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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【本の紹介】 すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考)

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今回紹介する本は、芸人のマキタスポーツさんが書かれた、『すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考)』です。



マキタスポーツさんといえば、最近ではドラマなどでも見かけるようになりましたが、私が最初に拝見した時は、音楽を用いたネタを披露する芸人の方でした。
どちらかと言うとお笑い寄りの芸をされる方なのですが、私の印象としては、デフォルメして崩しまくったモノマネをして笑いを取るというよりも、少し知的な感じが漂うネタをされる印象の方です。




そんな、マキタスポーツさんについて、少し前にこんな噂を聞きました。
『今流行している曲を大量に集めて、その中の歌詞にどんなワードが使われているかを検証し、泣ける曲を計算して作って、実際にヒットした。』
この話を聴いて、『面白いアプローチだな。』と関心した私は、早速、ネットで検索をかけ、この本に辿り着きました。

実際に読んでみた印象ですが、『すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考)』というタイトルだけを観ると、現在のJ-POPを馬鹿にしているようにもとれますが、実際にはそんなことは有りませんでした。
本の出版は、買ってもらわなければ話しにならないので、基本的に過激なタイトルを付けがちなんですが、この作品もその一つと言って良いでしょう。
ではタイトル詐欺なのかというと、そうでもなく、本全体を通して読むと、タイトル通りの内容といった感じ。
これの投稿を読まれている方は、若干、感想がブレているように感じられるかもしれませんが、『タイトルに嘘はないけれども、それほど過激でもなく、J-POPもdisってませんよ。』って事ですね。

読んだ感想ですが、音楽に興味が無い人が読んだとしても、何かしら吸収できる内容になっていると思います。
本の内容をすべて紹介してしまうと営業妨害になりますので書けませんが、かといって、私の表現能力では内容に触れずに書くことは不可能なので、少し内容に触れて書くと、この本には物を創りだす方法が書かれています。

私自身は、音楽に特に詳しいわけでもなく、自身で楽器演奏や作曲などを行うわけでは有りません。
しかし、仕事が製造業であるため、毎日の様にモノの生産には携わっています。
また、ブログという形で自身の考えなどを文章に起こして書いているわけですが、これも大まかに分けるとコンテンツ生産に入るでしょう。

こういった私の視点から読んでも、参考になることや、私自身がこれまで制作する過程で考えてきた事と共通する部分が多く書かれていました。

では、どのようなことが書かれていたのかというと、『無から物を作り出せる人間はいない』という事です。
人が創りだすものという行為は、基本的には『A』という物と『B』という物を組み合わせて、『C』という新しく見えるものを作っているだけです。
何も無いところから『C』を生み出す人はいません。

元となる『A』を、どのような形で『B』と関連付けをするのかというのが、世間一般で言うところのオリジナリティーというわけです。
この、組み合わせや関連付けと言うのは、必ずしも足し算というわけでは有りません。
分かりやすいのは、美術の世界でしょう。
美術は、基本的には従来のものとは違う作品を生み出す歴史です。
昔は、目の前にある被写体を、どの様にしてリアルに書くのかに重点が置かれ、陰影や遠近法等の技術が開発されませいた。
しかし、そこに写真という技術が生まれてしまいました。

被写体をそのまま描き出すという店においては、カメラ以上に手軽で正確なものは有りません。
そこで絵画は、自身が生き残る手段として、ありのままを書くのではなく、『絵である』という事を極端に主張する為に、筆のタッチを残す手法が生まれます。
それが、印象派ですね。

つまり、絵画というものに対してカメラという存在が影響を与えた事によって生み出されたわけです。
美術の世界では、今まで行われていなかったことやタブー視されていた事を、敢えて行う『カウンター』が多く使用される場合が多いですね。
カウンター以外にも、既存のモノの良い点を更に追求して尖らせたり、別角度の視点を導入するなど様々な方法が有りますが、基本的には、『既存のもの』に対してどの様な変化を加えるかという方法で変化が起こっています。
『A』というものに対して『B』という価値観を組み合わせることで、『C』という物を生み出してきたわけです。

この本では、この理論を音楽で実践する為に、どのような行動を起こしたかということが丁寧に解説されています。
本の書き方的に理論重視の為、もしかすると、『自分は音楽を魂で作っているんだ!』なんて主張する人にとっては、面白くないし、神経を逆なでするような内容かもしれません。
しかし、音楽を工業製品と割り切って考えられる人にとっては、参考になる内容だと思いましたね。

ただ注意点としては、ここに書かれているのは『製品の創りだし方』であって、これを読んだからといって、良作が量産できるというものでは有りません。
『A』というものに対して『B』というアプローチをして『C』というものを創りだすという法則ですが、これ自体は間違いではないでしょう。
ですが、より良いものを作るためには、ベースと成る『A』のデータ量が大量に必要になる為、日々の勉強が大切になってくるでしょう。
また、そのベースに対して『B』のアプローチ結果がどのように成るのかといった試行錯誤も必要になってきます。
本の中では簡単そうに紹介されていますが、元となる法則は簡単でも、実践する為には膨大な時間と努力が必要になってくるんですよね。

…と、こういったことが書かれている為、音楽好きで無い人が読んだとしても、得るものはありますし楽しめる内容になっているのではないでしょうか。
文章も読みやすく書かれている為、普段から本に接していない人でも簡単に読むことが出来る仕上がりとなっています。
気になった方は、読んでみては如何でしょうか。