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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

Brexit(ブレグジット)イギリスのEU脱退の影で進行する危機

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最近の経済ニュースといえば、イギリスのEU脱退。
専門家と称する人達や、テレビの情報を鵜呑みにして『イギリスは馬鹿だ』と騒いでいる今現在、EUでは新たな問題が出てきましたね。

どんな問題かというと、イタリアの銀行の不良債権問題。
不良債権問題といえば、日本でもバブル崩壊後に起こったので、この言葉を知っている方も多いのではないでしょうか。

日本の場合は、バブル景気で高騰した土地を担保に金を貸したのは良いが、バブル崩壊で担保の土地が大幅に下落してしまい、担保として機能しなくなってしまいました。
担保が下落したとしても、返済が通常通りに行われれば問題はないのですが、不景気になるとその返済も滞りがちになってしまう。

担保不足な上に、返済もうまくいかない。
最悪の場合は貸した企業や個人が破産するなんてことになってしまうと、その損失は銀行が被ることになります。
銀行の損失が増えて自己資本が減少すると、銀行は資金の貸出料を減らさなければなりません。
こうなると問題の無い企業にも影響が出てしまう為、日本は公的資金注入等で銀行の資本を増強し、何とか乗り切りましたよね。

その不良債権問題に、イタリアが直面しているようなんです。
不良債権額は、試算で400億ユーロといわれていて、結構な金額。

『日本と同じ様な状況なのであれば、イタリアも同じように、公的資金注入をして乗り切ればよいのでは?』と思われる方も少なく無いと思うのですが…
今回の件は、そんなに単純なものではないようなんです。
何故かというと、規制で域内各国をがんじがらめにしているEUが、国による公的資金注入を許可しないようなんですね。
もし資本注入が必要なのであれば、国ではなく民間銀行で救済ファンドを立ち上げて自分達で処理しろというのが、ドイツ帝国EUの方針です。

仮に損失が出た場合は、『銀行の債券保有者と株主が負債をかぶれ!』と正論をぶちかましております。

ステイクホルダーが全ての負債を被るという話ではなく、銀行負債の8%を株主と再建購入者が負担しろというものらしいのですが、人によっては結構な負担ですよね。
『銀行の株や債券を持ってるのなんて、金持ちばっかりだから問題はないでしょ?』と思われる方も多いでしょうが、実はそうでもない様子。
銀行は、ろくなリスク説明をせずに、銀行債の購入を預金者に持ちかけていたようなんです。
日本でも、『銀行預金なんて金利が付かない』と言われて久しく、それなら、国債社債を購入したほうが金利収入が得られるなんて話が結構されてますよね。
そんな感じで、なけなしの預金を銀行債に変えたという人が結構いたようです。

債権者や株主が損失を被るこの規則は、ベイルイン規則というらしいのですが、昨年末にイタリアの銀行が破綻した際にベイルイン規則を適用した所、多額の損失をだしてしまった年金生活者が、自殺してしまったという事件もあったようです。
イタリア政府としては、国民の被害を最小限にしたい為、ベイルイン規則を緩和や一時適応外にして欲しいと主張しているようですが、ドイツが納得せずに公的資金注入が出来ないという状態になっているようです。

ここでも存在感を出してきましたね、真面目なドイツ様が。

まぁ、この問題。
正直な話、イタリア国内で収束していれば、影響は有るにせよ、比較的小さなショックで収まる可能性もあります。
しかし、この件から派生して、もっと大きな問題が発生してしまう可能性が出てきました。

それが、ドイツ銀行の破綻懸念。
地上波のニュースばかり観ている人は、寝耳に水の話かもしれませんね。
しかし、ラジオNIKKEIやCNBCといった経済専門チャンネルでは、数カ月前から囁かれていたのが、ドイツ銀行の破綻懸念です。

では、ドイツ銀行は今現在、どのような状態にあるのでしょうか。

ドイツ銀行金融派生商品保有率が非常に高く、かなりのリスクを抱えているようです。
金融派生商品といえば、リーマンショックで一般的にも有名になりましたよね。
少額のお金で大きな変動リスクを扱えることが出来る金融派生商品は、仕組み自体が複雑。
その複雑な仕組みが多数組み合わさっている為、金融市場に大きな変動があった際に、どの様に影響が受けるのか分かりません。

という事で銀行に対し、金融リスクに晒された時に銀行に耐える体力があるのかを確かめるために、ストレステストが行われたのですが…
ドイツ銀行は、そのテストで見事に不合格。
IMFから直々に、『ドイツ銀行は影響力が大きいのだから、財務状態をなんとかしろ!』と警告されてしまいました。

規模的にいえばリーマン・ブラザーズが破綻した際に起こったリーマン・ショック以上と推測されている為、あのような混乱の再来を防ぐために必死といったところでしょうか。

ドイツ銀行の破綻は、本来であれば公的資金注入をするなり何なりして絶対に避けなければならない自体ですが、冒頭のイタリアの件でも書いた通り、ドイツはEUの規制を使って、国による公的資金注入を禁止しています。
真面目なドイツ様のことですから、他人に禁止している行動を自分だけ行うなんてことはしないでしょう。
まさに、自縄自縛といった所でしょうか。

この様なEUの混乱した金融市場を観ていると、いち早くEU離脱を決めたイギリス国民は馬鹿でも何でも無く、沈みゆく泥船から真っ先に飛び出した賢明な国民の様にすら思えてきますね。

この金融危機は数カ月前から指摘されていることですし、リーマンショックによる学習効果も有るので、EUは何が何でもリスクを回避しようと頑張るでしょう。
現にドイツ銀行は、保有しているデリバティブ商品を徐々に売却しているようですし、最悪の場合は、EUの規則を変更して、国による公的資金注入も認めるようになるかもしれません。

ただ、今回の投稿を通して頭に入れておいて欲しいことは、ヨーロッパではイギリスのEU脱退よりも影響の大きな経済的懸念が存在するってことなんです。
遠く離れた日本に住む我々からすれば、『イギリス人て馬鹿だよね~』と上彼目線で笑っているのは心地よいかもしれませんが、物事の表面だけしか観てないと、思わぬリスクに足を救われる可能性もありますしね。