だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

日本の輸送と世界の輸送 【前編】

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少し前のことですが、わたしの書いた投稿が、珍しくバズり、多くのアクセスを頂くことになりました。
kimniy8.hatenablog.com
これを読んで、読解力が無い一部の人達からは、『客が運送業者の事を考えなくて良いなんて横暴だ!』『持ち株会社の仕組みを理解してないw』という、よく分からない意見なども頂いたのですが…
この記事で問題視したことは、運送業の現場で働いておられる方々が、搾取対象になっているという事なんですね。
また、持ち株会社の仕組みは理解してますが、その仕組みによって搾取がし易い状態になってることを問題にしてたんです。

ですので、客は運送業者のことを考える必要は、無いんですよ。経営者が、従業員の事を考えればよいだけです。
運送業者が『人手が足りない! 』というのであれば、給料を高くして人手を増やす事で、従業員の待遇は簡単に解決します。
それによって、運送料が高くなるのであれば、それはそれで仕方のないことですし、料金を上げたことで仕事が減って売上が減るのであれば、上層部が搾取率を下げればよいだけです。

まぁ、この様な批判的な意見は実際には少なく、多くの人が賛同してくれましたし、実際に働いておられるドライバーの方からも、実際の荷物量が格段に増えているのに、手取り給料は下がったなんて報告もいただきました。
取扱荷物が増えているのに給料が下がるという現象は、一個あたりの荷物の単価を下げないと起こりようがないので、問題は運送業種の経営者に有るのであって、客に有るという意見はよく分かりませんよね。だって私達客は、運送料の値下げ運動なんて行ってないですし。

この投稿をした直後ぐらいに、ヤマトによる残業代未払いが報道されましたし、この問題は、経営サイドの問題であることは明らかですよね。
また、運送業といえば、大半の人が業務請負で仕事をこなしているわけですが、この方達に関しては個人経営者扱いなので、残業代なんて概念が存在せず、不当な値下げ圧力をヤマト等から受けている可能性も有ります。
闇はまだまだ深そうです…

そして自体は、ヤマトによるAmazon脱退というところまで進展しました。
まぁ、先程書いたような文脈の読めない一部の人達を除き、少し考えれば経営サイドの問題であることは明白なので、その状態を放置すると経営陣は責められてしまうので、何らかの対処をしなければならない。
結果として、安く請け負っていたAmazonから撤退するという選択をしたのでしょう。それはそれで、経営判断なので、良いと思います。

この件を受けてネットでは、『Amazonが、ヤマトに見捨てられたw』といった感じの意見が見られるようになり、Amazonが他の業者に頼んだ事で、配送ミスが発覚すると『ザマァ!』といった書き込みも見るようになりました。
その後、Amazonが独自の配送ネットワークを作る可能性が示唆されると、『日本の運送業が、どれだけのコストをかけて作ってると思ってんだ?今から参入して、出来るわけ無いだろw』と、これまた、上から目線での書き込みが多数。
日本を愛する気持ちは私にもありますし、その気持もわかりますが、それ故に、『日本が最先端!』と思い込むのは、視野を狭めてしまい、まともな思考ができなくなってしまうと思うんですよね。

という事で前置きが長くなってしまいましたが、今回は、配送やネット通販の未来について考えていこうと思います。


まず、今から運送のインフラを作ることは不可能なのでしょうか。
結果からいえば、出来ます。 しかも、ほぼコストを掛けない形で。

先日、WBSというテレ東の経済ニュース番組で特集していたことですが、日本人の多くが散々バカにしている中国で、トラックシェアリングというサービスが登場し、既に動き始めています。
この事業には、中国国内の企業だけでなく、システム開発にアリババも参入し、かなり本格的に行われている事業です。

では具体的に、トラックシェアリングとは何なのか。
簡単にいえば、トラック版のUberです。
Uberとは、簡単に言えばカーシェアリングサービスアプリの一種なのです。
先ずアプリを導入し、利用者は、車に乗せて欲しい時に配車を依頼する。そうすると、Uberアプリを導入している近くのドライバーが通知を受けて、その場所まで迎えに来てくれるサービスです。
誰でも登録できるタクシーサービスといえば、分かりやすいでしょうか。
端末のGPSを利用して、全てがアプリ内で完結するため、オペレーター要らずの優れものですね。

このUberですが、日本では一部地域を除いて禁止されています。
理由は色々言われていますが、一番大きな理由としては、既存のタクシー業者からの反対でしょう。
まぁ、聞こえの良い言い方をすれば、『日本には、タクシーという優良なインフラがすでに有るので、そんなものはいらない』ということなんでしょうけども、実際に導入されれば、タクシー会社というのは存続が難しいのでしょう。
何故なら、ドライバーがみんな、Uberに行ってしまうから。
そりゃ、ドライバーからしてみれば、タクシー会社に就職すると、会社にノルマ課せられる上に売上をピンハネされるわけですから、そんなサービスが始まったら、みんな、Uberに行っちゃうでしょう。

トラックシェアリングというのは、このUberのトラック版。
荷物を運びたい人が、トラックシェアリングアプリでトラック呼び出しボタンを押すと、アプリを導入しているトラックに集荷場所と目的地が通知される。
トラック運転手は、自分の通る経路と相談しながら、その発注に対して受注するかどうかを決める。
このシステムの凄いところは、集荷した荷物を、中継地点に持っていかなくても良いというところ。
集荷場所と目的地が配信されているので、例えば、自分が既に荷物を運び終わっていて、後は家に帰るだけの状態でアプリを確認した時に、自分の帰り道にの範囲内に集荷場所と目的地がある場合、そのドライバーは、家に帰るついでに荷物を配達することが出来る。
つまり、ドライバーに負担をかけること無く、当日配達が可能になっているところ。

では、物凄く遠くの場合はどうなのかというと、これも、バトンタッチが出来るような共有の荷降ろし場所というのが用意されていれば、何の問題もない。
特に中国などは、良くも悪くも共産党の一党支配で、土地も全て国有地なので、その様な土地を用意することは容易いのでしょう。

近い場所であれば、ダイレクトに運ぶことで当日配送が可能。遠くの場合も、中継場所を用意すれば問題なく届けられる。
また、集荷や荷降ろしと行ったデータは、ビックデータとして全て蓄えられている為、それを利用することで、どの場所に中継場所を作るとか、トラックの台数をどの地域にどれ位にすれば良いのかというのが、数値としてわかる。
このアプリを利用しているドライバーの多くは個人事業主なのですが、アプリで、どの地域にトラックが不足していて、どの地域では余っているというのが公開されていれば、仕事が欲しい人はトラックの少ない場所に陣取ってくれるため、効率も上がる。
つまり、このアプリが行っている事というのは、運送業者のホワイトカラーが行っている仕事を、ほぼ全自動でやってくれているというわけ。

更に凄いのが、このアプリの利用は無料ということ。
アプリが無料なだけで、実際に配送を利用する場合には運賃が当然かかるが、ドライバーからしてみれば、ピンハネ経営陣がいなくなって手取りが増える上に、効率よく仕事が得られるわけですから、一石二鳥というわけです。
荷物が破損した時はどうするんだといった話は、そのアプリ利用者が保険に入れば良い話で、保険は保険会社に頼めば作ってくれるでしょう。

この様なトラックシェアリングアプリは、中国だけではなくアメリカでも導入されていて、動きは更に進んでいます。
先程紹介したUberは、トラックを中心とした車両の自動運転技術開発を手掛けるスタートアップ企業、オットー(Otto)を買収したようです。
smartdrivemagazine.jp
Uberの配車システムと、トラックの自動運転。。。深く考えなくてもわかりますが、輸送の無人化、低コスト化の実現に向けて、着実に進んでいる感じです。

【つづく】
kimniy8.hatenablog.com