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【映画紹介・感想】 ボーリング フォー コロンバイン

先日、マイケル・ムーア監督のキャピタリズムという作品を紹介する投稿をしました。
その投稿を読んでいただいた方から、Twitterで感想を頂いた際に、『ボーリング フォー コロンバイン』という作品名が出たので、調べてみるとNetflixで見れるということで、早速観てみました。
という事で今回は、この『ボーリング フォー コロンバイン』の紹介・感想を書いていきます。


      

この映画はドキュメンタリー作品で、起こった事や事実を監督の目線を通して表現していく作品です。
ストーリー性というものはなく、一つのテーマを情報を集めて掘り下げて、問題意識を高めるという作品の為、この作品の感想や紹介を書くということは、そのままネタバレを書くことにつながってしまいます。
その為、ネタバレ無しの状態で作品を視聴したい方は、この投稿は読まずに、先ず作品を観ることをオススメします。


という事で、作品紹介・感想を書いていきますね。
作品の『ボーリング フォー コロンバイン』というタイトルだけを聴いて、テーマや内容が分かる方は、おそらく日本には少ないと思います。
という事で、先ずはタイトルの説明をしていきましょう。

まず、『コロンバイン』というのは、一部のアメリカ人は単語を聞いただけで理解ができてしまう程の『事件』の事です。
学生2人が、学校で銃を乱射して同じ学生と教師を殺したという凄惨な事件で、その周辺地域に住む人達にとっては忘れがたい出来事のようです。
では、ボーリングは何なのかというと、その事件を引き起こした2人の学生が、事件の前にボーリングを楽しんでいたというところから来ているようです。
(その他にも、ボーリングのピンは銃の訓練の際の的に、形的に丁度良いというところからも来ているのかも?)

このタイトル説明で理解された方も多いとは思いますが、今回紹介する作品のメインテーマは、『銃』です。
アメリカといえば『銃社会』ですし、政治関連でも全米ライフル協会の名前が頻繁に出てきますよね。

では、この作品は、銃規制の話なのかというと、それは微妙に違ったりもします。
確かにメインテーマは銃ですし、映画の内容も銃による事件や死傷者の話が大半なのですが、銃『規制』の話は、メインテーマではありません。
ではテーマは何かというと、『何故、アメリカだけ銃による死者数が高いのか?!』というものです。

ここで注意が必要なのは、何度も言いますが、メインテーマは銃規制の話ではないということ。
というのも、銃を規制していない国は沢山有るのに、銃による殺人が多いのは『アメリカだけ』だからです。
例えば、日本の様に銃の取扱が禁止されている国の場合は、銃による殺人数が低いのも納得がしやすいと思います。だって、銃を手に入れる事ができないんですから。

この日本とアメリカを単純に比べてしまうと『アメリカにも銃規制が必要』という単純な結論になってしまいます。
ですが、この問題の面白いところは、銃規制がなく、アメリカと同じように誰でも簡単に銃を買えてしまう国でも、銃による殺人は比較的少ないという事なんです。

例えば、アメリカの北に隣接しているカナダは、アメリカと同じように簡単に銃を入手することが可能で、弾も簡単に手に入ります。
しかし、カナダの銃による死者数は、年間で165人。その一方でアメリカは、11,127人。桁が2つ程違います。
とは言っても、カナダとアメリカでは人口が違います。絶対値の人数で比べるのは不公平ですからね。

という事で、カナダの人口を調べてみると3000万人。その一方でアメリカは3億人なので、アメリカは10倍の人口がいることになります。
ですが、それを考慮に入れたとしても、アメリカの銃による死者数は、カナダの10倍程度と、非常に高いことが分かります。

では、何故、この様な差が生まれてしまったのでしょうか。

映画内に登場するアメリカ人達は、様々な要因を挙げて説明しようとします。
『アメリカは、侵略の歴史が有るから、暴力的な人間が多いんじゃないだろうか?』
『様々な人種がいて、考え方が違う人が多いからではないだろうか。』

色んな理由を挙げますが、少し調べてみると、それらは原因になりえないことが分かります。
最初の、アメリカは侵略の歴史があって、虐殺なども行う暴力的な人間という意見は、一見すると、自分達を客観的に観た冷静な意見のようにも思えます。
では、イギリスやドイツは侵略戦争を行わなかったのでしょうか。 日本は?

これらの国々は、いずれも侵略戦争を行い、その際に虐殺を行っています。
まぁ、戦争ですからね。自分達に危害が加わる可能性があるとなれば、民間人だろうと殺すでしょう。ナチスなどは、人種や障害者を持っているというのを口実に、積極的に虐殺を行っていましたよね。

でも、銃による死傷者はアメリカには遠く及ばない。

人種についても同じで、カナダでも多くの黒人が住んでいて、多様な人種が入り混じっています。
当然ですよね。カナダはアメリカの北側に隣接した国ですし、開拓の歴史なども基本的には同じです。にも関わらず、銃による死傷者は、アメリカの割合に比べると10分の1となっています。

この差は何なのかをマイケル・ムーア監督が考えた結果、一つの仮説が生み出されます。
それは、『恐怖』です。

恐怖を撒き散らすもの、皆が好んで見るものです。当然ですよね。自分達の生活に直結する出来事ですから、恐怖を掻き立てるものは観たいという欲求が高まります。
それは、大雨の日に川を見に行ったり、お化け屋敷や絶叫マシーンに自ら進んで乗りに行く状況を見れば分かりやすいですよね。
そして、身近にある恐怖は消費行動を促します。
例えばアメリカでは、黒人が犯罪を犯して、白人警官に捕まえられて身ぐるみ剥がされて拘束されるという番組が毎週のように報道されているようです。

この恐怖映像を観た白人たちは、自衛の為に銃を買うという消費行動に走ります。
また黒人たちは、黒人というだけで迫害されて警戒され、人として扱われない状態にストレスと貯めますし、白人至上主義者から脅迫を受けることも有るでしょうから、自衛の為に銃を買います。
結果として、アメリカの兵器工場は大儲け。 資本主義バンザイ!という状態になるわけですが、結果として、アメリカ国内を二分化させ、相互にて期待させるという状況を作ってしまいました。
この様な環境で銃による殺人事件が起こり、実際に死傷者数が増えると、『周りは敵だらけ! コワイ!』という思いから、更に銃は売れ、それによって人が殺される。

その一方でカナダはというと、アメリカに比べて恐怖を煽るニュースは少なく、国民が二分化されることも無いようです。
カナダの人達は、自身の家にカギをかける事も嫌がり、アメリカ人のマイケル・ムーア監督が『鍵をかけないで、怖くないの?』という質問に対し、『鍵をかけることは自身を家に換金することと同じだ。そんな事はしたくないし、危ない目にあったこともない。』という。
ハロウィンの日に、家に近づいたという理由で子供を撃ち殺し、無罪になったアメリカとは違い過ぎますね。
カナダに住む黒人たちも、アメリカに比べて差別も偏見もなくて住みやすいと言い、カナダの政治家たちも、敵を作って恐怖を煽るということよりも、福祉政策の方を重要視しているようでした。

よくよく考えてみると、アメリカの外交って、基本的に恐怖戦略ですよね。
今、日本で話題になっている北朝鮮ミサイル問題も、元はといえばアメリカが『悪の枢軸国』発言して、威嚇しまくったってのも原因の一つですよね。
その威嚇に対して、同じ様に核兵器を持つことで対抗しようとする北朝鮮に対し、共同訓練で更に威嚇をして挑発しつつ、『いつミサイルを打つか分かりませんよ!』と恐怖をばらまく。
これによって、アメリカ製の武器は売れるわけで、アメリカにとっては万々歳って事なんでしょうね。

ただ、その恐怖先着が、結果として自国内での殺人事件につながっているのだとしたら…
色々考えさせられますよね。