だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

2017年の流行語『忖度(そんたく)』について考えてみた

2017年も、もう数日で終了してしまいますね。
そんな今年の流行語大賞の一つに、【忖度】というものがありました。

普段あまり聞かない言葉なのに、今年は何かにつけて『忖度』という言葉を聴いたような気がします。
この言葉の意味ですが、元々の意味合いとしては『相手の気持を推し量る』というもので、特別に悪い意味が有るわけでも無い用に思えますが、今年に限っては、悪い意味で使われることが多かったとお見ます。

今年は何故、この言葉が悪い意味合いで使われることが多かったのかというと、日本の現総理大臣である安倍さんの知り合いが優遇されることが多かったという多数の報道があり、そこから使われ始めたようですね。
具体的には、安倍さんの奥さんが深く関わっている森友学園という小学校の土地が、タダ同然で国から譲り受けていたり、大学の獣医学部の新設の際に、どこの大学に学部をシンセ吊るすのかと言った際に安倍さんの友達が関連しているところが選ばれたりとか。
これも、立候補者が1団体しか無いのであれば、『立候補が無かったから仕方がない』と納得も出来るんですが、競合する組織があったのに、両方とも安倍さんの知り合いが関係しているところが恩恵を受けたんですよね。

ただ、この件の難しいところは、安倍首相が直接指示を出したのかというと、そんな事は全くしていないという点。
あくまでも、官僚などの政府の関係者たちが、空気を読んで、優遇したというだけで、本人は全く関与していないという構造になっているんですよね。
捉え方によって、どうとでも取れる展開になった為、首相擁護派は『そんなに言うなら、指示した証拠を出せ!』と凄みますし、関与していると疑っている側は『証拠が残らないようにやっているだろう!』と水掛け論になってしまい、進展せずままに疑惑が残る形でフェードアウトしてしまいました。

ただ、この問題のもっとも重要な点は、なぜ官僚たちは、リスクを犯してまで指示もないのに忖度したのかということですよね。
つまりは、首相その物が関与したというよりも、忖度しておいた方が良いという、組織の構造その物に問題が有るということです。
その方が出世が出来るからなのか、何らかの見返りがあるのかは分かりませんが、何らかのリターンがあると思ったから行動をしたわけですよね。
こちらの問題の方が、闇が深そうな気がします。

問題が少し分かりにくいという方の為に、もう少し、別のケースで考えてみましょう。
政治の話なんて、自分達の生活からはかけ離れすぎていて、想像しにくいと思われる方も少なくないと思いますしね。

理解がしやすいように、企業に落とし込んで考えてみましょう。
ある企業の社長さんが、『従業員は絶対に残業なんてするな!定時で帰りなさい!』と発言したとします。

この発言自体は、非常に素晴らしいですよね。
今の御時世、長時間残業等によって過労死が起こるケースなどもありますから、この社長の主張は素晴らしいと評価する方も多いと思います。
しかし、実際の企業運営では、厳しいノルマや、残業なしでは到底こなせないような仕事が割り振られていたとしたらどうでしょうか。
それらを処理する為には、残業を行わなくてはなりません。

しかし、ここで社長の主張が効いてきます。
というのも、社長は『残業はするな!』という支持を出しているわけですから、残業したことを真面目に申告してしまうと、社長の意見に逆らったことになってしまいます。
では、社員はどうするのかというと…
もうお分かりだと思いますが、申告せずに残業を行うサービス残業を行うことになるんです。

これには、様々なパターンが有ります。
例えば、ノルマをチャレンジ目標と言いかえたり、仕事の割り振りも1人の人間に多く割り振るのではなく、部署全体に多めの仕事を割り振っておくなど。
こういう環境を作っておいて、昇進など人事異動の際には、暗黙の了解で、サービス残業が多い人間を優先的に引き上げる。
こうする事で、管理職の人間は全員がサービス残業を自主的に行っていた人間になり、部下たちには、これまた暗黙のルールでサービス残業を強いることになります。
当然、文章を残すなんてことは行いません。 あくまでも、全員が社長の意志に逆らって、自主的にサービス残業をしているという状況を作り出します。

さて、ここで問題なのですが、この社長はクロでしょうか白でしょうか。
社長は、『昇進したいならサービス残業をしろ!』なんて一言もいってません。むしろ、『残業せずに、定時に帰れ!』と言っています。
当然のことですが、サビ残を支持した文章なども残っていません。
社員の人間が、自身の出世の為に忖度した結果であって、社長からすれば、社員が勝手にした事です。

しかし、サービス残業が暗黙のうちにルール化しているというのは、その環境その物に問題は無いのでしょうか。

これは、各種ハラスメント問題も同様です。
大抵の場合のハラスメントは、上下関係という立場の違いが存在し、立場の上の人間が下の人間に対して行います。

いまだに多いセクハラ問題でいうと、上司という力関係が強い立場の人間が、力の弱い平社員の異性に対して、上下関係を利用して行います。
多くの場合は、部下は上司の行う性的嫌がらせに対して文句をいうことが出来ない状態なので、笑ってごまかしたり我慢したりするわけですが、上司の立場からすると、性的なスキンシップをしても笑顔で応えたり黙って受け入れているようにみえるので、ドンドンとエスカレートしていく。

これは、我慢したり笑って誤魔化す、部下のほうが悪いのでしょうか?
そもそも論として、笑ってごまかしたり我慢したりしなければいけない空気感の方が問題があるのではないでしょうか。

この問題に関して、海外企業では、上司が部下の評価を下すという一方的なものではなく、部下も上司の評価をするという事で、流れを止めようとしているようです。
つまり、上司がふんぞり返って、上から目線で部下に無理難題を押し付けて、デキない人間を叱りつけるなんて事を行った場合、その上司は部下から嫌われて支持されなくなる為、降格してしまうということ。

海外企業での中間管理職は、本当の意味での中間の管理職のため、現場の仕事をスムーズにするのが主な仕事だったりします。
だから、現場は人が足りなければ上司に対して『人が足りないから補充して!』と言いますし、中間管理職は現場の要請と会社の現状を考えた上で、最適解を出そうと努力します。
結果として、会社の現状から考えて人員の増加が無理だとしても、その他で働きやすい環境を作ろうと頑張ります。
何故なら、現場で働く部下たちが結果を残さなければ、自分の成果も無いからです。

話がそれましたが、最初の日本の政治についての『忖度』の話に戻ると、何だかんだで日本の場合、企業もそうですが国の組織としても、上下関係が悪い意味でしっかりしているのでしょう。
政府でいうなら、総理大臣をTOPとして権力が上から下に一方方向にしか働かない為、上の人に気に入られようと、部下は自分の判断で『忖度』する。
忖度された側は当然の様に、『私は支持したわけではない。証拠があるなら出せばいい。』と主張し、当然のようにそんな証拠は一切ない。

でもこれは、『残業はするな! 定時で帰れ!』と主張する社長と同じで、そもそも、上司の機嫌を取らなければならないという環境その物がオカシイのであって、改善しなければならない事なんではないでしょうか。