だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

思い込みの『常識』によって衰退する会社

先日、Twitterのタイムラインを眺めていたら、否定的なコメントとともに、このwebサイトの漫画のスクリーンショットが貼られていました。
www.digital-sense.co.jp

簡単な内容としては、新入社員が、会社にどれ位の時間に出社すればよいのか分からない。
という意見に対し、その会社の上司・もしくは社長と思われる人物が、業務開始10分前には出社して、モーニングコーヒーを飲んでいるぐらいの余裕が欲しい。
と答える。
その返答に対し、10分前に着いたとしても、何をして良いのかわからないと新入社員が質問し返し、社長は、『マニュアルを読むとか、業務の復習をするとか、色々有るでしょ。』
『また女性の場合、先輩方にお茶を入れて、気分よく仕事をしてもらえるような雰囲気作りをしろ。』と忠告。

この忠告に対し、女子の新入社員が『また、女子社員はお茶くみですか? 男子が入れても良いんじゃないですか?』と反論したところ
『男子が入れたお茶よりも、キレイな女子が入れた茶を飲むほうが気分がいいだろう。』と返答。

それを横で聞いていたお局様のような方が、『新入社員なんて、足手まといにしかなってないんだから、せめてお茶淹れて媚を売って、点数稼げよ。』と忠告。
これを聴いた新入女子社員は『お金貰って教えてもらってる立場なんだから、当然ですよね!』と見事に納得するというストーリー。

このツイートに対し、多くの賛否の声が挙げられていました。
これを観た私の感想としては、日本の経営の悪い所が垣間見える感じの漫画だなという印象を抱きました。

どの点に疑問を持ったかというと、まず、会社の上層部の人間が、出社時間の10分前に出社して、仕事に絡むことをやれと言っている点。
私個人としては、100歩譲って、新入社員が自分で考えて、10分前出社を決めたというのであれば、それはそれで問題はないと思っています。
会社から歩いていける、もしくは、自転車など、出社にかかる時間が短い上に容易に想像できるような場所にでも住んでいない限り、毎回、ギリギリに到着するほうが難しい。
電車の場合は、電車が遅れるなんてアクシデントもありますし、車の場合も、事故などで渋滞なんてことも有ります。
遅刻を避けたい場合は、自主的に、余裕を持って行動する事に対して反対はいたしません。

しかし、これは、あくまでも個人が自主的に行動する場合です。
会社の上層部が社員に言った時点で、発言した本人は強制だと思っていなくても、下の人間からしてみると強制された状態になります。

また、この上司は、業務開始時間までに時間が余っているのであれば、マニュアルを読むなど、業務を円滑に進められるように勉強をしておけとアドバイスしています。
こういうことをいう上司は、新入社員が10分前に出社してマニュアルなどを読んでいると、更に10分早く着て、デスクを掃除でもしろと言い出します。
その忠告を聴いてデスクを掃除していると、『自分の机だけか? 新入社員で役に立ってないんだから、トイレぐらいついでに掃除をしておけ』とか言い出します。
そして、更に10分早く出社し、トイレ掃除をする事になります。
そうして従順になっていると、今度は更に30分早く出社して、会社の前の道路も掃除しろとか言い出しかねません。

会社としてのスタンスとしては、出社時間に間に合えば良いで通すべきであって、遅刻が続けば、その事を注意すれば良いだけでしょう。

それ以降のお茶くみ話は、本当に意味が分からない。
この漫画では、新入社員は足手まといで、役に立たないと言いつつも、業務に関係のないお茶くみをする事を推薦している。
会社のことを考えるのであれば、お茶くみしている時間を仕事を覚えることに使ったほうが効率的だと思うんですが、ここでは何故か、お茶くみが推薦されている。
しかも、キレイな女子限定で。

後半に登場するお局様いわく、『そういうパフォーマンスをすることで周囲の評価も良くなる』らしいのだが、何の評価が上がるんだろうか。
仕事もせずに笑顔を振りまいているだけで高評価になって出世できる会社なら、そんな会社は長くは持たないだろう。

それとも、この『評価』は、仕事を教えてもらえるといった事を言っているのだろうか。
媚を売った人には仕事を教えるが、そうでない人には教えないという会社であれば、そんな会社も長続きしそうにない。
というのも、人材育成というのはシステムに組み込んでおくものであって、人の裁量に委ねられている場合はロクな事にならない。
裁量に委ねられている場合、教える・教えないを人質にとって権力を握れる人間が出てきてしまう。
その権限には、会社そのものを良くする効果はありませんし、また、そいつが、人の上に立つ器でない場合、組織にとっては癌でしかない。

また、この漫画全体に漂っている空気も問題。
この漫画では、出社時間外に業務に関係のある、無しに関わらず、行動を行うことが『努力してます』アピールにつながり、結果として評価が上がるといった事が書かれている。
結果として行われるのは、アピール合戦。
業務や売上に関係のない、お茶くみ等のアピールを業務時間中に行い、業務時間が終了してから、業務時間内に出来なかった業務を残業を行うという名目で行うことで、さらなるアピールに繋がる。

その一方で、業務時間内に無駄なことをせず、仕事だけに集中した結果として業務時間内にすべての仕事が終わり、定時で帰ろうとする人は、相対的に頑張っていないと烙印を押される。
酷い場合は、残業している人間の仕事を手伝ってやれと言われる。
結果として、生産性は落ちまくる。

当然のように、効率よく仕事をしている人は、この様な理不尽な状態に耐えなければならない状態となり、耐えられない場合は、見切りをつけて転職することになる。
転職先が、効率や合理性を追求している外資だった場合、日本企業は優秀な人材を外資に吸収される形となってしまう。
その一方で、日本企業に残るのは、『頑張ってます!』アピールする人達だけとなり、生産性は更に落ち、その差は、ますます広がってしまう。

昔は、ゲーム大国と言えば日本でしたが、現在ではアメリカに完全に抜かれ、ゲームの最新情報はアメリカで配信されるのを待っている状態です。
また、オンラインゲームに関して言えば、国としての人口が半分しかいない韓国にも負けている状態。
日本が力を入れているものといえば、アイテム課金スマホアプリぐらいですが、それも、オリジナリティーがあるものではなく、今売れているアプリのシステムをパクったクローンが大半。
アニメも、委員会方式で予算が出ない状態なのに、クオリティーは求められる状態に嫌気が差し、アニメーターが中国に逃げるという状態にも追い込まれています。

人材の流出によって、日本の強い分野というのがドンドンなくなっているわけですが、そんな状態に対して日本の人達は
売国奴!』だとか『ノウハウを奪われたら首切られる。そうなっても、戻ってくるなよ!』なんて言葉を投げかけるだけ。
決して、待遇を良くして流出しないようにしようなんてことは考えない。

今回は、極端な感じで思考を巡らせましたが、程度の差は有れ、この様な事は実際に起こっています。
一部では、日本はオワコンなんて言われ方をしていますが、雇う側も雇われる側も、仕事のあり方や待遇について、そろそろ真剣に考えなければいけないのではないでしょうか。