる実験はエスカレートしていき、『MKウルトラ作戦』というのが行われます。
この作戦は人体実験のようなもので、多くの精神病患者を生み、死者まで出したということで批判を受けていたりします。

実験の内容を簡単に言うと、最初は、CIAのごく一部の職員を対象に、被験者に対して実験内容を説明した上で、薬物を注射し、その変化を記録してデータを取るといった感じで行っていたんですが、その内容はどんどんエスカレートしていって、警告無しで実験を行うようになるんですよ。
例えば、朝、同僚が出勤してきたタイミングで、コーヒーを入れて『おはよー、コーヒー入れたよ、良かったら』といった感じで、笑顔でコーヒーを差し出すんですが、そのコーヒーの中にLSDを仕込んでおくとかですね。
この、不意打ち的に幻覚剤を投与するという方法はかなり危険で、事前に警告があった場合は、投与された側は幻覚に対する覚悟を決めると言った感じで用意ができるわけですが
不意打ちの場合は、現実と夢との境目が、より曖昧になる事で、後遺症が酷くなると言ったケースも観られたようです。

まぁ、ここで止めておけば良かったのでしょうが、CIAによる実験は更にエスカレートし、プロジェクトに関連する職員だけでなく、一般人を対象にした人体実験を行っていく事になります。
具体的には、CIAにゲストとして読んだ人間に、LSDを投与するとか、プロジェクトに関わっていない人間に警告無しで投与して、その経過を見ると言った感じですね。

この実験も結構酷いわけですが、この後にCIAは、研究費を投じて娼婦を雇って、マジック・ミラーを設置して監視できるような状態にした売春宿を建設して、経営しする事になります。
そして、そこに訪れる客にLSDを投与して、どの様に人間が崩れていくのかと言ったかんじの事を観察して、データを取るといった事までやっているようなんですよ。
ここで使われた麻薬はLSDに限らなかったようで、様々な薬物を投与することで、反応を観ていったようです。
ちなみに、この実験ですが、担当していた人間が麻薬捜査官で、昼は麻薬の売人を追いかけて、夜は売春宿経営しながら客に麻薬を投与するといった、真逆の生活を送っていたようですね。

この、麻薬捜査官 兼 売春宿の経営者は、科学者でもなく、専門的な知識を持つわけでもなく、しっかりとした記録のとり方も知らなかったようなので、この実験で得たデータの信憑性はかなり低く、使い物にならない代物だったそうですね。
というのも、観測してデータを取っている本人が、麻薬を服用するというのが日常化していたようで、そんな状態で記録を取ってたとしても、何が本当で何が幻覚かの見分けがつかないということなんでしょう。
まぁ・・・本当に、メチャクチャですよね。

詳しい内容が知りたい方は、『MKウルトラ計画』で検索をかければ詳細が出てきますので、気になる方は自身で調べてみて欲しいんですが、余程スキャンダラスな出来事だったのか、色んな題材になったりしています。
この作戦関連の映画も作られているようですし、最近では、PS4などでもプレイできる『マフィア3』というゲームの中でも、名前が出てきます。
その他には、私はプレイしていないのですが、女神転生シリーズのストレンジ・ジャーニーという作品の中で、この作戦を彷彿とさせる薬品などが出てくるようです。

一方で米軍の場合は、先程も少し話しましたが、主に軍事利用となりますね。
特定地域を占領するためには、爆撃などが必要になるわけですが、その地域が生産拠点などの場合、爆撃で施設を破壊してしまうことは、そのまま損失につながってしまいます。
それなら、人の感覚を狂わせる薬物を噴霧して、その地域に住んでいる住人を一時的に戦闘不能状態にしてしまえば、余計な殺生や破壊をする必要がなく、すんなりと占領が可能です。
また、LSDという薬物に絞っていえば、非常に水に溶けやすい上に少量の摂取で、時には8時間以上という長時間の効果が出る為、井戸や浄水施設などの水源に投げ入れるだけで、その水源の範囲一体に効果をもたらすことが出来ます。

薬物を摂取させた結果として、仮に、その一部の人間が精神病院行きになったとしても、爆撃して周辺住民をまとめて殺すよりかは遥かに人道的ですし、人数的な被害も少数に抑えられます。
その上、敵が所有している施設を無傷で手に入れることが可能となれば、それをこちらが有効活用する事が可能になる為、戦略的にも優位に立つことが出来ます。
こういった観点から、様々な、20種類以上におよぶ薬物が研究対象になったのですが、LSDも、その対象として選ばれることになります。

その後、LSDとは別の粉末状の幻覚剤であるBZの開発に成功し、それを弾頭に込めた砲弾なども作られ、軍事転用の一歩手前まで開発は進んでいたようですね。
ただ、幻覚剤を込めた砲弾が作られたと言っても、公式発表では使われていないとされているようですけれどもね。
とは言っても、この開発にこぎつけるまでに、一部の資料によると2800人におよぶ米軍が人体実験の犠牲者になっているわけで、いくら冷戦を言い訳にしたところで、ダメだとは思いますけれどもね。
一部の兵士には、薬物実験だと知らされない状態で、知らず知らずに実験に参加させられていたようなので、現在でも、その兵士たちによる集団訴訟が行われているようです。

この様な感じで、政府主導で薬物研究が行われてきたわけですが、これらの薬物。 特にLSDが、後にカウンターカルチャーをまとめ上げて、欧米の今までの価値観に対する批判や、政府批判につながっていくところは、結構面白いですよね。
この、面白いというのが適切な言葉かどうかというのは、分かりませんが、私自身が表現方法に乏しい人間なので、その辺りは許してもらえたらなと思います。

という事で、今回はこのあたりにして、次回は、LSDがカウンターカルチャーにどのような影響を与えたのかについて、考えていこうと思います。