だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

『お金』と『やりがい』 ③

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前回は、『お金』と『やりがい』について書きました。
kimniy8.hatenablog.com
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前回までの事を簡単に振り返ると、善意で行ったことに対する反応によって、人は幸福になったりそうでなかったりします。
善意で行った事に対して、感謝という行動で返された場合は満足と幸福感を得ますが、お金が介在してしまう事で、これらの幸福感は薄れてしまいます。
このことから、善意に対する反応という事に限れば、行動とお金はトレードオフの関係にあることが分かりました。

トレードオフとは、簡単に書けばシーソーゲームの様なものの事です。
シーソーの両端が上昇する事はなく、片方が上がれば片方は下がります。
幸福を選ぶ場合はお金は得られないし、お金を得てしまったら幸福は得られないという事です。

そしてもう一つ、シューポス実験によって分かった事がありますね。
それは、人の『やりがい』は、お金では得られないという事です。
不思議な事に、人はお金を貰うよりも、賛美を受けたりして期待される方が、モチベーションが上がるんです。

詳しくは、第2回のシューポス実験の回を見てください。

この実験結果の応用になるのでしょうか…
白熱教室では、不思議な事が語られていました。
それが、会社の効率を上げる為の、お金の分配方法です。

仕事に対しての『やる気』が有る人と、無い人。
どちらの金銭的待遇を良くすれば、会社の生産性が効率よく上がるのでしょうか。
答えから書くと、やる気が無く、効率の悪い人程、給料を率先して上げれば良いんです。
逆に、仕事が非常に良く出来て質も高い人の給料は、カットしても良い。

かなり意外な答えですよね。

何故、こんな答えになるのかというと、伸びしろが有るのに作業を行わない人は、そもそも仕事がつまらないと思っています。
この人の作業効率を上昇させる為には、仕事の面白さを教えるという方法ではなく、単純に報酬を上げてやればよいんです。
自分の待遇が良くなれば、その会社に出来るだけ長く居座りたい思うようになります。
そう思わせる事が出来れば、リストラ対象に入らないように仕事の効率を上げようと思わせる事が出来るわけです。

逆に、今現在の待遇で仕事の効率が良い人は、単純に能力が高いという事もあるのでしょうけども、仕事に『やりがい』を感じている可能性が高いんです。
『好きこそものの上手なれ』なんて言葉がありますが、その作業自体が苦でなければ、ゲーム感覚で仕事を進んで覚えていくのでしょう。
例えばこの人が歌手の場合で考えてみると、『報酬を30%分減らすことにしました。その代わり、30%分下手に歌っても良いです。』といった場合、その歌手は下手に歌うのでしょうか。

報酬の額に関わらず、その人が自分の仕事にプライドを持っている場合は、客前で最高のパフォーマンスをしようと思うでしょう。
というか、30%分だけ音程を外してうたう方が、難しいです。
これは、表現を行う仕事だけでなく、製造業などでも同じでしょう。
報酬をカットするから、わざと手を抜いても良いなんて条件を付けたところで、その人が一流の職人であればある程、手を抜かないでしょう。
一流の職人とは、完成した商品に対してプライドを持つものなので、作業という点ではベストを尽くすものです。

冒頭にも書きましたが、『お金』と『やりがい』はトレードオフの関係なので、単純な効率を考えれば、仕事に『やりがい』を感じて高品質な技術やサービスを身に着けた人の給料は下げ、仕事に対するやる気が無い人は、金銭的な報酬を増額させる事で効率化を目指すのが正解なんだそうです。

しかし常識的に考えて、やる気が無い人ほど高収入が得られるようなシステムって、受け入れがたいですよね。
実際の会社で、こんな理不尽な事が行われたとしたら…
優秀な人は、会社を辞めてしまいますよね。

ですが、理不尽な対応に耐えられずに仕事をやめてしまい、より金銭面で待遇が良い同業他社に就職したとして、最初の間は『自分の能力を高く評価してもらってる!』と満足しても、次第に、『自分は金の為だけに仕事をしていたのか?』と疑問を感じてしまう。
その後、自分の能力が上昇する度に、ボーナスなどで報酬が増えていくと、それに連動するように『やりがい』も搾取されていく。
そして、生活する為に必要な金額を大きく超える報酬を貰えるようになるころには、『やりがい』は搾取されつくしてしまい、結果、その人の生産効率は大きく落ちてしまう。


これらの事からわかる事は、お金というものが人が幸福になる為の障害になっているという事でしょう。。
仕事に『やりがい』を感じ、作った製品や提供するサービスに誇りを持ち、それらを消費してくれた人が喜んで感謝するというサイクルは、人を幸福にします。
しかし、そこにお金が絡んでくると、話が変わってきます。

人は社会的な生き物なので、役割を与えられ、それを遂行する事にも一定の幸福感が得られるようにできています。
逆に、世の中から必要とされなくなった人間は、人の社会では生きる意味を失って生きて行けません。

しかし『お金』の存在により、人がそれぞれ担ってきた役割は必要以上の効率化に迫られ、本来、楽しいはずの社会貢献は義務へと変わってしまいました。
義務へと変わった仕事と、それによって発生する金銭は、人の生活を縛り自由を奪ってしまう。
それによって構築されたシステムを稼働させる為に、人は不本意な仕事をやらなければならず、人の人生はそんなに楽しいものではなくなってしまっているようにも思えます。

…と、私の構成力が無いせいで、最後の方は強引なまとめになってしまいましたが、その辺りの補足は、次回書いていきます。