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だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【映画紹介】 マネーショート 後編

映画 政治・経済

前回は用語説明だけで終わってしまい、映画のことが殆どかけてない状態だったので、今回は映画の話中心で書いていきます。
前編を読まれていない方は、そちらからお読みください。
kimniy8.hatenablog.com


      


という事で物語です。

不動産市場の異常性に気がついたマイケル・バリーが、銀行にCDSを用意させるところから物語は始まります。
ここからはじまるので、『この人が主人公?』なんて思いがちですが、そうではありません。
この映画は誰かを主人公に据えた話ではなく、不動産市場の異常性に気がついた人達と、気がつかない呑気な人達との戦争です。

呑気な人達は、不動産市場は未来永劫続くと思っていますし、それを元にしたCDOも絶対的なものだと思っています。
だって銀行は、ギャンブルの種銭を貸しているのではなく、住宅ローンを貸しているわけですから。ローンの返済が遅れれば家は取り上げられるわけで、それを望む人なんていない。
皆が一生懸命になってローンの返済を行うので、信用不安なんて起こるはずがないと思い込んでいる。

その為、不動産担保証券が破綻する方に賭けるCDSなんて、銀行にとっては美味しすぎる話。
例えるなら、『200歳まで行きた時、経済的に不安なので、200歳になったら毎月生活費が貰える保険を掛け捨てで入りたい』と客の方から持ちかけてくれているようなもの。
人間が200歳まで生きることなんて無いから保険料支払いの心配なんて無いのに、掛け捨てで保険料をくれるなんて、タダでお金をくれますよと言っているようなもの。
銀行は『カモが来た!』とばかりにCDSを発行して売りまくります。

次にスポットライトが当たるのが、CDSを作った人。ジャレド・ベネット。
この人物はCDSを作る過程で、不動産市場を一度洗い直してみると、市場は既に崩壊し始めていることに気が付きます。
そこで、とある投資家にセールスに行くことになります。その投資家が、マーク・バウム。

ジャレドはマークのオフィスに行き、CDOの元になっている不動産市場が如何にボロボロかということを力説します。
内容は、現在金利4%の状態でも既に延滞や利息支払いが滞るといった起こっており、これが金利8%になると拍車がかかって手がつけられなくなる状態に陥る。
この危なそうな不動産ローンを担保にしたCDOの内訳を見てみると、CDOの格付けはAAAになっているが、その資産内容は大半がBBB以下の、本来なら投資できないような劣化した資産で構築されている。




ジェンガに例えると、土台部分の殆どはB・BB等のリスクの高い商品で構成されていて、上辺部分にだけA・AAといった安心できる資産が積み上がっている。
しかしCDOは債権をバラ売りしているのではなく、1つのパッケージとして売り出す商品。土台部分が脆いと、構造的に全てが崩れる仕組みになっている。
そして既に、土台は腐り始めている。
『今はまだ、気づいているものはいない!CDSの価格も安い!今後、不動産バブルは崩壊する!買うなら今だ!』

あの手この手でセールストークを行うジャレドだが、投資家チームはいっこうに信じない。
何故なら、不動産神話はそれほとまでに深く浸透し、日常化していたからです。
しかしチームリーダーのマークだけは違っていました。何故なら彼は、あらゆるものを疑い、徹底的に調べずにはいられない性分だったからです。
そんな性格である為、ジャレドの言葉も疑っていましたが、それ以上に盤石と皆が疑っていなかった不動産市場に疑念を抱き、調査することになります。

そこでマークの投資家チームは、信じられない光景を目にすることになります。
このあたりは、実際に映画を観てご自身で感じ取ってもらいたいのですが、本当に酷い状態が不動産市場を蝕んでいます。
この映画だけを観ると、アメリカの銀行や投資家の余りのマヌケっぷりに唖然としますが、日本のバブル絶頂期も、こんな感じの事が起こっていたのでしょうね。
歴史は繰り返すというかなんというか。欲に目が眩んだ人間って、学習しないもんですね。

しかしその後、不動産市場が下落する方に賭けた人達が窮地に立たされることになります。
何故って、不動産市場は破綻の方向に一直線に進んでいるにもかかわらず、CDOの価格は下がらずにCDSの価格も上昇しなかったからです。
このあたりの展開が非常に面白い。

市場というのは、本来であれば価格は適切な値段で落ち着こうとします。『神の見えざる手』とも呼ぶ現象で、供給が増え続ければ価格は下落しますし、需要が強ければ価格は上昇する。
にも関わらず市場が機能していない。

何故こんな事が起こっているのか。疑問に思ったマークは、CDOを作った人間にインタビューをします。
そこで分かったことが、またまた面白い。
前編で、CDOは不動産ローンを担保にした証券だと解説しましたが、実際の金融市場で流通しているCDOは、それよりも更に歪な状態で出回っていました。
具体的には、不動産ローンをベースにしてCDO『A』を生成、しかしこれが売れ残った場合などは、次に生成するCDO『B』に組み込む。その次に生成するCDO『C』には、CDO『B』が組み込まれている。
つまり、最後のCDO『C』には、CDO『A』と『B』が組み込まれている。
この状態をそのまま書くと、CDO『C』には、不動産ローンを担保にして作られたCDO『A』を担保にした証券であるCDO『B』を担保にした商品ということになる。
A・B・C全てのCDOの担保は、元を辿れば同じ不動産ローンにたどり着く。別の言い方をすれば、元の不動産は3つの別々の金融商品の担保になっている。

映画の中では、カジノでブラックジャックを楽しむ夫妻を例にして説明されています。
妻の方が馬鹿ヅキで、ディーラー相手に勝ちまくっていたとします。余りに調子が良いので、妻は今まで買った金を使って大きな勝負に出ました。
それを観ていた周りの観客が、『次も、あの夫妻の妻がディーラーに勝つかどうか』で賭けをはじめます。
そのかけを見ていた他の人が、『妻に勝つ方に賭けた人間が勝つかどうか』について賭けはじめ、それを見ていた人が『妻が勝つ方に賭けた人が勝つと賭けた人が勝つ方に…』という感じで賭けを行い続けます。
最終的には、実際に夫妻の妻がディーラーとの勝負で賭けた金額の20倍が、それを周りで見ていただけの人によって賭けられていた。

話を元に戻すと、仮に5000億円の住宅ローン市場が証券化されてCDOになった場合、CDO市場が5000億円なら計算は合います。
しかし、CDOにCDOを組み込むという無茶を推し進めた結果、5000億の不動産ローンを元にしたCDO市場は、20倍の額の10兆にまで膨らんでしまっている。

先程のブラックジャックの例でいえば、『妻が勝つ方に賭けた人が勝つ方に賭けた人が…』とどこまでも続け、最終の掛け金が大きくなってしまったとしても、実際の賭けの相手も予測がハズレた場合の損失額も理解できている為、まだ、損害は限定的といえます。
しかし現実のサブプライムローンの場合、保険商品のCDSを売却していた金融機関は、皆、『不動産市場は絶対的なもの』だと信じて疑ってはいませんでした。
その為、保険料は激安で、手厚い保証を確約してしまっていたのです。
こんな状態で、不動産市場で誰もが予測していなかったクラッシュが起こったとしたら?
売った保険に対しての保証を支払えない金融機関は、破綻待ったなし!の状態にまで追い込まれます。

にも関わらず、実際に市場に何の影響も無かったのは、その市場参加者の大半が、自分たちが購入している商品の内容を全く理解していなかったから。
内容が全く理解できていないわけですから、当然のことながら、危険性なんて認識できるはずがありません。
危険性に気づいている人も少なからず存在はするのですが、その人達は不動産ローン市場が大きくなり過ぎていて、仮に破綻した際には大勢が不幸になるので、気づかないふりをしている。
危険性が認識出来ておらず、認識ができている数少ない人達も、市場崩壊を恐れて見て見ぬふりをしている。こんな状態では市場参加者はCDOを売らないので、需給関係は悪化せずに値崩れは起こさない…

圧倒的な馬鹿達に窮地に立たされるショート側! 彼らは一体どうなってしまうのか!
結末は作品を見て確認してください。

映画紹介と言いつつ、経済の小難しい話を2回にわたって書いてきましたが、この作品のメインテーマは、実際に起こった金融危機の裏側が如何に馬鹿げていたのかというのを説明する為の映画なので、経済用語の解説が内容の大半を占めていたりします。
では、難しい話で理解に苦しむのかといえば、そんなことはありません。デットプールよろしく、メインキャラクターのほぼ全員が、第四の壁をぶち破ってカメラに向かって丁寧に説明してくれます。
経済用語が映画内の解説だけでは理解できなかったとしても、問題ありません。というか、サブプライム問題に関与した殆どの人が仕組みを理解していなかったので、専門外の視聴者が理解できなかったとしても当然でしょう。
先程も書きましたが、この映画は金融市場で大きな金を動かしていた人達が如何に馬鹿で、自分の尻も自分で拭けない人達というのを理解するための映画です。
そういった目線でみると、店舗も良く、程よく笑えるコメディータッチで描かれているので、幅広い方々に見てもらいたい作品となっています。

お薦めです。

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