だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

自分の預金を引き出し拒否される お年寄り達

今日、仕事で銀行に訪れた際、自分のお金を引き出すことが出来ない老人に遭遇しました。
この現場を見て色々と思うことがあったので、今回はこの事について書いていきます。

私の職場は仕入先の支払いが20日の為、その数日前には毎月銀行に行かなければなりません。
私個人としては、ネットで振込の方が時間的にも労力的にも楽なのですが、ネットで振り込む際には電子取引口座の様なものが必要で、その口座維持に月々お金が必要ということで、このサービスは利用していません。
また、振込と同時に集金した約束手形を銀行側に預ける必要も有るので、毎月、足を運ばなければならないんです。

今月もその時期がやってきたので、いつもの様に銀行に行った所、隣の窓口でお年寄りが『猫が庭に入り込んで~』といった感じで世間話をしていました。
この時は、『銀行員も世間話を笑顔で聞かないといけないし、大変だな』と思っていたのですが、少し時間が経って、少々雰囲気が変わってきました。

窓口で一旦話し終わったお年寄りは窓口受付が終わったようで、私の隣に座ってきました。
すると、支店長クラスの人がその老人のもとに駆けつけて名刺を渡し、深々と頭を下げた後に、また、老人と『猫の話』をし始めました。
それを真剣に聞く銀行員。私は、『何で、何回も猫の話をしてるんだ?』と疑問に。
老人は耳が若干悪いようで少し大きめの声で話し、銀行員もその方に聴こえるように大きな声で話されていた為、隣りに座っていた私は聞き耳を立てるまでもなく自然と会話内容が耳に入ってくる。

その話を聴いて、老人は世間話をしていたのではなく、銀行員の『引出した資金を何に使うのか』という質問に答えていたことがわかりました。
簡単な会話内容は、老人の住む家には野良猫が多く、その猫が頻繁に家の敷地内に入ってくる。
単に入ってくるだけでなく猫はそこら中で暴れまくり、結構うるさい状態になっていて対策をしないと生活がし辛い。
自分で飼っている猫なら我慢も出来るが、野良猫なので我慢も出来ず。家族と相談した結果、自分達の敷地内を塀を増設・修繕して対処しようという事になった。
敷地内を囲むような塀を自分で設置するのは困難なので、業者に頼んで見積もりを取ると結構な値段に。その支払いの金を事前に準備する為に、家族の中で時間が有る老人が単独で銀行を訪れて引き出しの手続きをしようとした。
それを聴いた銀行側が、振込詐欺防止のためのチェックリストを用意し、老人に尋問していたのが私が窓口で観た姿であって、老人は別に世間話をしていたわけではありませんでした。

普通の人なら、『自分の金を下ろすのに、何故、ここまで尋問されなければならないのか?』と疑問に思い、中には気分を悪くする人も出てきそうですが、振込詐欺が増えている現状では、この様なチェックも必要なのでしょう。
お年寄りは銀行員の質問に丁寧に答え、チェックリストを全て消化した後で私の隣に座ってきたのですが、そのチェックリストを確認した責任者が改めて尋問に来たという流れ。

再び訪れた銀行員にも、気を悪くすることもなく質問に答えるお爺さん。
答えている内容は先ほど窓口で答えていた内容と全く同じ様子だが、老人は丁寧に笑顔で質問に答える。しかし銀行員は、全く金を用意する気配すら無い。
そこで、銀行員側を注意深く聴いてみることに。

銀行の主張としては、引き出しの理由は非常によく分かるが、その老人の言っている事が本当かどうかわからない。
後から認知症だったと家族からクレームを受けるのは嫌だから、この場ではビタ一文払い戻す気はない。
どうしても本日引出しを完了したいのであれば、銀行営業中に、頭のハッキリしている息子や娘をここに呼べ。
出来ないのであれば、金の引出しを許可することは出来ない。

話し方自体はオブラートで何重にも包んだような柔らかい口調で、下手に出ているように話し続ける銀行員。
しかし発言内容を整理すると、かなり失礼な内容。

この話を受けてお爺さんは
『そちらの言いたいことも分かる。確かに、テレビでも振込詐欺が流行っているという話は耳にしている。だから、わざわざ声掛けをして頂いて、有り難いと思っている。
だが、私はわけの分からない場所に振り込むのではなく、工務店に支払う為のお金を予め用意しておきたいだけだから、その心配はない。
それに、そちらは最初にチェックリストを用意して、質疑応答を強制してきたでしょ?
私はその質問に答え、全ての項目について説明を受けたとを確認する署名欄にサインしましたよね?
この状態で仮に私が詐欺にあったとしても、それは私の自己責任であって、銀行さん側の過失ではないのだから心配する必要はありません。
だから、私の預けたお金を引き出させてください。』

ぐうの音も出ない正論で、流石に銀行側も折れてお金の引出し処理をするのかと思いきや、頑なにそれを拒否する銀行側。
これまたオブラート10枚ぐらいで包んだ様な言い回しで、『何度もいうけど、一人で引出しにきたとしても無理だから。金を引出したきゃ息子を呼べ。後、本当に工事が行われるかも怪しいし、見積書も持参しろ。じゃなきゃ、云々…』といった内容を優しい口調で態度は下手で告げる行員。
銀行側の主張の最後の方が若干聞き取れない状態で、私が銀行側に頼んだ処理が終わのか、窓口に呼び出される。

窓口から戻り、銀行出るまでにその老人の前を通ることになったのですが、その頃にはお爺さんはすっかり興奮した様子で、『じゃぁ警察呼べ!』とお怒りの様子。
私が聞き取れなかった銀行側の最後の主張は、『息子を呼べないのなら警察を呼ぶ』というものだったようです。

ちなみに、この間50分。単に自分の金を引き出すだけで平行線のこんな議論を吹っかけられて警察まで呼ばれるといわれれば、普通の人なら怒って当然ですよね。
クレーマーって、こうやって生まれていくんでしょうね。
『50分も黙って聴いてたの?』と思われるかもしれませんが、私が銀行に依頼した得意先への振込と約束手形の預かり処理だけで、銀行が50分の時間を要したんだから仕方ありません。

これを目撃した私の感想としては、年を取ったら行動がかなり制限されるんだなということ。
このお爺さんの場合は子供がいたので、最悪の場合は仕事中の子供に頭を下げて銀行まで来てもらう事でお金を引き出すことは可能です。(お金の引出しすら出来ないと子供に思われる可能性が有り、プライドは傷つきますが。)
しかし、仮に子供も無く、配偶者がいたとしても死別していて一人暮らしだったとしたらどうでしょう。大きな買い物をする際にお金を引き出そうとする度に、警察を呼ばれることになります。
ATMに毎日通って限度額まで引き出すという方法も有りますが、年を取った状態でこれを行うのは非常に面倒くさい。
でも、現状では『警察を呼ばれる』所までワンセットじゃないと、お金の引出しは出来ないようです。

ちなみに、これは銀行側が決めた対処法というよりも、警察に要請されて行われているようです。

この出来事は私的にちょっと衝撃を受けたので、珍しくSNSで『自分の金の引出しを拒否されてるお年寄りがいたので、ブログに書いてみる』と投稿した所、振込詐欺防止の為に警察が銀行に要請しているという情報を頂きました。
で、試しに『銀行 引出し 警察』で検索すると、悩み相談サイトなどで同じ様な出来事でお怒りの親族からの書き込みが多数発見できました。
それらによると、警察が来てから2時間程、尋問を受けるのがセットになってるようです。

警察としては、実際に詐欺被害にあってから捜査をするより、現金を引き出す段階で事件を未然に防いだ方が被害も少なく、手間もかからないので、銀行に要請しているのでしょう。
少し引いた目線でみれば、預金者も銀行も警察も、振込詐欺のとばっちりを受けた被害者なんでしょうね。
しかし私が観ていた範囲内でいえば、今回の出来事は銀行に非がある様に思えます。

というのも銀行側は、平行線の議論をふっかけておきながら、ゴールを用意していないんです。
預金者が何を発言しようと、銀行側は息子か警察が同伴じゃないと引き出しには応じないと態度が決まっている状態。
であるならば、高齢者の預金者が窓口に行った最初の段階で、この事を告げておくべきだったのではないでしょうか。
当然、自分のお金を引き出せないわけで、怒る人も少なくないでしょう。しかし、40~50分も平行線の議論を行った末に切り出されるよりは、怒る人は遥かに少ないでしょう。

この出来事は実際問題として起こっていることで、対応が改善されない限り、誰にでも降りかかる出来事だと思います。
これを読まれている高齢者の親を持つ世代の方は、もし親から『銀行にお金を引出しに行くから、ついてきてくれ。』といわれたら、嫌な顔をせずについていってあげてください。
もし高齢者の方が読まれている場合、現金以外の決済方法を常に意識しながら行動した方が良いかもしれません。

一番良いのは、振込詐欺がこの世からなくなって、誰でも自由にお金が下ろせる世の中になることなんでしょうけどね。