だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

生産性の向上と景気の関係

広告

長い間、日本…というか先進国の多くは、デフレに突入して経済成長しない状態が続いていますね。
それを解消するために、日銀や政府は金融政策を練ったり公共事業で無理やり需要を刺激してみたりと大忙し。
そのわりには、全くといって良い程その効果は薄く、デフレが解消する気配すら感じられません。

これは何故なか。
大半の人は、理由を既に御存知だとは思います。
答えは簡単で、供給過多だからですね。
多くの経済学者は『経済成長の為に生産性の向上を!』なんて主張していますが、その生産性が向上しすぎた状態が今の先進国といえるでしょう。

では何故、、相も変わらずニュースなどでは生産性の向上を求め声が多いのか。
これは、経済学者が経済学で導き出された公式に、世の中をそのまま当てはめているからでしょう。
世の中の状態は変わらない事を前提とし、実際には前提条件が変わっているにも関わらず昔に作り上げられた公式をそのまま当てはめているので、間違ってしまっているのです。

生産性の向上が経済成長につながる。
これは、発展途上国でしか通用しない常識なんですよね。
それを先進国で無理やり適応しようとすると、何かと不都合が出てきてしまう。
これが、今現在、先進国が置かれている状態です。

経済の前提条件は、発展途上と先進国で分けて考えなければ、駄目なんです。
にも関わらず、『生産性の向上を!』と主張しているのは、学者が外に出ずにいることで現在の状況を理解していないからか、今のシステムを維持するために詭弁と分かりながら主張しているかのどちらかなのでしょうね。

では具体的に、途上国と先進国ではどの様に経済状態が違うのかを考えていきましょう。

まず、発展途上国の場合。
道路・電気・ガス・水道といったインフラ整備が全く出来ていない国を例に考えていきましょう。
この様な国の場合、政府が公共事業でインフラ整備を行うことで、経済は爆発的に成長します。
道路ができれば、その道路を使って運送などの経済活動が行われますし、これで賃金が得られるのであれば、バイクや車を購入して運送業に新規参入しようという人達も増える。
発電所が出来れば、電気が安定的に届く範囲には工場などが建てられますし、雇用が生まれます。

何もなかったところにインフラが整備される事で仕事が生まれ、人々が賃金を手にすることで、新たな需要が生まれる。
経済が発展する初期段階の時は、大抵は労働力としての人も販売する商品も足りない状態。
つまりは供給不足の為、物価や賃金が非常に上昇しやすい状態になります。
これを放置すると経済が壊れてしまう可能性が出てきます。
ここで必要なのが、生産性の向上です。生産性が向上することで、企業は同じ人員でより多くのものを生産することが出来るようになりますし、経営的にも安定します。
企業の業績が安定すれば、雇われている従業員の暮らしも安定しますから、消費拡大にもプラスに働くでしょう。
また、基本的に供給不足の社会なので、熟練した社員が他社に引き抜かれてしまうことは企業のダメージになってしまいますから、会社は社員の囲い込みのためにも雇用条件の改善に努めます。
この様に、『何も無いところ』を新規で開発する場合は、公共事業としてのインフラ整備も企業の生産性の向上も、経済にとってはプラスの影響がでます。

しかし、これが先進国の場合ではどうでしょう。

インフラ整備は既に終わっているるので、国がかけるインフラ整備費用の大半は、修繕費となります。
既にあるインフラを修理する場合は、それにともなって経済活動が活発になるわけではありません。
なんなら、道路補修の為の交通規制等で経済にとってマイナスになる場合も有ります。
他のインフラについても同じで、既にインフラが終わっているものを修繕した所で、経済上昇の起爆剤にはなりません。
しかし、修理して無限に使えるわけでもなく放っておくことも出来ない為、定期的な修理は必要になってくる。。
『日本に借金はない!こんなにも資産があるでしょう?』なんてトンデモ理論を主張している経済学者も結構見かけますが、定期的に修繕が必要なうえ売却が出来ないので、むしろ負債と言えなくもない。

では生産性の方だどうなのか。
この供給過剰状態で、企業が生産性を高めればどうなるでしょうか。ある企業が自動生産設備の導入によって生産効率が100倍になったとします。しかし、供給過剰で需要不足の社会では、100倍の商品を生産しても売れません。
生産効率が100倍になっのに販売量が変わらないとなると、社員の数を100分の1にしないと計算が合いません。結果として会社は、大量のリストラを行うことになります。
では、生き残った社員は給料が100倍になるのかと言えばそんなことはありません。利益は経営陣が取り、後は会社が溜め込んで終了です。
サービス業になると、更に倍率は変わってくるでしょう。今までは不動産を買うなり借りるなりして実店舗で販売していたような会社がネット販売に置き換わったとしたら…
効率化は100倍程度ではすまないでしょう。Amazonに潰された本屋などが良い例ですよね。では、Amazon社員は本屋に勤めている人よりも多額の金をもらっているのかといえば、そうではありませんよね
経営陣は別として、倉庫で働いている人達は低賃金で働いています。

これは、生産効率が上昇すればする程、解雇される人が増えることを意味します。労働市場に大量に人だけが供給されると、当然ながら賃金相場は下落します。
こんな状態で得をするのは、またもや企業です。労働市場には人が溢れているわけですから、今まで以上に悪い労働環境でも人は集まってきます。
しかし当然、その様な企業で働いても経済的に豊かになれ無いので、消費活動も抑えられてしまう。

こんな状態で更に生産性を高める為にリストラを行ったとしたら?
経済は良くなるどころか、更に悪くなるでしょう。

途上国と先進国。
2つのケースを見比べればわかりますが、行っていることが同じなのに結果が逆になるのは、前提条件が違っているからです。
途上国は基本的に供給不足で、先進国は需要不足。
前提条件が違う社会で同じ処方箋を出したとしても、うまくいくわけがないんですよね。

例えば、高校生が大学に進学するという目標の為に勉強するというのは、正しい行為でしょう。
しかし、実際に大学に合格した場合は、目標を一つ先に進める必要が出てきます。大学にステージが変わっているのに、大学入試用の勉強をしていても駄目ですよね。
経済もこれと同じで、途上国は先進国の仲間入りをする事を目標として頑張るのは、これはこれで良いでしょう。しかし、既に先進国になっている国々は、一つ先の目標にスライドさせるべきなんです。
それをせずに、今までと同じ行動を行って『おかしいなぁ』なんて言っていても、向かう先は破滅だと思うんですけどね。