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【本の紹介】 戦争と革命の世界史

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今回紹介する本は、『戦争と革命の世界史 (だいわ文庫 H 320-1)』です。



この本は、Amazonで歴史関連の本を適当に観ていた際に、おすすめ商品として紹介されていたのを観て、なんとなく興味を持って購入してみました。
本のタイトルは『戦争と革命の世界史』という事で、本の内容も戦争と革命に特化した内容となっています。

この本は、普通の歴史の本とは少し違った感じで構成されています。
従来の教科書などは、過去から現代に向かって時代が進行していく為、序盤の方では自分の時代とはかけ離れた時代に遡って勉強する必要があります。
しかしこの本は、それらの本とは逆で、近代から過去に遡って行くように書かれているのが特徴ですね。

まず、現代の大きな出来事を解説し、その出来事は何が原因で起こってしまったのかを遡る。
焦点を少し過去の出来事に戻て少し過去の出来事を紹介し、その時の社会情勢や世界の動きを踏まえて解説が行われます。
そして最後には、また、『この出来事が何故起こったのか、その原因は…』という感じで、過去に遡ります。

歴史の中でも結構大きな戦争や革命に焦点を当てて、その原因を探るために過去の出来事や取り巻く雰囲気を勉強していくというスタイルで書かれているのが特徴ですね。

歴史に限らず勉強は興味を持つまでが勝負で、興味さえ持ってしまえば義務感から開放されて、ゲームのように勉強を進められます。
しかし、その『興味をもつ』という状態にするのが、結構難しかったりしますよね。
この本の場合は、最初の章でアメリカで起こった世界同時多発テロを取り上げ、『何故この様な事が起こってしまったのか』という感じで遡っていくように書かれています。
世界同時多発テロが起こったのは最近ですし、余程小さい子供でもない限り、皆さんが生まれてから起こった大事件ですよね。
それを最初の題材に取りあげて、『この事件が起こってしまった原因は…』といった感じで始まるので、普通の歴史の勉強に比べると、興味を持ちやすい作りになっているように思えます。

誰でも、観たこともなく想像することも難しいような5000年前よりも、ついこの間起こった大事件のほうが興味ありますもんね。
そういった意味では、『歴史なんて大昔のこと、何の為に勉強するの? 今の社会を生きていく上で必要あるの?』と疑問を持っている人ほど、歴史と今の社会との関連付けが出来て、引きこまれていくと思います。


この本、タイトルでは『戦争と革命の世界史』となっているので、世界史全般のことが書かれているように思われる方も居らっしゃるかもしれませんが、書かれている範囲は、限定された狭い範囲となっています。
この本自体が新書でページ数も260ページ程、1ページにビッシリ書いているというわけでもなく、1ページ内の文字数を少なくして読みやすさを重視した作りになっている為、仕方がないでしょうね。

歴史の範囲としては、先程も書きましたが、アメリカの同時多発テロから始まり、その事件の首謀者を産んだ中東の歴史へと移っていき、イギリスの産業革命フランス革命などまで遡ります。
現代から徐々に遡って200年ほど掘り下げた所で終了します。
また本の書き方は箇条書きではなく、『この事件が引き起こされる原因は、ここにあった!』といった感じで、一つ一つの出来事を関連付けして一つのストーリーのように書かれている為、そのストーリーに関係のない国は殆ど出てきません。

具体的にどんな国が出てくるのかというと、主に、欧米と中東(主にイラン・イラク)とロシア(ソビエト連邦)。
これらの国を中心に、現代から約200年前程の歴史を物語調に書いてあるので、その他の部分について知りたいと思っている方や、歴史全般について知りたいと思われている方は、注意が必要です。

まとめると、欧米・中東・ロシア(ソ連)の期近200年穂都の歴史を、新書の260ページで、1ページ内にぎっしりと文字を詰め込むこと無く、文字数を少なめにゆったりと書く事で、本が苦手な人でも読みやすく書かれた本という感じでしょうか。
前提となる知識がなくても読むことが出来る為、学生が受験のために読む本というよりも、ここ最近に起こったニュースを理解する為の教養が身につけられるような本になっているので、社会人の人にオススメ出来る本ですね。


本を読んでみた感想…というよりも注意点ですが、この本は基本的に、『欧米憎し!』『諸悪の根源、欧米!』って感じで書かれています。
この本の中でのヨーロッパは、ユーラシア大陸の西の端で、絶えず戦争をしている野蛮な国で、中国や中東に遥かに劣る遅れた国といった感じで紹介されています。
その反面、中国や中東はヨーロッパに比べて文明的に進んでいて、遥かに文化的で進んだ国といった事になっています。

欧米や白人に対する蔑視が強いため、この本だけを読んで歴史を理解しようとすると、少し歪んだ形で認識してしまう可能性もあるかもしれませんね。
確かに産業革命以降、経済発展の為の貿易路確保の為の侵略戦争が欧米主導で行われて来ましたし、酷い事件も沢山あったことは事実でしょう。
ただ、それは偶然にも欧米が他国を制圧できる技術を先に手に入れたからであって、欧米人が野蛮だから起こった出来事と決めつけることは出来ないと思うんですよね。

人間なんて、多少の違いはあっても考えることは似たり寄ったりなので、日本や中国・中東が欧米よりも先に高い技術発展をしていたら、先に攻め込んでいた可能性も大いにあります。
また、近隣諸国と小競り合いを起こして戦争や紛争を繰り広げていたのは、ヨーロッパだけでは有りません。
日本も、数百年に渡って内部で争っていましたし、中国も国を作っては崩壊させています。

人は人種に限らず、大き過ぎる力を持つと他人を見下して攻撃して制圧しようとする人が一定数出てきます。
過去に起こった悲惨な出来事を肯定するわけでは有りませんが、『欧米だから。白人だから』起こった出来事という感じでもないと思うんですよね。
そういった目線で見ると、結構、バイアスの掛かった書かれ方をしている本で、これだけを読んで歴史を理解した気になるのは危険だなとも思いました。

とはいっても今の日本の報道などは、基本的には欧米寄りの姿勢で報道される事が殆ど。
映画をはじめとする各種エンターテイメント等も、欧米のものが中心となってきているので、そんな環境に晒されている私達は、知らず知らずのうちに親欧米のスタンスになりがちです。
そういった人達の目を覚まし、『必ずしも欧米が正しいとは限らない』という視点を与えるという意味では、調度良いぐらいの書き方とも言えるのかもしれないですけどね。

今まで歴史い興味がなく、報道されているニュースを鵜呑みにしてきた人にとっては、良い感じで刺激を与えてくれる本だと思います。
これを読んで興味を持たれた方は、是非、読んでみては如何でしょうか。